エピソード・ゼロ(1)

 こちらは、鈴木さんが亡くなった直後の薪さんのお話です。

 悲しい薪さんが苦手な方は、ご遠慮願います。
 イタグロが苦手な方も、ご遠慮願います。
 内容は薪×雪に近いです。 あおまき・すずまき派の方は、スルーしてください。


 ……あ、すぎさんしか残ってない。(笑)
 というわけで、すぎさんに捧げます。山本×薪のお礼です。





エピソード・ゼロ(1)




 蒸し暑い夏の夜。
 じめじめと不快な湿気が触手のように纏いつく空気の中を、薪は重い足取りで歩いていた。
 彼の頼りない胸の内側のポケットには、一度返された香典袋。両腕には、部下が好きだった白い百合の花束。
 薪が向かっているのは、死んだ部下の自宅だ。

 先週、地区の斎場で行なわれた彼の葬儀に、薪は出席していない。
 彼が亡くなった経緯はとてもセンセーショナルなもので、様々なメディアに取り沙汰された。事件の当事者である薪は、日夜マスコミの襲撃を受けていた。その事情を知る当家がマスコミに葬儀を妨げられるのを警戒し、薪の参列を拒否した。

 そんな事情でもなければ、ありえないことだった。
 親友の葬儀に参列できないなんて。

 ブロックの上に白い柵が回された塀の前で、薪は足を止めた。ごくごく普通の、二階建ての住宅。窓からは、部屋の明かりが漏れている。
 おずおずと、細い指が呼び鈴を押す。
 家人が出てくるまでの間が、ひどく長く感じられる。
 インターホンからは、何の音も聞こえない。家の人にドアを開けてもらえないなら仕方ない、今日はこのまま帰ろうか、と卑怯者が囁く誘惑に、薪は必死で耳を塞ぐ。

 薪がここに来るのは、ほぼ10日ぶり。
 そうだ、たった10日前だ。自宅療養中の鈴木を見舞い、彼の母親と話をしたのは。

 精神的に参っている状態だから、気をつけてあげてください、と言った薪に、鈴木の母親は気丈にも笑顔で答えた。
「大丈夫よ。今夜は克洋の好きな煮込みハンバーグを作ったから。明日は元気になって、仕事に行けるわ」
 多分、あの画像を見た後でハンバーグは食べられないだろうと思いはしたものの、それを口にすることはできず、薪は曖昧に微笑んだ。
「だから薪くん。克洋の仕事を残しておいてね」
 彼女の笑顔は、掃除したての蛍光灯より周囲を明るくする効果があった。その笑顔でいつも家族を元気付けている彼女は、自分の肉親にするのと同じように薪に笑いかけてくれた。
「鈴木の仕事は僕が引き受けますから。ゆっくり休ませてやってください」
「そんなのダメよ。薪くんの方が倒れちゃうわ。あなた、また痩せたみたいじゃない」
 その時の彼女は強引に、薪の手にハンバーグの入ったタッパを持たせ、玄関口まで薪を見送ってくれた。
「薪くんも身体に気をつけてね。あなたはわたしたちの子供も同然なんだから」
「ありがとうございます。塔子さん」
 無理をしてでも、食べておけば良かった。多分、彼女の手料理は、これから先は食べられないだろう。

 カチャリ、と金属製の音がして、玄関のドアが開いた。
 息子を亡くした母親が、無言で出てきた。
 彼女は、薪の顔を見ようとしなかった。ひたすら俯いて、足元に視線を落としていた。
 10日前とは別人のように憔悴して老け込んだ彼女の姿に、薪は胸を衝かれた。
 きちんと挨拶をしなければ、詫びの言葉を述べなければ、と思ったが、声を出すことができなかった。

「お母さん。だれかお客さん?」
 押し黙った二人の耳に、若い女性の声が聞こえた。声の主は、廊下の奥の方から玄関に向かって歩いてくる途中だった。
 母親の向こうに薪の姿を認めて、凍りついたように足を止める。
「薪兄……」
 薪のことを兄と呼ぶのは、この少女だけだ。

 彼女の名前は千夏。鈴木の妹だ。
 千夏のことは、ヨチヨチ歩きの頃から知っている。鈴木とはずい分年が離れていて、薪が鈴木の家を始めて訪れたとき、彼女はまだ3歳だった。薪はその頃から、料理修行と称して頻繁に鈴木の家に出入りしていた。
 幼児期の彼女に刷り込まれたのは、2人の兄の存在。もちろん、鈴木のほうが実の兄妹である分、結びつきは強かっただろうが、薪のこともよく慕ってくれていた。

「千夏ちゃん」
 言いかけて、薪は言葉を止めた。
 千夏は、薪が初めて見る表情をしていた。

「なんで? どうして薪兄が、洋兄を?」
 玄関口に立つ薪の顔をじっと見て、千夏のアーモンド形の瞳が音にならない呪詛を吐く。

 あんなに仲良しだったのに、どうして?
 どうしてお兄ちゃんを殺したの?
 返して、返して、返して。
 お兄ちゃんを返して。

「止しなさい、千夏!」
 塔子に厳しく叱責され、千夏は目にいっぱいに涙を溜めて、バタバタと自分の部屋へ駆け込んで行った。
「ごめんなさい、薪くん」
「いえ……千夏ちゃんの態度は当然だと……」
「ごめんなさい」
 塔子の様子がおかしいことに気付いて、薪は口を閉ざした。

