告(1)

 青木くん、告ります。
 応援よろしくお願いします。





告(1)






 第九の仕事にも波はある。
 MRI捜査が必要な凶悪犯罪が立て続けに起こったときなどは、睡眠時間を削ってモニターを見続けるので、みな一様に目が血走って修羅場のような状態になる。冷たいおしぼりと目薬、それとアン○ルツはこの研究室では必需品だ。
 画像を停止したり拡大したりの作業はすべてマウスで行われるため、右の肩はガチガチに固くなる。長い時間MRIの操作をしていると首の後ろがちりちりしてきて、まるで車酔いでもしたかのような感覚になる。第九の職員のほとんどが、慢性の肩こりに悩まされている。
 一転、普通の事件しか起きず、捜一の活動だけで順調に犯人が検挙されていくときもある。
 そんなときは以前の事件の報告書を整理したり、システムのテストをしたりして、わりと普通の会社のようなルーティンワークになる。定刻に帰れるし、溜まった有給休暇を消費したりして人並みの生活ができるのだ。
 ただ、それはたいてい長く続かない。短い休暇というやつだ。

「はい。はい。じゃ、6時に」
 あの囮捜査の一件以来、急に第九に協力的になった竹内警視の計らいで、MRI捜査を必要とする適正な事件以外の雑用はあまり第九に来ないようになった。

 昨年の夏に起こった不幸な事件のせいで第九の立場は非常に悪いものとなり、これまでは他の部署から様々な雑用を押し付けられることが多々あった。普通の事件の資料作成や押収品の突合せ作業など、本来の仕事以外のことも手伝わされたりしていたのだ。
 その度に薪が食ってかかっていたのだが、相手が竹内あたりならともかく、所長の田城がそれを引き受けてしまうと立場上断るわけにもいかない。田城としては第九と警視庁の関係を少しでも改善しようとしてのことなのだろうが、薪の考え方とは正反対だ。
 第九の失地回復は実績で勝負する。薪はそう心に決めている。
 しかし、実際に預かってきてしまった仕事を返すこともできない。今度は所長の立場がまずくなるからだ。
 結局、引き受ける羽目になる。
 ぎりぎりと歯噛みをしながら、室長自ら雑務を片付けているのを、第九の職員たちは何度も見ている。
 手伝います、と声を掛けても「これはおまえたちの仕事じゃない」と言って抱え込んでしまう。そんなときは腹心の部下、岡部の出番だ。半ば奪うようにして、薪の手から資料を捥ぎ取ってくる。
 エリート集団の第九のこと、普通のPCで作れる資料など、取り掛かれば他の部署の半分の時間で作り上げる。もともと難しい仕事ではないのだ。
 しかし、そんな部下たちを見て、薪は少しだけしょげた顔になる。自分の不甲斐なさのせいで部下に余計な仕事をさせている―――― そんな風に思ってしまうらしい。そういう室長の自責の強さを、職員たちはみな心配している。

「いえ、そちらまでお迎えにあがります。よろしくお願いします」
 いまの第九は短い休暇中だ。
 急ぎの案件もなく、こうしてアフターの約束もできる。
 青木は携帯電話を切り、報告書の束をデスクの上できちんと揃えた。昼休みの時間を利用して今日の提出分の作業を進め、定時退室を確実なものにする作戦だ。
 他の職員たちものんびりしている。システムの自動バックアップの具合を見ながら、今日はどこかへ飲みに行こうか、などと話している。
 
「青木、おまえもいくか?」
「すいません。オレ、先約あるんで」
「女か?」
「ええ、まあ一応。でも、そういうんじゃ」
「三好先生か?」
 相手の名前を出されて、根が正直な青木はびっくりしてしまう。この先輩たちはいつの間にかいろいろな情報を仕入れていて、青木の行動はすべてお見通しのようだ。
 
「はあ。……あの、薪さんには内緒にしてください」
「なんで。内緒にしなきゃならないようなこと、するつもりなのか?」
「まあ、ことと次第によっては」
「おまえの趣味も変わってるよな」
「いや、ですからそんなんじゃ」
 誤解を受けているようだが、本当のことを話すわけにもいかない。曖昧に言葉を濁してその場を離れる。
 雪子に会う目的は、彼女自身にあるわけではない。それは彼女もよく分かっている。青木に下心があるようなら、彼女は誘いになどのってはこない。

 雪子は、青木の気持ちを知るたった一人の人物だった。
 まだ誰も知らない、秘められた想い。

 その人の姿を目で追うようになって、どのくらいたった頃だろう。雪子は女らしい鋭さで、青木の恋情を見抜いた。
『薪くんのことが好きなんでしょう』
 ずばりと言い当てられて狼狽えたものの、雪子は誰にもそれを喋らなかった。
 女とは思えない口の固さである。そればかりか薪の大学時代からの友人でありライバルでもある彼女は、青木にさまざまな助言をしてくれたのだ。

 最近起きた事件のせいで、青木は薪に自分の気持ちを知ってもらいたいと強く思うようになった。それは青木の脳裏に焼きついて離れない、一枚の写真に起因するものだ。
 あの写真を見つけたとき、薪の意中のひととはかつての親友ではないかと直感した青木だったが、その予想は的中した。先月のおとり捜査の際、ドラックで正気を失った薪がとった行動がそれを証明した。

 薪は、未だに死んだ鈴木のことを想っている。
 だが、死んだ人間相手にどれだけ愛を語ろうと、それは無駄というものだ。鈴木を忘れろとまでは言わないが、薪には現実に生きている人間に目を向けて欲しい。現実にも薪を愛しく思っている人間が存在していることを知ってほしい。
 薪に自分の気持ちを伝えたい。今日はそのための作戦会議なのだ。協力してくれる友人のために、食事くらい奢るのは当たり前だ。

 好きだ、と言ったら、あのひとはどんな顔をするだろう。

 困った顔をするか、からかうなと怒るか、本気だと分かってもらうにはどうしたらいいのか。
 告白のシチュエーションをいくつも思い描いて、青木は自然に微笑んでいた。


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告(2)

告(2)







 定刻、15分前。
 岡部が段ボール箱を抱えて、青木のデスクにやってくる。
「青木、これやっといてくれ」
 中を開けてみると、ぎっしりと書類やらCDやらが詰まっている。すべて過去の事件の捜査資料だ。
 実は第九のスパコンは、2年前にシステム移行している。その為それより前に起きた事件の資料は、こういう時間に余裕のあるときに新しいシステムに入力して、データベース化しておく必要があるのだ。
 「これ、今日じゃなきゃ駄目ですか?」
「べつにかまわんが」
 岡部が少し不思議そうに青木を見る。
「めずらしいな。なにか予定でもあるのか?」

 春ぐらいから、青木はいつも遅くまで残って、自主訓練をしているのが当たり前のようになっていた。
 自己研鑽の方法は限りなくあるが、MRI操作の練習をしたり専門書を読んだり過去の事件資料に目を通したりと、研究室にいなければできないことが多いため、居残りのような形になっている。
 早く一人前になりたいという気持ちが青木にその努力を続けさせている、と先輩たちは思っていたが、青木にはもっと大きな理由があった。
 例え急ぎの案件がなくても8時頃まではここにいる仕事熱心な誰かと、ふたりきりになれるチャンスだからだ。
 ふたりきりと言っても、青木はモニタールームで、薪は室長室。間には薄いが、堅固な壁がある。
 しかしそこにはドアというものがあって、薪のところへ顔を出すことも時には可能だ。美味いコーヒーを飲みたくなった薪が、青木のほうに来ることもある。そんなときには青木の学習の進み具合を見てくれたりもする。青木としてはこのささやかな幸せを心の支えにして、難解なMRIシステムの専門書に取り組んでいるのだ。

「ええ、ちょっと」
「青木の奴、三好先生とデートなんですよ」
 曽我が、人懐こい笑顔でさらりと暴露する。
 たしかに、室長には内緒にしてくれと言ったが岡部にまで喋るなとは言ってない。
 だが。
 岡部の目が青木を見た。むっつりと黙り込む。
「今日中にやっとけ」
 ……ひどいです、岡部さん。

 作戦会議の日時変更を雪子に伝えるため、青木は携帯電話を取り出した。


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告(3)

告(3)






『青木の奴、三好先生とデートなんですよ』
 モニタールームから、曽我の声が聞こえた。
 薪の手が、一瞬こわばる。あやうく書類を取り落としそうになった。

 なぜか、不意に報告書の内容が理解できなくなる。
 胸がざわついて、息苦しい。

 前々から気付いてはいたのだ。
 なんだかんだと理由をつけて、青木はしょっちゅう雪子の所に行きたがる。解剖所見を取りにいくのも、いつも青木の役目だ。
 青木は鈴木の脳を見ている。鈴木の脳内に残っていたであろう雪子を見ているのだ。惹かれるのも無理はない。雪子にしてみても、少し年は離れているが、鈴木の面影を残す青木のことを憎からず思っているに違いない。近頃のふたりの様子を見ていれば、だれにでも察しがつくことだ。
 だいたい、自分は雪子を託す男として、青木のことを候補に入れていたはずだ。
 忙しさに取り紛れて忘れていたのか、それとも鈴木に似ている青木を雪子に取られるのが嫌になって、わざと忘れた振りをしていたのか。後者だとしたら……また雪子に頭が上がらなくなってしまう。

 椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見上げる。なんだか書類が見たくない。
 机の一番下の引き出しから、眠るときの必需品である本を取り出す。中を開けると、一枚の写真が出てくる。

