プレゼント(1)

 このお話では、薪さんがテレビ出演します。
 お正月の特別番組です。
 始まりは1月の頭からなので、ちょうど青木くんが実家に帰っているときです。
 薪さんはこの時点ではまだ、青木くんがもう帰ってこないのでは、と思い込んでいます。前作の終わりと時間的に前後していますので、ご了承ください。






プレゼント(1)







 第九にも正月は来る。
 合理性重視の室長ではあるが、新たな年のスタートを新たな気持ちで切りたいという職員の希望に応じて、仕事始めの日だけは定時で仕事を切り上げて、研究室でお神酒を上げる。
 もちろん緊急の捜査がないというのが条件だが、忘年会も新年会も出席しない室長と一緒に酒が飲めるのは、1年のうちでこの日だけである。といっても付き合うのは最初の1杯だけで、あとは自由にやってくれ、といつものように軍資金を岡部に託して帰途についてしまうのだが。

 だいたい「あけましておめでとう」の意味が分からない。
 明けない夜はないし、太陽が昇らない朝もない。1月1日のこの日だけが特別なわけではない。そもそも地球が太陽の周りを1回転する期間を便宜的に1年と定めているに過ぎない。一周回って元に戻ったことが、国を挙げて祝うほどのことだろうか。
 それなのに、12月31日から1月1日に日付が変わっただけのことで、みんなどうしてこんなに浮かれた気分になれるのか、その心理が薪には理解できない。年が変わったからといって犯罪が減るわけでも、社会が平和になるわけでもない。なにがめでたいのか、さっぱりわからない。

 以前、親友にそんな話をしたら、めいっぱい呆れた顔をされた挙句、おまえの冗談は笑えない、と言われてしまった。別に冗談を言ったつもりではなかったのだが、やはり薪の考え方は周囲の人々と若干のズレがあるらしい。

 この時期、特に気が重いのは、署内の新年会や祈願行事に出席しなくてはならないことだ。
 普段あまり話したこともない2課や3課の課長連中や、仲の悪い捜査一課の課長と上辺だけでもにこやかに話をしなければならないのは、薪にとって苦行に等しい。これは相手も同じ気持ちだろうから、痛み分けといったところなのだろうが。
 神社への祈願にしても、薪は神も仏も信じないし、お札はただの木片としか思えない。いるかどうかもわからないものに一生懸命祈るなんて馬鹿らしいし、木の板に紙を巻いただけの代物に何万円も払うなんて、それこそ税金の無駄遣いだ。そんなお金があるのなら、MRIのメンテナンス費用に回して欲しい。

 神様が聞いていたら天罰が下りそうなことを考えて、薪は今日も壁の花を決め込んでいる。右手に冷酒のグラスを持って、なるべく人目につかないところでじっとしている。

 警察庁科学研究所管理棟の中にある大ホールを使っての賀正の宴には、警察庁長官を始めとした高官がずらりと顔を揃える。料理も酒もそれなりのものが用意されて、お堅い警察の行事にしては華やかな宴席だ。
 この会に出席できるのは、警視正以上の階級に限られていてる。
 出世を望む職員にとって、上層部と交流できるこの宴席は自分の顔を売る絶好のチャンスなのだが、薪にはこの上なく無駄な時間だ。薪は出世には興味がないし、騒がしい酒宴は嫌いである。会場の壁にもたれて立っているだけの2時間余りは、退屈極まりない。

 エリート街道を進む同僚たちは自己アピールに余念がないようだが、薪には必要のないことだ。以前から出世にはそれほど興味がなかったが、一昨年の事件以来、爪のさきほどの魅力も感じられなくなってしまった。
 あれだけの醜聞(スキャンダル)だ。どうせ自分には、出世の道など閉ざされている。

 本当は早く帰りたいのだが、最後に警察庁長官の退席を全員で見送るという強制参加のイベントが用意されている。自分ひとりくらい欠けても分からないだろうと思って、何年か前に帰ってしまったことがあるのだが、次の日、次長に呼び出されてこっぴどく怒られた。
 まったくもって、上層部の考えることは分からない。百人の見送りが99人になったからといって、どうなるわけでもないと思うが。

 それに、今年はまた特別だ。
 現在警察庁長官の席に座っているのは柏崎という男で、11月の末に前任者から業務を引き継いだばかりだ。この新年会は、新しい長官のお披露目という目的もある。そんな大事な宴席を中途で退座したら、次長に怒られるくらいでは済まないかもしれない。

「薪くん。今年も壁の花?」
 シャンパンのグラスを2つ持って、熟年の紳士が声を掛けてくる。ひとつを薪に差し出して左手に持たせ、グラスをかちりと触れ合わせた。
「小野田さん。あけましておめでとうごさいます」
「おめでとう。って何がおめでたいのかよくわからないけどね」
 自分と似たようなことを言っている。薪は思わず苦笑した。
 小野田は、薪が上層部の中で尊敬している数少ない上司の一人である。役職は警察庁官房室室長。警察庁長官、次長に続く警察機構で上から3番目の高官だ。
 薪を第九の室長に抜擢したのはこの男だ。
 9年前の特別承認の時から、ずっと薪のことを気に掛けてくれている。その態度は、あの事件があった後も変わらなかった。あまり表面には出さないが、薪は心の中で小野田にはいつも感謝している。

「だめだよ、こんなところで油売ってちゃ。あそこに局長がいるだろ。しっかり顔を売っておいで」
「いいですよ、僕は」
「よくないよ。おいで。紹介してあげるから」
 小野田が薪の将来を考えてくれているのは分かるのだが、薪にとってはありがた迷惑だ。相手が小野田でなかったらはっきりそう言う所だが、さすがに官房長相手にその言い方はできない。
「苦手なんですよ。エライ人って」
「きみも将来は偉くなるんだよ」
「なりませんよ。僕は一生このままでいいです」
「なに言ってんの。きみほどのキャリアが万年警視正なんて」
 実は何年か前から、特別承認の申請を出すように言われている。薪は警視正になってから9年。次の役職に上がるための試験を受けるためにはあと1年の経験年数が必要だが、所長の特別承認を得れば、それを待たずして警視長の昇格試験を受けることが可能だ。
 しかし、警視長に昇任したら間違いなく警察庁本部に呼び戻されてしまう。このまま第九の室長を務めることはできなくなる。それは薪には、本末転倒ともいえる結果だ。

「僕は第九の室長を辞める気はありませんから」
「またそんなこと言って。きみはぼくのプロポーズを、いつになったら受けてくれるのかな」
「百年後くらいですかね」
 冗談には冗談で返す。薪の返答は素早い。
「……きみの冗談て、ほんとに笑えないね」
 むかし、誰かにも言われた気がする。

 抱いていってあげようか、と脅しをかけられて、仕方なく薪は小野田の後ろに着いていく。
 幾人かの幹部と顔合わせをし、新年の挨拶を交わして頭を下げる。自分たちがその場を離れた後、何人かはひそひそと囁きあっている。決して好意的な感じではない。
『あれが官房長のお気に入りの坊やだよ』
『美人は得だね。大した実力もないくせに』
『官房長が骨抜きになるくらいだ。ベッドの中の実力は、さぞ凄いんだろう』
 聞こえるはずはないのだが、薪の耳にはそんな声が入ってくる。

「……なんか僕、めちゃくちゃムカついてきたんですけど」
「言わせときなさいよ。そのうちみんな、君の力にひれ伏すときがくるから」
 小野田の耳にもその手の噂は入ってきている。
 小野田としては、薪に早く警視長の昇格試験を受けてもらって、その結果で外野を黙らせて欲しいのだが、本人が首を縦に振らないことにはどうにもならない。
「僕は別に気にしませんけど。でも、小野田さんの立場だってあるでしょう。こういった公の場で、あまり僕に関わらない方がいいんじゃないですか?」
「だから警視長の試験受けて、僕の事務次官になりなよ。そうすればみんな何も言えなくなるんだよ。次官への中傷は、官房室室長への言葉と同じだからね」
「いやです」
 僕には無理です、ではなく『いやです』と答えるところがいかにも薪らしい。相変わらず、不遜なまでの自信家だ。

「冷たいなあ。昨夜はあんなに激しかったのに」
「……これ以上、僕の神経逆撫でしないでもらえます? それじゃなくても今年は、部下の実家で不幸があったばかりで、こういう席には出たくなかったんですから」
「ああ。青木くんの。お父さん、気の毒だったね。まだ若かったのに」
「ええ」
 薪はその話題になると、ひどく沈痛な顔つきになった。自分の部下が死んだわけでもあるまいに、そこまで暗くなることもないと思うのだが。あの事件以降、薪は人の死に敏感になったような気がする。
 
「青木くんの実家ってどこだっけ?」
「福岡です」
「遠いねえ」
「はい」
「気落ちしてるだろうから、君がしっかりフォロー……と、ごめん、薪くん。ここで待っててくれるかな」
 長官の姿を見つけて、小野田はそちらのほうへ歩いていく。
 いくら小野田でも、警察庁最高責任者の前に、一介の警視正である薪を伴っていくわけにはいかない。
 殺伐とした警察庁の中にあって、不思議とひとを和ませる笑顔で、小野田は長官と話をしている。話の内容は聞こえないが、互いの柔和な表情から、少なくとも事件の話ではないようだ。

