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6000拍手のお礼とリクエストの受付について

 (こちらはお知らせ記事です。初めての方は、『はじめまして』の注意事項をお読みになられた上で、記事にお進みください)


 12月19日、みなさまにいただいた拍手が、6000を超えました。
 こんなヘンテコヘンタイ小説に励ましの拍手をいただいて、本当にありがたいです。
 この拍手に、どれだけ励まさせるか。凹んだとき、また頑張ろう、って何度勇気をもらったことか。
 みなさまには、いくら感謝してもしきれません!

 えっと、ブロガーさん以外の方には大げさに聞こえるかもしれませんが、これは本当の気持ちです。

 わたしも一応人間なので(笑)落ち込むこともあります。
 特に創作に関しては、こんなん公開して意味があるのかしら、と思うことも多いです。
 これはもともと、誰にも読ませる気などなく、自分のために書いていたものですから、すごく独りよがりなSSなんです。自分が楽しければそれでいい、みたいな。そんな自分勝手なSSを公開して、だれが喜ぶんだろう、と。

 だけど、こうしてたくさんの拍手やコメをいただくと、ああ、公開してよかった。みなさん、わたしの我が儘を許してくださった、と思えるのです。
 (あ、真面目に語るとすっごく恥ずかしい・・・・でも一度はちゃんと、本音を言わないと(//_//))



 さて、お約束の通り、6000拍手のお礼にはリクエストを受け付けます。
 おこがましいのは百も承知なのですが、これは感謝の気持ちなので。
 右の欄に投票フォームを用意しましたので、そちらにご投票いただくか、コメントでお願いします。
 

 とりあえず、今書いてあるお話で他の作品と絡まずに読めるものは、


 1、『楽園にて』   ラブラブすずまきさんのお話です。薪さん、死んじゃってます。18R。
 2、『天国と地獄』  あおまきさんがふたりでソープランドに行くお話です。ギャグです。
 3、『女神たちのブライダル』  薪さんが雪子さんにプロポーズするお話です。18R。 
 4、『春よ、こい』  薪さんが青木くんはもう要らない、と思うお話です。18R。 
 


 ・・・・・Rばっかじゃん!!  (ていうか、内容がひどすぎる!!)
 ああ、もうやだ・・・・腐りきってる・・・・。
 内容的にそれだけってわけじゃないんですけど、ふたりが恋人同士になってからのお話は、どうしてもそういう傾向が強くなると申しましょうか・・・・すみません・・・・。
 

 ということで、投票フォームには腐ってないリクをお願いします。(必死)
 締め切りは1月31日まで、とさせていただきます。
 空白欄に内容を書いて、投票してください(^^



 1/20 追記
 中間報告です。
 1位 『女神たちのブライダル』 13票 薪×雪さんです。(そんなわけないです、がっつりあおまきです)
 2位 『天国と地獄』      10票 やっぱり、ギャグですよね!
    『恋する竹内警視』    10票 どうして竹内がこんな上位に・・・?
 4位 『薪さん女装ボディガード』 8票 みなさま、女装お好きですねっ♪
 5位 『楽園にて』        7票 すずまきさんです。ラブいです。
    『間宮関連』        7票 ・・・・なにそれ!!?

 作者一押しの『春よ、来い』に票が入らないのは何故かしら。(そりゃー、あの内容じゃ、ってわかってんじゃん(笑))
 ていうか、間宮だよ。なんで!?

 今日までに、78票も投票していただいちゃいました。
 感激ですっ(;∇;)みなさま、お優しいです!
 あと10日ほどで締め切ります。よろしくお願いします!

ラストカット 後編(15)

ラストカット 後編(15)





 やさしい風が、桜の枝と薪の髪を揺らす。薄紅色の花びらが、薪の肩にふわりと落ちる。
 2年前と同じ場所。同じ桜。
 同じ人間なのに、ふたりの関係だけは2年前とはまるで違っていて。
 それは正にここから始まったと、自分にとってはここがスタート地点だったのだと、青木は言った。
 薪には初耳だ。そんなに前から自分を見ていたなんて、夢にも思わなかった。

「あなたを好きになって、2年経ちました」
 いろいろなことがあった2年だった。
 事件の爪痕も生々しい薪には、辛い日々だった。その中で、この新人と過ごす時間は、薪にとっては唯一の光だった。
 
「答えを、聞かせてもらえますか?」
 この時間を失ってしまうのは、薪にすべての楽しみを捨てろというのと、もはや同義語だ。
 なんの喜びも見出せない人生に戻る―――ただ、鈴木が迎えに来てくれるのを待つだけの人生を再び歩き出すことは、身を裂かれるような思いだ。