 ちがう。
 この「ごめんなさい」は、娘の無礼に対する謝罪の言葉ではない。

 ごめんなさい。
 わたしたちは――。
 あなたを憎むことを止められないの。
 ごめんなさい、あなたが悪いわけじゃないことは、ちゃんと解っているの。それでも、心の中が荒れ狂って、あなたを責めたくなる自分をとめられないの。

 ――― 責めてください。僕はそれだけのことをしました。

 いいえ、いいえ。
 あなたに責任があるとかないとか、もう関係ないの。
 あなたを気遣ってるんじゃない。わたしたちには、そんな余裕はないの。
 ただ、克洋が泣くから。
 あなたを責めたら、わたしの中のあの子が泣くから。それがつらくて、でも、自分を抑えるのもつらいの。
 だから……二度とここへは来ないで。

 その会話は、一言も声にはならなかった。この先も、二人の口から洩れることはないだろう。

 やさしいひとたちだから。
 僕に向けるべき刃で、自分自身を抉っていく。そんなひとたちだから。
 もう、二度と会えない。

 本当の息子のように可愛がってくれた、慈しんでくれた。
 兄のように慕ってくれた、笑いかけてくれた。
 ずっと憧れていた家庭の温もり。それを与えてくれた彼らを、僕が不幸のどん底に突き落とした―――。

「わかりました。……鈴木さん」
 乾いた声で、薪は言った。
 それが鈴木の母親との、最後の会話だった。



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エピソード・ゼロ(2)

 ご注意ください。
 暗黒系のお話です。


 カップリングは薪さんと雪子さんです。
 あおまき・すずまき派の方はスルーしてください。
 薪さんが雪子さんにフォールインラブしてます! って、冗談です。(冗談言えるような内容か、これ)








エピソード・ゼロ(2)




 薪のもとにその連絡が入ったのは、夜中の3時頃だった。
 連絡をくれたのは田城だった。携帯電話から聞こえてくる言葉に、薪は蒼白になって身を震わせた。

 雪子が自殺を図った。

 料理用の包丁で、自分の手首を深く切っていた。遺書も身辺の整理もしていなかったところを見ると、発作的な自殺だったようだ。
 発見が早かったため、命に別状はなかったが、あの強気な彼女が自殺しようとした、そのことが薪に激しいショックを与えた。

『ちょっと、手が滑っちゃって』
 病室を見舞う薪に、彼女は健気に笑って見せた。
『もう二度と料理はしないわ』
 薪は、雪子に笑い返すことができなかった。
 雪子に会うのは鈴木の葬儀のとき以来だが、彼女はずい分、小さくなっていた。血色の良かった頬は、かさついて張りがなかった。いつもきらきらと輝いていた黒い瞳は、死んだ魚のようにどろりと濁っていた。

 そんな雪子の様子を思い出しながら、薪は空を見上げていた。
 病院の屋上に立って、明け染める夏の空を見ていた。夜中降り続いた雨のせいで、屋上の床にはあちこちに水溜りができていた。
 足を引き摺るように歩いて、屋上の端まで行く。7階建ての天端から見る地上の風景は、濃い朝靄が立ち込めていて、飛び込んだらふわりと受け止めてくれそうだった。
 ここから落ちたら、楽になれる。その誘惑に負けそうになる。
 薪の足が、ふらりと踏み出された。

「なにやってんの」
 がしっ、と後ろから回された腕に、首を押さえられた。
 引っ張られて、後ろに尻もちをついた。雨に濡れたコンクリートから冷たさが伝わってきて、でも立つこともできなくて。
「しっかりしなさい!」
 薪の後ろから彼のからだを拘束している人物もまた、床の上に両膝をついていた。
 薪の首に巻きついたままの細い腕には、痛々しく包帯が巻かれていた。真新しい包帯の白さが目に沁みて、思わず泣きそうになった。

「って、あたしが言っても説得力ないわよね」
 自嘲する声が、薪の耳に届いた。弱々しい声だった。
 いつも自信たっぷりにハキハキとものを言う、薪の友人の声とは思えなかった。
 
「ごめんね、薪くん。あたし、自分のことばっかり考えちゃった」
 首に回された腕をほどくことも抱くこともせずに、薪は呆然としていた。
 雪子は、なにを謝っているのだろう。

「こんなことして、あなたがどれだけ傷つくか……そんなことも思い浮かばなかった。情けない。克洋くんに笑われちゃうわね」
 後ろを向いて、雪子を抱きしめて一緒に泣きたい、と思った。そうすれば、二人で痛みをわかちあえるかもしれない。自分の苦しみも雪子の悲しみも、半分になるかもしれない。
 でも。