 薪はそっとその場を離れる。
 元の位置に戻って腕を組み、再び壁の花になる。
 終了予定時刻まで、あと1時間。その時間を埋めるため、薪は頭の中で第九の新しい勤務体制を組み立てることにした。

 今年の第九は、もしかしたらひとり人員が減るかもしれない。新しい人員が補充されるまでの間、臨時の勤務表が必要だ。
 しかし、薪の心は何故かざわざわと乱れて、職員のローテーションに集中できない。周りが煩いせいだろうか。
だが、毎年こうして何かしら考え事をして、この手持ち無沙汰な時間を乗り切ってきたのだ。今年に限ってそれができないなんて、自分はどうしてしまったのだろう。
 青木の空いた穴に、他の誰かを少しずつ入れていけばいいだけの話だ。そんな簡単な作業ができないなんて……。
 いや、そうじゃない。
 考えたくないのかもしれない。
 もう、青木が第九へ帰ってこないかもしれないと、顔を見ることもできなくなってしまうかもしれない、などと思いたくないのかも。

 かぶりを振って、その馬鹿げた考えを頭の中から追い払う。
 すでに福岡県警への異動届は作成済みだし、推薦状も添付してある。あとは本人の了承を得るだけに書類を整えたのは、他の誰でもない薪自身だ。それなのに新しいシフトが組めないなんて、矛盾している。
 でも、頭の中に青木の名前のない勤務表が映し出されると、足元が崩れていくような感覚を覚える。ひどく不安で心配で、暗い闇の中に置き去りにされた子供のように、怯えることしかできない自分がそこにいて。

 本当に、僕はどうしてしまったんだろう――――。

「薪くん。どうしていなくなっちゃうんだい? せっかく長官に紹介しようとしたのに」
 咎めるような小野田の声に、薪は我に返った。
 今度はカクテルグラスを差し出されて、薪は苦笑とともにそれを受け取る。薄緑色の液体を一気に飲み干し、にこりと笑って見せる。小野田の機嫌はこれで直るはずだ。
「どうしたの? 誰かに苛められた?」
「はい?」
「目が潤んでるよ」
 はっとして目元に手をやると、たしかに目のふちに濡れた感触がある。その事実に薪は愕然となる。
 こんなところでこんな……自分は何をやっているのだろう。

「飲みすぎちゃったみたいです」
「日本酒なんか飲んでるからだよ。もっと軽いお酒にしときなさい」
「はい」
 薪の手からカクテルグラスを取り上げて、小野田は薪の言い訳に騙された振りをしてくれた。その気遣いがありがたい。

「あ、長官が帰るみたいだね。やれやれ、やっと家に帰れる。じゃあね、薪くん」
「お疲れ様です」
 大ホールの中央に敷かれた赤い絨毯の両側に出席者全員が並び、恒例の儀式は幕を閉じようとしていた。
 整列の順番は、役職の高いほうから順に出口の方へ下りていく形である。小野田は長官の席に一番近い位置で次長の向かいに立ち、警視正の薪は末席だ。警視監以上は敬礼で見送り、警視長から下は最敬礼で見送る。
 最敬礼というのは警察官の場合、30度に腰を折ったお辞儀のことだ。よって薪は長官の顔を見ることもできない。べつに見たくもないが。

「薪警視正?」
 足を止めた最高責任者に自分の名前を呼ばれ、薪は驚いて顔を上げる。
 新しい長官が、なぜ自分の名を知っているのだろう?
「君が第九研究室の室長かい」
「はい」
 警察庁長官というのは、実は警察官ではない。
 もちろん警察庁の出身者から選ばれるのだが、所属は内閣である。警察庁を一旦離れて政府の人間となり、何年かの政務を経て再び警察庁に長官となって帰ってくる。だから次長や局長など側近の顔は覚えても、末端の人間の顔は知らないのが普通だ。
「私をご存知でしたか?」
「いや。一番小さい男がそうだって、小野田君が言ってたから」
 あんまりだ。
 小野田としては解りやすいように、一番の特徴を説明しただけなのだろうが、薪にとっては最大級の侮辱だ。この次小野田がふざけてじゃれついてきたときには、相手の正体に気付かなかった振りをして一本背負いを決めてやる。

「君が小野田君の秘蔵っ子か。なるほど、小野田君が好みそうな貌だ」
 どういう意味だろう。まさか長官までもがおかしな噂を信じているわけではあるまい。
 柔和な笑いは心からのものか上辺だけのものか、判断がつかない。小野田もタヌキだが、この男もいい勝負だ。
「彼はああ見えて青臭いからな。君もそういうタイプだろう」
 なんと答えたものか、迷ってしまう。自分だけのことならともかく、下手な応答は小野田の減点に繋がる。薪は黙って頭を下げた。
「第九には私も期待している。がんばってくれたまえ」
「ありがとうございます」

 顔を上げてマスコミ対策用の完璧な笑顔を浮かべ、薪は長官の顔を真っ直ぐに見た。
 社交辞令でも長官の言葉だ。第九の株が上がるなら、ここは笑顔だ。
 薪の笑顔に長官もにっこりと笑って、薪の肩をぽんぽんと叩いた。警視正以上がすべて顔を並べる賀宴でのその行為は、長官が第九を認めていることを全員にアピールしたことになる。
 しかし、またこれで敵が増えるな、と薪は心の中でため息をつく。
 短い会話でも、周りの嫉妬を買うには十分だ。薪が官房長のお気に入りというだけでもかなりのブーイングがあるのに、長官のお声掛かりなどというよけいな尾ひれが付いたらまた……その証拠に、隣の2課の課長が薪のことを睨んでいる。

 今年もどうやらロクなことがない。

 薪の2061年は、陰鬱な予感から始まった。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プレゼント(2)

プレゼント(2)







 その予感が的中したのは、3日後のことだった。
 仕事始めの月曜日。薪は所長の田城に呼び出されて所長室へ赴いた。

「こちらは三浦さん。N○Kのディレクターさんだよ」
 色つきの眼鏡をかけた若い男は、薪に名刺を差し出して礼儀正しく頭を下げた。
「はじめまして。三浦です」
 名刺を受け取って相手の身分を確認する。日本放送局とある。
 この若さでディレクターとは大したものだが、第九の仕事にテレビは関係ない。仕事始めの忙しい日に、いったい何の用だろう。
「第九の薪です。テレビ局の方が、私に何の用件です?」
「実は、新春企画でMRI捜査の特集を組むことになりまして。いろいろとご協力いただきたいんです」
 悪い話ではない。
 MRI捜査についての正しい知識を世間に広められるチャンスだ。

 この捜査方法は何かと誤解をされることが多くて、中でもプライバシーの問題については、これまでもありとあらゆる非難を受けてきた。
 MRI捜査には確かに視覚者の脳が必要だが、データを抽出した後は速やかに遺体に戻される。それを世間では、第九の地下には今までMRIにかけられた脳がホルマリン漬けになって保管されている、などとまことしとやかに囁かれている。
 他にも、MRIで見ることができる画像はせいぜい5年前のものまでだが、世間では生まれてから死ぬまでのすべてが見られてしまうと思われていたりする。
 視覚者本人の目が閉じているときの画はもちろん見ることができないし、自分自身の姿は見えないから、鏡にでも映っていない限り、トイレや風呂の様子が盗撮ビデオのように映し出されるわけではない。
 ベッドの中のことにしても、大抵は薄暗いところで行う行為だし、相手の姿は映っても自分の姿は映らない。それがまるでAVのように局部がアップになったり、カメラアングルを変えて映されたものが職員に見られていると誤解されている。
 事件に関連性がなければそんなものは見ないし、見たいと思えば刑事局の5課から押収品の裏モノを借りてきたほうがよっぽど見ごたえがある。あれもあまり続けて見ると吐き気がしてくるが。

 国営のテレビ番組なら、そういった諸々のくだらない誤解を解く絶好の舞台である。室長として協力は惜しまない。薪は自分の名刺を出して、承諾の意を示した。
「わかりました。僕にできるだけのことはしましょう」
 応接セットに腰を下ろし、膝を突き合わせて打ち合わせに入る。三浦はノートにメモを取りながら、薪の説明にいちいち頷いて見せた。
「一般の方向けに、簡単にMRI捜査の概要を説明したレジュメがありますから、それを使っていただいて。あと、ぜひお願いしたいのは、世間で誤解を受けているMRIの画像についての説明をシステムの専門家に」
「それは室長のほうからお願いします」
「僕が?」
 システムの説明はできるが、番組に出演するとなると話は別だ。
 第九の準備期間中は必要にかられて、仕方なくテレビや新聞のインタビューに応じていたが、そのせいで顔が売れてしまったため、あの事件のときマンションを引っ越す羽目になったのだ。

「僕は、番組には出ないほうがいいと思います。そちらにも迷惑がかかります」
「そうはいきません。番組のメインは第九研究室室長と弁護士の大山氏の対談ですから。薪室長には何が何でもご出演いただきませんと、番組になりません」
「大山? 大山稔弁護士ですか」
 大山というのは、人権派の有名な弁護士だ。
 人権問題に関する著書も多く、擁護団体の旗印にも掲げられている。弁護士のタイプとしては、物証や論理に基くよりも裁判官の同情心に訴えかけて、情状酌量を求めるのが得意な人情派である。
 薪が一番嫌いな種類の弁護士だ。対談などすれば、争いになるのが目に見えている。

