ヘアサロン(1)

 こんにちは~。
 1週間のご無沙汰で、しかもまだお返ししてないコメントレスが2桁と言うヘタレな管理人で誠に申し訳ありませんっっ!! どうか広いお心で、もうしばらくお待ちくださいね。

 わたしが不義理をしている間に、新しいお客さまに来ていただきまして、過去作に拍手をたくさん、本当にたくさん、いただきました。 ありがとうございました。 おかげさまで、総拍手が18000を超えました。 うれしいです。(^^)←お礼のSSはどうした?
 最初から最後まで通して読んでいただいたみたいで、フルマラソン並にお疲れになったのではないかと、てか、それはもはや苦行だったのではないかと、
 うぎゃー、すみませんでした!! でも、ありがとうございました。 


 
 先週はずーっと現場で測量しててね~、ものっそい風が冷たかったの~。
 田舎の現場だから周りがオール畑で、風除けが無くてですね。 霜柱のせいでぬかるんだ土が道路端にはみ出してて、そこで滑って転ぶし。 ←バナナの皮を踏んづけて転ぶアニメキャラのように尻もちをついて、オットに爆笑された。
 8日の水曜日に開発公社の検査が入ってるから、(現在、その書類作りに追われています) 10日くらいには一段落着く予定です。 それ以降は通常運転ができると思います。 4月号発売の前に『ぱんでみっく・ぱにっく』も公開しておきたいし。 滝沢さんリターンズの話も、4月号を読む前じゃないと書けない気がする。
 がんばります。 
 

 それまでの場つなぎと言うわけではございませんが、その間、こちらでお暇を潰してください。

『言えない理由』が重かったのでね、毎度バカバカしいお話を一席~、というわけで。
 最近書いた雑文でございます。 (最近とか言いつつ、確認したら去年の11月でした。 年を取ると、月日の流れが速いねー) 


 うちの薪さんは街の美容室を利用しないばかりか「悪魔の巣窟」とまで酷評する、と言うかいっそ恐れている? というエピソードを『二アリーイコール』というSSの中でチラッと書いたのですけど。
 その理由を書いてみました。
 青木さんはその訳を知らなかったので出演させられなかったのですが、代わりに岡部さんにお付き合いいただきました。

 軽いお話なので、気楽に楽しんでくださいね。(^^






ヘアサロン(1)





 警察官の服装については、『勤務中規則及びこの規定の定めるところに従い端正な服装の保持に努めなければならない』と定められている。他にも、ワイシャツは白いものを着用するとか、棒タイは警察官の品位を保てるものとする、とか、事細かに規制されているのだが、そんな条文を暗記せずとも、警察官たるもの国民の安心と信頼を得るため、常にきちんとした身なりを心掛けるのは当然の姿勢だ。
 が、その日岡部が上司に向けた苦言は、警察官の良心が彼の服務違反を見逃せなかったなどという堅苦しい判断に基づくものではなく、単純に美観の問題だった。

「前髪を目玉クリップで留めるのはやめてください」
 窓から差す陽光にきらきら輝く亜麻色の髪。天使もかくやのその輝きを、銀色の無粋な文房具が挟み、頭頂部に毛先を捻じり上げている。最近は男でも前髪をヘアピンで留めたりするのが流行っているみたいだが、このひとのこれはオシャレではなく、ただ単に、無精の証である。
 叱責を受けた上司は悪びれる様子もなく、それどころか書類に目を落としたまま、しれっと言い返した。
「毛先が眼に刺さるから」
「切ったらいいでしょうが」
 それもそうだな、と今度は素直に受けて、彼は引き出しを引いてハサミを取り出した。目玉クリップを外し、前髪を一房左手で持って、そこに鋏の切っ先を向ける。
「ちょっ、なにするつもりですか!」
 薪の危なっかしい所作を慌てて止めて、岡部は彼の手から鋏を奪った。手から零れた前髪が、さらさらと彼の睫毛にぶつかる。右に流して耳に掛けるが、癖を持たない髪はすぐに耳から外れて、大きな瞳をその奥にしまい込んだ。

「切れって言ったの、おまえだろ」
「床屋へ行ってくださいよ」
「そんな暇があったら、この案件を」
 左手で髪を押さえながら右手で取り上げた書類は、ハサミ同様、部下にサッと奪われた。不機嫌な顔つきで見上げれば、そこには困ったような部下の顔。

「髪の毛にクリップを付けて、部長会議に出席なさるおつもりですか?」
「ダメなのか?」
 上層部が出席する会議でそんな非常識なことをするつもりはないが、部下の困った顔はもっと見たいから、ついつい意地の悪い返答になる。部下を困らせて楽しむのは、彼の悪いクセだ。
 だが、今回ばかりは部下の方が上手だった。

「ラブレターと一緒にピンク色の髪留めが送られてくると思います」
「…………1時間ほど留守を頼む」
 確認していた書類を未処理の書類箱に放り込み、薪は無表情に立ち上がった。



*****



「―――――― というわけなんです」
 職務中に理髪店を訪れた理由を説明し終えて、薪は不満そうに唇を尖らせた。
 問わず語りに経緯を語ったが、職務時間中に散髪を済ませる職員は別に珍しくもない。刑事にとって定められた就業時間など有って無いようなもの。薪も捜一に籍を置いていた頃はそうしていたが、研究室に移ってからは一応の休憩時間が取れるようになったので、昼の時間を利用していたのだ。

「何処の部下も、あんなに小言が多いのかな」
 やれやれと肩を竦める薪に、店主は笑いながらカットクロスを着せる。「見かけによらず細かいんですねえ、岡部さんは」と失礼な相槌を打って、しかしそれも止むを得まい。岡部の外見から、心配性とお節介が共存する彼の性格を推察しろと言う方が無理だ。
「でも、それくらいじゃないと第九の副室長は務まらないんでしょうね。目配り気配りが必要とされる役職でしょうから」
「そうですね」
 軽い気持ちで答えを返し、正面に眼を向けると、そこには水色のカットクロスの効果で晴天を祈願するマスコットのようになった自分が映っている。襟元のネクタイが見えないせいか、何とも間抜けな姿だ。

「ところで、今日はどうなさいます?」
「いつものでお願いします」
「かしこまりました」
 いつもの髪型で、と言えばそれで通じる。行きつけならではの気安さだ。警視庁にいた頃から利用しているから、もう15年にもなる。科警研の管理棟にも理髪店は入っているのだが、薪はこちらの店を気に入っているのだ。

 一般的に、ヘアサロンの選定条件は理容師のカット技術だと思うが、薪は違う。
 ヘアサロンと言っても、ここは警視庁の地下にある職員専用の店舗だ。公共の施設に入っているくらいだから、とびきり腕が良いわけでもカリスマ美容師がいるわけでもない。大して客が入るわけでもないから店員は店主を含めて2人しかいないし、技量も極々平均的。特に流行の探求については、街中の美容室の足元にも及ばない。
 そんな店にどうして通っているのかと言えば、まずはいつも店が空いていて、待ち時間が殆ど無いこと。警察官らしい落ち着いた髪型に仕上げてくれること、などが挙げられる。特に二番目の要因は大事だ。薪の場合、下手に街の美容室に入ると、勝手にシャギーやらセニングやらをされて、気がついたら何処ぞの高校生みたいになっていたりするから油断がならないのだ。