 泣いてはいけない。
 僕にそんな権利はない。
 死んでもいけない。
 僕にそんな救済は許されない。
 
 泣くことも死ぬことも、僕にはかなわない。
 だから。

「誤解しないでください。死ぬ気なんかありませんから」
 お願いです。
「そんなバカな真似はしません。せっかく拾った命を捨てるなんて、もったいない。それに、正当防衛と認められた事件で僕が自殺したら、警察の隠蔽工作を疑われるじゃないですか」
 お願いですから、雪子さん。
「鈴木も困ったことをしてくれましたよね。あのくらいのことで狂うなんて、情けないったら。こんなことで、出世の邪魔をされちゃたまらないな」

 僕を憎んで。
 せめてあなただけでも、僕を憎んでください。

 なんでもいいから、僕に罰を。
 罵りの言葉を。
 あなたを一生許さない、と言ってください。

 首に巻かれた腕が、ゆっくりと解かれた。自由になった薪の体は、瞬間、その場に崩れそうになる。それを意思の力で留め、雪子の怨詛を受け止められるよう、しゃんと背筋を伸ばした。
 しかし、薪が期待した雪子の声は、聞くことができなかった。そのかわり、頭頂部に手のひらが置かれた。
 言葉ではなく力技か。雪子らしい。
 髪を掴まれてコンクリートの上を引き回されたら、気持ちいいかもしれない。雪子さんは優しいから、せいぜい僕を引き倒すくらいだろうけど。

「……何してるんですか」
 清潔でやさしい手が、薪の頭を撫でていた。
 頭頂部から後頭部にかけて、何度も何度も繰り返し、髪の上を滑っていく温かさに、薪の声が震える。
「克洋くんが。薪はこうしてやると落ち着くからって」
 虚脱感に襲われて、薪は背中を丸めた。
 敵わない。雪子には、とてもかなわない。
「馬鹿馬鹿しい」

 雪子の手を邪険に払いのけ、薪はさっと立ち上がった。
 いつの間にか辺りはすっかり明るくなり、ビルの谷間から上ってくる閃光が、強く薪の瞳を射た。眩しさに、思わず顔を背ける。
 床に跪いたままの雪子を見ないようにして、屋上のドアに向かう。ドアを開けて、背中で彼女の気配を探る。
 動きはない。雪子はまだ、あの冷たい床に座ったままだ。

「病人はさっさと病室に帰りなさい」
 雪子のからだが冷えてしまう。
 鈴木の愛した大切な女性のからだが、冷たくなってしまう。

「鈴木の後を追いたきゃ、止めませんけど」
 早く、立ち上がって。
 なおもあなたを傷つけようとするこの極悪人に、どうか裁きを。

「雪子さん」
 我慢比べに負けたのは、薪の方だった。
 薪がためらいつつも振り返ると、雪子は床に座ったまま、昇ってくる太陽をじっと見ていた。

 朝の清浄な光が、雪子を包んでいる。
 彼女はきちんと正座をし、太陽に向かって姿勢を正し。その姿は気高く、けがれなく。悲しみも苦しみも、朝の光に浄化されていくようで。
 こんなに美しい女性を今まで見たことがない、と薪は思った。
 
「きれいね」
 落ち着いて力強く、心地好く響くアルト。
 それはいつもの彼女の声だった。

 薪はドアを開けたまま、階段を下りた。カツカツと乾いた靴音が、静かな病院に木霊する。
 静まり返った廊下を、薪はひとりで歩いた。救急用の出口から外に出て、差し込んできた太陽に背を向ける。
 自分にはもう、光はいらない。

 もういい。
 雪子も鈴木の両親も、僕にそれを与えてくれないなら。
 僕は自分で自分を憎むしかない。

 罪人には罰を。
 その罪にふさわしい処罰を。
 殺人者には、未来永劫の苦しみを。夜毎の煉獄を。
 意識が途切れるほどの責め苦を。痛みを。絶望を。

 僕に必要なのは、それだけ。




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エピソード・ゼロ(3)

 ご注意ください、暗黒系です。

 薪さんが好きな人は読まないでください。
 お食事中の方は読まないでください。
 動物好きの方は読まないでください。
 それからえーっと、……もう、すぎさん以外、読まないでください……。





エピソード・ゼロ(3)





 ―――僕に罰を。

「薪くん。あんまり無理しちゃ駄目だよ。昨日も床で寝てただろう」
「僕をベッドまで運んでくれたの、田城さんだったんですか? ありがとうございました。ええ、大丈夫です。これからはちゃんと仮眠室で寝ますから」
 ―――誰か、僕に罰を。

「薪くん。ぼくのところへおいでよ。歓迎するからさ」
「ありがとうございます。小野田さんのお気持ちは、とても嬉しいです。だけど、僕は第九に残ります。僕が今ここを離れたら、第九は潰れてしまいますから」
 ―――罰を。

「薪警視正の行動は、完全な正当防衛であります。鈴木警視は重度の錯乱状態にあり、長年面倒を見てきた部下に2発の弾丸を発砲された薪警視正はむしろ、被害者であったと検察側は判断します」
 ―――誰でもいいから、僕に罰を。

