遠い空に(1)

 あけましておめでとうございます!
 旧年中は大変お世話になりました。

 
 リアルで色々あった年でした。
 気分的に忙しなく、不義理を重ねた挙句、何度かブログ放置してしまって、すみませんでした。
 年も新しくなったことですし、気持ちを切り替えて行こうと思います。

 ということで、今年の抱負は、
『ぐでぐで』です。←新春から見放されそう。

 ぐてたまの年賀状とお年玉袋を買ったの、かわいくってね~。
 もうね、ジタバタしても始まらないからね。ぐでぐで生きようと思います。
 
 何一つ問題が解決したわけでも好転したわけでもないんですけど、とりあえず、
 家族みんなが元気で正月迎えられた。それだけでめでたい! です。

 というわけでこちら、以前予告いたしました薪さんが認知症になるお話で(←めでたさ台無し)
 法十からのお年玉&7万5千拍手のお礼……に、していいのかしら。

 2017年も広いお心でお願いしますっ。






遠い空に(1)





 液晶モニターの中に、すうすうと眠る少女の姿が映し出されている。夏らしく半袖のパジャマを着た彼女は、熱帯夜でもあるのか、タオルケットを肌蹴てなおうっすらと汗をかいている。
 仰向けになった彼女の、まだ膨らみきらない胸の辺りに、その平和な光景にはまったく似つかわしくないものが突如として写り込んだ。逆手に持たれた文化包丁である。
 鋭く尖ったそれは銀色の鈍い光を放ち、大きく弧を描いて少女の胸に振り下ろされた。包丁の切っ先が柔らかな胸に沈み、引き抜かれると同時に大量の鮮血がまるでゲリラ豪雨のように激しく降り注ぐ――。

「おかしいと思わないか」
 映像を静止させ、薪は尋ねた。
「スロー再生してるのに暗転のシーンがない。つまり視覚者は瞬きをしていない。おかしくないか? 画面が真っ赤になるってことは、顔面にまともに返り血浴びてるってことだぞ。普通なら反射的に眼を閉じるだろ」
「それもそうですね。ちょっとヘンですね」
 机に肘をつき、青木は考え込んだ。現在の青木にとって、それはひどく難しい問題であるらしい。
 青木の愚鈍さに薪は苛立ちを覚えるが、すぐに仕方のないことだと思い直す。青木は第九に入って1年にもならない。その前の経歴はと言えばキャリア入庁後警察大学に入り、総務部に3ヶ月ほど腰掛けただけでここに来た。捜査官としての経験は皆無に等しい。他の職員たちのように推理を組み立てられないのも無理はないのだ。

 新人を導くのは先達の務め。ましてや薪は室長だ。彼が正解を見つけられるよう、ヒントを与えるのはやぶさかではない。
「始めから眼を閉じていたとしたらどうだ」
「まさか、夢?」
「そうだ。眠っている人間は瞬きをしない」
 青木が一発で正解に辿りつくと、薪は満足気に微笑んだ。
 この新人は、ほんの少しの手助けで解答を導き出せる。少々ドンくさいが、頭はそう悪くない。柔軟な発想と着眼点の良さは周りを驚かせることもしばしばある。きちんと育てれば、青木はいい捜査官になる。

「こんなにリアルなのに、夢なんですか」
「脳にとっては現実も夢も同じ映像だ。レンズを通すか大脳皮質に直に画が浮かぶかの違いだけで」
「待ってください。では、犯人は視覚者以外の人物である可能性が?」
 その可能性に気付いたことを、褒めるべきか否か。他の職員たちなら気付いて当たり前のことでも、経験の浅い新人の仕事としては評価できる。しかし薪は後者を選んだ。薪は、部下を褒めて伸ばすタイプの上司ではない。
「ああ。視覚者、つまり被害者の兄だが、妹を殺害した1週間後、罪の意識に耐え切れず自害した、と言う捜査一課の見立てはやはり誤りだ。問題はこの遺書と、真犯人だな。資料によると、現場から歩いて2分のところに従兄弟の家があるが――今井」

 打てば返るはずの応えが一向に返らないことに気付き、薪は資料をめくる手を止めた。訝しげに顔を上げると、果たして今井の席には誰もいなかった。
「今井はどうした」
「あ、すみません。今井さん、夏風邪だそうです。今朝連絡があったの、報告するのを忘れてました」
「そうか。では代わりにサブの小池――あれっ?」
 思わず裏返った、高めのアルトは薪が素で驚いた証拠である。それもそのはず、モニタールームには今井だけではない、小池も曽我も、宇野までもがいない。
「みんなはどうした?」
「あー、先輩方は昨夜飲み過ぎちゃったとかで、揃って欠勤です」
「なっ」
 あり得ない欠勤理由に絶句する。そんな理由で仕事を休むなど言語道断、社会人として許されない行為だ。若いうちは夏が来ると開放的になるものだが、それにしたって弛み過ぎだ。これもすべて室長たる自分の責任だ。ここはひとつヤキ入れ、いや、活を入れてやらないと。
「あいつら、明日出勤して来たら道場で根性鍛え直してやる。岡部、おまえも付き合え――岡部はっ!?」
 思わず叫んだ、岡部までもが出勤していない。岡部は風邪も引かないし二日酔いもしないサイボーグみたいな男だ。それがどうしてここにいないのか。