 警官らしい髪型を求めるだけなら科警研の理髪店を利用しても良さそうなものだが、わざわざ薪が警視庁まで足を運ぶのは、三番目の理由からだ。つまり、
「相変わらず、室長は勇ましいお顔をなさってますね。特にこの眉」
 薪の前髪を後ろに撫で付けながら店主が言うのに、
「そうですか?」
 ついつい綻ぶ口元を意識して引き締めて、薪は何気ない素振りで返事をする。薪も、自分の顔の中で眉毛だけはけっこう男らしいと自負しているのだが、それを教えてくれたのは何を隠そう彼なのだ。言われてみて初めて、そうかと思った。裏を返せば、言われなければ分からないくらいの微妙な男らしさだったわけだが、こういうことは裏返したりしないのが薪の薪たる所以だ。

「男の度量は眉に顕れるって言うの、本当なんですねえ」
 そんな格言は聞いた事がないが、彼が言うのだ、きっと何処かにあるのだろう。もしかしたら理容師の間では有名な話なのかもしれない。

「せっかくだから、もっと眉毛が出るヘアスタイルにしようかな。オールバックとか」
「いやいやいや! 前髪に隠れてた方が絶対にかわい……ここまで男らしい眉だと、全部出すのは嫌味ですよ。前髪からちらりと覗く程度がいいんです。ほら、筋肉隆々の男がタンクトップ姿で街を歩いてるのって、自分の筋肉を自慢してるみたいで、見せられるほうはイヤでしょう? あれと同じです」
「それもそうですね。警察官にとって、謙虚さは大事ですからね」
「まあ、室長は美人だからクールビューティも似合うと思いますけど。ぼくはどっちかって言うと可愛い感じの方が好みなんで」
「は?」
 薪が訊き返すと、店主はいいえと首を振った。この店主はこうして時々、聞き取り難い声でブツブツ言う癖があるのだが、スタイリングについて考えていると独り言を言ってしまうそうで、それはきっと、自分が推理を組み立てるときに断片的な言葉を口にしてしまうのと同じことなのだろうと薪は理解している。

「それにしても、カットクロス巻くと女の子にしか見えませんね。ああ、抱きしめて頬ずりしたくなっちゃう」
「え? 女の子?」
 店の中には店主と自分だけだ。もう一人の店員も、今日は休みらしい。
「……先日、バイトの女の子を雇ったんです」
「へえ、頬ずりしたくなるほど可愛い娘なんですか。彼女はどこに?」
「カズミちゃんは10時からの約束なんで。あと10分もすれば出勤してきますよ」
 カズミちゃんと言うのか。自称面食いの店主が褒めるくらいだから、相当可愛い娘なのだろう。会うのが楽しみだ。

「ああ、なんてサラサラでやわらかい髪……」
 雑談の間、店主は薪の髪を何度も指で梳いている。これは悪戯に髪を弄っているのではなく、毛髪のタイプと流れを確認しているのだそうだ。
「しかも、いい匂い」
 頭に顔を近づけて匂いを嗅ぐ、これは整髪剤の種類を決めるために必要な作業なんだそうだ。整髪剤には香料が入っているから、それが客の体臭とマッチしないと、周囲の人間が吐き気を催すような匂いになってしまうと、これも店主に教わった。

 それから店主の指は、薪の頬に添えられる。シミひとつない白い頬を指先が滑っていく、これはもちろん。
「ついでに、ヒゲ剃りもなさいます?」
「はい。お願いします」
 倒れてゆくリクライニングシートに身体を預けて、薪は満足そうに眼を閉じる。
 さすがこの道30年のベテランだ。僕の顔に生えているのは産毛じゃなくてヒゲなんだと、ちゃんと分かっている。細すぎて電気シェーバーは使えないけど、1週間くらい剃らなくても肉眼で確認できるほどに伸びないけど、これはヒゲだ。この見極めができる理容師はなかなかいない。彼が本物である証拠だ。
 かように、薪は心から店主を信頼していたが、彼がその時泡立てていたのは男性用のシェービングフォームではなく、女性の顔を剃るときに使う保湿性の高いクリーム状のフォームだった。

 スパスパに研いだ剃刀の刃が、白い肌の上の金色に透ける産毛を刈り取っていく。仕上げの蒸しタオルを済ませると、彼の頬は一層の白さを纏う。まるで、奥ゆかしく輝く真珠のようだ。
「白さといい、肌理細かさといい、本当に男らしい肌ですね」
「いやあ、それほどでも……あるけど」
『白く肌理細やかな肌』と『男らしい肌』がどうしてイコールで結ばれるのか、店主の言葉は矛盾しまくっているが、薪の頭脳はそれを解析しない。『男らしい』という枕詞が、薪から日本語を解する能力を奪っている。

「室長はホント、男も惚れる男の中の男、ですよね。ラブレターを送りたくなる男子職員の気持ち、分かるなあ」
 この店主は岡部の次に自分の真実を理解している、と薪は思う。『男の中の男』とは、実に的確な表現ではないか。しかし、
「いや、男からのラブレターはちょっと」
「そりゃあ仕方ないでしょう。真の男ってのはね、男にも女にもモテるんですよ。ロバートデニーロとか矢沢栄吉とか、どちらかというと男性ファンの方が多いでしょう」
「真の男か……なるほどなるほど」
 男の中の男に寄せられた手紙の内容が、どうして女装に対する賛美と恋人になって欲しいという要望に限られるのか、その疑問を店主にぶつけることはせず、薪は大いに納得して深く頷いた。

 第三者が聞いていたら脱力感で膝も砕けようという彼らの会話を遮るように、店の電話がリリリンと鳴る。
 店主が受話器を取り、ちょっと困った顔をした。「今、お客様が一人いらして、そのあとお伺いしますので」と丁寧な口調で説明しているが、相手がなかなか納得しないようだ。
「出張サービスの依頼ですか? 誰から?」
「それが総務部長でして。会議前に、顔を当たって欲しいと」
 なるほど、我が儘を言ってくるわけだ。警視庁に出入りしている店舗を総括しているのは庶務課、総務部はその統括部署だ。ぶっちゃけた話、この店の存続は総務部長の胸先三寸と言っても過言ではない。

「顔を当たるだけなら、30分くらいで済むでしょう。僕はその後でいいですよ」
 今日の会議は12時から、昼食会を兼ねて行われる。今は10時前だから、その後散髪に入っても充分間に合う。
「いや、そうはいきませんよ」
「気にすることはありません。僕だって、マスターがこの店からいなくなったら困りますから」
「……すみません、絶対に30分で帰ってきますから」
 焦って部長の顔に傷をつけたりしないように、と快く店主を送り出して、薪は眼を閉じた。
 慢性的な睡眠不足に悩まされている薪のこと、柔らかいシートに仰向けになれば当たり前のように眠くなってくる。薪はその眠気を従順に受け入れ、2分もしないうちに眠りに就いた。薪はいつもこの調子で、散髪の最中に寝てしまうのだ。あの店主なら、薪が眠っていても完璧に仕上げてくれる。