「マスコミの言うことなんか、気にしないで。元気出してください。わたしたちは薪警視正の味方ですから」
「ありがとう。差し入れ、美味しかったです」

「お前は悪くないよ。そんなに思い詰めるなよ」
「うん。もう大丈夫だよ。心配かけて、悪かったな」

 他人のやさしさが。
 僕を思いやってくれるみんなのこころが、僕を包む。
 
 ――――死にそうだ、と薪は思った。
 
 真綿で首を絞められるように、段々、息ができなくなっていく。
 優しい言葉はいらない。いらないんだ。
 僕に必要なのは。



***



 暗闇の中で、薪は目を開けている。
 久しぶりに自宅に帰って床に入ったものの、一向に眠気は差してこない。
 もう、何日寝てないんだろう。
 研究所にいれば仕事があるから、時間をもてあますことはない。薪は何も考えず、機械的に仕事をしていればいい。限界を超えれば、からだの方が勝手に休息を取ってくれる。あれが薪にとっては、一番楽な時間の過ごし方なのだ。

 こんなふうにやることもなく、漫然と空を見ていると。
 ほら、出てきた。

 白いワイシャツが、ぼう、と浮かび上がり、男のからだになった。顔は闇に沈んで見えないが、背が高く、若く逞しい。どちらかというと貧弱な体つきの薪が羨望する、大柄な肉体。
 その左胸から、真っ赤な血が流れはじめる。
 最初は針で突いたような小さな点。みるみる広がって、やがてはシャツから滴り落ちるほど。
 泉のように湧き出る赤い液体は、細い川のごとく流れ、薪の足元に集まって小さな池を作る。

 次第に水かさを増す血の池に、薪は陶然と立ち竦む。
 その液体は生臭く鉄臭く、不快な臭気を発していたけれど、たしかに親友の匂いがして。だから薪は彼に包まれていくような感覚に、うっとりと目を閉じる。
 白いつま先が、踵が、くるぶしが。侵食される細胞が、歓喜を訴える。

 ふくらはぎの中間地点で、水位は止まった。
 見ると彼の肉体はなく、シャツだけが池に浮かんでいた。ワイシャツは血に染まることもなく白いままで、それは彼の清廉な人格の証。でも、肝心の彼はいない。
 薪は慌てて、地べたに手をついた。夢中で血溜まりの中を両手で探る。しかし、そこには固体らしきものはない。
 この中に、かれは溶けてしまったのだろうか。

 かれはどこにもいない。
 永遠に、僕の前から姿を消してしまった。

 薪を包んでいた赤い水は徐々に引いていき、最終的に薪は真っ白な空間に取り残された。上も下もない、空虚な世界。色もなく、音もない。自分のからだ以外、薪の目に入るものはない。
 膝の上に投げ出された、華奢な手が2本。それを薪は、異質な生き物のように見つめる。その二つには、僅かな相違点があった。
 手のひらでは分からなかったが、裏返すと片方だけ、爪の間に血が残っている。魚の内臓を引き出した後のように、爪と肉の間に深く深く染みこんだ朱。

 この手が。
 この右手が、僕の大事なひとを奪った。この世でたったひとりの、僕の親友を殺したんだ。

 左手が、まだ血に汚れていない自分の左手が、罪を犯した右手を強く握り締めた。爪が右手の甲を抉った。微かに滲む朱。
 心地よさに、薪はうっすらと微笑んだ。

 ―――もっと。

 起き上がり、おぼつかない足取りでふらふらと歩いて、サニタリーに入った。鏡の前には歯磨きセットと片刃のカミソリ。
 カミソリを左手で持って、右の手のひらにあてがう。すうっと刃を滑らせると、ゾクゾクするような美しい色が、白い手から流れ出した。

 ―――もっと、罰を。

 ふと目を上げると、鏡の中に薄ら笑いを浮かべた男の顔があった。
 寝乱れた亜麻色の髪。出来の悪い蝋人形のように艶のない頬。長い睫毛に囲まれた髪と同じ色の瞳の、ガラス玉のように無機質な光。

 薪は、その人物がだれかを理解する。
 これは、鈴木を殺した男だ。

(こいつがぼくのすずきをころした)
 刹那、激しい憎しみが薪の全身から沸き起こった。
 身体中の血が、沸騰するような怒りだった。脳の部分は特に熱く、細胞が焼き切れるかと思った。
 怒りに任せて、血にまみれた右手を思い切り鏡に叩きつけた。鏡には細かくひびが入り、それは薪の右手の4本の指を本人が望むより遥かに軽く傷つけたに過ぎなかった。

 しかし、薪にはそれで充分だった。
 憎むべき男の顔は、不均一に崩壊した鏡面に副うように醜く崩れた。

 ―――もっと、もっと。
 人殺しに、重い罰を。

 鋭く薄い刃が、ゆっくりと白い頬に押し当てられる。冷たい金属の感触。
 そのとき、静寂を破ってガシャンと何かが割れる音が響いた。
 音のした方向に行って見ると、大きな石が窓ガラスを破って部屋に投げ込まれていた。部屋の入り口に立ち尽くしていると、続いて何かが放り込まれ、どさりと鈍い音を立てて床に落ちた。次いで、急ぎ遠ざかっていく足音。

