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 発売日ですねっ!
 昼間は仕事があるので、夜、買いに行こうと思います。

 以前は居ても立っていられず、役所に行くとか嘘を吐いて(←!) 仕事を抜け出して(←!!) そのまま自室にバックれたりしたものですが(←!!!) 今は夜まで待とうと言う理性があります。
 真っ当な人間に戻れて良かったです。 とりあえず、今夜はメロディ抱いて寝ます。(←戻れてない)



 予告のお話の前に、雑文をひとつ~。

 こちら、新春記念SSです。 ←いまごろ!? ←いやだって、来年のお正月まで10ヶ月もあるし。
 クリスマス合わせ、とか、元日合わせ、とか、ちゃんと目的の日に合わせてお話が書ける方、尊敬してます。 計画性がないことも事実なんですけど、わたしが季節イベントに乗り遅れる一番の原因は、
 お正月が来ないと自分がお正月気分にならないので書けない。

 結局自分の都合ってことで、ああー、やっぱり人間性に関わってくるんだなー。 申し訳ないです。


 この雑文、本当は、この次に公開する『キセキ』のあとがきにするつもりだったんですけど、スピンオフでドヘンタイギャグSSができたので、あとがきはそっちにします。
 だれかこのおばさんに、「あとがきってSSのことじゃないよ」ってやさしく教えてやってくださいww。






シルエット





 2068年の最初の日、日の出前の現在。第九研究室の壁掛け時計は、5時22分を指している。
 創立以来、科警研規定労働時間超過記録ナンバー1という不名誉な座から退いたことの無い第九研究室といえども、年末年始はさすがに記録更新の努力を放棄することにしている。職員たちはそれぞれの自由時間を楽しみ、今ごろは年越しパーティの疲れから布団の中にいるか、あるいは誰かと一緒に初日の出を見に行く途中か。いずれにせよ職場には出て来ない。
 はずなのに。

「静かにな」
「わかってるよ」
 研究室に、怪しく蠢く人影が二つ。一つは細く、もう一つはやや太め。どちらも男性のシルエットだ。
 彼らは慎重に室内を移動していたが、暗さに視覚を塞がれてか、後方の太目の男が机の脚に躓いてしまった。スチール机は軽い金属音を立てて、しかしこの静けさの中にあってはかなりの騒音だ。
「バカ、曽我! 音立てるなよ!」
「小池、声でかい!」
 いささか間抜けな会話を交わした侵入者たちは互いの口を手で塞ぎ合い、要はどちらも相手が悪いと思っている。この二人は息もピッタリだが、考えていることも常に一緒だ。

 二人がコッソリと無人の第九にやって来たのは、捜査機密を悪の組織に売り渡すため、なんてスパイ映画みたいに話のタネになるような目的ではない。
 内幕を晒せば実に下らない。普段の土日と違って、帰省や旅行などで緊急呼び出しに応じられない可能性がある年末年始は職員が交代で当直を務めることになっているのだが、今年はそれをたった一人の職員がこなしている。青木というその男は、先月初旬、1週間の長期休暇を彼らしくない強引さで捥ぎ取った。その交換条件が年末年始の4日間の当直、というわけだ。
 つまり此処には今、彼らの後輩の青木が独りで留守番を務めている。二人が行こうとしているのは、彼が眠っているはずの仮眠室だ。小池と呼ばれた男の手にはデジタルカメラ、机に躓いた曽我の手にはレコーダー。要するに彼らの目的は。

『寝起きドッキリ』である。

 断っておくが、これはイジメではない。仕事場でひとりで寂しく年末年始を過ごしている後輩に対する先輩の気遣いだ。その証拠に、差し入れの朝ごはんもちゃんと調達してきた。コンビニのおにぎりとカップのなめこみそ汁だが、レンジで温めて3人で食べればそれなりに美味しい。

 音を立ててしまった警戒心から、彼らはしばらく動きを止めていたが、部屋は静まり返ったままだ。どうやら気付かれずに済んだらしい。
「まあ、青木は一度寝たら雷の直撃を受けても起きないから」
「直撃受けたら、起きたくても起きられないんじゃないか?」
「岡部さんなら頭に釘刺して起きてきそうだけどな」
 副室長の似合いすぎるモンスターコスプレに失笑しつつ、二人は再び歩き出した。研究室の明かりは密やかに動くMRIシステムが点滅させるランプのみ、だがその数は百を超えているため、眼が慣れればそれを頼りに室内を移動することも可能になる。程なく、彼らは目的の場所に辿り着いた。
 省エネモードに切り替えられた研究室内の気温は摂氏12度とかなり低めで、仮眠室のドアノブは冷え切っていた。その冷たさに背中を震わせつつも、小池はそっとドアを押し開いた。
「お、あそこだな」
 4つあるベッドのひとつ、右奥のそれがこんもりと山になっているのを暗闇に慣れた小池の眼が捉える。抜き足差し足、二人がベッドに近付いていくにつれて聞こえてくるのは安らかな寝息。