 親友の笑顔。
 自分が殺した―――― 自分が雪子から永遠に奪った、その笑顔。

 雪子には幸せになって欲しい。きっと鈴木もそれを望んでいる。

「よかったな、鈴木。雪子さんに恋人ができたぞ」
 頬杖をついて背中を丸め、写真に話しかける。ちいさな声。
「青木はまだ若くて頼りないがいい奴だ。きっと雪子さんを幸せにしてくれる」
 写真の笑顔はほっとしたようにも見えるし、いくらか寂しそうにも見える。
「これで安心だろ。後は僕がそっちに行くまでもう少し待ってろ。そっちに行ったら……何回でもおまえに殺されてやるから」
 そう呟いて自虐的に微笑むと、薪は写真を元通りにしまいこみ、仕事に戻った。散逸しようとする意識を必死に掻き集めて。



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告(4)

告(4)







 岡部が持ってきた大量の書類は、いくら処理をしても減らないように思えた。
 書類の内容をそのまま打ち込むだけだから、難しい仕事ではない。ただ、量が半端ではなかった。オペレーターに任せられればいいのだが、内容の秘密保持に特別な配慮を要する第九の資料である。部外者には見せられないのが現実だ。やはりこれは、一番下っ端の青木の仕事である。
 あれから2時間あまり。時刻は8時を回っている。
 そろそろ夜食の買出しに行くか、と青木が思っていると、室長室から薪が出てきた。
 青木の顔を見て、ひどく驚いた表情をしている。モニタールームに人がいるとは思わなかったようだ。

「おまえ、なんで残ってるんだ?」
 こちらへ歩いてくる。鞄を持っているところを見ると、自宅へ帰るらしい。
「岡部さんに頼まれました」
 青木の後ろに回って、パソコンの画面を覗き込む。内容を見て取ると、ますます不思議そうな顔になった。
 本人は自覚していないようだが、不意を衝かれた時や驚いたとき、薪はとても幼い貌になる。
 目が大きく開いて、唇は少しすぼまる。とっさのことに冷徹な仮面が外れて素顔がのぞく感じだ。
 いつもは一直線に吊り上がった眉が、大きな目にあわせてやさしいカーブを描く。たったそれだけで、こんなにもかわいらしい印象に変わる。青木の大好きな表情のひとつだ。

「岡部には僕が言っておくから、早く帰れ。これは急ぎの仕事じゃない」
「でも」
「だれか、待たせてるんじゃないのか」
 いつの間にかばれていたらしい。この上司には何事も隠せないようだ。
「大丈夫です。相手には連絡を入れましたから」
 青木は正直に言った。
「それに、昔の捜査資料を読むことはいい勉強になります。岡部さんに言われたから、嫌々やってるわけじゃありません」
 仕事の進捗度は2時間かかってやっと3分の1。終了予定時刻は、午前1時といったところか。先刻の薪の可愛い顔をエネルギー源にして、今夜は頑張るしかない。
 が、薪は意外なことを言い出した。
「貸せ。僕が手伝ってやる」

 薪は床に鞄を降ろすと、机の上の書類の束を手に取った。
 隣のデスクに着き、机上のパソコンを立ち上げる。IDを打ち込んでシステムにアクセスする。
「そんな、けっこうです。それこそ岡部さんに怒られます」
「いいから貸せ」
 薪は強引に手を伸ばすと、積み上げられた書類の約半分を自分の机に運んだ。オペレーション用の原稿立てにセットすると、ものすごい速さで打ち込み始める。
「はや……」
 青木もパソコン歴は長いから、タイピングの腕にはそこそこ自信があるが、薪の速さは神がかり的だ。自分の3倍は速い。
 青木の度肝を抜かれた様子をちらりと見て、薪はいつもの少し意地悪な微笑を浮かべた。
「身長以外で、おまえが僕に勝てることがあるとでも思うか?僕がおまえの何倍生きてると思ってるんだ」
 ……倍は生きてません。
 しかし、社会人になってからの年数なら確かに10倍以上だ。自分はまだ薪にとってはヒヨコに過ぎない。少しでも薪の負担を和らげたいといつも願っているのに、実際は逆に助けてもらうことばかりだ。それがくやしい。

「薪さん、おなか空きません? 夜食買ってきましょうか」
「ああ」
「何がいいですか?」
「なんでも」
 そう言われると迷ってしまう。
 しかし、近くのコンビニで買えるものなどたかが知れている。薪の好みそうなシンプルなサンドイッチ。自分用にはおかかとシャケのおむすび。青木の予想に反して、薪が選んだのはおかかのおむすびだった。
 薪のリクエストを受けて、コーヒーを淹れる。
 今日はモカのストレート。ミルクも砂糖も入れない。コーヒーだけは薪の好みを覚えた。それを夜なので、少し薄めに淹れて差し出す。

 青木がコンビニに走っているうちに、薪は自分の机に運んだ分の仕事をあらかた終えていた。給湯室でコーヒーを淹れている間に、今度は青木の机の書類に手を伸ばす。信じられない速さだ。
 目はパソコンの画面を見たまま、片手はキーボードを叩きながら、薪は器用におむすびを食べてコーヒーを飲む。食べる間くらい休めばいいのに、と思うがいつも室長はこの調子である。ゆっくり食事を摂っている姿など、あまり見たことがない。
 薪のおかげで終了時刻は大幅に早まった。10時前にはすべての打ち込みを終えて、システムの電源は落とされた。
 
「ありがとうございました。おかげで助かりました」
 青木が礼を言うと、薪は腕時計に目を落とし、少しためらってから顔を上げた。
「食事はムリでも、酒には誘える時間だ」
「え? いいんですか?」
 思いもかけない薪からの誘いに、青木は満面の笑顔になる。書類のお礼に奢ります、と言うと何故か怒られた。
「僕を誘ってどうするんだ。雪子さんだ。彼女は夜型だから、きっとまだ起きてる」
「え……いや、べつに三好先生はどうでもいいです」
「どうでもいいって、おまえ」
「三好先生とは、明日の昼に会うことになってますから。それより室長、本当に何かお礼をさせてください」
 青木が何軒かの店の名前を挙げると、にべもなく断られた。
「僕は騒がしいところは嫌いだ」
「じゃ、静かなバーかどこか」
「帰って寝ろ」
 冷たく言い捨てて、薪は鞄を取り上げた。セキュリティーのボタンを押して、研究室を後にする。

 2人で廊下を歩く。薪は一言も喋らない。
 普段からそれほど口数の多いほうではない。捜査会議のときはとても流暢に喋るが、無駄口は叩かないのが薪の仕事のスタイルだ。

「僕への礼なら、仕事で返せ。早く一人前になるんだな」
 玄関口で別れるときに、そう言われた。家まで送らせてもくれない。
 相手にされてない―――― きっぱりとした拒絶を湛える細い背中を見送って、青木は大きなため息をついた。


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告(6)

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「うーん。難攻不落ってカンジね、それ」
 作戦会議は、次の日のランチタイムに行われた。場所は研究所の近くのハンバーガーショップである。
 協力してもらうのだから、もう少し値の張るものでも良かったのだが、この店を選んだのは雪子だ。ここのオリジナルソースがおいしいのよ、と彼女は気さくな笑みを見せた。まだ社会人1年生の青木の懐具合を考慮して、わざとそうしてくれたのだろう。さりげない気遣いができるところは、さすがに大人の女性だ。

「そうなんですよ。相手にされてないって言うか」
 声のトーンを落として、雪子は青木にだけ聞こえるように喋る。話の内容が内容だからだ。
「ま、そうでしょうね。薪くんて別に、ゲイじゃないから」
「だってこの前の事件のとき、クスリのせいとはいえあんな。とても経験がないとは思えませんでしたよ。それにその……」
 鈴木との過去にそういうことがあったらしい、と教えてくれたのは雪子本人である。
 雪子と鈴木が付き合い始める前のことだというから、10年以上も昔の話だ。しかし、薪は鈴木への思いをずいぶん長いこと引きずっていたようだった、と雪子は語った。
 
「克洋くんは特別。ていうか、克洋くん以外の人間は、男も女も眼中にないって感じ?」
 それは薪自身が、とびきり優秀な人間であるからだろうか。
 東大の法学部を首席で卒業。警察庁に入り、6ヶ月間の警察大学を経て捜査一課に配属されると、それまで迷宮入りとされてきた難事件を次々と解決して、エリート街道を驀進。27才のとき異例の早さで警視正に昇任。2年後に発足した第九の室長に任命されて現在に至る。
 観察眼の鋭さと洞察力、総合的な推理能力は天才とまで称される。
 見た目は華奢だが、鍛錬はしている。空手と柔道はともに2段の腕前。相手が3人くらいなら余裕で倒せる。そのうえあの容姿。普通の人間に魅力を感じないのも、仕方ないかもしれない。
 その薪が一番信頼し、恋までしていた相手が、雪子のかつての婚約者だった。

「鈴木さんて、すごいひとだったんですね」
「どうかなあ。わりと普通だったと思うけど。薪くんが人並み外れてたから、そばにいる克洋くんが普通に見えたのかもしれない。でも、とにかくあったかい人だったの。一緒にいると、すごく安らげるの。薪くんもきっとそういうところに惹かれてたんじゃないのかしら。
 ま、克洋くんはあたしにゾッコンだったけどね」
「薪剛に勝った女、ですか」
「他のことは何ひとつ敵わなかったけどね。薪くん、きれい好きだし料理もうまいし。克洋くんがよく冗談で『雪子じゃなくて薪を嫁にもらう』って言ってたけど、マジでシャレにならないわよ」
 本当に「できないことなどない」のだ。これでは自分が相手にされないのも無理はない。
 