 薪は一昨年の夏、警察庁始まって以来の大スキャンダルを起こした張本人だ。
 相手は当然、そこをついてくるだろう。自然と世間は、人情派の弁護士に方へ付くことになる。理屈よりも人の心、犯罪防止よりも人権(プライバシー)―――― この国はそういう国だ。
 この国で唯一の国営放送局は、視聴率の低迷から経営が難航しており、視聴者の獲得に躍起になっていると聞く。第九が人権派の弁護士にこてんぱんにやっつけられるところを全国ネットで放映する―――― 薪の役割は、明らかに客寄せパンダだ。
 
「ではお断りです。世間にMRI捜査の正しい姿を知らしめるためなら協力は惜しみませんが、その対談の目的は別のところにあるのでしょう」
「しかし、長官の柏崎さんには承諾を得ていますが」
「長官に?」
 三浦の意外な言葉に、薪は訝しげな声を出し、次いで田城のほうを見た。田城は困惑顔で頷き、控えめに三浦の言葉を肯定した。
「三浦さんは、柏崎長官の甥御さんにあたるそうでね」
 絡め手か。
 だが、それは出演を強制する理由にはならない。
 
「それとこれとは」
「実はこの話は、長官のほうから三浦さんに持ちかけたみたいなんだ」
「はい!?」
 薪は再度、びっくりする。あのタヌキはいったい何を考えているのだろう。
「それは内緒だって言ったじゃないですか」
 三浦が田城の言葉を認める。まったく年寄りの考えることは分からない。
「なんでそんなこと」
「薪くん。きみ、こないだの新年会で長官と会っただろう」
「会ったって……同じ会場にいただけですよ」
「親しく話してただろ?」
「話なんかしてませんよ。最後にちょっと声をかけられたくらいで、それだけですよ」
 本当にそれだけだ。
 柏崎は警察庁長官として第九の室長を労い、薪は室長として当たり障りなく応えた。べつに親しくなどしていない。

「長官が『あの顔は警察庁の宣伝になる』って言ってたって」
「顔って。僕はタレントじゃないですよ」
「第九の室長はルックスで選んだって、世間じゃ有名ですけど」
 三浦の不躾な発言に、薪の目がぎらりと光る。三浦は慌てて口を閉ざし、助けを求めるように田城のほうに視線を走らせた。

「薪くん。君の気持ちは分かるけど、長官が絡んでるとなると」
「お話はよくわかりました。引き受けましょう」
 その瞳に凄烈な怒りを宿したまま、薪は立ち上がった。
 そっちがその気なら、受けて立ってやる。
 放送局の経営状態など知ったことか。思い通りにはさせない。第九を誹謗するものは許さない。
「来週末の土曜、10時にそちらへ伺えばいいんですね。僕が用意するものはMRIシステムの概要書と、他に何かありますか」
 座ったままの三浦を上から睥睨する。
 冷たい目を向けられて、三浦は言葉が出ないようだ。ぶるぶると首を振る。
「では仕事がありますので。失礼」

 薪が出て行った後の所長室で、年若いディレクターは詰めていた息を大きく吐き出した。
「こわ~……」
「だから言葉には気を付けてくださいって言ったでしょう」
「ちゃんと気を付けてましたよ。きれいな顔とか女の子みたいとか、言わなかったでしょ」
「それ言ってたら、睨まれるくらいじゃ済まなかったよ」
 ブリザードのような迫力を持った薪の凄絶な無表情を思い出すだけで、田城は背筋が寒くなる。あれは見た者にしかわからない怖さだ。

「あの、ひとつ聞きたいんですけど」
 さほど悪びれた様子もなく、三浦は田城に質問を投げかける。若者は立ち直りも早い。
「さっき室長が、自分が番組に出ることで局に迷惑が掛かるようなことを言ってましたけど、どういう意味なんですか?」
 薪は、少しこの青年の思惑を誤解している。
 この青年は、あの事件を知らない。というか、覚えていないのだ。
 1年も経てば、どんなに大きな事件でも忘れられてしまう。その事件に深く関わったものでなければ、日常の中に埋もれてしまう。世間などそんなものだ。

 三浦はべつに、第九を糾弾しようとか薪の過去の汚点を暴こうとか、そういったつもりでこの企画を立ち上げたわけではない。第九の室長は警察官にしておくのがもったいないようなルックスの持ち主だと伯父から聞いて、なんとか番組に引っ張れないものかと、情報源の伯父に相談してみたのだ。
 大山弁護士は人権派の弁護士で、公明正大な人柄だ。卑怯な戦法や言葉の暴力は用いない。
 人権擁護団体の代弁者にもなっている大山と第九の室長が和やかに話をすれば、それは世間で叫ばれる第九への非難を緩和することに繋がる。柏崎の算段はそういうことだ。いわば薪の味方だ。
 にも拘らず、あんな冷たい眼で見られて、三浦は番組の先行きが今から不安になっている。
 薪が収録中に、もしあのような態度を取れば、大山のほうも頑なにならざるを得ないだろう。対談はぎすぎすしたものとなり、第九の心証はまた悪くなる。それは柏崎の本意ではない。自分の首を絞めるような真似を、あの抜け目ない伯父がするものか。

「それにしても怖いなあ。噂には聞いてたけど」
「薪くん、最近ちょっと機嫌が悪いんだよ」
「なにかあったんですか?」
「部下の父親が亡くなってね。美味いコーヒーが飲めないんだそうだ」
「はあ?」
 第九の裏事情はよくわからない。
 わからないが、このままいくと伯父の不興を買うことになりそうだ。警察庁長官の伯父には、何かと世話になっている。機嫌を損ねるのは非常にまずい。
 熟考の末、来週末の土曜には薪のために美味いコーヒーを用意することにして、若いディレクターは所長室を後にした。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プレゼント(3)

プレゼント(3)








 2週間後の土曜日。
 第九の室長は終始穏やかな微笑を見せて、三浦の懸念を払拭した。
 先週の始めから、今日までの間にいったい何があったのか、所長室で三浦を睥睨した彼とはまるで別人のようだ。

 MRIシステムについて淀みなく説明をする薪の美貌に、番組のスタッフがそっとため息をついている。
 まったく、警察官などという無粋な職業に就かせておくのがもったいない。黙って座っているだけでも、いつの間にかスタジオ中の視線を集めてしまう。今日の薪はなんだかとても華やかで、内面から輝くように美しい。
 先日会ったときは、ここまで美しいとは思わなかった。どちらかというと硬質な美貌の持ち主だと思ったのだが、スタジオ特製の強烈な照明のせいだろうか。
 
「紹介のときにめいっぱい寄っちゃって。どれだけ大写しになっても、あれなら大丈夫だ」
 カメラマンに指示を出す。この商品価値を利用しない手はない。
「ほんと、きれいな顔してますね。整いすぎて怖いくらいですよ」
「それ聞かれたらブリザードが来るぞ」
「あはは、禁句でしたっけ。でも、どんな角度から見てもきれいなひとって実際は少ないんですよ。俺、この仕事20年やってますけど、360度きれいなひとは珍しいです」

 事前の打ち合わせの中で、薪はMRIシステムについての質問を共演者側からしてくれるように、自ら脚本をしたためていた。
 世間で誤解を受けているMRIの画像について、5年前の画までしか遡れないこと、事件に関係のない脳データは検証しないこと、事件解決後、脳データは破棄され特別な場合を除いては保管されないことなどを、共演者からの質問に薪が答える形でわかりやすく説明していく。
 この上なく美しい笑顔を添えての流暢な解説は、見るものすべてを虜にする。その言葉を疑うことなど、思いもよらない。

「じゃあ、脳はデータを取り出した後は遺体に戻されるんですね?」
「はい。第九の地下にホルマリン漬けになっているというのは、都市伝説みたいなものです。私どももそんな職場じゃ、怖くて仕事ができませんよ」
 悪戯っぽく笑って、肩をすくめる。
 そんな風に笑うと完璧な美貌は幼さを加えて、ますます魅力的になる。計算された仕草ではないだろうが、思わず目を奪われる。奪われたが最後、彼から目が離せなくなる。これなら番組の途中でチャンネルを変える者はいないはずだ。

 それから幾つかの質問に薪が答えて、前半のMRIシステムについての質問コーナーは終了だ。いくらか修正しなければならない箇所もあるが、概ねこのままで行けるだろう。
 次は問題の対談だが、果たして大丈夫だろうか。

 後半の収録に入る前の休憩時間に、対談する二人を引き合わせておく。番組の中では初対面となる二人だが、そこはお約束というやつだ。
 薪はそこでも完璧な笑顔で、社会の公僕たる謙虚な態度を崩さなかった。
 ただ、心からの笑顔というわけにはいかない。相手は宿敵とも云える人権擁護派の弁護士なのだ。ここは薪の心をほぐさなくてはならない。でないと、表面づらだけの薄い対談になってしまう。

「こりゃ、美味いコーヒーですな」
 薪のために用意したブルーマウンテンの味に先に気付いたのは、弁護士のほうだった。
「薪室長がコーヒーがお好きだと聞いたもので、特別に用意したんです。ブルマンですよ」
 わざわざコーヒーの専門店まで足を運んで手に入れてきた、最高級の豆だ。なんと100gで3千円もしたのだ。1袋6千円のコーヒーなど、三浦はまだ飲んだことがない。
「ちょっと贔屓じゃないですか。三浦君は美人に弱いからなあ」
 それは禁句だ。
 大山は、この番組には何度も出演している。三浦ともすっかり顔なじみだ。硬い雰囲気の共演者をリラックスさせようとわざと言っているのは解るが、薪の場合逆効果だ。