 薪は、その場に剃刀を落とした。
 薄暗い部屋の中に、足を踏み入れる。迷いなく進む優雅な足を、ガラスの破片が傷つけていく。
 夏の夜の外気が流れ込む窓辺に寄り、床に両膝をつく。月明かりでキラキラと輝くガラスの欠片に彩られたそれを、薪は両手で抱き上げた。
 持ち上げると、その痩せた腹からずるりと長い筒状のものがこぼれだした。どす黒く腐敗して、蛆が沸き始めている内臓。泥だらけの乾いた毛並み。
 薪にプレゼントされたのは、中型犬の死骸だった。

 凄まじい悪臭を放つ死体を抱いたまま、薪はゆっくりと床に身を横たえた。ガラスが薪のからだを数箇所傷つけたが、痛みは感じなかった。

 ありがとう。
 どこの誰かは知らないけど、僕の欲しかったものをくれて。

 犬の首に顔を埋め、死の匂いを肺腑いっぱいに吸い込んで、薪は4日ぶりの眠りについた。




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エピソード・ゼロ(4)

 ようやく後半です。
 短い話でも、暗黒系は長く感じますね。
 推敲のための読み直しが辛かった~~。(><)←だったら書くなよ。

 ここからは辛くないです。
 落としたら上げないと。
 しづのお話の目的は、薪さんを幸せにすることですもの。



 みなさまの拍手とコメに励まされてます。
 すぎさん以外だれも喜ばない話だな、と読み直したとき思いましたから。(書いてるときは何も考えてない)

 でも、うちの薪さんはこういうひとだからこそ、青木くんが必要なんです……。





エピソード・ゼロ(4)




「岡部。今日も僕の家に来る気か」
「迷惑ですか?」
「かなりな」
 ムッと膨れるいかつい男の顔に、薪は笑いを噛み殺す。
 岡部は正直だから、思っていることが顔に出る。容疑者との駆け引きの時には見事に心を偽ることができるが、プライベートでは素のままの彼が表に現われる。そんな彼の率直さを、薪は好ましいと思う。

「今日は久しぶりに、チラシ寿司作ろうかな」
 独り言みたいに呟いてやれば、それが薪からの歩み寄りだと、ちゃんと彼は分かってくれて、引き結んでいた唇を苦笑の形に変える。
「茶碗蒸しも付けてもらえます?」
「けっこう図々しいな、おまえ」
「あー、本の整理、手伝いますから」
「プラス、風呂と蛍光灯の掃除」
「了解です」
 交渉が成立し、ふたりは軽く拳を合わせる。捜一にいたものなら誰もが知っている、それは喜びを表現する儀式。

 事件から約三週間後。
 第九は新しい仲間を迎えた。

 彼らとの出会いは、薪に新しい生活を運んできてくれた。
 様々な嫌がらせを受け、同じマンションの住民からの苦情が殺到したため、住まいも変えた。新しいマンションは、小野田が紹介してくれたいくつかの物件の中から選ばせてもらった。ローンの残りを清算するために、貯金の殆どを叩く羽目になったが、今の薪には大した問題ではなかった。当座の生活費があれば、それでいい。欲しいものなど何もないし、そんなに長く生きる予定もない。
 初めはそう思っていたが、岡部や他の職員との交流が増えるにつれ、捨て鉢な考えは為りを潜めていった。特に岡部との絆は日々深まり、今では仕事だけでなくプライベートの時間も多く共有するようになっている。
 警察内部の第九に対する反感は厳しかったが、薪の熱心なファンもいて、時々差し入れをしてくれた。女の子らしく、薪の苦手なプリンやケーキなどの甘いものが多かったが、中には薪好みの野菜がたっぷり入ったサンドイッチやピザなど、夕食代わりになるものもあり、こちらは素直にありがたかった。

 その日も、会議室から帰ってきた薪をクリスピータイプのイタリアンバジルが待っていた。
「いい匂いがするな」
「あ、室長。お帰りなさい。これ、室長の分ですよ」
 モニタールームに入った途端、鼻をひくつかせて部下のところへやってきた薪は、差し出されたピザの箱から一切れつまみ、その場でパクリと噛み付いた。可愛らしくすぼまったくちびるから、溶けたチーズが糸を引く。
 その様子を横目で見ながら、小池と曽我のふたりも別の箱からミート系のピザを取り出す。こちらはLサイズと大きくて、しかも二種類のチーズがこってりと載っていた。

「室長。システムチェックのことなんですけど。どうしても上手く行かなくて」
「どの辺でエラーが出る?」
「どの辺もこの辺も、なんかもう最初っから」
「どれ、見せてみろ」
 3人とも、モニターを見ながらピザを頬張る。時刻は夕方の6時過ぎ。ちょうどお腹が空く時間だ。

