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はじめまして

 はじめまして。

 しづ と申します。
 薪さんに幸せになって欲しいと、こころから願う腐女子です。


 以下、このブログについての説明、注意事項等を記載しますので、初めての方は必ずお読みになってください。

 
 なお、当ブログは秘密二次創作(腐向けギャグ小説)専門サイトです。 
 原作に関する感想・レビュー等はございません。
 二次創作に不快感のある方、原作の世界観を大切になさりたい方は、ご遠慮いただいた方が無難かと思われます。

 管理人の原作に対する意見は、時折コメント欄で語っております。
 図らずもネタバレになっておりますので、ご了承ください。

 



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パートナー(5)

 ご無沙汰しております。
 義妹がいなくなって、事務員がわたししかいないのに、なぜか今年も道路の現場代理人になってしまったしづです。話違うじゃん。
 まあ、今年はお義母さんの介護が無くなっちゃったから、その分仕事できるけどね。実際、会社の経理だけやってると時間持て余すけどね。(小さい会社なんで、1ヶ月分の帳簿作成が三日で終わってしまうという(^^;)

 今年の工事は県土木です。新しい歩道を作ります。
 先週、契約が終わったところなので、今週は着工書類と施工計画書と材料の手配と下請業者の選定と……etcで、ちょっと忙しいです。2本やってた水道工事はあらかた終わって、こちらも竣工書類の真っ只中。どうして書類って重なるんですかねえ? あ、もう1本やってた小さい工事は終わりました。書類も上がって、検査待ちです。
 そんな調子なので、ハッキリ言って、作品を読み直す暇がありません、ごめんなさい。この先もしばらくは忙しそうなので、とりあえず更新しておきたいと思います、でもぶっつけです。乱文、お許しください。
 よし、言い訳終わり。<こら。




パートナー(5)





 翌朝、青木は薪の叔母の文代と一緒に朝食の用意をした。薪と二人ならトーストにコーヒーが定番だが、海外生活が長い来客のため、メニューは和食と決めていた。

 ワカメと豆腐が浮いた鍋に青木が味噌を溶いていると、文代は感心したように、
「ちゃんと濾し器を使うの? 本格的ね」
「薪さんが。こうした方が、味がまろやかになるって」
「わたしはそんなこと、剛に教えた覚えはないけど。どこで覚えてきたのかしら」
「大学生の頃、親友のお母さんに教わったって聞きましけど」
「もしかして、鈴木くん?」
 青木が頷くと、文代は困ったように眉を寄せた。それで青木は、この女性がむかし、鈴木と面識があったこと、あの痛ましい事件の顛末を知っていることを悟る。遠い異国で甥の身を案じて、心を痛めたであろうことも。

「あの事件の後すぐ、史郎さん、剛の所へ行ったのよ。警察を辞めさせるって息巻いて……大ゲンカして帰ってきて、『もう知らん。二度と顔も見たくない』て」
 当時薪は、潰れかけていた第九を立て直そうと必死だった。叔父の忠告など、耳に入らなかったに違いない。
「1年も経たずにまた行ったけどね」
「あは。そうなんですか」
 青木が笑うと、文代は釣られて笑い、
「あのひと、剛が可愛くてしょうがないのよ」
「素敵なことだと思います。血の繋がりが無くても、生活を共にするうち、愛情が芽生えたんですね」
「それがね。最初に剛を引き取ろうって言ったのは、史郎さんなのよ」
 それは初耳だった。てっきり血のつながった文代が、交通事故で亡くなった姉の子供を引き取ったのだと思っていた。
「剛から聞いてるかもしれないけど、その頃うちは会社を閉めたばかりで、借金がたくさんあってね。だから正直に言うとわたしは躊躇ったの。引き取ったところで贅沢なんてさせてあげられないから、だったら薪家の親類に預けたほうがいいんじゃないかって」
 血のつながった叔母なのにね、と彼女は自嘲する口調で言い、味見用に小皿によそった味噌汁を一口飲んだ。

「ま、そんなわけだから。がんばってね、青木さん」
 悪戯っぽく笑った文代に、はい、と答えたものの、青木はいささか驚いてた。
 想定外だ。あの叔父が、そんなに薪を可愛がっていたなんて。昨日のバトルからは予測不可能だ。
 青木には困った叔父がいるせいか、考え違いをしていた。薪は、叔父の反対を押し切って警察官になった。そのことを叔父は根に持っていて、だから何かと文句を付けるのだと言っていたが、そうではなく。叔父は薪が可愛くて可愛くて、だから心配で仕方ないだけなのだ。ちょっと、いや相当分りづらいが、スタンスは青木と一緒だ。それならば同志だ。