 血相を変えた薪に、青木はどうどうと馬でも宥めるように両手を振り、
「岡部さんは仙台です。MRI捜査に協力してくれた遺族のところに」
 先週、出張届が出てましたよ、と小さな声で付け加えた。
 そうだったか? と薪は頭の中のスケジュール表を手繰る。そんな予定もあったかもしれないが、それは今日だったか。今日はええと、……何月何日だっけ? おかしいぞ、今日の日付が思い出せない。
 いやこの際、日付なんかどうでもいい。いくら薪がオールラウンダーでも、新人の青木と二人だけでは仕事が回らない。天敵の捜査一課に再捜査の依頼もしなくてはいけないのに、――そうだ。

「鈴木は?」
「え」
「鈴木は必ず僕の傍にいるはずなんだ。彼はどこへ?」
 他の不在者のことはスラスラと答えた青木が、初めて口ごもった。ああとかううとか口の中で曖昧な言葉を転がす青木に、薪の中で疑惑と言う名の黒雲が台風のように渦を巻く。
 席を立ち、薪は青木に詰め寄った。

「どうもおかしいな。青木、おまえ僕に何か隠してることがあるんじゃないのか」
「いえ、そんなことは」
「じゃあ、なんでここに鈴木がいないんだ」
「す、鈴木さんは」
 ずいずいと追い詰められて青木は壁にへばりつく。薪の身体は青木の半分ほどしかない、だがその脅威は絶大。
 それもそのはず、第九創生当時から薪は警察機構全体でも指折りの鬼上司だ。おかげで第九は「職員が転属したくない部署ナンバー1」の座から一度も退いたことがない。長年、厳しい現場で揉まれてきた職員にすら畏怖されているのだから、つい1年前は学生だった青木などから見ればティラノサウルス並みに恐ろしいに違いない。
「白状しろ。鈴木をどこに隠した」
「濡れ衣です。第一あんな大きな人、隠し場所にも困ります」
「そんなことはない。隠れる場所ならいくらでもある。ベッドの下とかクローゼットの中とかベランダとか」
「なんで間男が咄嗟に隠れそうな場所ばっかりなんですか。鈴木さんてそういう人だったんですか」
 なんて鋭い、いや、失礼な。ここは鈴木の名誉のためにも厳しく対処しなければ。
「本当のことを言った方が身のためだぞ、青木……」
「ちょ、やめてくださいよ、喉元にボールペン押し当てるの!」
 脅迫だのパワハラだのと青木が生意気な口を利くのに腹を立て、薪はペンを握る右手に力を籠める。最近の新人は、仕事は半人前のくせに口だけは達者で困る。間違った振りをしてこのまま5センチくらい刺してやろうか。

 青木の窮地を、もとい、犯罪者に転落する寸前の薪を救ったのは、入り口から聞こえてきた男の声だった。
「鈴木さんなら仙台ですよ」
 二人で同時に振り返れば、髭面の男がドア口に立っている。ごつい顔と身体に似合わない小花柄の手提げ袋を持って、彼は苦笑交じりにこちらを見ていた。
「岡部さん! いらっしゃい」
「青木、これ、お袋からだ。家庭菜園で採れた茄子とぬか漬け」
「ありがとうございます。薪さん、喜びます」
 手提げ袋を青木に渡してそんな会話を交わす、二人の様子に薪は怪訝な顔をする。だってそれじゃまるで。
「なに自分ちみたいに出迎えてんだ。ここは職場で、岡部は先輩だぞ?」
「あ、そうでした。すみません」
 薪の指摘に青木は素直に謝ったが、さほど悪びれる様子もない。この新人は時々訳の分からない言動を取るのだが、理由を説明されても薪には理解の及ばないことが多い。だから薪はこの時もそれ以上の追及はしなかった。世代の差は埋め難いものだ。

「それより岡部。鈴木が仙台に行ったって?」
「途中の案件がどうも気になって。鈴木さんに代わってもらったんですよ」
「おまえ、僕の許可もなしに勝手なことを」
「や、さすがに鈴木さんですね。ご自分が担当してた練馬の連続殺人、瞬息で解決しちゃいましたよ。あのセンス、おれもあやかりたいもんです」
「……鈴木は副室長だからな。それくらい、できて当然だ」
 澄ましたポーカーフェイスの裏側で、薪の心は軽やかにスキップする。人に鈴木のことを褒められると嬉しい。自分が褒められるより、ずうっとうれしい。