「オレ、自信ないです。大学は一応薪さんの後輩ですけど、そんなに成績良くなかったし。仕事もまだまだ半人前で、あの人の足引っ張ってばかりだし。やっぱりオレには『高嶺の花』ですよねえ」
「そう思って告れない人、多いと思うわよ。でも薪くんが望んでるのって、仕事ができるとか頭がいいとか、そういうことじゃないわよ、きっと。
 ほら、人って自分にないものを求めるじゃない? 薪くんに無くてあなたにあるものって、なんだと思う?」
 薪にはできないが、自分にはできるもの――― そんなものがあるのだろうか。

 ひとつだけ確実に勝てるとすれば。
「身長?」

 やっぱりダメかも―――― 青木の答えに、雪子は思い切り脱力して大きく嘆息した。


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告(7)

告(7)







 昼休みの間に、薪は街に出ていた。
 右手に、電気店の買い物袋をぶら下げている。中には仕事で使うCDが500枚ほど入っている。
 もちろん、買出しなどは室長の仕事ではない。が、ここのところずっとデスクワークばかりだったので、少し外の空気に当たりたいと言って出て来たのだ。買い物は、そのついでである。
 いつの間にか、秋もすっかり深まったようだ。
 銀杏並木も鮮やかな黄色に色づいて、薪の目を楽しませる。秋風が冷たいが、普段室内にこもってばかりいる身には快い刺激だ。道行く人々のように身を縮込めたりせず、ゆっくり歩いて職場へ戻る。

 あと100mほどで研究所の敷地に入るというところで、薪は足を止めた。

 ガラス張りの店の中で、顔見知りの男女がハンバーガーを食べている。顔を近くに寄せ合って、いかにも親密そうだ。
 赤く縁取られた唇が動いて、何事か男に耳打ちした。男はびっくりしたような顔をするが、すぐに笑顔になる。なにやらしきりに納得して頷いている様子だ。
 別に珍しい光景ではない。ただ男女で話をしているだけだ。キスをしているわけでも、抱き合っているわけでもない。
 しかし、何故か足が動かない。
 冷たい風の中で、立ち竦むことしかできない。
 時刻はもうすぐ1時を回る。午後の仕事が始まる時間だ。このCDがなくては困るだろう。
 ――― でも、動けない。

 携帯電話の呼び出し音で、薪は我に返った。
 着信画面を見る。岡部からだ。薪の帰りが遅いのを心配してかけてきたのだろう。
「薪だ。あと3分で着く」
 いいタイミングだ。おかげでわけの分からない呪縛が解けた。

 電話の向こうで、岡部がアイスを買いに行くが食べますか、と聞いてくる。
「え? アイスクリーム?……パシリか、僕は」
 わざと聞き違えた振りをして、絡んでみる。岡部の慌てる様子がおもしろい。
「はは。いい、出たついでだ。僕が買ってくる」
 ご注文は? とおどけると、室長にそんなことさせられません、と真面目な答えが返ってくる。
「じゃ、適当に買って帰るぞ」
 相手の返事を待たずに電話を切る。今頃青くなっているだろう。
 生真面目な部下の姿を想像して、薪はくすりと笑い、もう一度店の中を見た。

 相変わらず楽しそうに話す2人。
 だが、今度は大丈夫だ。さっきのおかしな感覚は襲ってこない。

「女性を誘うのに、ハンバーガーはないだろう、青木」
 後で女性の口説き方を教えてやらなくては、と余計な老婆心を携えて、薪は向かいのアイスクリームショップに入っていった。


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告(8)

告(8)






「とりあえずは、デートに誘ってみたら?」
 雪子のアドバイスは続いている。
 何のかんのと言って面倒見のよい彼女は、この若い捜査官を放っておけない。彼が少し、鈴木に似ているせいかもしれない。が、本心は『おもしろそうだから』だ。

「昨日手伝ってもらったお礼に、何かご馳走したいとは思ってるんですけど」
「薪くんの好みは知ってる?」
「フランス料理に赤ワイン、てカンジですよね」
 ブブー、と雪子は胸の前に指でバツマークを作って見せた。
「薪くんの好みは日本食よ。パンよりごはん、パスタより蕎麦。ワインより日本酒よ」
 似合わない。が、雪子が言うのだから本当なのだろう。そういえば昨日は、おかかのおむすびを食べていた。

「克洋くんがよく言ってたわ。薪くんは見た目と中身のギャップが大きいって。自分がどういう風に人から見えるのか、分かってないからだって」
「じゃ、寿司屋ですかね。騒がしいところは嫌いだって言ってましたから、居酒屋とかは避けたほうがいいですよね。三好先生たちとは、どんなお店に行ってたんですか?」
「ん~、たいていは薪くんの家で飲んでたわね、あの頃は。薪くんが料理を作って、あたしと克洋くんは食べるの専門。美味しかったなあ、薪くんの手料理」
 本当に何でもできるひとだ。
 青木も自炊はしているが、人に食べさせるほどの腕はない。それに、まだひとりで自宅を訪ねるほど、親しくなっていない。

「薪くんの好物は、お刺身かな。白身の淡白な魚。平目とか、鯛とか」
「それから?」
「お酒は冷酒ね。吟醸酒みたいなやつ。口当たりのいいのをガンガン飲ませると、面白いことになるわよ」
「酒癖が悪いんですか?」
「やってみればわかるわよ。でも、2人きりのときにしなさいね。周りに迷惑だから」
 なんだか詳細を訊くのが怖いような気がする。

「あ、それと。これはとっておきのネタ」
 そういって、雪子は青木の耳元に唇を寄せる。小さな囁き声。
「薪くんの性感帯。ここ攻めれば一発だから」
 それはぜひ聞きたい。

 今までも雪子は、薪に関する様々な情報を青木に提供してくれた。
 背が低いことを気にしていること。女みたいな顔をからかわれるのが大嫌いなこと。(自分では充分男らしいと信じている) 色の好み、服の好み、好きな作家―――― 他愛もないことだが、薪のことなら何でも知りたい。

 薪に憧れて、第九に入ってきたのだ。
 憧れはすぐに尊敬に変わった。傍で仕事をすればするほど、薪の凄さが分かる。畏怖と憧憬―――― 気がつけば、彼の後ばかり追うようになっていた。
 真摯な態度で事件に取り組む凛々しい姿に心を奪われる。決して妥協しない、真実を探る瞳。どんな画像にも顔色ひとつ変えない、見かけによらない豪胆さ。
 氷の室長などと噂されているが、実際はそうでもない。ときおり垣間見せる激情家の片鱗は、強い正義感に裏打ちされている。平和な社会を創るため、第九を、自分についてきてくれる部下たちを守るため、自分のすべてを捧げる―――― その潔さが好きだ。

 雪子には、感謝している。
 出会ってすぐに青木の気持ちを見抜いた彼女は、なにかと相談に乗ってくれる。頼りになる姉のような存在だ。

「じゃ、がんばるのよ」
 昼休みが終わりに近づいて、雪子は先に席を立つ。ごちそうさまと手を振って、さっそうと歩いていく。聡明で美しい女性。
 薪と出会っていなかったら、好きになっていたかもしれない。
 しかし、自分の心の中はすでにあのひとのことで一杯だ。他のものが入る余地はない。
「はい。がんばります」
 雪子の後姿に返事を返して、青木はすっかり冷めてしまったハンバーガーを口に放り込んだ。



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告(9)

告(9)






 第九には『お宝画像』と称されるライブラリがある。
 そこには、今までのMRI捜査の中でも群を抜いて難解な画像が保存されている。
『お宝画像』の画は凄まじい。
 戦慄、震撼、畏懼―――― どの言葉も、その画を見たものが受ける衝撃を表現しうるものではない。が、惨い画から目を背けずに隅々まで確認を行わなければ、事件を解決できる手がかりが現れない場合もある。残酷な画に慣れることは、第九の職員には不可欠な鍛錬なのだ。
 青木はもともとスプラッタやホラー映画は苦手である。ここに配属される前は、まさかこんな画ばかりを毎日毎日見続ける羽目になるとは思っていなかった。それでも青木が第九を辞めなかったのは、やはり薪の存在が大きい。

「しっかりしろ、青木! このくらいで吐くな!」
 胃の中身が逆流してきて、青木は慌てて口を押さえた。
 モニターから目を背け、込み上げてくる空えずきが治まるのを待つ。
 イライラした口調で、薪が怒鳴っている。自分の怯儒のために室長を怒らせてしまうのは不本意だが、生理的な現象には逆らえない。

 ……なんでこんなことになったんだろう。

 定刻の10分前に、青木は勇気を振り絞って室長室に出向いた。「昨日のお礼に」と、食事に誘うつもりだった。
 本人を目の前にしてなかなか言い出せずにいると、意外なことに薪のほうから「予定がなければ自分に付き合え」と言われた。
 例えどんな予定があったとしても、薪の誘いを断れるわけがない。どこへでもお供します――― そう答えた。
 そして……この有様である。

「ったく、少しは慣れろ。もうすぐ1年だろう」
 薪のほっそりした手が背中を擦ってくれる。言葉はきついが、本当はとてもやさしい。
「すこし休め」
 モニターの画像を草原の風景写真に切り替え、薪は席を外した。
 青木が吐き気を覚える画にも、薪はまるで平静だ。
 こんなにグロい画を眉ひとつ動かさずに見ることができるなど、薪の繊細な外見からは想像もつかない。しかし、それは鍛錬によるもので、薪の冷酷さの表れではないことを第九の部下たちはみな知っている。
 最初のころは室長もこうだったのかな、と思いながら深呼吸をする。背中にべったりと冷や汗をかいている。息をつめていたせいか、顔が火照る。
 