「……よかった」
「なにが?」
 意識せずに零したセリフを文代に拾われ、青木は焦って首を振る。「味噌汁が冷めないうちに食べましょう」とやや強引に話題を変えた。
 幼いうちに両親を亡くして薄幸な少年時代を過ごしたと聞いていた薪が、あなたたちに愛されて育ったことが解って嬉しかったんです、なんて当人に言えるわけもなかったから。







テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

パートナー(4)

 こんにちは、ちょっと間が空いちゃいました、すみません。
 実は、実家のお母さんがウォーキングの帰りに骨折しちゃって。
 現在は、実家のお嫁さんが面倒見てくれることになったので大丈夫なんですけど、最初はわたしが通い家政婦にならなきゃいけない状況だったので、しばらくの間はバタバタしておりました。

 それと、
 後はあれよ。警視庁24時。(笑)
 期間限定で別記事に上げますので、お暇な方はどうぞ。





パートナー(4) 



 その晩はリビングに布団を敷いて、叔父たちにはそちらで休んでもらうことにした。
「薪さんもそちらへどうぞ。オレはナッシーと寝ますから」
 大人だけの家にあるのは不自然な人形、その事情説明を面倒がった薪のせいで、成人しても人形遊びを止められない男のレッテルを張られた青木は、薪の嘘を裏付けるとも皮肉ともつかぬ口振りで、薪に親子水入らずの就寝を勧めた。しかし薪は首を横に振り、いつも通りの寝場所を選んだ。「おやすみなさい」と叔母夫婦に声を掛けて、青木と一緒に寝室に入った。

 この頓狂な人形が薪の家に置かれることとなった春の事件の時も思ったが、薪は、青木と共に生きると決めたことを、堂々と主張するようになった。あくまで必要に駆られた時だけだが、それだって今までに比べたらえらい進歩だ。
 きっかけは何だったのだろう、と考えて、昨年の秋に起きた悪夢のような事件を思い出す。あの時、すべてを諦めて死を選んだ薪に、岡部が青木が滝沢が、それぞれの立場からそれぞれのやり方で、彼を生かそうとした。彼の人生に幸福が存在することを認めさせようとした。その中のどれか一つでも効果があったのなら喜ばしい限りだが、そういうことじゃない気がする。この人は、基本的に人の話を聞かない。耳を貸さないのではなく、他人に言われて自分のスタンスを変えるような人ではないのだ。だからこの変化はきっと、年を取ったら言い訳するのも面倒になったとか、そんな身も蓋もない理由だ。

 ダブルベットの左側に青木が、右側に薪が横になる。薪は頭の下に両手を組み合わせて、しばらくの間薄暗い天井を見つめていたが、やがてぽつりと言った。
「叔父さんが言うことは気にするな」
 薪との関係を否定され、青木の母親にダメ出しをされた。自分の身内がそれをしたことを、申し訳なく思っていたのだろう。彼の気遣いが嬉しかった。
「平気です。オレは何を言われても」
「大人のクセにあの人形はないだろうって、僕にさんざん言ってたから。明日、皮肉られるかもしれないけど気にするな」
 30過ぎても人形遊びが止められない男だと誤解させたのは誰ですか。
「薪さん。それはきちんと説明すれば」
「叔父さん、何をしに来たんだろう」
 薪に遮られ、青木の抗議は不発に終わる。とりあえず、薪は人の話を聞かない。
「かわいい甥の様子を見に来られたんでしょう。20年振りのサプライズってのがすごいですけど」
「いや。今までも4,5年おきに来てた」
 そうなのか、知らなかった。だったらその時、呼んでくれればよかったのに。そうしたらこんなグダグダなカミングアウトにならずに済んだのだ。――まあ、一緒に暮らす前の薪にそれを求めるのは無理だったか。
「でも、今回みたいな抜き打ち検査は初めてだ」
「ぷ。抜き打ちって」
 国税局じゃあるまいし。