「お前らが食ってるのって、ハンドトスタイプだよな」
 テストが軌道に乗って機械任せになると、薪は、かねてから少しだけ疑問に思っていたことを口にした。自動的にウィンドウが開いていくモニターを眺めながら、エラーの兆候に神経を尖らせつつ、疑問の続きをふたりの部下に投げかける。
「どうしていつも、このピザだけクリスピーなんだろう」
 ふたりは何も答えなかった。黙ってモニターに集中している。
「これを差し入れてくれるのって、いつも同じ娘だろ? どんな娘なんだ?」
 カリッと焼かれた薄い生地と火の通ったトマトの強い酸味は、薪の好みど真ん中だ。他の差し入れには見向きもしない薪だが、このピザだけは外したくない。
「奥ゆかしい娘だよな。僕のファンだって言いながら、いっぺんも顔を見せない」
 チーズは少なめ、トマトは多め。そんな細かいトッピングまで薪の好みに合わせてある。よほど入念に自分のことを調べたのだろう。薪の友人の誰かが、彼女に協力しているのかもしれない。
「一度くらい会って、お礼を」

 そこまで言って、薪は突然立ち上がった。
 ピザの箱を抱えて、モニタールームを出て行く。

「……ばれたかな」
「薪さんのことだから。遅かれ早かれ気付いたろうけど、おわっ!」
 二人の呟きは、大きなエラー音に掻き消された。ピーピーという機械音が、ふたりの新米職員を焦らせる。
「エ、エラー出たぞ! どうすんだ、これ」
「慌てるな。まずはええと、このボタンだ!」
 曽我が手元のボタンを押すと、音はビービーという更に大きな警告音に変わった。
「なんか、怒ってるみたいだぞ!?」
「間違えたかな。じゃあ、これ?」
「いい加減に押すなよ、曽我! このままにして室長に聞いた方が確実……あ」
 モニターに意味不明の英数が流れ、急速に画面が切り替わっていった。4つの目が見つめる中で、やがてMRIシステムは沈黙し、真っ暗なモニターに初期設定の画面が。

「……リセットかかっちゃった」
「1週間分の捜査資料、飛ばしちゃったってこと……?」
 不吉な沈黙の後、小池の悲鳴がモニタールームに響いた。
「うあああ! 室長に殺される!」
「ヤバイ、ヤバイよ~。どうにかしないと」
「そうだ。岡部さんがやったことにしよう。室長、岡部さんの操作ミスは怒らないから」
「よし、それで行こう!」
「なにがそれで行こうだ!!」

 野太い男の声に怒鳴られて、二人の若者は思わず肩を竦めた。恐る恐る振り返ると、今まさに濡れ衣を着せようとしていた相手が、憤怒の表情で仁王立ちになっている。
「うわ!岡部さん、いたんですか!?」
「今、捜一から帰ってきたんだ。まったく、おまえらときたら!」
「ままま、お一つどうぞ」
「まだ温かいですよ、これ」
「いらん! ピザなんかで誤魔化されるか!」
 年長者の威厳を見せて、岡部は一通りの説教をした後、Lサイズのピザを手に取り、3口で食べた。
「結局、食べるんだ」
 小池がぼそりとこぼすのを聞かぬ素振りで、2枚目に手を出す。半分近くを一度に口に押し込んで、殆ど噛まずに飲み込んだ。良く噛んで食べろ、といつも薪に注意されるのだが、捜一で鍛えた早食いのクセはなかなか直らない。

「中庭で室長を見たぞ。ピザの箱を持ってた」
「室長、どちらに向かわれてました?」
「北」
 3人は心の中で、同時に同じことを考えた。
 北側に建っている研究棟に配置されているのは、第一から第四までの研究室。その1階でメスを握っているであろう女性のことを。



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エピソード・ゼロ(5)

エピソード・ゼロ(5)




 法医第一研究室の入り口で、薪はピザの箱を持ったまま逡巡していた。

 顔を出して、いいものだろうか。
 いや、仕事の上では既に、何度も顔を合わせている。合同会議の席で、向かいに座ったこともある。
 あの時、終始うつむいていた僕を、雪子さんはどう思っただろう。一度も彼女の顔をまともに見なかった僕を、卑怯者だと軽蔑しただろうか。

 ……何をいまさら。
 軽蔑も何も、僕は彼女の婚約者を殺した人間だ。彼女には、僕を弾劾する権利がある。彼女がその権利を行使してくれるのを、僕は期待していたのではなかったのか。
 2ヶ月程前、市立病院の屋上で。
 雪子に憎まれたいと望んでいたのは、ただのポーズだったのか。悲劇の主人公を気取りたかっただけの、浅はかな絶望ごっこだったのか。
 僕は、彼女に罵られることを怖がっているのか。

 こんな風にドア口に立ったまま、やっぱり帰ろうかと迷っていたことが前にもあった。葬儀の後、鈴木の自宅を訪ねたときだ。
 あの時のじっとりとした空気が戻ってきたような気がして、薪は息をつめた。

「薪室長」
 不審者のような薪に声をかけてくれたのは、雪子の助手の女の子だった。名前は確か、菅井といったか。
「雪子先生にご用ですか? 今、呼んできますね」
「あ、いや、あの……ピザのお礼を言いたかっただけだから。君から伝えておいてもらえませんか」
 薪の言葉が終わるのを待たず、彼女は研究室に入ってしまった。雪子先生、と呼びかける声がする。