「大丈夫か。ほら」
 目の前に缶ジュースが差し出される。どうやら外の自販機まで買いに行ってくれたらしい。
 吐き気がするときに冷たい飲み物はうれしいが、申し訳ない。
「すみません、室長。……オレンジジュースですか?」
「コーヒーは嘔吐感を増大させる。こういうときは、ジュースのほうがいいんだ」
 実経験に基づく助言。やはり薪さんも昔は吐いてたんだな、と失礼なあて推量をする。
「言っとくが、僕はお前みたいに吐かなかったぞ」
 見抜かれた。
「僕じゃなくて鈴木が」
 隣の席について、頬杖をつく。くすりと含み笑い。
「よく介抱してやったっけ」
 青木には見せたことのないやさしい瞳。親友のことを思い出すときだけ、薪はこんなやさしい顔になる。
 鈴木さんが羨ましいです――― そんなセリフが、口をついて出そうになる。が、言ったら最後、薪の微笑は消し飛んでしまうだろう。
 だから青木は何も言わない。ただ薪の顔を見つめている。

「落ち着いたか?じゃ、次だ」
 ……まだやるんですか。

 次の映像はスプラッタではなかった。ホラー映画の方である。
 幽霊やわけのわからない妖怪が、ばんばん出てくる。視覚者は幻覚に取り付かれていたらしい。
 現実のような幻覚に、青木はごくりと生唾を飲み込んだ。さっきかいた冷や汗のせいか、背中がひどく寒い。
 部屋の隅の暗がりが、もぞりと動いたような気がする。
 マウスを操る手がこわばって、うまく動かせない。暗闇にはなにか禍々しいものが隠れていて、ちょっとでも油断したら襲い掛かってきそうだ。
「いいか。この幻覚だらけの画のポイントは、そのルーツを探ることだ。日常、眼にするものから幻覚は生み出される。つまり視覚者はこのとき、幻覚の元になる何かを見ていたということだ。そこにこの事件の鍵がある。想像力を働かせろ。たとえばこの目玉の塊は……」
 せっかく室長自ら講義をしてくれているのに、話の半分も頭に入ってこない。視覚者の恐ろしい気持ちが伝染してきて、呼吸が苦しくなる。

 青木の様子を見て取って、薪が軽く舌打ちする。
 期待に応えたい。駄目な奴だと思われたくない。いつもそう願っているのに、現実は厳しい。

「仕方ないな」
 ため息混じりの薪の声。うなだれる青木の左肩に、す、と細いあごがのせられた。
 間近に、薪のきれいな横顔。
 すっきり通った鼻筋と、意志の強そうなきりりとした眉。長い睫に縁取られた大きな眼は、真っ直ぐにモニターに向けられている。
 華奢な両腕が前に回され、背後から抱きしめられる。薪の体温が伝わってきて、寒さが薄らいでいく。

「ほら、怖くなくなっただろう?」
 マウスに置かれた青木の右手の上に、小さなやさしい手が重ねられる。涼しげな室長のイメージとは違って、意外なほどに温かい。
「僕がついてる。おまえのことは、僕が守ってやる。だから、頑張れ」
「……はい」
 本来なら、自分のほうが守護者でありたい。いかにも冷徹な上司の顔をして、意外に脆いところのあるこのひとを守ってあげたい。
 だが、薪は自分よりはるかに大人だ。

 しかし、こう密着されては別の意味で集中できない……。
 青木の複雑な胸中を露ほども知らず、薪の講義は深夜まで続いた。




*****

 なかなか告らなくってすみません、イライラさせてすみません。
 もうちょっとだけ、お付き合いください。

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告(10)

告(10)






「薪さんに特訓受けてるんだって?」
 揶揄するような口調で、小池が話しかけてきた。まったく、ここの先輩たちは本当に情報が早い。
「ほんと、おまえは薪さんに気に入られてるよな」
「そういうんじゃないです。オレがあんまり出来が悪いから」
 訓練の間は怒られてばかりで、とてもそんなふうには思えない。室長と自分の実力の差をはっきりと思い知らされて、落ち込む日々が続いている。相手が薪でなかったら、とっくに逃げ出しているところだ。
 
「そんなことないだろ。おまえは着眼点がいいし、粘り強さもある。薪さんはおまえに期待してるんだよ。そりゃ、おまえは少し不器用で機械操作はいまいちだけど、経験をつめばもっとうまくなるさ。それより」
 一旦言葉を切って、小池はためらいがちに言う。
「薪さんが心配してるのは、おまえが視覚者や被害者に感情移入しすぎるってことだろ。MRIってのは、視覚者の主観に沿った画像なんだ。事実とは違うこともある。偏った状況証拠みたいなもんだ。そこから真実を見極めるのが大切なんだよ」
 少々皮肉屋ではあるが、小池は良き先輩だった。青木の良いところ足りないところをきちんと把握した上で、的確なアドバイスをくれる。
「室長の目は特別だ。どんな小さな情報も見逃さない。たった5分のMRIで、犯人を突き止めてしまったこともある」
 そんな凄い人がつきっきりで教えてくれるんだから、感謝しろよ―――― そう言った小池の口調には、明らかな羨望が現れていた。
 普段はわりと薪に対して辛辣な陰口を叩いている小池だが、本当のところは薪に憧れている。そうでなければ、唯我独尊を地で行く室長の部下ではいられない。

 時間外の訓練も今日で4日目。
 さすがに疲れを隠せない青木だったが、小池の励ましのおかげで元気が出てきた。とにかく単純な男である。
 今日こそ頑張って画像を解き明かし、室長に褒めてもらいたい。
 その一心で青木は、マウスを操る。大好きなひとのため、役に立つ人間になりたい。その思いがあるから青木は努力を続けられる。
 割り当てられた報告書をいち早くまとめ上げ、室長室に持参する。他に仕事がなければ、少し早いが訓練に入らせてもらえるよう薪に頼んでみよう。

 最近の第九の仕事柄、室長の机にはうずたかく報告書の山が築かれている。左端に置かれた飲みかけのコーヒーはすっかり冷めてしまっているようで、淹れ直しが必要だった。
 書類を読みふける室長の顔は、いつも通りに冷涼で平然としているが、いくらか目が赤い。連日青木に付き合ってくれているのだから、疲れも溜まっているだろう。

「室長。今日の夜食、何がいいですか? うなぎでも買ってきましょうか」
 華奢な指で報告書をめくりながら、薪は首を振る。亜麻色の髪が左右に揺れて、卵形の輪郭を彩った。
「今日は休みだ。おまえも疲れているだろう」
「いや、大丈夫ですよ。まだ若いですから」
 薪さんと違って、と言ったら殴られるかな、と心の中で舌を出す。青木の心を読んだように、薪の眉がぎりっと吊り上がった。
 睨まれる。
 沈黙。
「……すみません」
 このひとは自分の心が読めるのかもしれない。謝るのが勝ちだ。

「週末は、おまえにも予定があるだろう」
 そういえば、今日は金曜日だ。今夜なら薪を食事に誘えるかもしれない。
 雪子からの情報で、薪のお気に入りの店を何軒かチェックしてある。定刻で帰れるなら時間に余裕があるから、料亭で懐石料理もいいかもしれない。部屋を取って2人きりで、酒はもちろん薪の好きな吟醸酒を用意して――― そこで気持ちを伝えよう。

 誰よりもあなたを愛しています。何よりもあなたが大切です。
 あなたのすべてが好きで好きで愛しくて。

「あの、薪さん」
「今日は全員、定時退室だ。電話していいぞ」
 再び書類に目を落とす。青木の顔を見ずに、薪は言葉を継いだ。
「雪子さんを誘ってやれ」
 ……どうしてここで、雪子の名前が出てくるのだろう。どうして自分に彼女とのアフターを勧めるのだろう。自分は薪と一緒にいたいのに。

「ハンバーガーはやめとけよ」
 前言撤回だ。このひとは、自分の気持ちなど全然わかっていない。
「だいたい女性を食事に誘うのに、ハンバーガーはないだろう。今日はちゃんとしたレストランにしろよ。そうだ、雪子さんの好みは中華だぞ」
 薪の耳に入らないように細心の注意を払ったつもりなのに、いつの間にか誤解を受けている。他の者たちにはどう思われようと構わないが、彼だけは別だ。何とか誤解を解かなくては。
「どうして三好先生なんですか? こないだから薪さん、何か誤解してませんか?」
 つい口調が激しくなるのを、青木は止められなかった。普段ならそれほど怒りっぽい方ではないが、いい加減連日の疲れも溜まっている。

 薪は答えない。黙って書類をめくっている。
 腹が立った。
 いつもなら高潔な印象を与える薪の冷静な態度も、今は意地悪としか思えない。自分の主張をわざと聞かない振りで、この場をやり過ごそうとしている。

「オレと三好先生は、そんなんじゃありません」
 冷静な無表情。
 薪は黙って書類をめくる。
 青木の中で激しい感情が渦を巻いて、堰を切ったように溢れ出した。

「オレが好きなのは、あなたです」


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告(11)

告(11)







 思わず、口から出てしまった。
 本当はもっと洒落た言葉で、それなりの雰囲気も作って告白するつもりだった。
 それが第九の室長室で、報告書の束を両手に持って、捜査報告のように告げてしまった。これではまるで、ことのついでのようだ。

 薪は驚いてもくれなかった。ただ形の良い眉を、いくらか顰めただけである。本気にしていないのは明らかだった。
「わかった、報告書は月曜まで待ってやる。早く雪子さんにそのセリフを言ってやれ」
 ……何がわかったんですか?
 平気な顔で、再び書類に目を落とす。冷静な上司の貌はちらりとも崩れない。
「雪子さんはあれでもう、結構な年だからな。なるべく早くプロポーズしろよ。高齢出産は負担が大きい」
 誤解にもほどがある。
 薪に好かれたい一心でこんなに努力してきたのに、これでは自分があまりにも可哀想だ。