「可愛い甥か……生憎、そんな麗しい親子関係じゃない。小さい頃はそうでもなかったけど、僕が警官の道を選んだ日から、あの人とはケンカばかりだ」
「そうなんですか?」
 青木の父も、第九に勤めることには反対だった。でも父は最後に――否、今際の際になって考えが変わったのではなく、もっと以前から認めてくれていたのだと、後で母が教えてくれた。改めて言葉にするのも気恥ずかしくて、それで伝えるのが遅くなっただけなのよ、と。
 海を渡って顔を見に来るくらいだ。薪の叔父も、そういうことじゃないのかと思いたかったが、あの言い争いを目撃してしまっては、それも難しかった。やはり、父親と叔父では見方が違うのかもしれない。そう言えば、青木の叔父も青木の仕事には懐疑的だった。

「最後に来たのはいつだったんですか?」
「確か、6年前だ」
 6年前と言えば、薪とは恋人関係にあったものの、現在のように一緒に暮らしてはいなかった。そう頻繁に彼の家に出入りしていたわけではないし、週末も薪が「今週はダメだ」と言えば、その理由を質すことはしなかった。その「ダメだ」の中のどれかに、彼らの帰国はあったのだろう。
「じゃあ定例訪問じゃないですか。今回はサプライズにしてみたってだけで」
 そうかもな、と頷いて薪は目を閉じた。納得したというよりは話を打ち切ったように感じられたが、そう返されれば青木も会話を終えるしかない。

 胸の内にある不安に寒気を感じたのか、すり寄ってきた薪の背中を抱いて、青木は彼の髪に鼻先を埋めた。
「おやすみなさい」と声を掛けるも応えはない、それはいつものことだったけれど。青木の背中に回った薪の手に、ぎゅ、と力がこもったのは、とても珍しいことだった。



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ジャンル : 小説・文学

パートナー(3)

 こんにちは~。

 この章には、昔、ちょっとだけ晒した、地下倉庫の一つがネタに含まれてます。
 分からない方はそのままに、分かった方は、
 どうかスルーで! スルーでお願いしますねっ。

 本日もよろしくお願いします。







パートナー(3)





「ではお疲れさまでした。おやすみなさい」
「ちょっと待て。私に野宿をしろとでも」
「ご安心ください、日本の夜は安全です。オレたち警察が目を光らせていますから」
「そういう問題じゃない。今は11月だぞ」
 よかったらこれどうぞ、とにっこり笑って毛布を手渡され、叔父は目を白黒させた。ニコニコ笑いながら押しが強い。青木の恐ろしさはここだ。

「青木。そのくらいにしておけ」
 青木が振り返ると、腕を組んだ薪がニヤニヤ笑っていた。左手の拳を口元に当て、吹き出したいのを堪えている様子だ。
「薪さんが、そうおっしゃるなら」
 母親のことも自分のことも、青木は本当にどうでもいい。すべてのものを守るなんて、自分には無理だ。青木の守備範囲はそんなに広くない。
 青木は薪のボディガードだ。
 薪のことだけ。守れたらそれでいい。

「お布団、ここに敷きますね。干してないから冷たいかもしれませんけど……あ、そうだ。湯たんぽ入れましょう。用意してきます」
 切り替えの早さは見事なもので、それはおそらく上司の影響。雪山の天気のようにコロコロ変わる薪の機嫌を取り持つには、3秒前の発言を瞬時に忘れられる能力が必要なのだ。
 客用の布団と湯たんぽを取りにクローゼットに向かう青木の後ろ姿を、叔父と甥は並んで見つめた。青木を良く知る薪は慣れたものだが、叔父の方はその変わり身の早さに付いていけず、たった今、自分の身に起こったことが夢か真か、判じかねる様子でしきりに目を瞬いていた。
 その様子に薪はとうとう耐え切れず、クスクス笑いを拳に降り掛け、
「いい男でしょう」と右隣の叔父の顔を見上げた。

「人を見る目のないおまえにしては、まあまあだ」
 ありがとうございます、と薪は冷静に返したが、内心ではとても驚いていた。
 初対面で、あの皮肉屋の叔父からこれだけの賛辞を引き出すとは。鈴木ですら初めて会った時には「パッとしない友だちだな。本当に東大生なのか」と陰で言われたのだ。
 初対面の評価が鈴木に勝ったことを青木が知ったら、さぞ喜ぶだろう。青木は単純だから、それだけで叔父を好ましく思うかもしれない。先々のことを考えるとそれはとても有益な方法に思えたが、いかんせん、薪は人間関係にそういう細かなネタを仕込むタイプではない。
「彼個人の人柄とおまえたちの不適切な関係は、また別問題だ。私は絶対に認めんぞ」
 叔父さんに認めてもらわなくとも、なんら支障はありません。
 出掛かった言葉を舌の根で抑え込む。冷たい言葉を冷酷な言葉で打ち返せば、倍の冷たさで返ってくるに違いない。舌戦の泥沼に戻るのを回避するため、薪は話題を変えることにした。