「薪さん、嬉しそうですね」
 青木に言われてドキリとする。しまった、顔に出ていたか。
「薪さんて、鈴木さんのことはよく褒めますよね。オレのことは怒ってばかりなのに」
 だって仕方ないだろ。鈴木とおまえとじゃ月とスッポン、なんていいもんじゃない、青木はせいぜいミドリガメ。縁日でうじゃうじゃ売られてて、買って帰ると3日で死んじゃうやつ。
 それは薪の本音であったが、それをそのまま青木に伝えるわけにもいかない。薪は言葉を選んだ。
「そんなことはない。僕は公正におまえたちを評価している。鈴木だけを特別扱いしているつもりはない」
 室長としてその姿勢を崩したことはないと、自負を持って薪は答えた。しかし。

「じゃあどうしてお昼のお弁当、2人分あるんですか?」
「えっ」
「鈴木さんの分なんでしょ」
 鋭い、ていうかそこ突っ込むか? 着眼点がいいのは認めるけど、そこはそっとしておこうよ!
「そそそそれはそのっ、単に作り過ぎちゃったから誰か食べるかもしれないと思って持って来てみただけで……よかったらおまえが食え」
「いいんですか?」
「ああ。どうせ鈴木は出張で、あ、いや」
 失言に口を覆って頬を染めた薪に、白けた空気がまといつく。音もなく部屋の隅まで引いた二人の部下が、こちらを見ながらコソコソ囁き合うのが見えた。

「こんなに隠し事苦手で、よく長年第九の室長やってたな、あのひと」
「隠し事が苦手なんじゃないんですよ。鈴木さんの事だけがダダ漏れなんです」
 聞こえてるぞ、おまえら。
「あれで本人上手く隠せてるつもりでいるから、こっちも気付かない振りをするのがしんどいのなんのって」
 だから聞こえてるってば。
「室長が鈴木さんにベタ惚れなことなんか、全世界が知ってますけどねー」
 ちょっと待って、いつの間に世界配信されたの僕のトップシークレット!

「鈴木のことはいい! とにかく捜査だっ」
 照れ隠しに声を張り上げた。「はい!」と威勢の良い返事が返ってくる。これくらいのことで室長の威厳は壊れたりしない。薪は鬼の室長なのだ。
 さっさと事件を解決して、明日出勤してきた連中に「おまえらなんか要らん」と言ってやる。そうすれば連中も危機感を覚えて、今日のようなふざけた真似は二度としなくなるだろう。
 明日は鈴木も出てくるはず。
 もしも彼がいない間に僕だけで事件を解決したら、鈴木は褒めてくれるかな。「さすが薪」とか言って、頭を撫でてくれるかも――。

「薪さん。また鈴木さんのこと考えてるでしょ」
 青木に突っ込まれて心臓が跳ね上がる。焦りまくって言い返した、のが拙かった。
「ち、ちがう! 別に、この事件今日中に解決したら鈴木が頭撫でてくれるかもしれないとか思ってない! ――あ」
 なんで考えてることが表に出ちゃうんだろう! 鈴木のこと、以前はもっと上手に隠せてたはずなのに。
「そんなこと考えてたんだ」
「もはやダダ漏れのレベルじゃないですね……」
 二人の部下の視線が痛い。こういうとき、鈴木がいればさらっとフォローしてくれるのに。ああやっぱり僕は鈴木がいないとダメだ。

 薪が落ち込むと、またもや青木に「鈴木さんがいないと元気出ませんか」と揶揄された。問答無用で薪が彼の手の甲にボールペンを突き立てたのは言うまでもない。


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

遠い空に(2)

 あら?
 おかしいわ……年末年始休みが7日もあったはずなのに、どうしてコメントのお返事が30通も溜まってるのかしら……。←毎年言ってる。
 今年もやっちゃいました、お返事の年越し(^^;) 失敗から学ばないやつですみません。

 今年は、お天気に恵まれたお正月でしたね。みなさん、楽しく過ごされたことと思います。
 うちはちょっとお義母さんが調子悪くなっちゃって。実家のお祖母ちゃんも入院しちゃったし、わたしは腰を痛めるしで、今までで一番忙しいお正月でした。見事に休みが無かったww
 むしろ、休みの日の方が忙しかった気がする……休暇が終わって平常運転に戻りましたので、コメントのお返事も少しずつお返しして行けると思います。よろしくお願いします。


 ということで、弊社は今日から仕事です。
 元気に現場に行ってまいります!