 青木は大股に室長の机に近寄ると、薪が見ている書類の束を取り上げ、デスクに叩きつけた。
 突然の無礼な振舞いに、薪がすぐさまキツイ目で睨み返してくる。ぞくりとするような冷たい美貌。いつもなら謝罪とともに引き下がる青木だが、今回ばかりはさすがにキレていた。

「あなたが好きなんですよ。薪さん、あなたです。三好先生じゃありません」
 またもや、なんのひねりもない。
 あれほどいくつもの甘い言葉を考えていたのに、今はそのすべてが吹き飛んでしまった。
「なに言ってるんだ? おまえ」
 しかし、どうやら気持ちを伝えることには成功したらしい。
 薪の貌が、あの不意を衝かれたときに見せるきょとんとした表情になっている。自分の心を惹き付けてやまない、その愛らしさ。青木の胸がとくりと高鳴る。
 が、次の瞬間、無防備な愛らしさは消えて、研ぎ澄まされた刃物のような凄惨な怒りがその相貌に現れた。

「僕はそういうジョークは嫌いだ」
 ……ヒドすぎる。

 書類に戻ろうとする薪の目を、青木は是が非でも自分のほうに向けたかった。このまま後には退けない。この真剣な気持ちをジョークにされてたまるか。言葉が駄目なら実力行使だ。
 普段おとなしい人間ほど、キレると何をやらかすかわからない。次に青木のとった行動は、その説を裏付けるものだった。

 亜麻色の小さな頭をつかんで、細いあごに手をかける。とっさのことに対応しきれない相手の隙をついて、くちびるを奪う。
 子供のままごとではない大人のキス。やわらかい口唇とぬめついた舌の感触に、我を失う。相手の舌を絡めとり、ねぶり、吸い上げ――――。

 バゴッ、と後頭部で星がはじけて、がしゃん! と瀬戸物の割れる音が響いた。
 冷たい液体が青木の頭から滴る。薪の机にあったコーヒーの匂いだ。
 すかさず頬に平手打ちの音。続けざまに右の頬にもう1発。とどめに腹に強烈な手刀。くらくらしたところを蹴り飛ばされて、室長室のドアにぶつかる。
 すばやくドアが開き、モニタールームに叩き出された。

「頭を冷やせ! バカ青木!」
 出来上がったばかりの報告書の束が、青木めがけて投げつけられる。
「全部、書き直せ! 今日中にだ!」
 壊れそうな勢いで室長室のドアが閉まる。激しい音の余韻に静まり返る研究室。
 あっけにとられた第九の面々が、心配そうな顔で青木のそばにやって来る。
「大丈夫か? 青木」
「何やらかしたんだ、おまえ」
 とても言えない。
 床に座り込んだまま、青木はしばらく立ち上がれなかった。
 唇に残る感触―――― コーヒー味の苦いキス。

 なんてことをしてしまったんだろう……。

「シャワー浴びて、着替えて来い。報告書は俺が手伝ってやるから」
 岡部が青木のそばに屈んで、「元気出せよ」と言った。先輩のやさしい気遣いが後ろめたい。悪いのは自分なのだ。
「あんな薪さん、初めて見たよ」
「こえ~」
 今井と曽我が、こっそり呟く。
 ちがいます。薪さんは悪くありません―――― そう言いたかったが、声にならなかった。
「でも」
 いつもは薪に対して少し辛辣な物言いをする小池が、ためらいつつ言った。
「薪さん、泣いてなかったか?」


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告(12)

告(12)








 すべての報告書を書き終えたときには、午後9時を回っていた。
 コーヒーで汚れた部分を打ち直すだけだから、と岡部の心遣いを断り、青木は自分1人でその仕事を仕上げた。これは自分が招いた失態だ。先輩の手を煩わすわけにはいかない。

 室長室の明かりはとっくに消えている。室長はめずらしく、今日は定時になるとさっさと帰ってしまった。
 青木のほうを見もしなかった。
 怒っている。それは確実だ。
 でも、薪も悪い。自分の必死の気持ちを―――― 半年も前から募らせてきた想いを、本気にしてくれないばかりか、ジョークで済まそうとした。あんまりだ。
 だが、それは多分。
 今後のことを考えてくれたのかもしれない、と青木が思い至ったのは、シャワーを浴びているときだった。
 振られたからといって、仕事を辞めるわけにはいかない。しかし、気まずくなるのは避けられない。それは相手も同じだ。仕事にも差し支えるだろう。
 それを防ぐには、なかったことにしてしまうのが一番いい。冗談で済ませて、その場を流してしまうのが大人のやり方だ。室長である薪は、そこまで考えてその方法を取ったに過ぎない。べつに青木の気持ちを踏みにじったわけでも、バカにしたわけでもない。

 ただ、受け入れてもらえなかっただけのことだ。

 そう分かってしまうと、薪があんなに怒ったのも理解できる。お互いが一番傷つかない方法を選択してくれていたのに、オレは自分のことだけでいっぱいいっぱいで。
 薪に比べると、自分はひどく子供なのだ。
 仕事のことだけでなく、精神的な強さも相手を思いやる気持ちも、まだまだ未熟だ。自分の気持ちだけを押し付けて、相手の迷惑など考えなかった。
 こんなんじゃ、相手にされなくて当たり前だ。

 もう少し大人にならなくては、と思う。あのひとにふさわしい人間に。あのひとを安らがせてあげられるような、鈴木さんのような人間に。

 もっと自分を磨いてリベンジだ、と青木は決心する。
 どんな状況になっても諦めないのは、美点なのか欠点なのか。捜査も粘り強いが、薪のこととなるともっと粘り強い。というか、いっそしつこい。
 でも、自分にもどうしようもない。こんなに誰かを好きになったのは初めてだ。全身全霊を奪われるほどに――――。
 そのひとのことしか、考えられない。薪しか目に入らない。薪の声しか聞こえない。薪に会えない日は何もする気がおきないし、叱られれば食欲もなくなるし、夜もよく眠れない。日常生活に差し障るほどだ。

 いつからこんなに好きになっていたのか。
 初めは確かに、ただの憧れだった。もともと青木はノーマルな男なのだ。以前はちゃんと彼女もいた。振られたが。
 薪に初めて会ったとき、きれいな顔をしているな、とは思った。童顔で、高校生くらいにしか見えない。そのときはその程度だった。
 それが一緒に仕事をするうちに、薪の高潔な人柄に惹かれ、事件に向かう強さに惹かれ―――― 彼の奥深くにしまわれた傷口がいまなお血を流し続けていることを知り、その脆さとあやうさを知り、守ってあげたい、支えになりたいと―――― その自分が。
 
「オレが薪さんを傷つけて、どうするんだよ……」
 小池が見たのは見間違いではなかった。驚きのせいか怒りのためか、薪の目には涙が浮かんでいた。

 泣かせてしまった。

 とにかく、明日謝らなくては。
 でも、冗談で済ますのはいやだな、とまだ大人気ないことを考えている。

 研究室の電源を落とし、セキュリティをかける。エントランスへ続く長い廊下を、今日はひとりで歩く。
 ここ数日は薪と2人で歩いていた。もしかすると特訓も打ち切りかもしれない。よく考えると幸せだったのだ。MRIの凄惨な画像が背景とはいえ、ずっとふたりきりでいられたのだから。
 こんなことになるのなら、もっとあの時間を大切にすればよかった。もっとも、吐き気と寒気でそれどころではなかったのだが。
 いつだって気付いた時はもう遅い。逆に、失わないとその価値は分からないのかもしれない。
 今度のことだって、たとえ冗談で済ませたとしても、何もなかった頃には戻れないのだ。あの屈託のない笑顔は、二度と見られないかも……いや、そもそも薪の全開の笑顔なんて見たことがない。たぶん、第九の誰も実際に見たことはないんじゃないか。

 青木は、薪のその笑顔を知っている。
 薪の家のリビングに飾ってあった写真の中の薪の笑顔。鈴木の脳に残っていた、薪の幸せそうな笑顔。親友と一緒にいるときだけ、薪は最高の笑顔で笑うのだ。

 つらつらとどうにもならないことを考えながら玄関を出た青木は、正門のところで門柱に寄りかかり、腕を組んで立っている細いシルエットに気付いた。

 淡い月明かりの下、青く澄んだ水面のように静謐な室長の姿だった。



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告(13)

告(13)





「報告書は書き終えたのか」
 いつもと変わらぬ口調で、事務的に話しかけてくる。
「はい。室長の机に置いておきました」
 青木の報告に軽く頷いて、薪は地面に置いてあった鞄を小脇に抱えた。じっと青木の目を見るが、なにも言わない。

 重い沈黙。
 我慢しきれなくなったのは、やはり青木のほうだった。

「あの、室長。先ほどは、その」
「火傷はしなかったか」
 すみませんでした、と言うつもりだったが、薪の言葉に遮られる。一瞬意味が分からなかったが、すぐにさっきのコーヒーのことだと思い当たった。
「大丈夫です。もう、冷めてましたから」
「そうか」
 踵を返して、歩き出す。その背中に拒絶は感じられなかったが、先刻のことを思うと着いていくのもためらわれる。
 青木がその場に立ち尽くしていると、薪が肩越しに「帰るぞ」と声を掛けてくれた。慌てて後を追いかける。駅まで送らせてくれるらしい。