「ところで、叔母さんはどちらに?」
「長旅で疲れが出たようでな。ベッドルームを借りて休ませてる」
「えっ!」
 何か問題でも? と問われれば心とは裏腹に頷くこともできず。かと言って自分の母親代わりだった女性を寝泊まりさせるには、そこはあまりにもリスキーな部屋だ。
 だって寝室には青木と大人の夜を過ごすために必要なあれやこれやが!! 例え引き出しを開けなくても、サイドボードにはふたりで撮ったスデディな写真が飾ってあるし、脇田課長オススメのビデオコレクションも、いや、それより。
 本棚の、一番下の隅っこに隠すように置いてある青木の血迷った買い物を思い出し、薪は瞬時に青ざめた。

「冗談じゃない! 今すぐ別の部屋に移ってください!」
 思わず叫ぶ。だってアレ、叔母さんに見つかったら僕死ぬから!!
「部屋を代われと言われても。文代はもう眠って」
「でもっ! 使ったことないって言っても信じてもらえないでしょ!?」
 未使用どころか触ったこともない。青木が使い方を説明しようとする度に思い切り蹴り飛ばして、完全無視を決め込んでいる。
 なんでそんな物が寝室にあるのかと言えば、青木が薪の浮気を心配したからだ。もちろん薪は浮気なんかする気もないし、するだけの体力も時間もない。全くの杞憂に過ぎないそれを青木は滑稽なくらい深刻に悩み、挙句、煮詰まり過ぎてあんなモノを購入してしまったのだ。バカとしか言いようがない。
 薪がそれを捨てずにおいたのは、どうやって捨てたらよいか分からなかっただけで、万が一ゴミ袋の中からご近所さんに見つかりでもしたら此処に住めなくなるから。でもまあ薪も、ほんのちょっとくらいは興味あったりとか、これから先青木と何ヶ月も会えなかったりしたらその時にはとか、そうだ、スカイプエッチのときに使ってやったら青木が喜ぶかも……いやいやいやいや!

「使わない、絶対に使わないからなっ!」
「なにを?」
「ナニって、えっ、あっ、いや」
 石鹸水とクエン酸に交互に浸したリトマス試験紙みたいに、薪の顔色が忙しく赤と青の間を行き来する様子を、叔父は怪訝な表情で見つめ、深刻な口調で切り出した。
「まさかとは思うが。剛おまえ、非合法なクスリを」
「そんなわけないじゃないですか。僕は警察官ですよ」
「じゃあなんだ。ハッパ以外、寝室に置くもので他人に見られたら拙いものがあるのか」
「叔父さん。ここは日本です。叔父さんの所みたいに、マリファナがドラックストアで買える国じゃないんですよ」
「失敬な。私はそんなものに頼ったことはないぞ」
「僕だってありませんよ!」
 微妙にズレていく叔父との会話にイライラして、声のトーンが自然と高くなる。この叔父とは、どちらかと言えば黙り込むケンカが多かったはずだが、この20余年の間に、薪はハイエナのようなマスコミ相手に、叔父は機関銃のように喋りまくるアメリカ人相手に、お互い言語中枢を発達させてきたらしい。

「なに騒いでるのよ。うるさくて目が覚めたわ」
 そこに叔母が現れた。頭痛は治ったらしく、スッキリした顔をしている。
「キッチンで青木さんに会ったわよ。感じのいい子ね」
 でた、青木の年上キラー。彼は、子供と老人には本当によくモテる。警察官なんてヤクザな商売より、保育士か介護士のような職業の方が彼の外見にも気性にも合っていると薪は思う。

「それはそうと、剛。寝室に隠してあったアレ。あなたにあんな趣味があったなんて。叔母さん、びっくりしたわ」
 ぅぎゃああああああ!!!
「ちちちちち違うんです、叔母さん! アレは青木が買ってきて、でも僕は一度も使ったことはないんです! 信じてください!」
「あら、そうなの? あれ、青木さんのシュミ?」
「もちろんです! そもそもあんな大きいの、僕には無理ですよ!」
「そんなこともないんじゃない? 確かに標準に比べれば大きいかもしれないけど、無理ってことはないと思うわ」
 え。そうなの? あれって挿入可能なサイズ? 青木が「オレのより少し小さいかもしれませんけどこれで間に合わせてください」って言ってたの、あれ、男の見栄じゃなくて?