 雪子はすぐに出てきた。
 仕事のことだと思ったらしく、手にボールペンと手帳を持ち、その場でメモが取れる体勢を整えていた。
 ピザの箱を両手に持ったまま、雪子の顔を凝視している薪を見て、彼女は手帳を閉じた。沈んだ顔つきになると、ごめんなさい、と謝った。
「ごめんね。余計なことして。もう、しないから」
 彼女は、とても申し訳なさそうだった。
 自殺未遂で搬入された病院にいたときより、暗い表情だった。

 雪子が謝らなければいけないことなど、何もない。
 すべては僕の。

「次は、ハーゲンダッツのアフォガードがいいです」
 ピザの箱が潰れるくらい強く両の手に力を込めて、薪はリクエストした。
「雪子さんが、ご自分で持って来てください。もちろん、雪子さんの分も一緒に」
 僕は何を言ってるんだろう。
 言うべき言葉は、こんなものではない。でも、何を言えば彼女の気持ちが楽になるのか、薪にはそれがわからない。

 謝罪を?
 それとも、こんなことはやめて下さいと、お互い辛くなるだけでしょうと、差し伸べてくれた手を払いのけたらいいのだろうか。病院の屋上で、頭上から彼女の手を払ったように、あの行動をもう一度繰り返すべきなのだろうか。彼女のありったけの勇気とやさしさを踏みつけにして、自分の欲しいものを得ようとする、それは正しい行動だろうか。

「僕が、F&Mのダージリンティーを淹れますから」
 罵りの言葉は欲しいけれど、鈴木の両親と同じように、僕を憎むことで彼女が傷ついていくのなら。
 その役目は、彼女にはさせられない。

 この選択は、間違っているのかもしれない。
 彼女との友情は、ここで断ち切るのが正しいのかもしれない。
 これから僕たちは、傷つけ合うだけの関係になっていくのかもしれない。
 お互いの顔を見るたびに、僕たちの間にいた彼のことを、その痛ましい死を思い出して、傷を新たにしていくのかもしれない。
 だけど。

 僕は、彼女の笑顔が見たい。

「ダージリンは高いから。アッサムでいいわ」
「助かります。第九の予算も厳しくて。下半期には確実に削られそうだし」
「あらやだ、第九も? うちもよ。新型のスコープ、欲しかったのに。先送りだって。まったく、上の連中は現場の人間の苦労を分かってないのよね」
「分かります分かります。僕も、第九のシャワールームをユニットバスに改造して欲しくて、田城さんに5回も申請書を出したのに撥ねられちゃって。埒が明かないから、次は直談判に持ち込んでやろうかと」
「……上の人間には上の苦労があるのね」
「なんでいきなり達観してんですか?」
 
 田城所長もかわいそうに、と笑いだす彼女に、薪は涙ぐみそうになった。

 13年前のあの時も、薪は雪子の強さに助けられた。そして、現在も。
 まるで彼女は自分を導く女神のようだ、と薪は思った。



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ジャンル : 小説・文学

エピソード・ゼロ(6)

 終章です。


 暗いお話を読んでくださった方、ありがとうございました。
 嫌な気持ちになってしまわれた方、申し訳ありませんでした。

 せめて最後はあおまきで。
 わたし、あおまきすとですから。





エピソード・ゼロ(6)




 耐え難い喪失感が襲ってきたのは、それからだった。
 雪子に許されて、鈴木の親には遠ざけられて、僕はこれからどんな理由で生きていけばいいのだろう。
 鈴木のいない、この世界で。
 すべての輝きを失った、灰色の空間で。
 目指すものもなく、励まし合う友もいない道を、どうやって歩いていけばいいのか見当もつかない。

 鈴木は、こんな僕をどう思っているんだろう。
 僕が殺した僕の親友は、僕に何を望むのだろう。

 生前の鈴木が望んでいたもの。それは、第九の仕事と―――愛しい婚約者。
 ならば答えは簡単だ。
 彼が命を懸けた職場を守り、彼の愛した女性の幸せに尽力し、僕の人生はそれだけのために。僕は鈴木が成したかったことを、必ず成し遂げてみせよう。

 考え抜いた末、やっと見つけた『自分がこの世に存在してもいい理由』。
 それを心に誓った日、薪はアルバムの中から鈴木の写真を幾枚か選び、部屋の中に飾った。写真の隣には、鈴木の好きだった白い百合を。

 朝に晩に、薪は写真に笑いかけ、話しかけ、キスをする。
 愛の言葉を語り、時には愛の行為すら。それは薪が取り戻した、15年ぶりの蜜月。

 僕は彼の囚われ人。
 鉄格子も拘束具もないけれど、この牢獄が僕の終いの住処。
 しなければならないいくつかのことを終えたら、きっと鈴木が迎えに来てくれる。


 

 そうして、新たに人生の目標を定め。
 粛々と人生の残務を消化する薪の前に、彼が現れた。
「青木一行です。よろしくお願いします」

 鈴木と同じ顔。
 同じ体躯、同じ性格、同じ魂。
 もしかしたら、と薪は思った。

 その予感は、青木が取った新人らしからぬ行動によって確信に変わった。
 彼こそ。
 天が使わした、執行人だ。
 躊躇なく、僕を煉獄の中に放り込んだ。僕の罪を暴き、知らしめ、確定させた。