 霞ヶ関駅までの短い道のりを、薪はわざとゆっくり歩いているようだった。何も言わないが、怒ってはいない。仕事の時には見せない穏やかな横顔がその証だ。
 夜になると妙にあでやかな唇が、小さく動いて何か言おうとした。
「さっきの」
 言いかけて、やめる。
 黙り込む。
 捜査会議ではあれほど淀みなく話すのに、仕事以外のこととなると室長の口は重い。無口の部類に入るかもしれない。
 そのまま黙って歩く。駅はもうすぐだ。

 青木は迷っていた。
 先刻のことをジョークにするつもりなら、今しかない。薪もきっとそうしたいのだ。だが、青木が本気だということも、今はわかってくれている。だから言葉にならない。
 薪の立場を思えば、青木のほうから「あれは冗談です」と言うべきだ。そうすれば薪はほっとしたような顔をして、「上司をからかうな、バカ」などといつもの叱責をくれて、また明日から何事もなかったように仕事ができるのだ。
 そうだ。そうするべきだ。

「さっきのことですけど」
 薪が足を止めて、青木の目を見る。亜麻色の瞳が、月の光を写し取ったかのように魅惑的にきらめいた。
「オレ、本気ですから」
 ……間違えた。
「なにを言われても諦めませんから」
 しかも、追い討ちをかけてしまった。
 
 だって嘘など吐けない。この清廉な瞳を前にして。もとより、警察官が嘘を吐いてはいけない。
 
 今度は殴られなかった。その代わり、薪は悲しそうに目を伏せた。
 ――――― 殴られたほうがマシだった。

「じゃあ、僕も真面目に答えないといけないな」
 小さく呟くと、駅とは違う方向に歩き出す。
「外で話すことでもないだろう。少し付き合え」
 たしかこの辺りに薪の好きな割烹料理屋があったはず。雪子に聞いた店の名前を通り沿いに見つけて、頭に道筋をインプットする。青木は少々方向オンチのきらいがあって、道に迷うことが多いのだが、薪と一緒ならどんなに複雑な道順でも一発で覚えられそうだった。
「腹は空いてるか?」
「はい」
 頷いて暖簾をくぐる。あまり広くはないが落ち着いた店で、先客たちもみな静かに料理を味わい、酒を楽しんでいる。金曜の夜らしく店はほぼ満席状態で、2人はカウンターに並んで腰を下ろした。
 店主の勧めに従って、青木は天ぷらの定食を、薪は刺身と日本酒を冷で頼んだ。

 青木が食べている間、薪は何も言わなかった。ただ、ぐい呑みの酒を傾けている。合間に平目の刺身をつまんで、静かに待っている。
 食事が終わったのを見て取ると、青木のほうに徳利を差し出す。青木は日本酒よりもビール党だが、ここは薪に合わせるべきだろう。
 青木の猪口に酒を注ごうとして、薪はふと気がついたように手を止めた。
「おまえ、ビールだっけ」
 なぜ知ってるんだろう。室長と一緒に酒を飲むのはこれが初めてなのに。
「曽我が言ってた」
 また心を読まれる。
 こんなに敏感なひとなのに、どうして雪子との仲を誤解をしたんだろう。

 冷たい生ビールが運ばれてくる。青木がジョッキに口をつけるのを待って、ぽつりと薪が言った。
「雪子さんは、おまえが好きなんだ」
 唐突な会話。薪はこういうことには、とことん不器用らしい。
「誤解ですよ」
「雪子さんとの付き合いは、おまえより僕のほうが長いんだぞ。彼女の目を見れば分かる。鈴木を見てたときと、同じ眼をしてる」
「でも、オレは」
「雪子さんは、大事なひとなんだ」
 青木の言葉を遮って、薪は言葉を継いだ。手酌で徳利を傾けると、空になっている。青木が追加のオーダーを入れた。
 
「彼女が鈴木の婚約者だったのは知ってるな? おまえは鈴木の脳を見ているから、彼女のことも知っていたはずだ」
 はい、と頷いて空いたぐい呑みに酒を注ぐ。つややかな口唇にはワイングラスのほうが似合うと思ったが、美濃部焼のぐい呑みも、また別の色気がある。
「昨年の夏、あの事件が起きて。僕は彼女の幸せのすべてを奪った。彼女の人生をぶち壊しにした。あんなことさえなければ、彼女は今頃鈴木と結婚して、幸せな生活を送っているはずだったんだ」
「でも、それは薪さんが悪いんじゃありません。オレがちゃんと鈴木さんの本心を見せてあげたじゃないですか。第一、正当防衛だったわけだし」
「同じことだ。事故死だろうが正当防衛だろうが、そんなことは関係ない。遺族にしてみれば、僕はただの人殺しだ」
 薪は今もなお、こうして慙愧の念に苦しんでいる。
 その自分を追い詰める厳しさが、薪の強さであり脆さでもある。そして、その心の深淵を覗いてしまったら、手をさし延べずにはいられない。
 このひとの重荷を軽くしてあげたい。
 切実に、想う。

「それは逆恨みです。薪さんは悪くない」
「じゃあおまえ、自分の母親を殺されて『正当防衛です』と言われて納得できるのか? 相手のことを許せるのか?」
 それは……難しいかもしれない。
 軽々しく答えられるものでもない。青木はひとまず口を閉ざした。

「僕にはできない。でも、雪子さんは僕を……僕のせいじゃないと言ってくれた。あの時モニタールームに入ったのが僕じゃなかったら、きっと別の人が。いっそ、僕で良かったとさえ。
 すごい女性なんだ。とても敵わない。鈴木が惹かれたわけだ」
 2本目の徳利を殆ど空にして、そのせいか薪はいくらか饒舌になっている。顔色は普段のままだから、さほど酔ってはいない。かなり酒には強いらしい。
「雪子さんは、鈴木が愛した大切な女性なんだ。だから幸せになって欲しい。おまえだって、彼女は魅力的な女性だと思うだろう?」
「それはまあ、そうですけど」

 薪の言いたいことは分かった。
 去年の事件で不幸のどん底に突き落としてしまった可哀想な女性を、救ってやって欲しい。自分ではそれは無理だから、青木に頼みたい。そういうことだ。
 
「雪子さんは今はまだ、おまえに鈴木を重ねてるのかもしれない。でもそれはきっと、時が解決してくれる。だから」
「薪さんは何もわかってません。三好先生はオレのことをそんなふうには思ってないし、オレは自分の気持ちを曲げることはできません」
 青木がきっぱりと薪の提案を拒絶すると、薪はむっと眉をひそめた。
「付き合うだけでも付き合ってみたらどうなんだ。だいたい親が泣くだろう。ちゃんと結婚して家庭を持たないと」
 下手に出ても駄目だとわかったらしく、薪は室長の口調で諭すように持ち掛けた。

「薪さんに言われたくないです」
「なに?」
 3本目の徳利が半分ほどに減っている。酒豪らしくペースも早い。
「何を言われても諦めないって、オレさっき言いましたよね。もう忘れたんですか」
 年のせいですかね、とつい口が滑ってしまった。2杯目の生ビールのせいだ。怒られると思ったが、別に気にしてないらしい。
「どうやら平行線だな」
「そうですね」
 こうなれば、開き直るしかない。
 好きな相手まで、上司に決められては堪らない。たとえ室長命令でも、それだけは譲れない。自分の心ではあるが、もう自分でも止められないのだ。
 薪だって、自分の身に置き換えてみれば解るはずだ。鈴木さんのことが忘れられないくせに、他人には「ちゃんと結婚しろ」なんて。

「帰りましょう。終電、無くなっちゃいますよ」
 青木の言葉に、薪は時計を確認する。もうそんな時間だ。
 ため息とともにぐい呑みの酒を飲み干し、薪は立ち上がった。




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告(14)

告(14)








 薪が酒に強いと思ったのは、青木の勘違いだったらしい。
 店を出ると、何やら足取りがおぼつかない。「大丈夫ですか」と声をかけたら、「空きっ腹に飲んだから」と返してきた。
 夕飯を食べなかった理由を尋ねると、おまえのせいだろう、と怒られた。
 空腹にあれだけの酒を飲めば、たいがい潰れる。店にいるときは他人の目があるからか割としっかりしているものだが、外に出ると一気に酔いが回る。すでにひとりでは歩けない状態だ。

「しっかりしてくださいよ、薪さん」
 こうなれば抱きかかえていったほうが早いのだが、プライドの高い上司の顔を立てて、肩を貸すに留める。薪との身長差は30センチ近くあるので、だいぶ腰を屈めないと肩の高さが合わない。やはり抱えていったほうが楽である。

「もう終電、無いですよ。タクシー拾いますから」
「いい。第九に泊まる」
「セキュリティかけてきちゃいましたよ。解除するの面倒でしょ」
「そんなもん……」
「眠らないでくださいよ! 薪さん、薪さんてば!」
 どうやら沈没してしまった。
 結局は、抱き上げて運ぶことになる。
 軽いのでたいした労力ではないのだが、金曜の夜で人通りも多い中、道行く人がみんな振り返っていくのが困る。

 通りかかった公園で酔いを醒ますことに決めて、青木はベンチに薪を寝かせた。ここならだれもいない。
 薪の頭を鞄の上にのせる。呼吸が楽なようにネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外す。
 手に触れた髪の、さらさらした感触。自分の髪とは異質のしなやかさだ。