「女の人にはそうかもしれませんけど、僕は男ですから。使用する場所のこともあるし」
「そうね、所構わずってわけにはいかないわね。ちょっと恥ずかしいものねえ」
「ちょっとどころの騒ぎじゃないですよ。犯罪ですよ、あんなの」
「犯罪なんて大げさな。あんなにかわいいのに」
 かわいい? あんなグロテスクなものが? 女の人は、ブサかわいいとかキモかわいいとか、理解しがたい美的基準を持っているが、それにしたって。
「かわいいですか? アレ」
「可愛いじゃない。頭が丸くて、太くって、ズドンとしてて。頬ずりしたくなっちゃうわ」
「スゴイこと言いますね……」
 雪子の猥談もすごいけど、叔母さんもすごい。とても付いていけない。ていうか、叔母さんてこんなキャラだったっけ? 女の人は年を取ると恥じらいを失くすって言うけど、自分の身内にその実例が生じるのは複雑な気分だ。

「なんの話だ」
「あ、史郎さん。そうよね、史郎さんも見たいわよね。剛、ここに持ってきていい?」
「ダメに決まってるでしょ、そんなのっっ!」
 気でも狂ったんですか、と、その言葉を飲み込むのがやっとだった。なに言いだすんだ、この女は。正気の沙汰とは思えない。
「いいじゃない。見せてあげましょうよ。史郎さんもきっと気に入るわ」
「待ってください、後生ですから!!」
 後ろから羽交い絞めにしようとした薪の手を半歩の差ですり抜けて、叔母は寝室に入ってしまった。かくなる上は、寝室のドアに板を打ち付けてこの呪われたアイテムがある部屋を叔母さんごと永遠に封印するしかないと薪が決心した時、再びドアが開いた。
 瞬間、薪は反射的に後ろを向いた。光景は予想できるが、とても正視に堪えない。母親が掃除中に息子の寝室からエロ本見つけちゃうくらいならホームドラマでもありそうだけど、グッズはないから! 人間、そんな恥辱に耐えられないから!

「ほら、これよ」
 終わった、人生終わった。僕はこれから踏切に飛び込む。さようなら、みんな。
 鈴木、待たせたね。今行くよ。鈴木だけは僕の無実を信じてくれるだろう?
「これが可愛いのか? 女の感覚は分からんな」
 そうでしょうね……。
「頭が丸くて太くてズドンとしてて」
 叔父さんまで事細かく形容しないでください。一度見たら忘れられない、ていうか必要ないです。男なら誰でも日常的に目にしてますから。
「黄色くて青くて」
 ええ、黄色くて青くて、うん? 黄色? 青?
 人それぞれかもしれませんけど、逆に自分のは見たことありませんけど、その時の僕のは薄紅色だって青木が言ってて、青木のはやや紫がかった赤色だと記憶していますが。
「手足が異様に短い」
 はいはい、手足が、――手足? 叔父さんのには手足が付いてるんですか??

 食い違う記憶に焦って振り返る。ドアの前には巨大なぬいぐるみを抱いた叔母と、複雑な顔をした叔父が立っていた。
 そういえばこないだ、ミハルが遊びに来て。彼女の大のお気に入りの人形をクローゼットから出したはいいけど片付けるには青木の手を借りなきゃいけなくて、とりあえず寝室に置いておいたのだった。ぬいぐるみとはいえ目があるものは見られているような気がして嫌だから、頭からすっぽりとシーツを掛けておいた。それを叔母は、隠してあると誤解したのだ。

「地味に重いわね、これ」
「これが青木くんの趣味か。いい大人が、まったく」
 叔父の誤解を、薪は敢えて解かない。本当の持ち主のことを説明するのも面倒だし、誤解の内容を説明することは死んでもしたくないからだ。それに、そもそもの原因は青木のトチ狂った買い物のせいなのだから、これは自業自得だ。
「そうですね。いつまでも子供で困ったもんです」
 すべての責任を青木に押しつけて、薪は大きく頷いた。




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ジャンル : 小説・文学

パートナー(2)