 鈴木の脳を見てから始まった夜毎の悪夢を、薪は歓迎した。
 この断罪が続けられる限り、僕は生きていてもいい。

 待ち焦がれた処罰を受け入れたときの安堵感。自分の肌に爪を立てるときの安心感。一時の苦痛で、薪は暫しの平穏を得る。
 翌日、きちんと仕事ができるように、夜のうちにたっぷりと仕込んでおかなければならない。事前準備を念入りに行なうほど、明日はしっかりと立っていられる。
 だから、傷は深く、長く。
 いつまでもズキズキと疼くように、昨夜の傷跡の上を忠実に抉っていく。
 
 昼間は青木の顔を見る。そこに自分が殺した男の姿を重ねる。そうして薪は、自分の罪を毎日更新する。
 それは薪にとっては、生きていくうえで必要なこと。
 贖罪だけが、彼の生きる意味。




*****





 薪の穏やかな償いの日々が変化したのは、秋。
「オレが好きなのはあなたです」
 眇められた亜麻色の瞳が、目の前の男を訝しげに見た。

 執行人が?
 罪人に、好意を?
 バカバカしい。

 心の平常を取り戻すために、薪は書類に目を落とした。
「僕はそういうジョークは嫌いだ」
 
 不意に頭を掴まれて、上向かされた。声を上げる暇もなく、くちびるを押し付けられていた。
 口唇を閉じるのも間に合わなかった。無防備に開けられた口の中に、彼の舌が入ってきた。

 捕われる小さな舌と、驚きに瞠られた瞳。
 押しのけなければいけないのに、何故か動かない両手。
 心の奥で微かに蠢いた、あってはならない感情。

 神さま。
 これはなんの冗談ですか?


―了―





(2009.11)


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エピソード・ゼロ~あとがき~

 読んでくださって、ありがとうございました。


 どうして突然、こんな話を書いてしまったかというとですね、
 最近、みちゅうさんのところのダーク系を読んで、そのあまりの辛さにごはんが喉を通らなくなったからです。
あれは原作の薪さんの絶望、そのものだと思います。

 どっぷりと落ち込んだので、リハビリをすることにしました。それがこのお話です。
(どこが? って聞かれても、ええと、その)
 だから、鈴木さんを亡くした直後でも、うちの薪さんはけっこう幸せだった、というお話になってます。
 ……ますよね?(←自信ない)

『岡部警部の憂鬱』で書いたように、あの事件のすぐ後、岡部さんに会った薪さんは、彼によって救われます。最初の頃のやさぐれた態度は、誰でもいいから自分を糾弾して欲しいと願っていた薪さんの心情が影響したものだったと思われます。
 なので、当時薪さんが受けていた警察内部の敵や世間からの嫌がらせは、彼にとってはある意味救いだったわけです。薪さんが平気な顔をしていたのは、そういうことです。

 
 
 うちの薪さんと雪子さんは、異常に仲がいいです。
 ていうか、薪さんが雪子さんのことを大好きなんですね。ヘンなお話ですね。(^^;

 薪さんの幸せな世界を構築する上で、彼女は絶対に避けて通れない人物だと思います。完全にお話から閉め出す方法もありますが、わたしは逆に、取り込むことを考えました。何故かというと、4巻で薪さんが自宅に3人の写真を飾っていたからです。

 鈴木さんと2人で映っている写真ではなく、3人の写真であることから、
 この3人はきっと仲が良かったんだろうな、薪さんは雪子さんのことを嫌いではなかったんだろうな。だったら、雪子さんと仲良くできたら薪さんは喜ぶだろうな、と思ったからです。
 そして5巻に始まる暗黒で、自分の考えが大間違いだったことを知るわたし。考察力、ゼロ(笑)

 
 作中で薪さんは雪子さんのことを、
『こんなに美しい女性を今まで見たことがない』とか、
『まるで彼女は自分を導く女神のようだ』なんて思ってます。
 うちの薪さんて、雪子さんに惚れてたのか? と読み返してびっくりしましたが。(書いたそばから忘れていくので、何を書いたか覚えてない)
 どうやら、そういうことではないみたいです。(もちろん、読む方の解釈は自由ですが)
 
 恋愛感情ではないけれど、異性を大好きになることはありますよね。
 うちの薪さんと雪子さんは、そういう関係です。
 決して恋愛には発展しないけれど、お互いのことをすごく大事に思って、相手の幸せを願っています。わたしが理想とする人間関係です。

 雪子さんとそんな関係を作れたうちの薪さんは、やっぱりとても幸せなひとなのでした。

 それに加えて、うちの薪さんは、周囲の人々にとても愛されています。
 正直な話、ひとが幸せになるためには、恋人の存在よりもこちらの方がより大切だとわたしは思っています。
 人は一人では幸せになれないけれど、二人でも三人でもダメだと思います。たくさんの人々と支え合いながら、幸せになっていくものです。会社やってると、しみじみそう思います。
 だから、うちの薪さんは本当に幸せなひとなんです。(って、それじゃ青木くん要らないじゃん(笑))


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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
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