 どうやら薪は、酔いが顔に出ない性質らしい。今もその口元からアルコールの匂いがしなければ、普通の寝顔と変わらない。
 いや、口が開いているせいか、いつもの寝顔より可愛らしい。
 普段は彼の眠りを妨げることなど考えもつかないが、今の薪は子供が眠っているようで、そのやわらかそうな頬を突ついてみたくなる。
 近くの水道でハンカチを濡らし、薪の額にあてがう。
 表面に現れなくても、やはり火照っている。頬も熱い。
「んん……」
 煩そうに眉をしかめる。素直な反応がますますかわいい。
 頬に触れて見ると、見た目よりやわらかくはない。
 子供のものでも女のものでもない。しかし男のものでもないな、と青木は自分の頬を触ってみる。生物学的にはこのひとは何に分類されるんだろう、と程よく酔いの回った頭でバカなことを考える。

 冷たいハンカチのおかげか、しばらくして薪は目を覚ました。
 周りを見て不思議そうな顔になる。が、すぐに現状を把握したらしく、青木の名前を呼んだ。
「のど、かわいた」
「はい」
 公園の自販機で買っておいたミネラルウォーターを渡す。白いのどが仰け反って、闇に映える。水銀灯よりこちらに虫が集まってきそうだ。
「ん~、空が回ってる」
「飲みすぎですよ」
 大きくため息をついて、またベンチに横たわる。青木のハンカチを目蓋の上において、額に手を当て前髪をかきあげる。
 こんなきれいな額は見たことがない。優雅で完璧なフォルム。鼻梁はすっきりと通っているが、日本人らしく小さくまとまっている。その下に、誰もが必ず眼を奪われてしまう、つややかでふっくらとしたくちびる。水銀灯の光に照らされて、婀娜花のようなその口唇が甘い吐息を咲かせる。

「考え直さないか?青木」
 青木もしつこいが、薪も相当くどい。まだ諦めてはいないようだ。
「駄目です。ていうか、無理です」
 何度も返した言葉をまた繰り返す。不毛な会話だ。
「ひとを好きになるってそんなもんでしょ。自分でも収拾つかないっていうか、コントロールが利かないっていうか」
 薪もまた、同じ言葉で拒絶する。
「僕はだめだぞ。おまえの気持ちには応えられない」
「はい。分かってます。今のオレじゃ、あなたに釣合わないですよね。でも、オレもっと大きな男になりますから」
「それ以上育ってどうする気だ」
 ……そういう意味じゃありません。

「僕には心に決めた人がいる。だから、おまえの気持ちには永遠に応えられない」
 永遠に、と言われてしまった。
「だれですか?」
「だれでもいいだろう」
 その相手が誰なのか、青木は知っている。だから諦められないのだ。
「いいえ、答えてください。その人はこの世の人物なんですか?」
 青木の不躾な質問に、薪は跳ね起きた。濡れたハンカチを青木の方に投げつける。
 奥歯がぎりっと噛み締められ、冷たい眼がぎらりと光って青木を睨み据えた。凄まじいまでの圧迫感。
 
「そんなことまで、おまえに答える義理はない!」
 怒ると本当にこわい。
 しかし、ここで退いてはならない。
 なにより、薪のためだ。
 薪を救いたい。
 過去の亡霊から開放してやりたいのだ。

「薪さんが誰を忘れられないのか、オレにはわかってます。でも、いつまでも過去に縛られたままじゃいけないと思います。鈴木さんが自分の命と引き換えに守ってくれた人生なんですよ? 鈴木さんのためにも、薪さんが幸せにならないと―――― 痛っ!」
 突然、何かが青木の顔面に飛んできて、ばん!と派手な音を立てた。
 薪の鞄だ。これは痛い。
「すぐに物を投げるの、やめてくださいよ」
 青木の抗議を聞こうともせずに、薪はその場を立ち去ろうとした。が、まだまっすぐ歩けない。ふらついて倒れそうになったのを支えてあげたら、また怒られた。
 
「僕にさわるな」
「立てもしないくせに、なに言ってるんですか」
「うるさい!」
「すぐに逆ギレするのもやめてください」
 間髪いれずに飛んできた平手打ちを左手で受け止めて、華奢な手を捕まえる。もう一方の手も右手で捕らえて、暴君を押さえ込んだ。
「そうそう何回もくらいませんよ」
 酔いのせいで平手打ちの速度が遅かったから防げただけなのだが、このさい釘を刺しておこう。すぐに暴力に訴えようとするのは、薪の欠点のひとつだ。
 両手の自由を奪われて、薪はうつむいた。前髪が覆いかぶさって、きれいな双眸を隠している。その表情は、わからない。
 が、察しはつく。
 
「おまえに、何が分かる」
 怒りを含んだ低い声。当然のように、薪は怒っている。

「おまえに何が分かる!? 何も知らないくせにっ!」
「オレは鈴木さんの脳を見てるんですよ。だから」
 薪は顔を上げて反撃に出た。憤りをはらんだ瞳が、刃物のように青木を射る。
「MRIの限界は5年だ。5年前までしか遡れないMRIの画を見ただけで、それだけでおまえは鈴木のすべてを理解したとでも言うつもりか!」
 たしかに、5年前までの画像しか見られなかった。それも鈴木の視覚を一日も欠かさずに見たわけではない。もともと鈴木が薪を殺そうとした理由を知りたくて、鈴木の脳を見たのだ。鈴木自身のことを知りたかったわけではない。
「たったそれだけのことで、おまえが鈴木を語るな!」
 青木には、返す言葉もなかった。

「すみません。でも」
「おまえと鈴木は何の関係もない」
「でも」
「関係のない人間が、僕と鈴木の間に入ってくるな!」
 気づけば、薪の頬を涙が濡らしていた。
 青木の目を真っ向から睨みつけて、悔し涙を流している。こんな薪は初めて見る。二度と見たいとは思わないが。

 薪もまた、自分を制御できない。

 忘れられないのではなく、忘れたくない。
 わかっていてもどうしようもない。彼の人を求めて求めて、しかしそれは、自らの手でこの世から消し去ったもので――――。
 血に濡れた自身の手を、愛する人の死体を、薪はそのときどんな思いで見ていたのだろう。何度、夢に見たのだろう。
 その過去の上に今の薪がいる。薪の過去は、今の彼を支える土台でもある。しかし、それはなんと哀しい立ち位置だろう。

 青木の手が緩んだ隙に、薪はさっと手を払った。
 地面に落ちた鞄を拾い上げ、今度こそその場を去っていく。足元はまだおぼつかないが、もう追いかけることはできなかった。

 ふらつきながら小さくなっていく背中を見つめて、青木は自分の無力を噛み締めていた。
 自分がもう少し早く生まれていたら。薪と同い年くらいだったら。
 せめて昨年の事件よりも前に、一緒に仕事をしていたら。
 もっと薪を支えてあげられた。忘れさせるのは無理でも、彼の嘆きを聞いてあげることはできた。一緒に泣いてあげることも。
 でも、自分にはそれはできない。
 薪の言うとおり、何の関係もないのだ。

 薪が横たわっていたベンチに腰掛けて、青木は月を仰いだ。


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告(15)

告(15)







 土曜日の法医第一研究所は、静まり返っていた。
 今日は休日。出勤しているのは、三度の飯より解剖が好きだと噂される三好雪子くらいのものだ。
 雪子のもとに第九の新人が訪ねて来たのは、検死報告書をまとめ終わって、家路に着く前に一息いれようと紅茶を飲んでいるときだった。
 青木の来訪は予測していた。しかしその報告は、雪子には意外なものだった。
「玉砕しちゃいました」
「え? うそ」

 先日、雪子はこの青年の恋の相談に乗ってやったばかりである。雪子の見立てでは相手にも十分その気はあり、聞くとしたらノロケ話だろうと予測していたのだ。
「へんね。絶対に脈があると思ったんだけど」
「頭を冷やせって、蹴りだされちゃいましたよ。まあ、それはいいんですけど」
「なにがいいのよ」
 青木の落ち込みようは、傍目で見ていても泣けてくるような憔悴ぶりだったが、振られたことだけが原因ではないらしい。
 言い難そうに、しかし誰かに聞いて欲しいのだろう。三好先生に言うことじゃないんですけど、と前置きして、青木は昨日の薪とのことを語りだした。

 雪子は鈴木のかつての婚約者である。
 しかし、薪が鈴木のことを好きだったことも、まだ鈴木のことを忘れられず苦しんでいることも知っている。知ってはいるが、薪から彼を奪った張本人としては何もできない。するべきではない。それをちゃんと解って薪に接している。聡明な女性なのだ。
 だから、この新米捜査官が第九に入ってきて3ヶ月も経たないうちに薪の虜になったのを見抜いたときから、彼の働きに期待していたのだ。
 どこかしら鈴木に似ていて、薪の心を惹くには最適だと思った。彼を通して薪の苦悩が少しでも和らいでくれることを願って、青木には色々と助言してきたつもりである。

「おかしいなあ。薪くん、克洋くんを見るのと同じ瞳であなたのこと見てると思ったんだけど」
「それ、薪さんも同じこと」
「え?」
「……なんでもないです」
 少し気になるが、相手が言いたくないことを無理には聞かないのが雪子のポリシーである。さらりと流して話の穂を継ぐのが大人の女性というものだ。

「で? どうしたいの、青木くんとしては」
「オレは諦めませんよ。
 そりゃ、薪さんの相手が現実の人間で、結婚するとかすれば諦めもつきますけど。相手が鈴木さんじゃ、辛いだけです。何とかして忘れさせてあげたいんですけど……どうしたらいいですかね?」
 それは無理だろう、と雪子は思う。
 忘れることなどできない。自分が彼を忘れられないように、薪も一生、鈴木のことを忘れはしないだろう。
 それは断言できる。薪の気持ちに一番近いところにいるのは、たぶん自分なのだ。
 しかし、青木には青木の愛し方がある。情報提供は惜しまないが、その方法にまでとやかく口を出すべきではない。
 