 こんにちは。

 こないだ、ご新規さん用に説明入れるの忘れちゃったんですけど、
 薪さんが叔母夫婦に育てられた、というのは法十のオリジナル設定です。
 叔母夫婦の人となりについては、ADカテゴリの「きみはともだち」あたりに書いたような気がするので(うろ覚え)、あと、叔父さんと薪さんの確執についても書いた気がするので(残念過ぎる記憶力ですみません)、
 気になる方は読んでみてください。 






パートナー(2)







 青木を苛めて平常心を取り戻した薪は、それからは周りの車に迷惑を掛けることなく、無事にマンションに帰って来た。車から降り、問題はその後。
 駐車場の平らな床で躓いた。コンクリートの柱に体当たりしそうになった。階段を踏み外して転がり落ちそうになった。
「気を付けてくださいよ、薪さん」
 咄嗟に青木が手を出さなかったら、今ごろ薪のきれいな顔は傷だらけだ。青木の仕業だと疑われたら眼もあてられない。意地悪な叔父さんとやらにDV男のレッテルを貼られでもしたら、話をするどころではなくなるだろう。

 青木をヒヤヒヤさせながら、二人はどうにか自宅に着いた。駐車場から部屋まで行くのに、こんなに苦労したのは初めてだ。
 薪はMRIの画面を見るときのように、自宅のドアを睨みつけた。そのドアの向こうに、敵がいるとでも言うように。
「薪さん」
 名前を呼ぶと同時に、青木はそっと薪の左手を握った。
 部屋の外で触れ合うことを薪は許さない、それは知っていたが、このままではいけないと思った。この向こうにいる人は、敵ではないのだから。
「まるでヤクザの出入りですよ」
 薪は青木の軽口を諌めなかった。極限まで緊張しているのだ。
 自分の左手を覆った青木の大きな手に自分の右手を重ね、左手をくるりと返す。両手で青木の手を挟むように握って、ぎゅ、と力を込めた。

「薪さん。もっとリラックスしましょう。そんなに緊張してたら相手だって」
「誰が緊張してるって?」
 ふ、と笑みさえ浮かべて薪は言った。
「緊張する必要なんかない。親が子供に意見できるのは成人するまでだ。それ以上は親の過干渉。聞く耳なんか持たなくていい」
 ドアノブを回す手に、気後れは感じられなかった。薪は勢いよくドアを開け――、その倍の速度で閉めた。
「なんで閉めちゃうんですか」
「……条件反射で、つい」
 どうやら叔父さんが、玄関口で待ち構えていたらしい。
 こんなに委縮している薪は初めてだ。叔父さんとやらは、よっぽど厳しく薪を躾けたのだろう。
 ここは自分が間に入るしかない。他人が入った方が身内の諍いが丸く収まったという事例もあるし、幸い、青木は人当たりの良さには定評がある。大抵の相手とは上手くやれる自信があった。
 何やら小声で唱え始めた薪を背中に回して、青木はドアを開けた。

 薪の叔父を一目見て、神経質そうな人だと思った。ピタッと撫でつけられた灰色の髪と、広くて肉の薄い額はその証に見えた。役所の職員、あるいは銀行員。とにかくお堅い職業をこなしてきた印象を受けた。
「はじめまして。青木一行と申します。薪さんにはいつもお世話になってます」
 にっこり笑って挨拶をした。しっかりと頭を下げて、友好の意を示した。しかし、返ってきた言葉は短く、冷たかった。
「信じられん」
 覚悟はしていたが、やっぱりきつかった。自分の存在を真っ向から否定された気がした。
 それでも青木は何とか微笑んだ。上手く笑えた自信はなかったが、叔父の表情が更に冷たくなったので、失敗したのだと分かった。
 薪の叔父にとって、これは笑いながら話すことではないのだ。当然かもしれない。大事な甥の将来に関わることなのだから。