「コーヒーくらい良いじゃないですか。先生は民間の方だからギャラが出ますけど、薪室長は公務員だからノーギャラなんですよ」
「そりゃまた気の毒だな。わしの分も飲みますか?」
 大山の冗談に薪はくすりと微笑み、自分のコーヒーに口をつけた。
 さぞ感激してくれるだろうと期待していたのだが、薪はさほど感動している様子もなく、静かにコーヒーを啜っている。薪の反応の薄さに、三浦は少々がっかりした。

「薪室長。お味のほうはいかがですか?」
「美味しいです」
「どんな風に? コーヒーにもアロマとかボディとか、いろいろあるんでしょう?」
「さあ。僕はべつにコーヒー通というわけではないので」
 そうなのか。6千円が無駄になった。

「ただ、僕の部下が」
 薪はふっと和んだ表情をみせて、なんとも幸せそうに微笑んだ。

「僕のために、コーヒーの勉強をしてくれてまして。僕としてはそんなことをしているヒマがあったら、業務の習得に力を注いで欲しいんですけど……困ったやつです」
 困ったやつだと言いながら、薪はひどく嬉しそうな顔をしている。自慢の息子を謙遜している父親、という感じだ。
「所長さんから聞きました。お気の毒にお父さんを亡くされたとか。それで実家に帰ってしまって、薪室長は美味いコーヒーが飲めなくなってしまったそうですね」
 それで薪の機嫌が悪い、という情報も聞き及んでいたのだが、そこまで言うとまた氷河期が来る。
「ええ。でも、彼は帰ってきました。先週の夜に」
 薪はそこで、なぜか顔を赤らめた。
 MRIシステムの説明をしていたときは頼りがいのある室長の顔つきだったのに、今はなんだか女の子めいて見える。
「僕のところへ、ちゃんと帰ってきました。だから美味いコーヒーには不自由してません」

 どうやら、薪の穏やかな笑顔の理由はこれらしい。
 お気に入りの部下が、自分のところへ帰ってきたことが、よっぽど嬉しかったのだろう。
 きっと優秀で、仕事もできる部下なのだ。美味いコーヒーが飲みたかったら、高い豆を買ってくればいいだけの話だ。コーヒーの話はカモフラージュで、本当はとても大事な部下だったのだろう。

「そんなことより対談の内容ですが。大山先生は人権擁護の立場から、MRI捜査を否定されるわけですよね」
 亜麻色の瞳がすっと細められて、鋭い刃物のような眼になる。
 どうして刑事というのは、こうも目つきが悪いのだろう。薪はこの容姿だからそうは見えないが、これでガタイが良くて顔がいかつかったら間違いなくヤクザだ。
「そのほうが面白いでしょうな。番組としては」
 お互いが言いたいことを言いながら、良い雰囲気を作り上げていくのがベストだ。
 それには、互いの意見を擦り合わせていかなくてはならない。たった1時間ほどの番組を撮るのに何時間もかけて収録し、後で編集する。番組はそうして作るものだ。

「どうぞお手柔らかに」
「室長。これは対談であって討論じゃないですからね」
「わかってます」
 本当にわかっているのだろうか。
 薪のあの冷たい目を出されたら、お茶の間が凍りついてしまう。そうなったら編集で何とかするしかない。最悪、薪の商品価値(ルックス)は捨てて、遠目のアングルで通すしかない。

「しかしなあ……死んじまったら、人権もクソもないと思うがなあ」
 大山がぼそりと漏らした本音に、三浦はびっくりした。薪も大きな目をぱちくりさせている。幼い顔だ。プロフィールの年齢欄を修正したいくらいだ。
「だってそうでしょう。生きているからこそ人権が大事なんでしょう。犯罪者の人権に関することならそれは譲れないが、死者の人権を議論しろと言われてもねえ。あ、これは擁護団体には内緒ですよ」
 大山の正直な言い分に、薪は苦笑した。刺々しい雰囲気が消えて、柔和な空気が戻ってくる。
「僕たちが見るのは、被害者や犯罪者の視覚ですから。亡くなった人が見たものが、そのままそっくり映し出されるんです。だから事件に関係すること以外も見えてしまいます。データの漏洩には特に気を使っていますが、僕たちの記憶を操作することができない以上、完全に個人の秘密が守られるというわけにはいきませんからね」
 人権擁護団体の言い分は尤もだ、と逆に薪のほうが認めてしまった。なんだか雲行きがおかしい。

「しかし、MRIは確かにすごい。捜査一課が総出で1ヶ月かかるところを、5日でやってのけるそうじゃないですか。そのおかげでスピーディな犯人逮捕が可能になっている、と一課の人間が言ってましたよ」
「一課の? いったいだれが?」
 よほど驚いたらしく、薪は亜麻色の目を丸くした。一課の人間がMRI捜査を賞賛するのは、それほど意外なことなのだろうか。
「名前は絶対に言わないように念を押されてるんですよ。なんでも、それがバレたら吊るし上げを食うそうで」
「でしょうね」
 くすっと笑って薪はコーヒーを飲み干し、三浦のほうを見た。薪の視線を受けて、三浦は休憩中のスタッフを呼び集める。
「薪室長、お願いします」
「はい」
 後半の収録が始まった。

 2人のプロフィールから入って、現在の薪の役職、第九が解決した主な事件。
 大山が属する人権擁護団体の活動と、勝訴した裁判。それらをざっと説明し、いよいよ本題に入る。
 司会者が薪に、MRIについての問題点を投げかける。
 人権問題の他にも費用の問題、情報の流出に対する懸念など、MRI捜査にはまだまだ非難の要素も多い。薪はそれらに解りやすい言葉で答えていく。司会者は薪の答えを受けて、大山に意見を求める。
「まあ。MRIのメンテナンスには、そんなにお金がかかるんですか」
「申し訳なく思っています。皆さんの税金を使わせていただいてるわけですから」
「大山先生、どう思われます?」
「それは仕方ないでしょう。手入れをしなけりゃ、車も電化製品も動かないでしょう。何より、ひとの命がかかってますからな」
「そう言っていただけると、私どもも気が楽になります」
「さすが人権派の大山先生ですね。人命最優先ですよね」

 司会の女子アナも、いい味を出している。こういう役は女の子に限る。
 司会者というワンクッションをおくことで、対談の雰囲気を和らげようとした三浦の計画は当たったようだ。
 それから、MRIが事件解決の決め手となったいくつかの事件の話や、MRI捜査ならではの画像による証拠物件の提出など、MRIの変遷ともいえる裁判の判例の話題に移る。
 人情派の弁護士にはMRIシステムの専門的な知識はないから、いわば世間一般の人々の代弁者となって様々な疑問を薪にぶつけてくる。薪は真摯にその言葉を受け止め、MRIの限界は素直に認め、可能性は主張し、今現在できうる限りの力で捜査をしていることを力説する。

 情報流出防止対策について薪の専門的な説明の後、対談の焦点は最大の問題点に移った。
「やはり一番の問題点は、プライバシーの侵害だと思うのですが」
「ええ。そのことに関しては、私達も心を痛めています。私は……」
 言い淀んで少しの間、顔を伏せる。しかしすぐ、思い切ったように顔を上げて、薪は強い口調で語り始めた。
「僕は皆さんの前で、嘘はつきたくありません。だから、プライバシーを侵害するような捜査はしていないとは言えません。
 事件に関係する画を捜す中で、亡くなった方の秘密を知ってしまうこともあります。手紙やメールや―――― 秘めた想いまで、そのひとの視線を追うことですべてがわかってしまう。
 でも、信じて欲しいんです。僕たちは決して興味本位で視覚者の脳を見ているわけじゃありません。
 ただ、犯罪を防ぎたい。平和な社会を築きたい。皆さんが安心して生きられるような社会を創るための、礎になりたいんです」
 カメラのズームが絞られて、薪の顔が大きくモニターに映される。その美貌がふっと曇り、長い睫毛が軽く伏せられた。

「僕の部下が以前、こんなことを言ってました。
 MRI捜査は、とても哀しい捜査方法だと。互いを信じ合って、すべてを語り合える社会には必要のないシステムだと。僕もそれが理想だと思います。でも」
 薪はそこでぱっと目を見開いた。
 亜麻色の大きな瞳が叡智にきらめく。その圧倒的な求心力。
「人間は秘密を手放すことはできません。嘘も吐かずには生きられません。その上で信じあうのは難しいことかもしれない。しかしその可能性はゼロではない。
 僕たちは信じています。いつかMRIが無用の長物になって、平和な社会が訪れることを」
 つややかなくちびるから、涼やかな声が聞こえてくる。
 硬い言葉なのに音楽のような響きを持って、聞くものの耳を心地よく満たす美しい声。
「その日まではMRIの驚異的な解明力が、犯罪の抑止策になってくれるでしょう。
 僕たちがMRI捜査を続けることで、犯罪者は犯罪の隠匿が不可能なことを知る。必ず露呈すると解ってなお犯罪に手を染めるものは、減少するはずです。MRIが平和な社会を創るというのはそういうことです」
 薪の頬がうっすらと紅潮する。口調が熱くなる。冷静な室長というのは表向きの顔で、こちらが彼の素顔なのかもしれない。