「ん~、難しいわね」
「三好先生は、どうやって乗り越えたんですか?」
 乗り越えてなどいない。
 雪子の中に開いた大穴は、今もそのままだ。
 恋人を失った悲しみは、計り知れないほどの衝撃で当時の雪子を打ちのめした。秘密にしているが、リストカットの経験もある。
 時間の経過と共に、傷口の血は止まった。穴がすっかり塞がるまでにはまだ時間がかかりそうだが、それでもだいぶ小さくなってきている。

 だが薪の場合は、まったく次元が違う。
 あれから1年の月日が過ぎて、雪子は微かな痛みと哀悼で鈴木に思いを馳せるようになった。
 しかし薪は、自分自身を切り裂きたくなるような自責の念と、狂おしいまでの愛情で彼を思うのだ。
 この1年の間に自分の傷を抉り続けて、深く深く掘り下げてしまった。すでに魂に刻まれているであろう慙愧の念は、自虐的とも言える彼の仕事ぶりに如実に現れている。
 その滅私的な薪の生き方に、青木は惹かれたのだ。
 薪の過去にあの事件がなかったら、この恋は育たなかったかもしれない。皮肉なものだ。

「そうね。あたしの場合は友達のおかげかな。よく外に連れ出してくれたり、合コン設定してくれたりとかね。ま、克洋くんよりいい男なんていなかったけど」
「薪さん、友達いなさそうですもんね」
「あの性格じゃね。唯一の友人が克洋くんだったわけだし。薪くん、ご両親も早くに亡くしてるから、ほんと相談相手がいないのよね」
「オレが相談に乗ってあげられたらいいんですけど」
 語尾を濁して、青木は口を閉ざした。
「いいじゃない。聞いてあげたら」
「関係ない奴が割り込むなって、怒られちゃいましたから」
「あら。そのくらいで諦めるの? 意外と根性ないのね」
「だって薪さん、泣きながら怒鳴るんですよ。よっぽど嫌なんですよ。オレにそのことに触れられるの」

 その涙の理由を、雪子は察した。
 本当に関わって欲しくない相手なら、薪は冷たく切り捨てる。怒鳴ったり泣いたりはしない。感情のすべてを消し去った得意の鉄面皮で、見事に心中を隠した巧みな話術で、相手を煙に巻くだろう。
 それをしなかったということは、まだ可能性はある。やはり自分の見立ては正しい。

「じゃ、搦め手でいきますか。薪くんのお気に入りのカフェ、教えてあげる」
「いまさらそんな」
「諦めないんでしょ。まずはお友だちから、でいいんじゃない? 克洋くんとも初めはそうだったわけだし」
「……そうですね! お友だちからってのが基本ですよね!」
 とりあえず、単純な男でよかった。
 青木の取柄は素直さと粘り強さだ。
 その単細胞ゆえの分かり易さが、薪を癒してくれるに違いない。

 方向音痴の青木のために紙に地図を描きながら、雪子は二人の行く末を祈っていた。


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告(16)

告(16)








 月曜日。
 第九の短い休暇は終わりを告げた。
 新しい事件の捜査依頼がきて、研究室はたちまち慌しくなった。報告書の山を一時保留にして、室長が事件の概要を説明する。
 室長のいつも通りの冷静な姿に、第九の面々は密かに胸を撫で下ろしている。
 週末に見せた激昂は、影も形もない。青木とも普通に話している。どうやらぎこちない職場にはならずに済みそうである。

 出勤時間の2時間前から、青木は薪のことを待ち伏せていた。
 いつも職場には一番乗りの薪だが、その日はことのほか早く、7時過ぎには正門をくぐっていた。誰もいないはずの研究室に入ると、既にスパコンが起動しており、MRIの画がモニターに映し出されていた。
 例の『お宝画像』である。
 こちらに背を向けて一心不乱にモニターを見ている姿に、思わず立ち竦む。
 ひろい肩。大きな背中。長い手足。少し猫背の姿勢まで―――― 彼に、よく似ている。

「室長。おはようございます」
 こちらに気がついて、挨拶をしてくる。おはよう、と素っ気無く返して、週末のフォローをすべきかどうか迷う。
「ずいぶん早いな」
「自習です。いつまでも室長の手を煩わすわけに行かないですから」
 モニターには、かなり気味の悪い画像が映っている。先週はこの画で吐いていた青木だが、今日は話もできる。だいぶ慣れてきたらしい。

「薪さん。こないだのことですけど」
 青木の言葉に身構える。きりりと眉を上げ、先日のような醜態をさらさないように無表情の仮面を着ける。
「一旦、保留してください」
「……保留でいいのか?」
 肩透かしを食らって、つい聞き返してしまった。わかった、と言えば済んだのにもう遅い。しかし、青木は薪の言葉尻を捉えるような姑息なことはしなかった。
 
「はい。薪さんの都合がいいときに処理してください」
 それは永遠に来ないと言ったはずだ―――― そう言おうとしたが、なぜか言葉にならない。口ごもっているうちに、青木に会話の主導権を握られてしまう。
「オレ、少し焦りすぎてました。薪さんの気持ちも考えずに、自分の気持ちだけ押し付けて。すみませんでした。だから今回は保留です」
 にっこり笑ってとどめの一言。
「でも、諦めませんから」

 邪気の無い笑顔に、薪の心臓がトクンと跳ねあがる。視線が青木に吸い寄せられる。無意識に見とれてしまう、その笑顔。探してしまう―――― かのひとの影。

 似ているから、拒絶しきれないのか。
 似ているから、なおさら受け入れられないのか。

 薪には自分の気持ちがわからなくなる。
 青木は待つと言ってくれた。自分の心の整理がつくまで。
 だが、それはいったい何時のことなのか、薪自身にも分からない。
 そんな先の見えない話でいいのか。そもそもどうして同性の自分なのか。青木にはちゃんと彼女もいたはずだ。
 問い質したいことはたくさんある。
 でも、訊けない。
 訊いてしまったら、今の歩み寄りが無駄になってしまいそうで。せっかく元に戻れそうなこの雰囲気が、壊れてしまいそうで。これ以上は喋れない。

「わかった」
 結局、薪はそれだけしか言わなかった。

 そのまま室長室に入る。
 机の上には週末に上がってきた書類の山が、高く積まれている。今日はこのために早く来たのだった、と思い至る。
 青木に作らせた室長会議用の資料が、一番上に積んである。
 青木らしい文章。難解な言葉は避けて、あえて平易な言葉を選んでいる。誤字脱字は殆ど無い。写真や略図を使って、実にわかりやすくまとめてある。読むひとの立場に立って作成しているのだろう。写真配置のセンスもいい。
 鈴木はこういう作業が下手だった。室長会議の資料作成も何度か手伝ってもらっていたのだが、センスが悪いというか読みづらいというか、とても室長会に出せる代物ではなかった。
「書類のセンスだけなら、鈴木より上だな」
 しかし、これは絶対に本人には内緒だ。つけあがられては堪らない。

 書類に目を通しながら、薪は自然と微笑んでいた。が、すぐに驚異的な集中力で書類の内容に埋没していく。
室長の仕事は、今日も山のようにあるのだ。



 ―了―





(2008.9)

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告~あとがき~

 青木くんのちんたらした告白劇にお付き合いくださって、ありがとうございました。
 途中、何度も檄を飛ばしてくださったみなさまに、青木くんも感謝しております。
 みなさまの期待通りに玉砕したわけですが(笑)、本人は『これからが勝負だ』と覚悟を決めております。ガンガン攻め込むつもりでいますので、これに懲りずに応援してあげてください。
 といってもご指摘に上がったとおり、先が長いんですよね……きっと彼らしく、ちんたら進むんでしょうね。(笑)

 実は、青木くんをあんなヘタレた男にしてしまって、怒られないかな、とヒヤヒヤしてたんですけど。本当に、みなさまのお心の広さには感服します。
 許容範囲を超えないように、気をつけます。(←とっくに振り切ってないか?)


 告白シーンについて。
 わたしとしては、もっとロマンチックに告白シーンを書きたかったんです。
 第九の室長室で報告書片手に、なんて、あまりにもムードなさすぎ。BL小説の風上にも置けません。
 せっかく青木が航空機免許をもっているのだから、ヘリに乗って都会の夜景を見ながら、なんてことも考えたんですけど。
『薪さん。あなたはこの夜景より美しい』
 と始まった途端、うちの薪さんがパラシュートで飛び降りました。
 彼は、こういうのは苦手みたいです。



 さて、次のお話は、メロディ発売の後にUPします。
 前言のとおり、内容によって掲載記事を決めたいと思っています。
 わたしは作品のレビューは致しません。てか、頭悪いんで、考察とか苦手なんです。なので、みなさまのレビューを拝見させていただき、その後にあおまきさんにするか、すずまきさんにするか、決めたいと思います。

 あおまき派のわたしは、もちろん青木くんの活躍を期待してます。
 5巻の修羅場が再現されたとしても、あのときとは違うリアクションを取ってほしい。薪さんの傷ついた顔を見ながらも、一直線に三好先生のところに行くなんて、二度と見たくないです。(本音ではスルーかな、と思ってますけど)

 がんばれよ、青木さん。
 薪さんの涙を止めてやれるのは、あなただけなのよ(切実)




 ……すみません。メロディの発売が目前にせまって、平常心を失ってます。
 あとがきなんだから、これだけ言えばいいんですよね。



 みなさま。
 読んでくださって、本当にありがとうござました。 たくさん励ましてくださって、ありがとうございました。
 次のお話もがんばります。


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プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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