遠い空に(2)




 それから3時間後。青木が決定的な画を発見し、事件は解決した。
 薪の睨んだ通り犯人は近所に住む従兄弟で、視覚者の脳には、彼が被害者を刺し殺す場面がはっきりと残っていた。視覚者(被害者の兄)は溺愛していた妹が殺される現場を目撃したショックで自らの記憶を封印、本人もまったく気付かずに日々を過ごしていたが、脳にはその時の記憶が残り、それが夢として現れたのだった。そのため本人も自分が殺人を犯したものと思い込み、あんな遺書を書いてしまった。

「岡部、一課に連絡を。僕は少し休む」
 事件が解決して気が緩んだのか、薪は、ひどい疲労を感じた。座っているのが辛いくらいだ。たまらず、ソファに横になった。
 目を閉じた薪の耳に、青木の心配そうな声が聞こえた。
「大丈夫ですか? 無理しないでください。昨日も徹夜だったんですから」
 昨日も徹夜。そうだったか。
 青木の言う昨日の事件の概要を、薪は思い出せない。徹夜で捜査をするくらいだから重大かつ火急を要する事件だったはずだ。そんな大きな事件を、その片鱗すら何故思い出せないのか――。

「仮眠室に行きましょう」
 誘いの言葉と一緒に、背中に青木の腕が入ってきた。何をする、と青木の手を払おうとしたが、腕が持ち上がらない。まるで他人のそれのように身体が重かった。
 とても動かせないと薪が感じたその身体を、青木は軽々と抱き上げ、すたすたと歩いた。彼の胸は厚くて逞しかった。ロクな現場経験もないくせに、鍛えられた身体をしているのが不思議だった。

「気分はどうですか? お水、持って来ましょうか」
 薪をベッドに寝せて、青木はこまごまと薪の世話を焼いた。ゆっくり眠れるようにとパジャマに着替えさせ、喉が乾いたら飲んでくださいと冷たいイオン飲料を枕元に置いた。
 薪はその間、されるがままになっていた。青木にすべてを預けると、なんだか妙に安心した気分になった。

 足元に回って、薪の足から靴下を脱がせている青木に、薪は訊いた。
「おまえ、どうしてそんなに僕によくしてくれるんだ」
 親友の鈴木ならともかく、青木は部下だ。ここまでする義理はないはずなのに、と薪が首を傾げれば、青木は薪の枕元に顔を寄せ、
「実はオレ、薪さんのことが好きなんです」と、とんでもないことを言い出したから、薪の心拍数はたちまちのうちに跳ね上がる。
「そ、それは上司としてって意味だよな?」
「なに白々しいこと言ってんですか。恋愛感情に決まってるじゃないですか。男爵じゃあるまいし、分からないなんて言わせませんよ」
「そ、そんなこといきなり言われても、てか男爵ってなに!?」
 薪が激しく抗議すると、青木はあははと屈託なく笑った。告白の直後に笑ったのだから、やっぱりジョークだったのかと片付けることもできたはず、なのにその笑顔に薪の心拍数は倍増する。
 なんてあったかい笑顔なんだろう。いつまでも見ていたいと思うのは何故なんだろう。

 戸惑う薪に夏用の薄い毛布を掛け、青木は薪に背中を向けた。
「青木」
 思わず呼び止めた。用事なんかないのに。

 青木はすぐに気付いて、こちらに戻ってきた。薪の額に手を置き、前髪を上げるとそこに自分の額を押し付けた。
 顔が近づいたら当然のようにキスされた。フレンチではなく、濃厚なキスだった。
 自然に舌を返していた。続きをねだるように、自分から彼の太い首に抱きついた。

「休んでてくださいね。晩ごはん作ってきますから」
 職場で夕飯を作るなんて妙なことを言うと思ったけれど、キスが終わると同時に眠くなってしまった。考えることが億劫になり、薪はその疑問を放置して睡魔に身を委ねたのだった。



*****



「いつもこの調子なのか」
 ええまあ、と曖昧に頷いて、青木はコーヒーカップをテーブルに置いた。武骨な手がそれを取り上げ、無精ひげに囲まれた口へと運ばれる。
「やっぱりおまえのコーヒーは美味いな。薪さんほどじゃないが、おれたちはみんなおまえのコーヒーを楽しみにしてたんだぞ。まあ、おまえは薪さん専属のコーヒー職人でいたかったんだろうが」
 岡部は青木のコーヒーをひとしきり褒めた後、やや唐突に話題を戻した。
「薪さんがこうなって、もう2年か」
 しんみりとした口調で、コーヒーカップに溜息を落とす。岡部の肩が自然と落ちる、その余波がカップに伝わって、黒い液体がとぷりと揺れた。

「分からんもんだな。あんなに頭のいい人が、認知症とは」
「頭の良し悪しは関係ないそうですよ。仕事してればボケないって言う人もいるけど、お医者さまの話だと、実際はそうとも限らないみたいです」
 薪が眠ることで魔法は解ける。ここは研究室ではない。薪の自宅マンションだ。
 薪が鋭く分析していた捜査資料は何も書いていないただの紙であり、3人が熱心に見ていたモニターはスイッチの入っていないテレビであった。亡くなった鈴木はもとより、青木以外の部下たちが現れないのは当然のことだった。