 店の外では、店主が総務部に向かって急ぎ足で歩いていた。エレベーターに乗ろうとして、箱から降りてきた一人の女性に眼を留める。バイト店員のカズミちゃんだ。
「カズミちゃん! よかった、ここで会えて。あのね、ぼく、今から部長の部屋へデリバリーに行かなきゃいけないんだけど、店にお客さんを一人待たせてるんだ。頼めるかな?」
 彼女はバイトだが、腕は確かだ。以前の仕事場は、銀座の美容室。そこに10年近くも勤めていたのだが、この不況で店が潰れてしまい、バイトに応募してきたのだ。

「お客さまのご希望はAコースだ」
 警視庁内の理髪店では、指定される髪型はほぼ決まっている。短髪、オールバック、スポーツ刈りのどれかだ。それにシャンプーと髭剃りをセットして、お得なコース料金を設定している。Aは短髪のコースだ。
「Aコースですね。わかりました」
「お客さん、多分眠っちゃってると思うけど、可哀想だから起こさないであげて。あの人はいつもそうだから、Aコースの基本形でカットして構わないから」
 任せてください、とにこやかに請け負って、カズミは自分の職場へと歩を進めた。

 笑顔で引き受けたものの、彼女の心の中はなかなかに複雑だった。と言うのも、型に嵌ったような面白味のないカットばかりが要求される仕事内容に、彼女のビューティーコーディネイターとしての鬱憤が溜まっていたからだ。
 彼女が美容師を目指したのは、女性を美しくしたかったからだ。自分の手によって変貌する女性たち。彼女たちの変身をこの目で見るのは何よりの楽しみだったし、彼女たちから寄せられる感謝の言葉はカズミの生きがいであった。
 それが、この仕事場では発揮のしようもなく。何故なら来る客は男性のみ、しかも年配の男ばかりだ。それも当たり前、若い世代の職員、オシャレに興味のある人間なら街の美容室を利用するだろう。女子職員なんか、店舗の前を通る事すらない。

 女性を美しくしたくて美容師になったのに、ここにはカズミが夢中になれる素材がない。お金のためとはいえ、自分の才能を腐らせてしまうような日々の繰り返しに、蓄積していく憂鬱を抱えていたカズミだったが。
 その憂いは、店に入ってスタイリングチェアに横たわった客を見た瞬間に吹き飛んだ。
「まあ」
 思わず、カズミは小さな驚嘆の声を洩らした。

 なんてきれいな人。こんな人は、銀座の店でも見たことがない。
 サラサラした亜麻色の髪。長い睫毛に慎ましやかな鼻梁。白く輝く肌。つやつやした薔薇色の唇。

 警察官にもこんなに見目麗しい人がいるのだわ、とカズミは感心し、どうしてこんな美人がうちの店を、と疑問に思った。聞きたかったが、客は店主の言った通り、よく眠っている。起こさないであげて、と注意を受けたのを思い出し、カズミは音を立てないように散髪の準備をし、チェアの後方に立った。

「さてと。女性用のAコースは、ガーリー系のショートボブね。久しぶりに腕が鳴るわ」





テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

ヘアサロン(2)

ヘアサロン(2)





 怒りを含んだ男の声で、薪は眼を覚ました。
 女の声と何やら言い争っている、いや、一方的に男が怒っているだけのようだ。「どうしてこんなことに」とか「確認しない君が悪い」とか、相手の非を責める言葉が聞こえてきて、薪は目蓋を開いた。
 声がする方向を見やると、いつも穏やかな店主が女の子を叱りつけていた。どうやら、自分が眠っている間に何かトラブルがあったようだ。

「そりゃ、総務部長に捕まって帰ってこれなかったぼくも悪かったけど、ていうか、君がカンチガイするのも無理はないけど、靴を見れば分かったはずだよ」
 トラブルの内容については不明だが、どの仕事にも苦労は付き物だな、と彼らに少しだけ同情して、軽く頭を振る。低血圧の薪は、眼が覚めてもすぐには起き上がらないようにしている。急に起きると貧血を起こす恐れがあるからだ。
 リクライニングチェアに仰向けになったまま、腕時計を確認する。カットクロスが外されていないことから、さして時間は経っていないと思われたが、文字盤を確認したらとんでもなかった。

「…………嘘だろ!」
 なんと、二時間も眠ってしまった。会議の時間まで、あと10分しかない。

 慌てて飛び起きて、カットクロスを椅子の上に脱ぎ捨てる。低血圧なんかに構っている余裕はない。
「あ、室長! 誠に申し訳ありません、こちらのミスで、オーダーを間違えてしまいまして」
 薪が起き上がるや否や、店主が気付いて謝罪をしてきた。彼がバイトの娘を叱りつけていた理由は解ったが、そんなことはどうでもいい。ここから警察庁の12階の会議室まで、全力で走って間に合うか。
「すぐにやり直しさせていただきますので」
「悪いけど時間がないんだ。とりあえず、前髪が眼に刺さらなきゃ何でもいいよ」
 料金をカウンターの上に置いて、猛ダッシュで店を出た。本当に、髪型なんかどうでもいいのだ。触ってみた限りでは、オールバックに固められた様子もないし、五分刈にされたようでもない。分け目を間違えたとか、前髪を短く切りすぎてしまったとか、そんなところだろう。

 廊下を走ってエレベーターに到着し、下のボタンを連続で押した。何回押しても箱が下りてくる速度は変わらないと分かっていても、急いでいる時はついついやってしまう行動だ。
 幸い、エレベーターは1分もしないうちに来た。中には2人の男が乗っていて、彼らは薪とは一面識もなかったが、何故か薪を見てびっくりしたような顔をされた。
 時間に追われて血走った形相をしていたのかな、とその時は思ったが、各階止まりのエレベーターの扉が開くたび、入って来る職員たちがみな、薪の顔を見て一様に眼を見開くのだ。何だかおかしい、とは思ったが、腕時計のアラームが薪にその違和感を放棄させた。会議開始時刻、5分前だ。
 警視庁から警察庁へは、一旦建物の外に出なくてはならない。短距離走には自信があるが、それでもギリギリだ。若輩者の自分が会議に駆け込みなんて、後で部長たちに何を言われるか。

 1階に着いて外に飛び出し、警察庁まで必死に走る。警察庁のエレベーターに乗ったのが、定刻の3分前。12階の会議室に入ったのは、定刻の1分前だった。
 ドアを開けると、既に薪以外の全員が顔を揃えていて、一斉にこちらを見た。若造のくせに定刻1分前の到着とは非常識な、そう言わんばかりの非難がましい視線が突き刺さる。
 部長会議の出席者は全員が薪よりも10近く年上の重役ばかり。若輩の薪が事前準備に駆り出されるのは当たり前だ。もちろん、手伝いではなく第九の代表者として出席しているのだが、そんなものに拘って第九の立場を悪くしたくない。薪は重役たちの前で、捜査以外で自分の主張を通そうとしたことはなかった。出世にも保身にも興味はないし、プライドもない。大切なのは、親友が遺した第九を守ることだ。