「皆さんには、それを解って欲しいんです。僕の部下たちはみな、社会正義のために身を粉にして働いています。彼らの努力には頭が下がります。僕はとても感謝している。
 どうかご理解ください。皆さんの理解が、MRI捜査を容易なものにする。理解して頂くことで僕たちも頑張れる。
 MRI捜査はプライバシーを侵害するものではなく、起こってしまった犯罪を解明し、新たな犯罪を抑止するものです」
 そう結んで、薪は口を閉ざした。
 誰かがほおっと息をつく。どこからともなく自然に拍手が湧いて、薪はにっこりと笑った。
 非の打ち所のない完璧な笑顔。最初見たときは人形のようだと思ったが、今はそうは思わない。

 ほんの少しだが、三浦は薪という人がわかってきたような気がする。怒ると少しだけ怖いが、本当はきっと部下思いのやさしい人なのだ。
 人権問題にも心を痛めていて、他人の秘密を知ってしまうことに罪の意識を感じている。世間で叫ばれる非難の声を謙虚な姿勢で受け止め、無理解を嘆いたり憤ったりすることもなくただ誠実に理解を求めて努力を続ける。
 素晴らしい人格者だ。このひとの部下は幸せものだ。

 ―――― 三浦は薪の本当の姿を知らない。
 第九の部下に、人権はない。
 人権どころか寝る暇もない。食事の時間まで削られて、家にも帰してもらえない。無茶苦茶なシフトのせいで恋人とは別れさせられ、友人とは疎遠になり、寂しい人生設計を余儀なくされる。ひとえに室長の横暴によるものである。
 そのうえ、室長の針のような皮肉と嫌味に苛め抜かれ、捜査ミスをすれば『バカヤロウ!』と怒鳴りつけられ―――― 部下たちがこのVTRを見たら、現実の薪との落差に言葉を失ってしまうに違いない。

「ありがとうございました。おかげでいい番組になりました。VTRが出来たら、研究室のほうへお持ちします」
「よろしくお願いします」
「この後、みんなで打ち上げ行きますけど。薪室長もよろしかったらいかがですか?」
「いえ、僕は帰ります」
「室長にはギャラもお払いしないんですから、食事くらい奢らせて下さい」
「……家で待ってるひとがいるので」
 薪はまだ独身だったはずだ。ということは恋人だろうか。これだけのルックスだ。恋人がいないほうがおかしい。

「じゃあ、せめてこの豆、持っていってください」
「いいんですか?」
「ギャラにしちゃ安すぎますけど」
 薪はにっこりと微笑んだ。
 この笑顔が6千円なら安いものだ。VTRを持っていくときにも良い豆を買って行ってやろう。きっと喜んでくれるに違いない。もしかしたら、自慢の部下のコーヒーを振舞ってくれるかもしれない。
 とにかく収録は無事に済んだ。この内容なら伯父も納得してくれるだろう。

 大きな誤解を残したまま、三浦は番組の出来栄えに満足していた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プレゼント(4)

プレゼント(4)







「お帰りなさ……どうしたんですか? その顔」
 冬の短い日がとっぷりと暮れた頃、自宅に帰ってきた室長の顔は、明らかに不自然だった。
 眼は笑ってないのに口元だけが引き伸ばされたような、ちぐはぐな笑顔というか引き攣った作り笑いというか。
 「固まって元に戻らないんだ。ずっと営業用の顔してたから」
この顔で電車に乗ってきたのだろうか。不審者通報されなかったのが奇跡だ。
 もっとも、それは薪の皮肉な笑顔を見慣れている第九の部下ならではの感想で、普通の人には十分に美しい笑顔に見えるのだが。

「あー、疲れた。ほんと疲れた。24時間ぶっ続けでMRI見たときより疲れた」
「お疲れ様でした。風呂、沸いてますよ」
「おっ、気が利くな」
 風呂と聞いて目を輝かせる。室長の風呂好きは、第九職員なら常識だ。
「でも、その前にコーヒー淹れてくれるか」
 風呂より他のものを優先させるなんて、珍しいこともあるものだ。首をかしげる部下に、薪は出演料の代わりだというコーヒー豆の袋を差し出した。

「僕の今日の日当は、この豆と記念品の饅頭だ。まったく割に合わない」
「すごい。Sクラスのブルマンじゃないですか。これ、高くて手が出なかったんですよ」
「そんなに高い豆なのか?」
「1袋5千円じゃ買えないです」
「ふうん。そんなに美味いとも思えなかったけどな」
「せっかくだから、贅沢してストレートでいきましょうね」
「おまえに任せる」
 ゴリゴリというミル引きの音が、ダイニングから聞こえてくる。コーヒーのいい匂いが、リビングにまで漂ってくる。魂を揺さぶられるような魅惑的な香りにつられて、薪はダイニングに移動した。
 コーヒーを淹れる部下の大きな手を見つめる。
 ドリッパーに細引きしたコーヒーを移し、サーバーにセットする。しゅんしゅんという薬缶の音がおさまって、しばらく時間を置いてから、ゆっくりと湯を落とす。
 ふわあっとダイニングいっぱいに広がるかぐわしい薫り。もう、たまらない。

「ああ、やっぱりおまえが淹れたのは美味いな」
 一口すすって、薪は満足そうに上を向いて目を閉じる。口中を満たす苦味と酸味のバランスの良さ。微かな甘み。さっと切れる後味。なるほど、これならあの値段も頷ける。
「なんでかな。あっちで飲んだときはこんなに香りも良くなかったし、もっと苦みも強くて、口の中に渋さが残ったような感じがしたけど」
「コーヒーメーカー使っちゃうと、蓋をした状態で抽出することになるので、香りは抑えられちゃうんです。コーヒーはやっぱりドリッパーでないとダメですね。お湯の温度が高すぎると苦味は強く出るし、後味が悪かったのは最後の部分に残った雑味が混ざってしまったんだと思います。水も違ったのかもしれませんね。軟水じゃなくて、硬水使ったとか。硬水だと苦味がはっきり出るから」
「おまえ、職業間違えたんじゃないのか」

 上層部から室長会まで新年会のラッシュが一段落した頃、第九の新人はのうのうと帰ってきて、薪がやっとの思いで組んだ勤務表は無駄になった。
 それがよほど腹立たしかったのか、帰ってくるならもっと早くに連絡をよこせだの、僕の苦労を返せだのと、言いたい放題言われてしまった。
 年末に入れた電話で、あと10日ぐらいしたら帰ると話をしてあったし、休暇願いも先週末まで出してあったのだから怒られる筋合いはないはずなのだが、薪のこういう理不尽な攻撃にはすっかり慣れっこになってしまって、今更言い訳をする気にもなれない青木である。
 捜査では見込み違いなどあった試しがない室長は、仕事以外のことになると不思議なほど思い込みも勘違いも多くて、それによって引き起こされる結果に対しては、決して自分の非を認めない。
 まったくもって、困った上司である。

「あれ? 岡部、帰っちゃったのか?」
「岡部さんは買い物に出てます。夕食に何か食べるものと、あと薪さんの好きな吟醸酒買ってくるって」
「じゃあ帰ってくるんだな。助かった。マッサージ頼もうと思ってたんだ」
 薪はストレスが溜まると肩が凝る体質で、岡部の超絶技巧のマッサージが大のお気に入りだ。
 慣れないことをしたせいで、受けたストレスも大きかったのだろう。かなり痛いらしく、右肩を回しては顔をしかめている。

「今のうちに、風呂使ったらどうですか? 上がる頃には帰ってくると思いますよ」
「うん、そうする。昨日は夜中までかかったからな。今日は早く休みたい。おまえも家に帰りたいんじゃないのか」
 今日の収録のために、昨日から岡部と二人で薪の家に泊まりこんで、作戦会議を行っていた。
 あらゆる質問を想定して、あらかじめ回答を用意しておく。法学部の知識に物を言わせ、青木は法律の面から人権問題のポイントを絞り、岡部は長い経験から様々な事例を出して、MRI捜査の利点を説いた。
 対談相手の大山弁護士のことは、青木もよく知っている。穏健派の立派な人格者だ。青木がそのことを薪に告げると、薪は意外そうに首をかしげてみせた。

「おまえ、所轄の経験がないくせに、どうして弁護士に詳しいんだ?」
 岡部が最もな質問をしてくる。
 刑事告訴に関係のない部署を渡ってきた青木には、弁護士との接点はないはずだ。
「大山先生の講演会は、大学の頃、何度も聞きに行きましたから」
「なんで弁護士の講演会なんか」
「オレ、昔は弁護士希望だったんですよ。それで法学部に入ったんです」
「おまえの性格じゃ、弁護士のほうが合ってたかもしれないな。どうして希望を変えたんだ? 司法試験に落ちたからか?」
「司法試験は受かりましたよ」
「もったいないだろ、それ」
「実は、大学時代に薪さんの新聞記事を読んだんです。27歳で警視正で室長なんてスゴイなあって思って、それからずっと見てて、薪さんに憧れて、それで警察庁に希望を変えたんです」
 青木の賞賛が照れくさかったのか、薪はぷいとそっぽを向いて黙り込んだ。
 なにやら複雑な顔をしていたが、すぐに気持ちを切り替えて作戦会議の続きに戻った。作戦会議は夜半過ぎまでかかり、青木は岡部と一緒に薪の家に泊まった。