 定年退職したのち、天下りを嫌って仕事に就かなかったのがよくなかったのか、青木が仕事に出ている間ずっと一人で過ごしていたのが悪かったのか、彼の頭脳は60代前半から変調をきたした。物忘れがひどくなり、年だな、などと笑っているうちに冗談事ではなくなっていた。
 日付を勘違いすることが増え、二人はそれを勤めに出ていないせいだと軽く考えていたが、念のために病院へ行ってみたら認知症だと診断された。天才と言われる頭脳の持ち主だっただけにショックも大きかろうと、青木は診察室で胸の潰れる思いだったが、本人は意外とケロッとしていて、どことなく自分の変調を面白がるようでさえあった。
 年を取っても衰えない薪の気の強さには感服したが、診断が下りたその日、老人ホームのパンフレットを取り寄せられたのには参った。おまえに迷惑を掛けるわけにはいかないと、20年以上連れ添った相手から言われたらそちらの方がショックだった。

 青木は薪の勇み足を全力で止めた。彼を思い留まらせることには成功したものの、病状の進行は止められなかった。記憶の抜け落ちは著しく増加し、遂には青木の留守中に不安からパニックを起こして部屋を荒らすようになった。
 これ以上一人にしておくと、若い頃の自傷癖が再発するかもしれない。青木は潔く警察を辞めた。定年には8年ほど早かったし、薪も強く反対したが、青木の決意は揺らがなかった。
 青木には、迷う余地もなかった。仕事よりも薪の身体の方が大事に決まっている。もともと青木は薪に憧れて警察に入庁したのだ。警察の仕事が好きだったのではない、薪のことが好きだったのだ。
 そんな青木にとって、今の状況は不幸一色ではなかった。「大変だろう」と言う岡部の言葉に「幸せです」と返した青木の答えは、決して強がりではなかった。

「ただ時々、鈴木さんと間違えられちゃうのがちょっと。オレになんか目もくれないくらい鈴木さんのことが好きなくせに、どうして間違うかなあ」
 冗談めかして言うも、本当はそれが手酷く青木を傷つけるのだと、岡部には分かったのだろう。白目がちの三白眼に同情心をいっぱいに浮かべた岡部に、青木は苦笑して、
「楽しいこともあるんですよ」
 自分のコーヒーカップを持ち上げて一口すすると、青木はクスッと思い出し笑いをした。

「今の薪さんにとってオレはまだ第九に入ったばかりの新人で、薪さんのハートは鈴木さんががっちり掴んでるわけですけど」
 青木は、岡部には理解しがたいであろう薪の現在の人間関係――それはもちろん、薪の変調をきたした脳が作り出した妄想に過ぎないのだが――をざっと説明した。
 先刻のことからも分かるように、薪は鈴木にベタ惚れだが、だからと言って鈴木と恋人関係にあるわけではない。鈴木は雪子と結婚して幸せに暮らしており、薪はあくまで親友と言うポジションで、つまり薪の現在の恋人は仕事だ。妄想の世界に生きるようになってさえ鈴木への想いを叶えられないあたり、傍から見れば切な過ぎて泣けてくるが、本人はこの状況に至極満足している。
 残念なことに、青木と将来を誓い合い、伴侶として20年以上も過ごしてきたことは忘れてしまっている。しかしそれ故に、青木には別の楽しみも生まれた。

「薪さんね、オレが『薪さんのことが好きです』て言うたびにビックリして焦りまくるんですよ。それが毎回かわいいのなんのって」
 青木が惚気ると、岡部は嫌な顔をした。それも当然、青木は今年で53歳、薪は65歳になる。シルバーカップルのお惚気なんか男同士じゃなくても気持ち悪いだろう。
「悪趣味だな、おまえ」
「まあ、翌日には忘れちゃってるんですけどね。おかげでまた、次の口説き文句を考える楽しみが生まれるわけで」
 薪の記憶から恋人としての自分が消えた時、青木がどんなに辛かったかどれだけ泣いたか。そんなことは微塵も感じさせない笑顔で青木は軽口を叩いた。
 相手の記憶から自分が消えると言うことは、死ぬことに等しい。薪の中に恋人の青木一行がいなくなるのだから、死んだと同じことだ。薪のために、20年間積み重ねてきた献身も思い出もみんな消えてしまうのだ。その喪失感は計り知れない。
 陰で流した青木の涙を、慮れないような岡部ではなかった。そしてまた岡部は、それを口にして青木を困らせるような愚かな真似もしなかった。青木が望んだとおりの辟易した貌をつくろい、「あー、コーヒーが美味い」とわざと下品な音を立ててコーヒーを啜った。