「よしよし、良く眠って、――っ!!!」
「なんだよ小池。急にロボットダンスなんか踊り出して、――ふぉわふぉとぅっ!」
「バカ曽我、声出したら殺されるぞ! てか、何語だよっ!!」
「だから声でけえっての!」
 図らずも彼らは本物のスパイになったように、生と死の境界線に立たされていた。自分たちがこの部屋に入ったことが知れたら、本気で命が危ない。いや、現実に殺されはしないと思うが、死んだほうがマシだという目には遭わされる、絶対。

 ベッドの中で青木はよく眠っている。それはこの際どうでもいい、問題はその横で寝ている人物だ。
 ただでさえ狭いシングルベットで、ガタイの良さがモノを言う警察の中でも高身長では三本の指に入る青木の隣に、申し訳程度のスペースを与えられて眠っている彼。寝台を占める体積量とは裏腹に、その脅威は科警研一、いや、警察機構全体を俯瞰しても比肩する者はほんの数名だ。二人がパニックに陥るのも当然であった。
「聞いてないぞ、薪さんが一緒だなんて」
「薪さんのことだから、いつものように差し入れに来たんだろうけど。泊り込むとは」

 ベッドの空きが在るにも関わらず、自分たちの上司と後輩が一つのベッドで眠っている事情については理解していた。この二人が特別な関係にあることはしばらく前から何となく分かっていたし、そういう眼でもって注意深く観察すれば、彼らの態度はあからさまでさえあった。彼らの言動自体は完全な上司と部下のそれであり、同僚の前で自分たちの関係を匂わせるような真似は決してしなかったが、あにはからんや。彼らの視線は絡み過ぎなのだ。
 とはいっても、視線は眼に見えないもの。こうして実態を目の当たりにするのは初めてのことで、だから二人の惑乱は無理も無かった。

 飛び上がった心臓がやっと落ち着くのに、2分ほど掛かっただろうか。音を立てないように深呼吸をした後、曽我は小声で言った。
「あ、一応服は着てるんだ」
「何考えてんだ、おまえ」
「だって」
 恋人なんだろ、と曽我の丸い眼が無邪気に言い、小池は焦る。想像したことがないわけじゃないけど、同僚の、しかも男同士のそういうこと、赤裸々過ぎて気軽に思い浮かべたりできない。
「職場だぞ。あの薪さんが許すと思うか?」
「でも一緒に寝てんじゃん」
 抱き合って眠っているわけでも腕枕で寝ているわけでもなかったが、たしかに曽我の言うとおり、他にベッドが空いてるのにわざわざ狭苦しい想いをして共寝するなんて。
「そりゃそうだ」

 見せつけられて、思いのほか早く平常に戻れた自分を、小池は心の中で褒めてやる。この眼で見たら、もっと嫌な気持ちになるかと思ってたのに、なんだおれ、けっこう余裕じゃん。

「ねだられたんじゃないのか? 薪さん、なんだかんだ言って青木に甘いから」
「あの人もともと自分の部下には甘いとこあるけどさ、青木はやっぱり特別なんだろうな。薪さんが自分を見失うのって、青木が絡んだときだけだもんな。去年のテロ事件の時だって」
「ああ、あのスタンドプレーは薪さんらしくなかったよな。一歩間違えりゃ……まあ、あんなことに巻き込まれた青木も気の毒だったけど」
 眠っている青木の顔に落書きでもしてやりたい誘惑に駆られるが、ここは我慢だ。ほんの少しでも自分たちがこの場にいた痕跡を残せば、薪が犯人探しに乗り出すだろう。そうなったら地球の裏側まで逃げても逃げ切れない。

「あれだけの死地を潜り抜けてきたって言うのに。二人とも、この世の平和みたいな顔で寝てるなあ」
 曽我が使った『この世の平和』という表現は大げさだと思ったが、見ればまったくその通りで。彼らは安心しきって寝具に身を委ねている、でも多分、掛け布団に隠れて見えない部分では互いに互いを委ね合っているのだろう。

 そこは二人だけの秘密空間。誰も暴いちゃいけない。

 くい、と親指を立てて、小池は退出を促した。頷いて、曽我が踵を返す。入ってきた時とは反対の順番で、二人は仮眠室を出た。
 3人で食べるはずだったコンビニの朝ごはんを、二人は第九のエントランスで食べた。まだ日の出には間があり、外は真っ暗だったが、自販機の周辺だけは防犯のため常夜灯が点いていた。
 給湯室が使えなかったことから諦めたみそ汁の代わりに、自販機の温かい緑茶で冷たいおにぎりを喉へ落とし込む。独男の証明みたいな朝食がそれほど惨めに感じないのは、気心が知れた友人との会話があるからだ。