 予期せぬ質問が来ることを想定して、ふたりはそのまま薪の家に待機することにした。
 ここなら、専門書や法律関係の蔵書が研究室並みに揃っている。薪が長年書き溜めたMRI捜査の個人的な学習ノートもある。薪からの連絡が入れば即座に調べをつけて、正しい回答を薪に教えることができる。
 そこまで用意をしておいたのだが、蓋を開けてみれば薪から連絡が入ったのは「収録が終わったからこれから帰る」という一報だけだった。一昨年の事件を蒸し返されて責められたら、と薪の身を案じていたふたりだったが、どうやら杞憂に終わったようだ。

「夕飯食べたら、帰ります」
「岡部が来たら先に食べちゃってていいぞ。今日はのんびり入りたいんだ」
 風呂好きの薪は、入浴にかける時間も長い。1時間くらいは余裕だ。本を持ち込んだりする様子もないので、中で何をやっているのか不思議だが、薪が一日のうちでぼーっとできる時間といえば風呂の中くらいのものなのだろう。

 ところがその日、薪は10分もしないうちに風呂から上がって来た。
「右腕が上がらなくて、頭も身体も洗えないんだ」
 さすがに冬は寒いと見えて、バスローブを着込んでいる。これが夏なら素っ裸で出てくるところだ。
 薪はそういうことにはまるで無頓着で、男同士なのだからべつに恥ずかしがることはないと思っているらしい。
「岡部はまだ帰ってこないのか?」
「オレで良かったら揉みましょうか」
「そうか? じゃ、頼む」
 よほど切羽詰まっているらしい。
 薪は青木の申し出に一も二もなく飛びつくと、ソファに腰掛けて背中を青木のほうに向けた。
 白いバスローブの襟足から、うなじが露わになる。薪は警察官らしく襟足を短く揃えているので、後ろ首の部分が長く見える。普段はワイシャツの襟に隠れて見えない部位だから、その白さといったら目に沁みるほどだ。

 小さな肩をそっと掴む。薪の肩は男のものとは思えないくらい華奢で薄い。ちょっと力を入れたら、簡単に壊れてしまいそうだ。
「もうちょっと強く」
「こうですか?」
「そこじゃなくてもっと下。硬くなってるだろ」
「ここですか?」
「違う。背骨に近いとこ」
 背骨といわれても、タオル地のバスローブの上からでは探るのが難しい。
 薪の体を触り慣れている岡部なら、マッサージのツボも一発で解るのだろうが、青木はマッサージなどしたことがない。せいぜい母親の肩を揉んだことがあるくらいで、背中や腰はどこを押したらいいのか見当もつかない。
「背骨ですか? えっと……」
 青木が戸惑っていると、薪はするりとバスローブの紐を解き、両肩を出してきれいな背中をむき出しにした。

 青木の目に、はだかの背中が飛び込んでくる。
 淡く発光するかのような白い肌。麗しい首筋から肩へのライン。滑らかな背中は、男の固さも女の柔らかさも持ち合わせないかわりに、限りなくしなやかで優美で――――。
「これでわかるだろ?」
 ……本来の目的がわからなくなりそうだ。
 なんてきれいな背中だろう。なんてかわいい肩だろう。
 くびれたウエストの下には何もつけていないらしく、腰の骨が覗いている。

「背骨の、ちょっと右辺りが痛いんだ。肩甲骨との間の」
 薪の言葉が耳に入らない。
 袖口と腰に残ったバスローブの隙間から漂ってくる、強烈な色香。目眩がしそうだ。
「そんなに下のほうじゃない。肩甲骨だ」
 湯上りの柔らかい肌。湿り気を帯びて、匂い立つような艶っぽさを添えて――――。

 もう、我慢できない。
 さわりたい。キスしたい。押し倒したい。

 何度も夢の中に出てきた薪の裸身が、いま目の前にある。それに自分は触れている。
 毎晩のように見てしまう夢の中で、薪はいつも年上らしく、自分を導いてくれる。頬を紅潮させて、でもそれほど乱れることなく、穏やかに自分を受け入れてくれる。

「そっちじゃない。背骨だって言ってるだろ」
 夢よりも切実な男の事情で青木の脳裏に浮かぶ薪は、もっと大胆に様々なことをしてくれる。
 そのつややかなくちびるとやわらかい舌でもって青木の体中を愛撫して、やがて自身を貫くそれを小さい口唇に含んで、愛おしそうに舐め上げてくれて。
 愛していると耳元で囁きながら青木の上になって、青木を自分の中に収める。切なそうに眉根を寄せて、ほそい腰を上下に動かしてくれる。吐息のような愉悦の声が、そのくちびるから洩れて――――。

「……どこ触ってんだ?おまえ」
 無意識のうちに、薪の腰の辺りにたぐめられたバスローブの中に入り込もうとしていた手を阻まれて、青木は我に返った。
「肩は痛いけど、腰は凝ってない。てか、さわるな」
 青木の手をつかんだまま、身体をひねってこちらを向く。青木の顔を見て、亜麻色の瞳が訝しげに眇められた。
「おまえ、顔がヘンだぞ。意識が朦朧とするほど腹減ってるのか?」
 魅惑的なくちびるが動いて、何か言っているが聞き取れない。聞こえないわけはないのだが、理解できない。

 あのくちびるが、自分を狂わせる。
 長い睫毛が亜麻色の瞳が、自分を平静でいられなくする。

「青木?」
 つい先日、味わったばかりの甘い舌の味が思い出される。薪は「二度としない」と言っていたが、もう一度味わいたい。いま、したい。

 戒めを受けていないほうの手ですべらかな背中を抱き、身体ごと引き寄せる。
 バスローブがずれて、腰の部分が露わになる。たまらない色香を発している首筋にキスをする。甘やかな肌。いっそのこと食べてしまいたい――――。

 どすっ! と腹に蹴りが入って、青木はソファから転がり落ちた。その衝撃で正気に戻り、瞬時に青ざめる。
 まずい。やってしまった。
 薪はバスローブの前をかき合わせると、ソファから立ち上がった。めちゃくちゃに怒っているに違いない。
 どうやってフォローしよう……。
 自分の失態に目の前が真っ暗になっている青木の鼻先に、ぬっと何かが突き出された。
 箱に入った饅頭だ。『ご出演記念、N○K』と書いてある。

「これでも食ってろ。僕を食べるな」
「……はい」
 薪の勘違いは、時として青木を救ってくれる。
 青木は素直に箱を受け取って、包みを開けた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プレゼント(5)

プレゼント(5)








 岡部が買ってきた寿司折で夕食を済ませ、ふたりの部下が帰ったあと、薪はゆっくりと風呂に入った。
 湯船につかって両腕を頭の上に伸ばし、大きく背中を反らす。暖かいお湯の中に、疲れもストレスも溶けていく。これだから風呂はやめられない。
 岡部のマッサージが効いて、肩はすっかり軽くなった。夕食の寿司も美味かった。疲れてはいるものの、薪の機嫌はすこぶる良い。
 湯当たりする一歩手前まで温まって、風呂から上がる。
 はだかのままダイニングに行って、冷蔵庫から水を出す。他人が居なければ、やっぱり風呂上りは素っ裸がいちばんだ。肌についた湿気が飛ぶし、冷たい空気の心地よさといったら、もうこたえられない。

 最近、薪のマンションのダイニングには、新しい電化製品が増えた。
 大型のコーヒーメーカーで、エスプレッソも淹れられる本格式のものだ。部下からの預かり物なのだが、保管料として薪が自由に使う権利を認められている。

「遅くなっちゃいましたけど、これ受け取ってください」
 ひと抱えの百合と一緒にそれを第九のバリスタが持ってきたのは、先週のことである。
「こういうものは受け取れない。持って帰れ」
 そのとき薪は、常識はずれの新人に懇々と説教した。
「青木。警察官ていうのはな、上司へのお歳暮や付け届けは禁止されてるんだ。あげたほうも貰ったほうも、規定違反になるんだ」
「これ、お歳暮じゃなくてバースディプレゼントですよ」
「同じことだ」
 青木があまりにがっかりした顔をするので、つき返すのも可哀想になってくる。しかし、決まりは決まりだ。
 
「本当は花もいけないんだけど、まあ、これは消えてしまうものだから」
「食べ物とかなら良かったんですか?」
 論旨がずれている。こいつ、ひとの話を聞いているのか。
「だめだ。もう、花も買ってくるな」
「……もう、ここへ来ちゃダメってことですか?」
 泣きそうな顔になっている。こいつには先日、目の前で大泣きされたばかりだ。あんなのは二度とごめんだ。
 薪は慌てて、青木の早飲み込みを否定した。
「そんなこと言ってないだろ。何も持ってくるなと言ってるんだ。手ぶらで来ればいい」
 薪の言葉に、ぱっと顔を輝かせる。まったく正直な男だ。
「オレが来ても、迷惑じゃないんですね?」