「てかあの人、なんで見た目変わんないの?」
 岡部の指摘はもっともで、この年になっても薪の美貌はまったく衰えていなかった。一緒に暮らしている青木にも理由は分からない、と言うか医者が不思議がっていた。医者に不思議がられるってそれだけで人に自慢できるんじゃなかろうか。
「まるでオレの方が年上みたいになっちゃって。額、ヤバいし」
「やっぱオールバックがマズかったんじゃないの。あれ、頭皮に負担掛かるみたいよ」
「額だけじゃなくて、おなか周りもヤバくて。あと5センチでメタボです」
「おまえ、40歳頃から太りだしたよな」
「若い頃と同じに食べてたら自然に。薪さんの料理が美味し過ぎるからいけないんですよ……。ところで岡部さんとこはどうなんですか? 雛子さんと」

 恋人の責任転嫁のクセが伝染ったのか、青木は自分の体形の変化にそんな理由を付けると、青木よりも10歳以上も年上なのに一向寂しくなる気配のない岡部の頭部への腹いせでもあるのか、岡部家の複雑な事情に嘴を突っ込んだ。ちなみに岡部は退職後、警備員の仕事に就き、母親と飼い猫と3人で平穏な日々を送っている。
「うちは相変わらずだよ。変わるわけねえだろ」
「ニニさん、まだ元気なんですよね」
「そうなんだよ。あのエイリアン、あと10年くらいしか生きないとか言っといて嘘ばっか。しかもあいつさあ、能力回復してきて色んなことできるようになってやがんの。瞬間移動とか、手を使わずにドアを開けたりとか。このまま行くと遠からず、本物の化け猫になるね」
「今度、連れてきてくださいよ。薪さんも喜びますから」
「喜ぶかあ? むちゃくちゃ仲悪かったじゃねえか」
「え。そうでしたっけ」
 岡部家の飼い猫と薪の因縁には青木も関わっていたが、遠い昔の話だ。薪も自分もさんざんな目に遭ったけれど、今となれば笑い話になるだろうと思った。

 それから半時間ほど、気ままなおしゃべりを楽しんだ後、岡部は席を立った。見送りに外へ出ると、夕方になっていた。
 エントランスで岡部に手を振り、後姿に頭を下げた。薪と二人、警察を離れて何年にもなるのに、こうして気にかけて見舞いに来てくれる岡部のやさしさに、感謝の気持ちでいっぱいになった。
 黙礼する青木の首筋を、微風が撫でていく。マンションの中庭の灌木で短い生を奏でる蜩の声が聞こえる。夕暮れ時のわずかな清涼感に頬を緩めて、青木は朱く染まった空を見上げた。

 昔、第九の屋上で。
 薪と一緒に眺めた夕焼けと、美しさは少しも変わらず。
 その不変性に込み上げる気持ちは懐古か感傷か。泣きたいような気もしたけれど、その涙は今流すべきではないとも思った。むしろここは男として。

 青木は両手を腰に当て、不敵に笑って呟いた。
「さて。明日はなんて言って薪さんを口説こうかな」



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

遠い空に(3)

 おはようございます!

 今回のお話、一部の方々を悲しませてしまってすみません。
 でも、そんなに辛い話じゃないんですよ~。この話、カテゴリ雑文だし。
 決してみなさんの楽しいお正月に水を注すつもりでは、あ、そういえば昔、クリスマスネタで「みんな不幸になればいい」とか書いたな…… ←そんなん書いてるから誰にも信用してもらえない。


 ということで、最終章です。

 実はこれ、夏に書いた話なんですけど、オチがこれだからお正月でもいいかな、と思って公開したの。
 安易なオチですみません☆


 

遠い空に(3)




「誰を口説くって?」
「それはもちろん、――だっ!!」
 発せられた問いに反応した途端、竹刀のようなもので頭を引っぱたかれた。患部を押さえて、見ればそれは筒状に丸めた雑誌。てか、思いっきり引っぱたきましたよね、今。

「いきなり何を……あ」
 薪が雑誌を開くとそれはメディカル誌で、「脳科学臨床――鬱病・認知症特集」と表紙に書かれていた。
「僕の講義の最中に爆睡とは。いい度胸だ」
「すみません」
 青木は素直に謝った。夢の中の薪も怖かったけど、現実はもっと怖い。
 MRI捜査に於いて特別な見方が必要な脳について教えてもらっていたのだが、薪の説明は専門用語が多すぎて、意味がよく分からない。そのうち薪の声が子守歌みたいに聞こえてきて、眠ってしまったのだった。

 二人きりで過ごす休日の午後、どうしてこんな色気のないことをしているのかと問われれば、それは薪の真面目さが原因と言うより他はない。
 フランス警察が主催した国際フォーラムに薪が協力してから、フランスのMRIチームと日本の第九研究室合同のセミナーが定期的に開かれるようになった。と言っても大掛かりなものではなく、職員同士の勉強会の延長のようなものだ。討論はスカイプを使った簡便なものだし、時間もそれほど長くはない。
 フランスと日本、代わりばんこにテーマとなる研究発表を用意してセミナーに臨むのだが、今回は日本の番、青木の番だった。今まで取り扱った事件の中から適当なものを選ぼうとした青木に、薪は、せっかくの勉強の機会を活かさないような男は恋人として願い下げだ、と三下り半を突き付け、仕方なくテーマを模索し始めた青木に、このメディカル誌を持ってきたのだ。
 認知症のメカニズムの説明を受けていたせいで、あんな夢を見たらしい。夢で良かったと思うべきなのだろうが、あれはあれで幸せだったような。恋人同士の会話はできなかったけれど、朝から晩まで薪と一緒にいられたし。