「すみません、遅くなりました」
 素直に頭を下げて、末席の自分の席に着こうとする薪を、途中で科警研所長の田城が呼び止めた。
「薪くん、その頭」
「はい?」
 慌てて理髪店を出てきたから、もしかしたらヘアクリップでも付きっぱなしになっていたか、と恥ずかしく思いながら、両手で髪を確認してみる。が、手に触るものは何もなく、いつもと変わらぬサラサラした感触があるだけだった。
「なにか、ヘンですか?」
「いや、よく似合ってるけど……完全に高校生にしか見えないねえ」
「はあ?」
 
 不思議に思いながらも、時間がそれ以上の質疑を許さず、薪は自分の席に腰を下ろした。レジュメと黒い折箱に入った弁当が置いてある。強制されているわけではないが、こういった用意の手伝いは一番若くて階級が低い自分の仕事だ。だから必ず定時の30分前には会議室へ入るようにしていた。開始時刻ちょうどに現れた薪が謝罪をしたのは、そういう理由からだ。
 会議の席次は、出席者全員の顔が見えるディスカッション式になっている。最後に到着した自分を、みんながジロジロ見ている。そんなに責めなくても良さそうなものだが、眠ってしまった自分が悪いのだ。居心地の悪さは仕方のないことだと諦めた。
 
 やがて会議が始まると、出席者の注視は進行担当の刑事部長と弁当に振り分けられたが、薪に注がれる視線は止むことが無かった。末広亭の松花堂弁当は薪の好物だが、絶えず重役たちに睨まれては、さすがの薪も味覚が鈍ろうというもの。何とか残さず食べたものの、味はよく分からなかった。
 会議の間中、いくつかの不穏当な視線は薪に向けられたままだったが、昼食会を兼ねた会議自体は滞りなく進行し、定時の14時にはお開きになった。
 
 議長が席を離れたのを確認して、薪は重役たちに一礼し、廊下に出た。入室は時間に余裕を持ってするが、退室は速やかに為すのが正しい処世術だ。何故なら、刑事部長を筆頭とする警察機構の実力者たちが、会議録に残してはいけないことを語るべく、その場に残るのが常だからだ。薪のような一介の室長ごときが係われる密事ではない。
 ドア口を出るまで、薪の背中には彼らの視線が突き刺さっていた。一番身分の低い自分が定刻ギリギリに滑り込んだのは失礼だったかもしれないが、会議の時間に遅れて皆に迷惑を掛けたわけでもないのに、あそこまで不快に思われるなんて。それはつまり、第九を快しとしない彼らの気持ちの顕れなのだろう。
 これからは気をつけなきゃ、といささか気落ちして科警研に帰って行く薪の後方、会議室の中で交わされた会話のありえなさ。

 口火を切ったのは刑事部長だった。

「いやー、驚きましたな! 今日の警視正、むちゃくちゃ可愛かったじゃないですか」
「前々から美人でしたけど、髪型一つでああも変わるとはね。見惚れてしまって、眼が離せませんでしたよ」
「いやまったく。何と言う髪形なのか、街ではよく見かけますが、彼がすると特別なもののように見えますな。奇跡的な美しさだ」

「わたしなんか、ほら。携帯のカメラで」
「総務部長! 隠し撮りは会員規則違反ですよ!」
「固いこと言わないで、この場に残った会員には全員に送信しますから」
「そういうことなら……あああ、なんて愛らしさだ」
「ちょ、画面にキスはないでしょう!」
「うるさい、あんたらだって陰じゃこんなこともあんなこともしてるでしょう!」
「してませんよ! 警視正は私にとっては女神です、劣情の絡む余地はありません」

「何を白々しいことを。刑事部長がシャワーシーンの写真を闇で購入したことは、我々公安部の調べで分かっていますよ」
「自分の部下に何を調べさせてんですか、公安部長! こっちだって知ってますよ、あなたが諜報部の連中を使って密かに彼に想いを寄せる男たちを潰していることくらい」
「いや、それは我々会員の公共の利に寄与することだ。警視正の純潔を守っているんだからな。責めを負うべきは、シャワーの写真を独り占めしたあなたの方ですよ、刑事部長。あれは会全体で保有すべき宝物だ」
「そういう警務部長だって、警視正がプールに置き忘れたタオルをオークションで競り落としてたじゃないですか。彼の肌についた水滴を含んだ、あの聖布を!」

「いやいや、あれは会の運営費を賄うためのオークションだったんですから、警務部長は間違ったことはしていませんよ。むしろ問題はあなたの方だ、総務部長。カフェテリアに手下を紛れ込ませて、警視正が使った割り箸を手に入れたと言う噂が」
「何ですか、自分のことを棚に上げて。地域部長こそ、彼の隣の席をいいことに、先月の会議のとき彼がコーヒー飲んだ紙コップ、捨てといてあげるとか上手いこと言って持って帰ってたじゃないですか」
「そこを責めますか。なんて恩知らずな。誰のおかげで今日、警視正の食事風景を見ることができたと思ってるんです。昼食会を兼ねた会議を提案したのは私ですよ?」

「そうですよ、地域部長には感謝すべきですよ。彼と一緒に食事をしたい、という我々の望みを叶える方法を思いついた英雄なんですから」
「ええ、夢のような二時間でした。彼と一緒に、彼と同じものを食べて。他の会員たちが悔しがるでしょうな」
「いや、可哀想なのは我々の方です。一般職の会員たちはカフェテリアで彼の食事風景を見ることもできるでしょうが、我々の階級になると職員食堂の利用は憚られますから、こんな策でも取らない限り彼と一緒に食事なんてできませんからね。不自由なものです」

「それだけに、貴重な体験をさせていただきました。彼の優雅で上品な箸使い、小鳥のような唇の動き……眼に焼き付いておりますよ」
「ええ、とても可愛らしくて。彼、里芋を挟もうとしてね、箸の先がつるっと滑ったんですよ。そうしたら、あ、って小さく声を洩らして。まあ、隣の席にいた私にしか聞こえなかったと思いますけど」
「わたしも見ましたよ、向かいの席ですから。ちょっと焦った顔をして、実に可愛かった」

「少し狡いんじゃないですか、お二人とも。そんなプラチナショットを独り占めしていいと思ってるんですか? 警視正はみんなのもの、携帯のカメラに収めて全員に配信すべきでしょう」
「総務部長のおっしゃる通りですよ。この際、はっきり言わせて貰いますけど地域部長と生活安全部長。あなた方が毎回警視正の隣と真正面の席に座れるってのも不公平だと思うんですよ。あの席は、いわば特別席。もっと平等にすべきです」
「「いや、それは階級順ですから」」
「しかし、この会議は忌憚無く意見を交わす場のはず。階級に拘るのはおかしいでしょう。その姿勢を表明するためにも、これから警視正の隣の席と向かいの席は、くじ引きで決めることにしませんか」

「「「「「「賛成!!」」」」」」
「「反対!!」」
「6対2でくじ引き案は可決されました」

 翌月に開かれた部長会議で、薪の隣に刑事部長が座ったのにはこんな理由があったのだが、その時、いつもと違う席順に不思議そうに小首を傾げる警視正の様子が、彼らを喜ばせたのは言うまでもない。





*****


 こんな警察機構だったら、本部内手配されても安心なのに。(笑)






テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

ヘアサロン(3)