「俺さ。初めて知ったとき、正直、気持ち悪いと思った」
「え、そうなの? おれが二人のことを仄めかしたとき、『別にいいんじゃね』って言ってたじゃん」
「あからさまに非難もできないだろ。青木はいいやつだし、薪さんには世話になってるし。趣味趣向は、それこそ自由だしな」
 そこで小池はペットボトルに口をつけ、ごくりと緑茶を飲み込むと、思い切ったように言った。
「だけど、ずっとモヤモヤしてた。どうしてそんなことになっちゃうんだろうって。二人とも仲間だと思ってたから、なおさら」

 親友にも初めて聞かせる胸のうち。誰にも言えなかった。小池は彼らのことが大好きで、だから口にできなかった。自分が諸手を挙げて二人の幸せを喜べないこと。

 小池はもう一度緑茶を口に含み、ペットボトルと一緒に仰のいた。横目でちらっと隣を見れば、心配そうに眉根を寄せるお人好しの間抜け顔。小池はにやりと笑って、
「でもさ。なんかもういいかなって」
 おにぎりの残りをポイと口に投げ込んで、奥歯でモゴモゴと噛みながら、真剣味が足らないように見えるけれど仕方ない。小池は照れ屋で、こういう言葉を口にするのはとても照れ臭いのだ。

「薪さんがあんなに安心しきった顔で眠れるなら、それでもいいかって」
 親友の、そんな性質を心得ている曽我は、ほんわかと笑って頷いた。
「昔はよくうなされてたもんな」
 小池に賛同の意を示し、曽我は3つ目のおにぎりを頬張る。曽我は親友だけど、いま彼が食べているエビマヨネーズおにぎりは個人的には納得できないと小池は思っている。おにぎりの具の王道は、梅・シャケ・昆布。だけど何処のコンビニでも、人気ナンバー1はツナマヨネーズだとか。

 そう、彼らのこともそれと同じ。なにも特別なことじゃない。
 せいぜいがおにぎりの変り種。美味しく食べられればそれでいいじゃないか。

 曽我が緑茶を飲み干したのを確認して、小池は席を立った。
「よし。初日の出、今から見に行くか」
「あと一時間も無いぞ。それに今からじゃ、スポットは何処もいっぱいだぜ」
 困り顔で小池を見上げる親友に、小池は力強く親指を立てて、
「屋上だよ」
「ナイスアイディア、と言いたいところだけど。あの二人と鉢合わせしたらどうするんだよ」
「起きないだろ。あれだけ熟睡してりゃ」
「解んないぞ。初日の出に合わせて目覚まし掛けてるかも。青木ってそういうの、マメにやりそうじゃん」
 曽我の懸念は尤もだ。ロマンチストの後輩が、1年の最初の太陽を愛する人と一緒に見ることもなく寝こけるなんて、逆にあり得ない。

 日の出は地球上の何処からでも見える、と開き直って小池は、太っているくせに寒がりの曽我を庭に連れ出した。日の出の時刻は迫っていたが、じっとしていると寒くて堪らないので、中庭に向かって歩いた。
 ほどなく東の空が明るくなってきて、二人は空を見上げる。第九の建物が、光線の関係で黒い塔のように見えた。

「あ、ほら。やっぱり」
「うーん。青木らしいな」
 屋上に大きさの異なる二つのシルエットを見つけて、二人は顔を見合わせた。
 二つの影は寄り添うことはなく、職場仲間の距離を保って立っていた。徐々に明けていく空が夜明けの美しさでもって人々の心を震わせても、彼らは決して節度を失うことはなく、それは自分たちの立場を誰よりもよく彼ら自身が弁えているから。
 守りたいと、強く願っているからこその空隙。あの空隙にこそ相手を想う気持ちが詰め込まれているのだろうと、小池は思った。

 逆光で、マトモな写真になるとは思えなかったが、小池は持っていたカメラにその光景を収めた。
「写真なんか撮るなよ、小池。薪さんに知れたら」
「青木に渡すんだよ。お年玉だ」
 カシャリとシャッターを切り、小池は、ビルの谷間から顔を覗かせ始めた今年最初の太陽に向かって背筋を伸ばした。
「青木には、今年も薪さんの面倒を見てもらわなきゃならないからな」
「はは。違いない」
 望遠レンズも付いていないカメラで撮影したその写真は、カメラの画面で確認してみたら朝焼けの空に第九の建物が黒く映っているだけの風景写真になっていた。目を凝らしたところで、人影なんか見えない。
 だけど青木はきっと、喜んで写真を受け取ってくれるだろうと小池は思った。



(おしまい)



(2013.1)

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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