「女の夢でも見てたんだろ。しまりのない顔してたぞ」
 薪の邪推に青木は慌てて首を振り、夢の内容を端的に説明した。
「ずっと未来の夢でした。お年を召した薪さんの夢」
「さては僕が死んで遺産を手に入れて、その金で若い女と」
 突っ込みどころは多々ありますが、まずは残高254円の通帳をどうにかしましょうね。

 ふと気付いて青木は顔を上げる。
 ショッキングな通帳残のせいで、うっかり聞き流すところだった。薪は今、なんて言った?

「オレに遺産残してくれるんですか」
「他に誰がいるんだ」と薪は、さも当然のように言ったけれど。
「薪さん……」
 咄嗟には言葉が出てこない。薪の名前を象るのがやっとだ。

 感激だった。
 薪に財産と呼べるものが殆ど無いことは知っている。だが目録はこの際どうでもいい。遺産は青木に残すと、それが当然だと、薪が思ってくれることがうれしい。
 遺産は単なる資産ではない。自分亡き後、生きていくのに役立てて欲しいと願って残すものだ。いわば愛情の置き土産。自分がこの世を去るとき、それを託すべき相手は青木しかいないと薪は思ってくれている。
 薪の中で自分は、彼が死ぬ時まで傍らに在る存在になっている。その事実がたまらなくうれしかった。

「薪さん」
 夢では抑えたはずの涙が我慢できない。青木はぽろぽろと雫をこぼした。
「ありがとうございます。オレっ……!」
「残りのローン、よろしくな」
 ……涙が止まらない……。

「セミナーは来週だ。泣いてる暇はないぞ」
 青木の肩で丸めたメディカル誌がパシリと音を立て、薪の講義は再開されたのだった。



*****



 青木のレポートに薪がOKを出してくれたのは、夕方だった。
「まあ、こんなもんだろ」と薪は軽く言ったが、内容は全然軽くない。資料も含めて20枚強、これではレポートではなく論文だ。勉強会のレベルじゃない。少なくとも、これまでにこんな手の込んだレジュメを用意した捜査官はいない。

 眼鏡を押し上げ、眼精疲労を訴える目頭を揉んでいると、薪がコーヒーを淹れてきてくれた。香りが立って、青木の鼻孔を心地よく刺激する。一口含むと、凝り固まった肩が解けていく。リラックスにこれ以上の飲み物はないと思えた。
「腕を上げましたね」
 青木が褒めると薪は軽く首を振り、
「まだまだ。おまえには敵わん」と控えめに微笑んだ。

 それから少しの間、二人とも黙ってコーヒーを味わった。飲み終えると唐突に、薪が質問してきた。
「どんなだった?」
 前置きも主語も無しに、いきなりの疑問符。薪の言葉足らずはいつものことで、だから青木はもうすっかり慣れっこになってしまった。この時も青木は、薪の質問の意味を正確に捉え、それに相応しい答えを返した。
「年相応、て感じですかね」
 自分は中年オヤジに、薪さんは認知症になってました、とはとても言えず、青木は曖昧な説明に留めた。それを薪はどう取ったのか、ふふっと楽しそうに笑うと、「よかった」と呟いた。

「僕の方がずっと年上だからな。きっとしわくちゃの頑固ジジイになってたんだろうな」
「いえ、薪さんよりもオレの方がヤバかったです。剃り込み入れたわけでもないのに額がここまで広がっちゃって。おなか周りもあと5センチでメタボだって嘆いてました」
「ははっ。おまえの叔父さんの遺伝子、強そうだもんな」
 福岡に住んでいる青木の叔父は、ハゲ・デブ・お節介の三高ならぬ三重苦。彼と話していると不愉快になる確率は非常に高い。叔父には悪いが、そんな人と外見だけでも似たくはないのが本音だ。
「正夢になったらどうしよう」
 真剣な表情で悩み始めた青木を、薪のニヤニヤ笑いが包み込む。青木の困った顔を見るとテンションが上がる、薪の悪い癖は相変わらずだ。