ヘアサロン(3)





 結局、薪が自分の変化に気付いたのは第九へ帰ってからだった。
「どうしたんですか、その頭」
 帰るなり岡部に言われて、そういえば田城にも訊かれた、と思い出し、トイレに直行して鏡を覗き込んだ。

「えっ、なんで?!」
 普段はストレートに流れる亜麻色の髪が、ふんわりと空気を含んでやわらかく膨らんでいる。カールした前髪は眉を隠し、内側に巻かれた両側の毛先は幼い頬を強調して、限りなく中性的、というより9割方女の子だ。
「ちなみに、後ろはこんな感じです」
 背中に立った岡部が手鏡の角度を合わせ、薪の後頭部を壁の鏡に映しだす。バックはフェミニンな感じの二段カットになっていて、一段目が内巻き、裾は躍動感を出すためにコテで跳ねさせてあった。もう絶対に女の子にしか見えない。

「仕上がりを確認しなかったんですか?」
「それが、眠って起きたら会議の10分前になってて。確認する暇が無かったんだ」
 眼が覚めた時に見たのは、理髪店の天井と腕時計。時計の針を見たら、焦燥で周りの物が見えなくなった。これでは店主がバイトの娘を叱るのも無理はない。頼んだ髪型とまるで違うのだから、やり直しを申し出るわけだ。
「そうか、それで部長たちにガン見されたのか。チャラついた髪型しやがって、とか思われてたんだ、きっと。それじゃなくてもこないだ代議士の息子捕まえたせいで、白い眼で見られてるのに」
 頭を抱える薪に、岡部は三白眼を鈍く光らせて、
「いや、多分、部長たちが薪さんを見ていたのは別の意味だと」
「? どういう意味だ?」
「…………知らない方が幸せだと思います」

 疑問を提示しておいて解答を示さないのは結構最低の行為だが、今の最優先課題は部下に人の道を説くことではない。この頭を何とかしなくては。
 再度理髪店に行こうかとも考えたが、今日はもう時間がない。それでなくとも会議で仕事が押されているのだ。下手をすると、午前中岡部に取り上げられた報告書が期限に間に合わない。
 自分で何とかしようと、薪は必死に髪を撫でつけてボリュームダウンを図った。が、銀座の美容師が腕を振るったガーリーヘアは見事なセット力で、毛先の跳ね一つ直すことができない。

「そのままでもいいんじゃないですか? 似合ってますよ」
「これ以上、部長たちに睨まれたくない。捜査に関しては絶対に譲らないけど、それ以外のことでケンカ吹っかける気はないんだ。明日、マスターにやり直してもらって……あ、土曜日か」
 土日祭日は、庁舎内の店舗は休みだ。すると月曜日までこの髪形と言うことに、いや、月曜の朝は警察庁の定例会議がある。またそこで顰蹙を買うのはごめんだ。

「どうしよう。困ったな」
「街に出れば床屋なんかいくらでもありますよ」
「いやなんだ。街の床屋って、こっちが言うとおりに髪を切ってくれないだろ?」
「確かに、行き慣れない店だとイメージの相違ってのはありますね。そういう場合は写真を持っていくといいですよ」
「やってみたけど無駄だった」
 薪がそう言うと、岡部は鏡の中で不思議そうな顔をした。仕方なく薪は、自分がいくつかの美容室から受けた不愉快な対応について話してやった。

「左分けの短髪にしてください、って頼むと、今はこういう髪型が流行りだとか、前髪は下ろした方が似合うとか、段を入れた方がいいとか、それも周りをぐるっと囲まれて一斉に喚かれるんだ。うるさくて」
 鏡に映った部下の顔が、憐れみを含んだ困惑顔になる。やはり岡部は自分にとって最高の理解者だと、浮かれる気持ちが薪を饒舌にする。
「こんなに綺麗な髪を伸ばさないのは罪悪だとか言われて、毛先しか切ってもらえなかった店もあった。それから一番困ったのは、僕に似合う髪形はどっちかで、美容師同士がモード系とガーリー系とに分かれてケンカになっちゃって。どちらか選んでくださいって迫られても、意味わかんないし。
 とにかく、誰一人として僕の要望を聞いてくれないんだ。だから街の床屋へは行きたくない」

「薪さんて、本当に不憫ですよね……せっかくの容姿が、ただの一つも有益に働いてないんですね……」
「ん?」
 なにか言ったか、と振り返ると、岡部は苦笑して、
「よかったら、俺の馴染みの店を紹介しましょうか」と提案した。

「俺の名前を出して、同じ髪型で、と言えば短髪にしてくれるでしょう。どちらにせよ、毛先にコテ当てられちゃってるから、真っ直ぐにしようとするとかなり短く切ることになるでしょうし」
「本当か? それは助かる」
 警察官らしく、きちんとした髪型なら何でもいいのだ。以前、火事に遭って焦げた髪を短く切ったことがあったが、今日みたいな目で見られた記憶はない。短いのは許されると言うことだ。

「よし。そうと決まれば明日に仕事を持ち越さないよう、さっきの案件をさっさと片付けちまおう」
 モニタールームに戻ると、何となく部下たちがざわめいている感じはあったが、直接それを口に出すものは一人もいなかった。第九の人間はみな、薪の逆鱗を理解している。自分が働いている研究室を氷河期にしたい職員はいないし、金曜日の午後に室長の機嫌を損ねて強制残業の憂き目に遭いたい酔狂者もいない。
 
 室長室に入ると、岡部は簡単な地図を描いてくれた。
「住所は此処、店の名前はこちらです」
 見ると、岡部のマンションからそう遠くない場所で、隣のコンビニへは行ったこともある。迷うことはなさそうだった。
「もしもし、岡部ですけど。いつもどうも。明日、予約をお願いしたいんですが、先生は? 出かけてらっしゃる? じゃあ伝えていただきたいんですけど、明日の予約は俺の友人で、俺と同じ髪型にして欲しいんです。そうです、職業に合った髪型に」
 仕事の早い岡部は、その場で電話もしてくれた。これで今日のような失敗は無い。明日は眠っていても安心だ。

「これでよし、と。いや、今日は青木が研修でよかったですね。でなきゃ今ごろ、大騒ぎになってましたよ」
「え? 青木に何かあったのか?」
「あ、いや。何でもないです」
 岡部の言う青木の大騒ぎには全く心当たりがなかったが、気がかりだった床屋の件が消えたおかげで、薪は仕事に集中することができた。今日が期限の報告書も検証を終え、その後は何事も無く業務を終了し。失敗した髪型を気にしながらも、薪は帰途に着いたのだった。




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ジャンル : 小説・文学

ヘアサロン(4)

 この章をアップしようとして気付いたんですけど。 
 このお話、男爵シリーズの『天国と地獄3』を読んでないと意味が分からないかも。 ←今ごろ!!!
 雑文は設定とかいい加減で~(だって雑文だし)、薪さんの階級も警視正のままだったり、男爵系統の設定も混ざってたりして、分かり難くてゴメンナサイです。