「青木、ドアを閉めろ。中に入ろう」
 いつの間に自分を取り戻したのか、薪が落ち着いた声で青木に入室を促した。玄関先で話すことでもないと叔父も考えたのだろう、先にリビングへ入って行った。慌てて後を追う。
 青木がお茶の用意をしてリビングに行くと、L字型に設えたソファの、対角線上に叔父と甥が腰を下ろしていた。テーブルの上に3人分の緑茶を置く。薪の隣に座って、どうぞ、と明るく声を掛けた。
「あ、もしかしてビールの方がよかったですか? 持ってきましょうか?」
「いらん。私は酒は飲まん」
「そうでしたか。失礼しました。じゃ、何かお茶菓子でも」
「甘いものも嫌いだ」
 木で鼻を括るような返答。普通だったら委縮して無言になりそうなところを、普通にしないのが青木一行と言う男だ。
 そのとき青木はクスッと笑った。苦笑でも失笑でもなく、本当に可笑しそうに笑ったのだ。当然、叔父の眉間の皺の深さは二倍になる。気付いて慌てて謝った。
「ごめんなさい。怒った時の薪さんにそっくりだったから」
 正直に言ったら薪の皺も二倍になった。どこが、と無言で噛みつく薪に「ほら」と両手を左右に広げて見せる。青木の指の先には眉間に皺を寄せてムッツリと黙り込む叔父と甥。思わず顔を見合わせて失笑する。青木に一本取られた。

「自己紹介も未だだったな。剛の叔父の、市村史郎だ」
 史郎は湯呑を手に、短く自己紹介をした。一口飲んで、青木の目を真っ直ぐに見た。
「きみはいくつだ。剛より、だいぶ年下のようだが」
「今年で32になります」
 ふうむ、と史郎は唸った。難問に直面したような彼の表情に、青木は不安を覚える。
 頼りなく見えるのだろうか。こんな青二才に大事な甥の将来を預けるわけにはいかないと、そう思われているのだろうか。
 青木はひたすら自分の未熟を心配したが、史郎の言葉はまったく逆であった。
「剛、失望したぞ。こんな若い青年を不毛な道に引っ張り込むなぞ、そんな浅ましい人間におまえを育てた覚えはない」

 何を言われても反駁する気持ちなどなかった。が、予期していた痛烈な言葉は、自分ではなく薪に向けられた。それは意外で、そして青木には聞き流せない言葉であった。
「ちょっと待ってください。それは違います」
「青木、黙ってろ」
「でも」
 薪の命令を青木が素直に聞けなかったのは、叔父の見解が事実とは違っていたからだ。
 薪と歩む人生は、決して不毛な道などではない。薪と言う優れた人間から学ぶものはたくさんある。自分で言うのもなんだが、青木は薪に恋をしてから、ずいぶん成長したと思う。仕事も体術も、懐の大きさも。それもこれも彼に見合う男になりたかったからだ。最後の寛容だけは、薪の我儘に馴らされたおかげだが。
 青木はそれを説明しようとした。だが、薪の言葉の方が僅かに早かった。

「叔父さんの期待に副う人間になれず、申し訳なく思っています」
 薪の言葉は素直な謝罪だったが、聞く人の心には響かなかった。この議論を早く終わらせようという意向が見え見えだったからだ。当然、史郎の気持ちを和らげることはできなかった。
「最初からおまえに期待などしとらん。私の意見を聞かず、警官になどなりおって。思った通り、不誠実な言い訳ばかりが上手い最低の人間に成り下がった」
 叔父は優れたプログラマーだと薪から聞いていたが、なるほど、頭は良いのだろう。だからこそ選ばれる言葉は辛辣で、人の心を鋭く抉る。表面だけの謝罪で話を打ち切ろうとした薪も悪いが、それに腹を立てたとしても、ずいぶん酷い言い方をする。

「相変わらず警察が嫌いなんですね」
 ふ、と薪は冷たく笑った。青木の心臓がぎくりと脈打つ。
 横目で盗み見た薪の瞳は宿敵に相対した時のように冷気を孕み、そのくちびるは反撃ののろしを上げるかのように美しい三日月の形に吊り上げられていた。
 ヤバい。薪が戦闘モードに入ったら誰にも止められない。

「僕には警察を厭う人間の神経が分からない。あなた方一般市民がどれほど警察という組織に守られてきたか、銃も持たずに夜の通りを歩けるのは誰のおかげなのか、この国で何十年も生きてきてご存じないのですか。パソコンの画面ばかり見て現実を見ないあなたらしいと言えばあなたらしいですが、それにしたって。齢60にもなって、まだ幻想に捕らわれているとは。可哀想な人だ」
「幻想に捕らわれているのはおまえの方だ。組織に入れば目を覚ますかと思えば、こんな年まで。おまえの眼は節穴か? それとも組織の暗闇を知った上での怠慢か。だとしたらますます許せん。まともな人間なら良心の呵責に耐えられないはずだ」
「実情を知りもしないで何を勝手なことを。警察はあなたが思うほど、非道な組織ではありません。確かに一般市民に公開できない極秘情報も抱えてはいますが、それも市民の安全を守るための」
「極秘情報? スクラップブックの間違いだろう。それも他人のプライバシーのな」
 薪の左目がピクリと瞬いた。亜麻色の髪が数本、ほんの僅か持ち上がって、前髪に隠された額に青筋が立ったのを青木に教える。この辺で止めないと取り返しがつかないことになりそう、でも無理、怖くて無理。