「年は取りたくないですねえ」
「ぷ。バカなことを」
 思わず漏らした青木に、薪は吹き出すように笑った。いつまでも若くいたいと思うのは人類永遠の夢だが、薪のようなコチコチの現実主義者にとって、年を取るのは自然なこと。それを止めたいと思うこと自体、バカバカしいのだろう。
 薪にそう言われると、あの夢が自分の未来図であることは確定のような気がして、青木はいささかげんなりする。薪はきれいなままだったけれど、自分のビジュアルは悲惨なことになっていた。あれで薪がボケてなかったら確実にフラれてる。そんな未来、実現させてなるものか。

「で、でもですね、アンチエイジングは今や世界的に研究が進められてて、近い将来きっと」
「青木」
 空になったコーヒーカップを弄っていた青木の手に、薪の細い手が重なった。うっすらと静脈の這う手の甲に、くっと指の筋が浮き上がる。青木の手をしっかりと握って、薪は言った。
「僕たちが一緒に年を取れるのは、幸せなことだ」
 薪の言葉の意味を悟って、青木の鼻の奥がきゅうっと痛んだ。表情に出してはいけないと、思いつつも自然に眉根が寄る。薪はそんな青木の不甲斐なさを慈しむように、やさしく微笑んでくれた。

 ――薪には、一緒に年を重ねたい相手がいたのに。
 その相手の時間は止まってしまった。薪がその手で止めてしまった。
 だからこそ。
 こうして青木と一緒に一日一日老いて行くことが、薪にとってはこの上なく幸せなことなのだ。

「薪さん」と彼に手を伸ばせば、薪はするりと身を躱す。ぽんと弾くように青木の手を放して、ソファから立ち上がった。
「さて。夕飯の買い物に行くか」
 何でもないことのようにはぐらかしたけれど、季節は夏。昔ほどではないにせよ、薪は少しだけ情緒不安定になる。だけど決して認めようとはしないから、青木も気付かない振りをする。この季節特有の空々しさ、でもそれは毎年、少しずつ薄まっている気がする。

「なに食いたい?」
「ホットプレートで焼肉とかどうですか」
「よし。じゃ、今夜はビールだな」
「いいですねっ」
「ニンジンたっぷり焼いてやるから。残さず食えよ」
「ええ~……」
 青木は思い切り顔をしかめて不満の声を上げたが、そんなものはどこ吹く風。薪は、ははは、と笑いながら先に階段を下りていく。

「ニンジンはともかく、ホットプレートだと焼き野菜も美味しいですよね」
「そうだな。旬の野菜っていうと、ピーマン、ナス、トウモロコシ。アスパラとかズッキーニも意外と……青木?」
 マンションの中庭で薪が立ち止まる。いつの間にか青木とは5メートルほど離れていて、それは青木がエントランスの出口で立ち止まってしまったせいだ。

「あ、すみません。あんまりきれいだったから」
 青木が答えると薪は迷いもなく前を向き、ああ、と納得したように上を見た。
 青木が見惚れていたのはいつものように薪の姿だったが、彼の間違いを正すことはしない。夕陽に照らされた薪の後ろ姿は天空から降り注ぐ光の粒子が集まって形作ったかのように眩しかったけれど、彼が得心した夕焼け空も十分な美しさだったから。
「うん。きれいだな」
「ええ。本当に」
 夏の夕暮れはカタルシスな美しさ。濃い朱色に染め上げられた空と、塊になった黒い雲が炎による浄化を連想させる。火の粉が舞うごとく金色に光る細雲の波。それがどこまでも続いている。

 先刻、夢で岡部を送った後に見上げた空はもっと穏やかだったけれど、同じくらいきれいだった。20年後も褪せることなく、そこにあった。

 この美しさは不変のもの。人が、街が変わっても、変わらずそこに在り続けるもの。
 できることならオレは、この空のようになりたい。どんな変化にも動じず、決して意固地になることなく、傍らにあるのが自然な人間に。

 あの夢のように。
 薪が自分とのことを忘れてしまう日が来ても。例えばもっと先の未来、青木一行と言う人間そのものを忘れてしまったとしても。
 それでもオレは、あなたの傍にいたいんです。ずっと一緒にいたいんです。
 だってオレたち、家族でしょう?

「薪さん」
 うん? とこちらを仰ぎ見た薪に、呼びかけておきながら青木はそれ以上、言葉を継ぐことができない。なんだか胸がいっぱいになって、息を吸うのもつらい。仕方なく青木は、薪に向かって手を差し伸べた。訝しそうに眉を潜めながらも、薪がそこに自分の手を載せてくれる。

 ――二人で一緒に、お爺さんになりましょうね。

 声に出す代わりに。
 青木は薪の手を強く手を握った。






 遠い遠い未来の空も、今日と変わらず美しいに違いない。
 そこにあなたがいるだけで、きっと。


―了―


(2016.8)



 SSの現在の在庫は、これで最後です。
 現場が終わって、新しいお話が書き上がるまで、ブログはお休みします。
 春には帰ってこれると思うので、そのときはまたよろしくお願いします。


 ご訪問くださったみなさまに、今年もいいことがたくさんありますように♪(o・ω・)ノ))

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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