 
 ちょっと私信です。
 Rさま。

 そう、そうなんですよっ!! あの歌、正に本誌の薪さん状態じゃないですか!!!
 ちょっとだけ引用 ↓↓↓

「例えば今此処で君が消えてさ 例えば何もかも終わり行く運命でも 変わらないよ二人で見た景色もこの気持ちも 支えあう強さを感じてonly you 」
 さらに2番、 
「例えば今此処で僕が消えてさ 例えば世界は知らぬ顔で回ろうとも 願うのは君の心で輝き続けること 通い合う喜び感じて to be with you 」 

 歌詞だけ読むと鈴薪っぽい気もしますが、ここは敢えてあおまきで! この曲の明るさ、前向きさは、どうしようもなくあおまきだと思うの。
 なのでね、現在、この曲のイメージで滝沢さんのお話を書いてるんですよ~♪ 
 ……「なんでこの歌で滝沢!?」とRさまが絶叫なさるのが目に見えるようデス。(笑)






ヘアサロン(4)






 翌、土曜日の午後1時5分前。
 部下が描いてくれた地図と自己の記憶を頼りに、薪は目的の店を見つけ出した。それほど大きな店舗ではなかったが、落ち着いた外装の店だった。
 入り口のドアには『ヘアサロンNANA』と書かれていた。岡部の行きつけの散髪屋が理髪店でなかったことは少し意外だったが、薪の苦手な、客の姿が外から丸見えの壁面ガラスの店舗でなくてよかった。通行人の見世物になったような気がして、あれはどうも落ち着かないのだ。

 ドアを開けると、カランとカウベルが鳴って、いらっしゃいませ、と複数の店員の声が掛かった。店には2人の先客がおり、それも仕上げに近付いているようだった。
 受付のカウンターで薪が、岡部の紹介で来たことを告げると、店員は、少々お待ちください、と待合スペースのソファを手で示した。促されて腰を下ろすと、それを見計らったようにコーヒーが運ばれてきた。なかなか接客の行き届いた店だ。

「店長。1時にご予約の方で、岡部さまのご紹介だそうです」
「ああはい、伝言メモにあった人ね。岡部さんと同じ髪型にしてくれって」
「岡部さまと同じ、ですか?」
 店長らしき男と話をしていた受付の女性美容師は、ちらりと薪を振り返った。コーヒーを飲んでいる薪を見て、ほんの少しの思案した後、テキパキと言った。

「じゃあ、エクステの用意しますね。お色はA12くらいで?」
「うん。頼むよ」
 店員同士の話は専門外の薪には意味不明だったが、客の髪にスプレーを掛けながら、もう少しお待ちくださいね、と薪に笑いかけた彼らの笑顔は気さくで、薪はこの店に好感を持った。店内も落ち着いた雰囲気でくつろげるし、さすが岡部のお勧めの店だ。
 
 コーヒーカップが空になると、シャンプー台へ案内された。天井を見上げる形式のシャンプー台は馴染みが薄いが、慣れてしまえばこちらの方が楽かもしれない。
「綺麗なお色ですね。染めたばかりですか?」
「…………あ、地毛です」
 気が付いたら眠りかけていて、質問に答えるのが遅れた。年のせいか、横になるとすぐに眠くなって困る。
「まあ、羨ましい。生まれつきなんですか?」
 店員の次の言葉には答えられなかった。女性のやさしい指先による頭皮のマッサージは気持ちがいい。シャンプー台に横になって2分も経たないうちに、薪はすっかり夢の中だった。

「あら、眠ってしまったわ。……それにしても、きれいな人ですねえ。岡部さんの奥さんも美人だけど、またタイプの違う美人だわ」
「違う違う、雛子さんは奥さんじゃなくて、お母さん」
「えっ? 息子さんとは似ても似つきませんけど」
「雛子さんは後妻さんだから」
 洗い上がった髪を乾かしながら、そうなんですかあ、と彼らがお客のプライバシーについて話をしているのは、店内には眠った客と3人の店員しかいないからだ。2人いた先客は仕上がりに満足してお帰りいただいたし、残る一人の客は眠っている。お得意様との未来の会話の中で、トラブルの原因になるかもしれない誤解は解いておいた方が賢明だ。

 今日の予約客は、このお客で最後だ。初めてのお客だから、これからリピーターになっていただくためにも満足してもらえるように自ら腕を振るおうと店長は考えていた。
 今日、こんなに客が少ないのには理由がある。
 実はこれから、業界一のファッション誌、『Hモード』の取材が入っているのだ。あの雑誌に載れば店の宣伝になる。そのための、専用のモデルも雇った。取材の対象はあくまで店の技術だが、モデルの見た目に左右されるのも事実だ。撮影が始まれば自分はモデルに掛かりきりになるから、他のお客には眼が届かなくなる可能性が高い。そんな失礼をするくらいなら、と予約を調整させてもらったのだ。

「乾かしたら、カット台に移っていただいて」
「はい。お客さま、お疲れの処すみません」
 店長の命に従おうと店員は、客に声を掛けてから徐々に背もたれを起こし、すると彼女はゆっくりと眼を開けた。風に吹かれる花弁のように、ふわりと揺らいだ長い長い睫毛。
 店員の言うとおり、なんて綺麗なひとだろう。
 計算づくで作られた人形のように、完璧に整った目鼻立ち。透き通るような白い肌。美容師として注目せずにはいられない、あの亜麻色の髪の輝きはどうだろう。洗い上げただけなんて、信じられない。職業柄、美髪モデルには知り合いも多いが、彼女たちよりずっと意欲をそそる素材だ。

 寝不足なのか、彼女は軽く目をこすりながら鏡の前のスタイリングチェアに移動した。髪質を手で確かめながら、ヘアスタイルの確認をする。
「岡部さんと同じ髪型でいいんでしたよね?」
「はい。お願いします」
「かしこまりました」
『岡部さんと同じ髪型』は真ん中分けのウェーブヘアだ。髪の長さはエクステで調整するとして、分け目は髪の流れに合わせた方がいい。彼女の額はとても美しいが、意外と強気な眉をしているので、このまま左分けにして前髪は下ろしたほうが愛らしさが強調できる。

「前髪はこれくらい長さがあった方が、お客さまにはお似合いだと思いますが。岡部さんのように、額は出したほうがいいですか?」
「あ、いえ。そこまでそっくりにしたいわけじゃないんで。適当でいいですよ」
「では、前髪は残しますね」
 はい、と彼女が頷いたのを確認し、店長は彼女の後ろ髪に手をかけた。
 それから幾つか細かいことを訊いたが、彼女はあまり髪型に拘る女性ではないらしく、「適当でいいです、お任せします」という答えしか返ってこなかった。美人と言うのは案外こんなものだ。これだけ元が良ければ、細部に拘らなくても美しく見えるからだ。

 確認を済ませ、店長は彼女の地毛にエクステンションを添えた。エクステンションの先にはケラチンが付いていて、ヒーターに挟むと超音波でケラチンが溶け、地毛に接着する仕組みになっている。少々値は張るが、髪のダメージを考慮すると超音波以外のエクステンションはお客に勧めたくない。こんな美髪なら尚更だ。
「お客さまの髪の色ですと、こちらのものが最適かと。長さと形は調整できますので」
「ええ、適当で……ちょっと待った!!」
 それまで大人しかったお客が、突然振り返ったので、店長はヒーターを取り落しそうになった。超音波式だから火傷はしないが、それでも急に動いたら危ない。動かないように忠告しようと店長は口を開いたが、彼女の声の方が早かった。