「第九は警察の中でも最悪だ。そんな腐った部署の室長なぞに収まって。おまえの新聞記事が出るたびに、私がどれほど腹立たしかったことか」
「第九は腐ってなどいません。第九のおかげでどれだけ犯罪全体に占める殺人の割合が減ったか、その新聞記事に記載されていませんでしたか」
「そんなものは信じられん。警察の情報操作でなんとでもなる」
「失敬な。情報操作だなんて、どこにそんな証拠が」
 彼らの会話は、終始そんな調子であった。氷の礫が吹き荒れるごとき二人の応酬の間で、青木は生きた心地がしなかった。とても20年ぶりに再会した親子の会話とは思えない。いくら血がつながっていないとはいえ、これじゃまるで仇同士だ。

「他人のアラばかり探すくせに、自分の都合の悪いことは信じない。あれから30年も経つのに、まったく変わりませんね。あなたの頑固さは尊敬に値します」
 はっ、と薪は鼻にかかった嫌味な笑い方をして、だから青木は冷や汗を流す。薪がこういう笑い方をしたら、それは爆弾投下の合図だ。
「お兄さんが自殺なさったことが原因で、何十年も警察を目の敵にされてるようですけど。迷惑な話だ。逆恨みもいいところです。もしかしたら弟である自分にも、責任の一端はあったかもしれないとは考えないんですか」
 すみません、言い過ぎました、と隣の青木が謝りたくなるくらい、薪の舌鋒は容赦ない。しかしそれは同時に薪をも切り刻む。投下する爆弾の威力が強ければ、その爆発に本人も巻き込まれてしまうのだ。
「おまえの意固地には負けるさ。人殺しになってまで警官で居続けるんだからな」
 初めて薪が黙った。細い膝の上で、白い拳が固くなる。
「鈴木くんは友人じゃなかったのか」
 薪は視線を自分の爪先に落とした。長い睫毛が微かに震える。

「……あなたに、それを言われる筋合いは」
「お、おい、なにをする!」
 叔父の慌てふためいた声に顔を上げ、薪はぽかんと口を開けた。
「すみません。お帰りください」
 猫の子を持ち上げるように、青木が史郎の後ろ首を掴んでいた。長身に物を言わせて史郎の身体をソファから引きはがし、ドアに向かってずんずんと歩いていく。実力行使に及んだ部下に、逆に薪の方が弱腰になった。
「待て、青木。手荒な真似は」
「オレは薪さんのボディガードです。対象を害すると判断した人間は排除します」
「害だと? 私は剛の」
「親なら親らしくしてください。子供が信じて歩く道を、どうして応援してあげられないんですか」
「間違った道を歩こうとしているからだ。間違いに気付かず、歩き続けているからだ」
 引き摺られながらも史郎は、攻撃的な態度を崩さなかった。なかなか度胸が据わっている。さすがは薪の叔父だと、青木は妙なところに感心した。

「君たちの関係にしてもそうだ。君にだって親がいるだろう」
「母は認めてくれてます。薪さんのことも、すごく気に入ってます。オレの実家は福岡ですけど、母は上京してくる度にオレがいなくてもここに顔を出していくし、二言目には薪さんを家に連れて来いって、うるさいくらいです。よっぽど薪さんの顔が見たいんですね」
「信じられんな。もしそれが本当ならイカれてる」
 どちらの味方をしたものか、スリッパのまま三和土に下ろされた叔父に困惑した眼差しを注いでいた薪が、その言葉に表情を険しくする。自分のことを言われた時より遙かに強く、薪は叔父に言い返した。
「青木に謝ってください。青木のお母さんは素晴らしい女性です」
「親ならばこの現状を放置するはずがない。親としての役目を放棄した無責任な女にしか思えん」
「オレの母親です。他人のあなたにダメ出しされる筋合いはありません」
 青木は毅然たる態度で、史郎の苦言を退けた。史郎が息を呑んだ隙に青木はドアを開け、手のひらを上に向けて廊下を指し示した。
「ではお疲れさまでした。おやすみなさい」




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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