 青木は、秋ごろからちょくちょく薪の家を訪れるようになった。
 大抵は岡部と一緒なのだが、たまにひとりで来ることもある。そんなときはピザやフライドチキンなど、自分の夕食はちゃんと持って来る。が、冷蔵庫に残り物があったりするとそっちを食べて、自分が持ち込んだ食料には手をつけないことが多い。
 また、薪のほうから夕食に誘うこともある。
 最もこれは、室長会議の資料を作る手伝いを青木にさせているからその見返りというわけなのだが、帰宅途中の料理屋のちゃんとした食事より、青木は薪の素人料理を食べたがる。外食は続くと飽きるものだから、その気持ちはわからないでもない。
 そんなこんなで、青木は岡部と共に薪の家の常連客になりつつある。大食漢がふたりになって、薪の家計のエンゲル係数は増える一方だ。
 
「おまえがいると重宝する。生ゴミが減るから」
「……残飯整理ですか?」
「環境にやさしいだろ」
「オレにもやさしくしてくださいよ」
「男にやさしくしてどうするんだ」
 青木は薪の言葉に笑って、薄緑色の包装紙に包まれた大きな箱を開けた。中身を取り出して、薪に差し出す。
「だからダメだって」
「オレの家のキッチン、狭くて置けないんです。ここで預かってもらえませんか?」
 中身は大型のコーヒーメーカーだった。
「これ、新型で抽出温度が選択できるんですよ。苦味を強くしたいときは高めに、和らげたいときは80℃くらいで設定するんです」
 頼みもしないのに製品の機能を説明しながら、勝手にダイニングへ機械を運び入れる。青木はこのところ、ずいぶん図太くなった。
「ミルも付いてるし、エスプレッソも淹れられるんですよ。まあ、所詮はメーカーですからドリッパーほどの香りは出ませんけど、挽き立てのコーヒーが飲めますよ」
 挽き立てのコーヒーと聞いて、薪の表情が変わる。
「どうぞ」
 新品のメーカーで淹れたコーヒーを鼻先に出され、薪は思わず香りを吸い込んだ。
 味わってみると、確かに自分の家のメーカーより美味い。余分な苦味がなく、コクがあり、それでいてさっぱりとした後味だ。

「どうですか? 預かってもらえますか?」
 預かるだけなら確かに違反にはならないが、それは詭弁というもので。
「預けるだけです。薪さんにあげるわけじゃありません。お願いします。もちろん保管料の代わりに、自由に使ってもらって結構ですから」
 屈託のない笑顔でそう言われてしまうと、どうにも逆らえない。
 青木のこういうところは恐ろしいくらい誰かに似ていて、薪の心をざわざわさせる。
「こういうのを、法の網をかいくぐるって言うんだ」
「オレ、法学部ですから」
「だめだろ、それ。悪用じゃないか」
 あはは、と笑って青木はコーヒーサーバーを洗い始めた――――。

 そんなふうにして薪のキッチンの居候となったコーヒーメーカーは、その持ち主が来ると不要品となるという矛盾した機械である。いかに最新式とはいえ、やはりバリスタの手によるミル引きとドリッパーにはかなわないからだ。

 水を飲み終えて脱衣所に戻る。
 髪を乾かす前に、もうひとりの新しい住人の上に乗り、その数値を確かめる。
「46.5。よかった、爆発はないな」
 これは特別なヘルスメーターで、薪にそれを贈ってくれた人の言葉を信じるなら、45キロを下回ると自動的に爆発するそうだ。その言葉は品物に添えられたメッセージカードに書いてあったのだが、スパイ映画の好きな雪子らしい文面である。
 主治医代わりというわけではないが、雪子は薪の健康にとても気を配ってくれていて、それが今回のバースデープレゼントの目的だ。これに毎日乗って、雪子の言うギリギリの数字を下回らないように管理することを強制されている。
 岡部は岡部で、週に一度のマッサージを確約してくれた。
 青木と違って薪の性格を心得ている岡部は、品物を贈って薪を困らせるようなことはしない。しかし、気持ちは雪子や青木に劣るものではない。というか、薪にとっては一番嬉しいプレゼントだ。

 まったく、薪の周りにはお節介が多い。しかもみんな、よく食べる。
『お礼は薪さんのビーフシチューがいいです』
『薪くんが焼いたパンプキンパイが食べたいのよね』
『今度、ちらし寿司つくるときは呼んでください』
 薪が礼を言った後に返ってきたセリフがこれだ。いつか自分の家はこいつらに食いつぶされるんじゃないか、と不安を覚えた薪である。

 ドライヤーで髪を乾かしながら、そんなことを思い出して、つい頬が緩んでしまった薪だったが、次の瞬間、鏡に映った自分の姿にぎょっとして目を見張った。
 肩から首筋にかけて、赤い痣がいくつもある。

 さっき、青木がつけた――――。

 急いでバスローブを着込んでそれを隠す。人目に触れるわけではないが、自分がそれを見るのが耐えられない。
 鏡の前から逃げるように寝室へ入る。今日はもう、寝てしまうに限る。

「ち、ちがうぞ、鈴木」
 枕元に置いてある写真の人物に、薪は必死で言い訳する。
 「あれは違うんだ。あんまり肩が痛くて我慢できなかったんだ。僕が誘ったわけじゃない。あっちもそんなつもりじゃなくて、ただ腹が減ってただけで」
 薪は俯いて、くちびるを噛んだ。
 いくら言い訳をしても、この痣は消えない。ここは素直に謝るべきだ。
 
「ごめん。油断してたんだ。これから気をつけるから」
 優しい笑顔が、薪の謝罪を快く受け入れてくれる。鈴木は薪には甘いのだ。
「おやすみ、鈴木。愛してるよ」
 いつものように愛の言葉とともに写真にキスをして、薪は眠りに就いた。




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ジャンル : 小説・文学

プレゼント(6)

 Rです。 痛いです。
 お嫌いな方、薪さんの眠りを妨げたくないと言う優しい淑女のみなさまは、いつも通りスルーしてください。







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プレゼント(7)

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 VTRの編集が終わったのは、翌週の火曜日だった。
 三浦はダビングしたDVDとタンザニア産のキリマンジャロを持って、法医第九研究室を訪れた。今回は自費で購入したのでブルマンというわけにはいかなかったが、それでも三浦がいつも飲んでいるコーヒーに比べたら倍の値段の豆だ。

 まずは先に、所長の田城に挨拶に行く。ちょうど居合わせた第九の職員だという背の高い男にDVDを差し出し、室長に渡してくれるようにと頼んだ。
「先日は、室長がお世話になりました」
「こちらこそ。おかげさまでいい作品になりました」
「そうだ。コーヒーとお饅頭、ごちそうさまでした」
 薪に渡したはずだが、この男の口にも入ったのだろうか。
 部下思いの室長のことだ。職場に持ってきて、部下たちに分けたのかもしれない。

 出演者の承諾なしには放映できない事情を話すと、第九の職員は快く頷き、感じのよい笑顔を見せて「さっそく見てもらいます」と言って所長室を出て行った。
 さすがは薪の部下だ。明るくて礼儀正しい。よく教育されている。
「やっぱりエリートは違いますね。すごく感じがいいや」
「あれが青木君だよ。コーヒーを淹れるのがとても上手なんだ」
「そうなんですか? お父さんを亡くされたっていう?」
「そう。来月、法要で実家に帰るからって、わざわざ私のところまで挨拶に来たんだよ。何日も休暇を貰って申し訳ないってお土産まで持ってきて。身内の法事なんだから、堂々と休めばいいのに。律儀な男だから」
 福岡銘菓と書かれた菓子折りを指して、田城はこれまた人の良い微笑を見せた。この第九の職員は、どうやら田城にとっても好ましい人物らしい。

 三浦は、田城に収録に協力してくれた礼を言い、スタジオでの薪の様子を報告した。
「薪室長は、部下思いの立派な方ですね。やりがいのある仕事に素晴らしい上司。いやあ、第九の皆さんはさぞ幸せでしょうね」
「そ、そうかな……だといいね……うん、きっとそうだね……」
 なんだかはっきりしない言い方だ。

「薪室長にお会いして、ぜひお礼を言いたいんですけど」
「今は進行中の事件を抱えているから、時間が取れないと思うよ」
「ちょっとでいいんです。こちらから第九に伺いますから」
 仕事中の薪を、一目見ておきたい。
 きっとあの穏やかできれいな顔で、優雅に職務を遂行しているに違いない。
 番組のスタッフにMRIの説明をしていたように、部下の質問には丁寧に答え、ミスにはいくらか眉根を寄せるが、それでも寛大に許し「この次からは気をつけろ」と、とびきりの笑顔を添えて励ましの言葉を掛ける。そんな姿が目に浮かぶようだ。
「それはできないよ。第九の捜査は重要機密だから。一般人は入れない」
「じゃあ、廊下で待ってますから。もうすぐお昼だし、休み時間くらいあるでしょう?」
「あるかなあ」
 渋る田城に無理やり頼み込んで、第九の建物に連れて行ってもらう。口には出さなくとも伯父の影響力は強い。

 広いエントランスからモニタールームまでの長い廊下の途中で、三浦は田城が薪を連れてきてくれるのを待つことにした。
 研究室の中は、職員以外立ち入り禁止である。三浦が入れるのはここまでだ。
 田城が自動ドアの前に立ち、ドアが開いた瞬間。
「なにやってんだ、バカヤロー!!」
 およそエリート集団の職場には相応しくない怒号が聞こえてきた。