「なんでそんなもの付けるんですか!?」
「……岡部さまと同じ髪型をご所望では?」
「そうですけど。そんなものを付けないと、あの髪型にならないんですか?」
「岡部さまの髪は、背中まで届くゆるふわウェーブですよ? 絶対的に長さが足りません」
「そうですか、背中まで届くゆるふわ、ってどこの岡部だ、それは!!」

 何故だか分からないが、怒られてしまった。ショートボブの客がロングヘアを希望したら、エクステで対応するのが当たり前だ。店側に落ち度はなかったはずなのに、彼女はどうしてこんなに怒っているのだろう。
「いったい、岡部の電話の何を聞いていたんです!」
「伝言メモには、ご紹介者様の岡部さまと同じ髪型にと……岡部雛子さまのご紹介では?」
 店長が得意客の名前を出すと、初顔の客は眩暈でも起こしたかのように額に手を当て、沈痛な面持ちで言った。
「紹介者の名前はフルネームでメモするよう、従業員に徹底すべきです」
 初めての客に、社員教育について諭されてしまった。失礼な、と思ったのも束の間、彼女の次の言葉に、店長の憤慨は一瞬で吹き飛んだ。

「僕の紹介者は岡部靖文。彼と同じ髪型を希望します」
 
 寺島公延、42歳。20年美容師をやってきて、お客の言葉に開いた口が塞がらなかったのはこれが初めてだった。



*****


『天国と地獄』を読んでない方に、補足説明です。
 うちの岡部さんには、雛子という義母がいます。 岡部さんより年下で、ファンシー系のおっとり美人です。 

 でねっ、実は岡部さんは彼女が好きなの~。 
 でも母親だから結婚できないし、それに二度と彼女を警察官の妻にはしたくないって思ってて、それは岡部さんのお父さんが殉職でね、そのときお義母さんがたくさん泣いたからって、でも薪さんは二人を見て、本当は好き合ってるんじゃないかなって思って、雛子さんは雛子さんで、岡部さんは薪さんを好きなんだと思って、母親として協力しますって言うんだけど、わたしが思うに彼女も本当は岡部さんのこと好きなんじゃないかと、いや、どうなんだろう、薪さんの思い込みかなあ?? ←補足説明どころか自分が混乱している。
 

『天国と地獄3』に書いてありますので! 読んでください。 ←投げた。

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ヘアサロン(5)

 そうか、世はバレンタインだったんですね。
 すっかり(今年も)失念しておりました。 ごめんね、オット。(今年も) 来年は忘れないようにするからね。(多分無理)


 過去作品に連日の拍手をありがとうございます。
 4日連続で3ケタだった~、たくさん拍手してもらってすっごくうれしい、でも話の内容を思い出すとこんなん読ませてごめんなさいっ!! て夢中で謝りたくな…… とにかくありがとうございます。 あなた様の寛容に感謝します。


 毎度バカバカしいお話、こちらでおしまいです。
 読んでいただいてありがとうございました。 笑っていただけたら、とってもうれしいです。





ヘアサロン(5)







 どうにも治まらない腹の虫を力技でねじ伏せて、薪はスタイリングチェアに座り直した。
 まったく、失礼な。岡部の年若い義母がフェアリー系ロングの美人なのは知っているが、どうして彼女の髪型を男の自分に当てはめるのだ。悪ふざけにも程がある、と薪の憤りは尤もだが、残念ながら美容師たちはふざけていたわけではない。

「改めて確認しますけど」
 おずおずと掛けられた質疑に、薪はうんざりする。さっきも細かいことをぐちゃぐちゃと訊かれて、いい加減イヤになっていた。街の美容室はやっぱり面倒だ。
「平気です。短くなってもいいですから、クセのついた毛先を全部切って」
「本当に男の方なんですか?」
 確認、そこ!?

 性別も判断できないような腐った目玉ならいっそのこと刳り抜いてやろうか、と物騒な脅し文句が頭を過ぎるが、ここは岡部の馴染みの美容室。彼の立場を悪くするようなことは控えるべきだ。
「いや、失礼しました。ガーリー系のショートボブにされてたから」
「理髪店の店員のミスで。眠って起きたらあの髪型になってたんです」
 ガーリーだかパーリーだか知らないが、それは薪の咎ではない。カットクロスに包まれた彼の姿を見て、100人中100人が女性だと判定しようと、罪は錯誤した100人にあるのであって自分は悪くない。多数決なんかで性別決められてたまるか。

「男子警察官に相応しい髪型にしてください」
「かしこまりました」
 どうにか意思の疎通を果たし、薪はクロスの下で肩の力を抜いた。
 これで一安心だ。ここに来る途中、いつになく男に声を掛けられたが、今思うと、そのガーリーなんとかのせいだったのだろう。髪を切れば、あの不快な体験ともおさらばできる。

 しかし、運命は薪に冷たかった。

 過酷な運命の始まりは、ルルル、というやさしい電子音だった。それを薪は、店内に流れるヒーリング音楽と共に聞いていた。
 この曲はトロイメライのアレンジだな、とぼんやり考えていると、ゆったりした楽曲の流れを破るように、店員の大きな声が響いた。
「店長、大変です! 頼んでおいたカットモデルさんが、ここに来る途中、交通事故で」
「なんだって!?」

 店長はそれを聞くと、薪の髪に吹きつけていた霧吹きを放り出すようにキャスターに置き、泡を食って電話口へ向かった。引っ手繰るように受話器を受け取った彼の口から、それは困る、とか、誰か代役を、など、途切れ途切れの言葉が聞こえてくる。
 店長と入れ替わりに電話を受けていた店員がやってきたので、薪は彼女に事情を聞いてみることにした。
「何かあったんですか?」
「実は、これから雑誌の取材が入ってたんですけど、カットモデルの娘が事故に遭ってしまって。怪我は大したことないみたいなんですけど、病院と警察に止められてるから撮影には間に合わないって」
「それは困りましたね」
「ええ。今からじゃ、代役を頼むって言っても」
 気落ちした様子で答える店員の声を遮って、店長の激した声が響く。

「困るよ、同レベルの娘を用意してくれないと! 『Hモード』の取材なんだよ? 店の存亡が懸かってるんだ!」
 受話器を投げつけんばかりの勢いに、薪の眼が丸くなる。お客に不快感を与えていると察した店員が、申し訳なさそうにフォローした。
「すみません、お見苦しいところを」
「いいえ、僕は警官ですから。もっとすごい怒鳴り声を日常的に耳にしてますよ」
 僕が部下を怒鳴りつけるときはあんなもんじゃありません、と喉まで出掛かったセリフは意識して臓腑に収めた。岡部のテリトリーで、彼の男を下げるようなことを言うべきではない。

「『Hモード』は、業界では有名な雑誌なんです。それに載れば優良店として認められたことになるし、店の宣伝にもなるからって、店長、張り切ってたから」
「店長さんのお気持ちは分かりますよ。どんな仕事でも、長という名が付いた人間の苦労は大きいものです」
 店の存亡が懸かっているとなれば、店長が必死になるのも当たり前だ。薪だって、第九の存続が危ぶまれたりしたら、なりふり構っていられない。長たる者の責任と使命を果たそうとする、彼の情熱には共感すらできる。

「察してくれよ、下手なモデルなんか使えな……なにい!? モデルの問題じゃなくて、カット技術の問題だろうって? そんなことは解ってる、でもね、肉眼ならともかく、写真はモデルの美醜に左右されるんだよっ! そんなことも分からないで、よくモデルの派遣なんかやってられるな!!」
 憤る店長の様子は痛々しいくらいで、薪は少しだけ彼に同情する。長く続く不況で、美容業界も大変なのだろう。
「はあ? お宅のモデルがA級品の粒揃い? それは何処の美的基準なんだ、猿の惑星か、地底人か。ふざけちゃいけない、うちの店に来てくれるお客さんの方がずっと美人だよ! 今いるお客さんもね、今日頼んだ娘なんか比べ物にならないくらいの美人なんだ」
 自分の美意識を満たすモデルを派遣してもらえないことに腹を立てた店長は、派遣会社にクレームをつけ始めた。自分のことが話題になっている気もするが、美人という形容詞が付いているので、これは店長の見栄だろう。男の自分に付くのは、凛々しいとかカッコいいという形容詞のはずだ。

「なんか店長さん、怒りのあまり話がズレてるみたいですけど。今は一刻も早く、代わりのモデルさんを斡旋してもらうべきじゃないんですか?」
「店長、普段はやさしい人なんですけど。頭に血が上ると口が止まらなくなるって言うか、売り言葉に買い言葉で。いつもとんでもないことになっちゃうから気を付けてくださいって言ってるんですけど」
 薪も頭に血が上ると失言が多くなるクチだから、彼の心理は分からなくもなかった。あれって、その場の勢いに押される感じで自分でも止められないんだよな、と我が身を反省し、他人から見るとこんなに滑稽に映るのか、と恥じ入るような気分になった。

「じゃあ、そのお客にモデルを頼めばいいだろうって? 言われなくてもそうするさ!!」
 叫ぶと同時に電話を切った店長に、薪の眼が点になる。
 本当に、買い言葉で通してしまった。取材の時間が迫っているのにモデル会社とケンカしてどうする気だろう、と他人事ながら心配になる薪の傍らに、店長はさささっと走ってきて、
「そういうことになりましたから」
「…………えっ?」
 お願いします! とスタッフ全員に頭を下げられたが、もちろん薪には何のことやら分からない、てか、分かりたくない。

「冗談ですよね? だって僕は」
「大丈夫です! うちはメイクも自信があります!」
「いやあの、メイクの問題じゃなくて」
「店長、モデルさんに用意したドレス持ってきました!」
「ドレスってなに!?」
 思い切り突っ込んだのに、誰も薪の言葉なんか耳に入っていない様子だ。「もっとエクステ用意して」「メイクの用意を」などと、次々に店員に飛ばされる店長の命令が、薪の抗議を掻き消していく。
 まずい、このまま行くと化粧をされてドレスを着せられて写真を撮られてしまう。そんなものが職場に出回ったら、恥ずかしくて仕事に行けなくなる。

「あのっ!! ちょっと僕の話を、わぷっ!」
 失礼いたします、と言う優しい言葉と一緒に薪の首に通されたのは、黒いサテンのロングドレス。
「おお、サイズもぴったりだ! これで安心ですね!」
 めちゃくちゃ不安なんだけど!!
「我々スタッフにお任せください。業界最大手のモード誌、『Hモード』に相応しいモデルに仕上げて差し上げます!」
 そんな目的で来たんじゃないし!!

「では、メイクに入らせていただきます」
「待ってください、僕は、うっ」
「動かないでくださいね、ビューラー掛けますから」
「僕は引き受けるなんて一言も、んっ」
「喋らないで。口紅塗りますから」
「ちょっ、少しはひとの話を」
「この肌の白さだと、アクセサリは銀の方がいいわね」
「それならアイメイクにも銀ラメを入れて。アクセと合わせた方がいいわ」
「待って、それはお客さまの清純な雰囲気を台無しにしてしまうわ。ラメは無いほうがいいと思う」
「私もそう思う。本当のメイクは、お客さまの肌の色、服装の好み、そこから発せられる無言の要望に耳を傾けて為すものよ」
 メイクの真髄はどうでもいいから、僕の話に耳を傾けてっ!!!

 何人もの女性の手が薪の顔の上を滑り、彼の面に華やかさを添えていく。彼女たちはとても楽しそうだ。人形遊びでもしているかのように、無邪気にはしゃいでいる。
「「「いかがですか、お客さま」」」

 彼女たちの手が遠のき、薪に視界が戻ってくる。美容室の大きな鏡の中にいたのは、亜麻色の髪を可愛らしく巻いた絶世の美女。
「オボエテロよ、岡部……」
 写真用の派手なメイクを施され、黒いドレスに身を包んだ彼女の呟きは、誰の耳にも留まらなかった。




*****




 木枯らしの吹く街をクリスマスソングが彩る頃、岡部の元に、行きつけのヘアサロンから一冊の雑誌が送られてきた。
 不思議に思って添えられた手紙を読むと、『紹介してくれたお客様に渡してください』と書かれており、岡部はますます訳が分からなくなった。岡部がこの美容室を紹介した相手といえば勤め先の上司だが、彼はこんな雑誌には興味が無いはずだ。

 パラパラと頁をめくると、特集記事が組まれた優良店舗の中に件の店が入っているのに気がついた。ということは、薪に対する宣伝のつもりだろうか。
 残念ながら無駄だったな、と岡部は顔なじみの美容師を気の毒に思う。

『僕は一生涯、ヘアサロンには行かない』

 彼の店を紹介した後、岡部は薪にそう宣言されたのだ。岡部には薪の髪はとてもよく仕上がっているように見えたのだが、薪は気に入らなかったらしい。フィーリングの相違と言うやつだろうか。前髪をクリップで留めるような人だから、髪型にそれほどの拘りがあるとは思わなかったのだが。
 どれだけ気に食わなかったのか知らないが、彼は恨みがましい眼で岡部を睨み、その不機嫌は1週間近くも続いた。岡部に対してはいつも寛大な薪が、どうしたことかと訝しく思っていたのだ。

 次に店を訪れた時、雑誌に掲載されたお祝いを言うため、岡部は彼の店の紹介記事に目を通すことにした。『魔法のエクステンション』とか『得意のテイストはフェミニン系』とか、岡部にはちんぷんかんぷんの文字が躍る中、彼はそこに信じられないものを発見した。

『ガーリー系ショートからグラマラスウェーブへの華麗な変身』『ストレートロングで深窓のお嬢さま風』『巻き髪アップでパーティの主役』などなど、女性の興味を引きそうな謳い文句の上に配置された数枚の写真。それを見た途端、岡部は薪の不可解な言動のすべてを理解し、同時に心から彼に同情した。

「薪さん……おいたわしや……」
 衷心から呟くと、岡部は雑誌をぱたりと閉じ、資源ごみの袋に投入した。




(おしまい)




(2011.11)


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プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
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