「おまえらには脳みそがないのか! なんでこの可能性に気づかないんだ!」
 薪の声だ。
 信じたくないが、たしかに薪の声だ。

「この役立たず! このくらいのサーチ、2分でできなくてどうする!」
 すいません、という声が聞こえてくるが、薪の怒鳴り声は落ち着く気配もない。
「どこ見てんだ、ボケ! 役に立たない眼なら、くりぬいて代わりに飴玉でも詰めとけ!」
 ……うちの局長だって、こんなに怖くない。
 その後もさんざん、バカだのヘチマだのといった、いい大人が叱責に使う言葉ではないセリフを喚き散らす薪の声が聞こえてきた。
 三浦の頭の中で、薪の穏やかな天使の微笑がガラガラと音を立てて崩れ去っていく。

 やがて田城が、首を振りながら戻ってきた。
 ドアが閉まったので中の声は聞こえなくなったが、いったん耳についた罵声は三浦の頭の中でぐるぐると回り続けている。
「今日はやめておいたほうがいいみたいだよ」
「……はい」
 あまりにショックが大きすぎて、しばらくは何もしたくない。三浦はエントランスの椅子に腰掛けて、しばし休息をとることにした。

 三浦が座っている椅子の前を、数名の職員が急ぎ足で通り過ぎていく。ここを通るということは、第九の職員だろう。
「30分で戻れって。職員食堂まで行ってたら間に合わないよな」
「売店で弁当買うしかないだろ。あれなら待ち時間なしだ」
「寒いのに冷たい弁当かよ。ああ~、鍋焼きうどんが食いたかったのに」
「時間に遅れたら、室長の回し蹴りが来るぞ。容赦ないぞ、あのひとの蹴りは」
「命がけだよな。薪さんの部下でいるのって」
 そんな会話を交わしながら、第九の職員たちは去っていった。
 昼にうどんも食べられないなんて、なんて哀れなんだろう。うちのADだってここまで酷い扱いは受けていない。

「あれ? さっきの。三浦さんでしたよね」
 声のした方向に顔を向けると、背の高い眼鏡をかけた男が、エントランスの自販機で緑茶のペットボトルを買っていた。
「すみません。緊急の事件が入ってしまって。まだ例のDVDは、室長に見てもらってないんです」
「いや、いいです。ちょっと直さなきゃいけないところもあるみたいですし」
 薪が部下に感謝を述べた箇所は、修正が必要だ。この国で唯一の国営放送として、嘘は放映できない。すでにADには連絡を入れてある。局の編集室でVTRをセットして、自分を待っているはずだ。
 叔父もタヌキだが、薪の猫かぶりはその上を行く。もう、警察官なんて信じられない。

「青木さんは、皆さんと一緒に食事に行かないんですか?」
「オレ、弁当なんです。今日は何かなあ」
 めちゃくちゃにやけた顔をしている。これは間違いなく愛妻弁当だ。
 左手の薬指には何もしていないからまだ独身らしいが、きっと恋人が作ってくれているのだろう。

「その袋って珈琲問屋のですよね。三浦さんもコーヒーお好きなんですか」
 せっかく薪に買ってきた豆だが、とても渡す気になれない。この前あげた豆も返してもらいたいくらいだ。
「うちの室長もコーヒーが大好きで。オレが淹れたコーヒーを、とても美味そうに飲んでくれるんですよ」
「あんな怖いひとのために、コーヒーの勉強をしてるんですか?」
「薪さんは怖くないです。本当はすごくやさしいんですよ」
「やさしい人が、あんな風に怒鳴るんですか?」
 青木が不思議そうな顔をする。三浦にモニタールームの内情を知られていることを訝しく思ったのだろう。
「田城さんがドアを開けてたときに、中の声が聞こえてきたんです。皆さん一生懸命やってるのに、怒鳴られてばかりなんて。やってられないですよね」
 三浦が職員たちに同情すると、青木はにっこりと笑って「それは違います」と言った。
「今日は進行中の事件があって、早く犯人を見つけないと被害者が増えてしまう可能性が高いので、躍起になってるんです。これ以上の犠牲者を出さないために、自分の身を削って捜査を続けるんですよ、あのひとは。
 今もそうです。みんなには休憩をあげたけど、自分は食事もしないでモニターを見てます。たぶん、今日も徹夜です。みんなには仮眠を取らせるけど、自分は限界まで眠らないんです。
 だからいつも、突然倒れちゃうんですよ。あの癖だけは直して欲しいんですけど」
 本当だろうか。警察官は信じられない。

「オレ、心の底から室長を尊敬してます。みんなもそうですよ。口ではなんのかんのと文句を言ってますけど、みんな室長のことが好きなんです」
 熱っぽい口調だ。この男は心からそう思っているのだろうか。
「バカとかカスとか言われてもですか?」
「オレ、室長にラッパって言われたことあります。意味わかんないですよね」
「ほんと。どういう意味なんでしょうね」

 この青木という男は不思議だ。
 なんとなくひとを、やさしい気持ちにさせる。くつろがせる。落ち着かせる。
 その誠実そうな外見のせいか。それとも包容力のありそうな大きな体躯のせいだろうか。

「これ、室長へのお礼です。青木さんから渡しておいて貰えますか?」
「ありがとうございます。タンザニアのキリマンジャロ・キボーですか。これ、美味しいですよね。酸味が少し強めなんですけど、その分後味が良くて」
 さすがに詳しい。キリマンにも種類があるのか。

「薪さん、喜ぶだろうな」
 その時の青木の顔は、猜疑心に固まっていた三浦の心をさっと溶かした。

 大切な人の幸せを願って浮かべる、崇高な微笑。
 母親が子供の幸せを、夫が妻の幸せを願うときのような私欲のない微笑。

 この男は、本当に室長のことが好きなのだ。室長はこの誠実な男に、心からの尊敬と献身を受けているのだ。
 第九の職員は、やはり幸せなのかもしれない。少なくともこの男は幸せそうだ。

 きちんと頭を下げて三浦に礼を言うと、青木はモニタールームに戻っていった。
 その大きな背中を見送ってから、三浦は立ち上がった。
 思いついて携帯を取り出す。リダイヤルボタンを押すと3コールでADが出た。
「さっきのVTRだけど、そのままで行くから。編集なしで」
 せっかく用意したのに、と不平を言う声が聞こえる。普段ならそれがADの仕事だろ、と素っ気無く言うところだが、今日はちゃんと謝ることにした。
「うん。悪かった。すまん」
 ADはびっくりしたらしく、いえこちらこそすいません、などと聞きなれない言葉を返してくる。三浦はエントランスを抜けて屋外に出ると、第九の建物を見上げた。

 無機質な飾り気のない建物の中で、薪はモニターを見ているのだろう。
 あの忠実な部下と共に、一心不乱に捜査をしているのだろう。薪の言ったようにMRIが無用の長物となる日まで、彼らの努力は淀みなく続けられるのだろう。

 自分が贈ったコーヒーを美味そうに飲む薪の姿を想像しながら、三浦は放送局への道を歩き始めた。


 ―了―




(2009.1)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プレゼント あとがきに代えて ~心からお礼申し上げます~

 作中では、新しい年が始まりました。
 本当に季節感ないですね。リアリティも文章力もありませんけど。
 あるのは薪さんへの愛だけですね。(はっ。疑われてる……?)


 ところで。

 以前のあとがきにも書いたんですが、拍手していただいた数がすごく多くて、本人、感激してます。
 もう、めちゃめちゃうれしくて。(カウンタが壊れてるんじゃないか、という可能性にはあえて目をつむります)

 こんな規格外のお話、載せてもだれも読んでくれる人いないだろーな、と自嘲しつつ、みなさまの端っこに加わりたくて始めたブログですから、拍手をいただけるなんて夢にも思いませんでした。
 それもこんなにたくさん。
 このお話は全部で26話あるのですが、それをすべてUPしたとして、100拍手もいただけたら上等だ、と不遜ながらも密かに野望を抱いておりました。

 それがまだ、開設して1ヶ月も経たないのに。
 わたしは幸せ者です。マジ泣き入ってます。
 で、拙作を読んでくださったみなさまに、なんとかしてお礼がしたい、と思いました。

 こんなとき、他のサイトさまは、きれいな画を載せてらっしゃるんですよね。
 わたしも画が描ければいいんですけど……そっちはからっきしダメなので。

 わたしに操れるのは文章だけなので、(かなり不自由ですが)おこがましいとは思いましたが、また、こんなのがお礼になるのかどうか、だいぶあやしいのですが、
 SSのリクエストがあれば、お受けしたいと考えております。

 500拍手の記念に、特別編ということで、と目論んでおりますので、こんな話を見てみたい、という奇特な方がいらっしゃったら、コメをいただけると嬉しいです。
(あおまき、すずまき、おかまき、ゆきまき……はちょっとパスです。
 ラブラブ、ほのぼの、ギャグ、ケンカ、真面目に事件、三角関係、イタグロ、R……は、ええと、グロイですよ?)
 薪さん女性化以外なら、なんでもお受けします。(主人公が女になった途端、何も書けなくなるわたし)

 もちろん、スルーOKです。
 よけいなものを書かずに、さっさと先をUPしろ、というご意見でも、それはそれでうれしいです。
 とにかく、みなさまへの感謝を形にしたいだけなので。

 ご意見、お待ちしております。


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しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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書いてます。
60Pを超えました(笑)
7/18 推敲やってます。
あと20ページ。
7/20 推敲の結果、70Pになりました。←バカじゃないの。
2回目の推敲に入りました。
こんにちは(^^
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