 知らないうちは、それでも良かった。青木が自分に近付いてくる前は、鈴木のことだけを考えて一日を過ごすことに、何の不満もなかった。
 それがこいつに押しかけられたり連れ回されたりして、始めは迷惑していたはずなのに、薪はいつの間にかそれを心待ちにするようになっていた。
 映画を見たり食事をしたり、ただ街をぶらついてみたり。そんな当たり前の友達付き合いが、楽しくて楽しくて。
 本当はこの小旅行だって、前の晩は眠れないくらい楽しみだったのだ。

 あのワクワクもドキドキも、ぜんぶ無くなる。
 それはもう、生きているとは言わない。

 青木の視線を受け止めて、薪は腹の底に力を込める。しっかりと相手を見て、はっきりと答えを告げる。
「僕の気持ちは変わらない」

 つややかなくちびるが動いて、淀みなく言葉が出てくる。
 何度も言おうとして言えなかった答え。分かりきっていた答えなのに、言葉にしてしまったらこの関係は消えてなくなる。居心地のよいこのポジションは、誰か他のひとに取って代わられる。それが怖くて、言い出せなかった。

「僕には鈴木がいる。おまえの気持ちには、永遠に応えられない」

 ……言えた。
 最後まで、ちゃんと言えた。
 これで終わった。きっちりと片が付いた。
 2年もかけて口説いたのに、振り向きもしなかった冷たい男の事なんか早く忘れて、新しいひとを見つけて欲しい。

 薪の最終通告に、青木は何故か微笑みで応えた。
「じゃあ、オレも諦めなくていいんですね」
 ……こいつ、耳がおかしいのか。
「ダメだって言っただろ。僕には鈴木が」
「鈴木さんはもういません」
 分かってる。
 でも。

「いる。ちゃんといる。僕のこころの中に、鈴木は生きてる」
「それは生きてるとは言いません」
 青木の言い分が正しい。たしかにこういうのは、生きているとは言わない。
 でも。
「鈴木さんは死んだんです」
 知ってる。僕が殺したんだから。
 でも!
「生きてても死んでても関係ない! 僕は鈴木のものなんだ。髪の毛1本まで、ぜんぶ鈴木のものなんだ!」
「関係なくないでしょう。死んだ人と、どうやって恋愛するんです? キスは? セックスは? ぜんぶ薪さんの想像でしょう? そんなひとりよがりの恋愛、鈴木さんだって迷惑ですよ」
 そんなことは分かってる。
 でも、ひとにそれを言われると腹が立つ!

「うるさい!!」
 薪の大声に驚いたカップルが、そそくさと席を立つ。これでは昨日の酔っ払いと変わらないが、薪には声を抑えることができなかった。
「自分のすべてを鈴木さんに捧げるってことですか? 鈴木さんは薪さんに、そんなこと望んでません」
「おまえに何がわかるんだ!? 鈴木と会ったこともないくせに。僕は鈴木の親友を15年もやってたんだぞ。鈴木のことなら、自分のことのようにわかるんだ!」
 青木は額に手を当てて上を向き、これ見よがしに大きなため息をついた。
「本当に何にも分かってないんですね。勘違いの天才ですものね、薪さんは」
 なんて失礼なやつだ。
 確かに長野では、笑われても仕方のない勘違いをしてしまったけれど。

「薪さんは何も分かってません。鈴木さんの気持ちも、自分のことも。思い込んで解ったような気になってるだけです。鈴木さんとは親友だったって言ってるけど、それも怪しくなってきましたね。薪さんがそう思ってただけじゃないんですか?」
「なんだって!?」
 そこまで言われる筋合いはない。
 たしかに僕は思い込みが激しいのかもしれないけれど、だからってなんでこいつに鈴木との友情まで疑われなきゃならないんだ。
 
「僕と鈴木は本当に仲が良かったんだ。お互い、かけがえのない友だちだったんだ」
「それは認めます。おふたりの友情は本物でした。でも、鈴木さんの薪さんに対する気持ちは、薪さんが考えているのと少し違ってたみたいですけど」
 まるで鈴木に会って、彼の気持ちを聞いてきたかのような口ぶりだ。その根拠はどこから来るのか、薪には見当もつかない。
 
 青木は、確たる証拠も無くこんなことを言う男ではない。何の目的も無く、ひとを傷つける言葉を使う男ではない。
 青木のやさしさは、薪がいちばん良く知っている。想いを告げられてからの1年半――いや、一昨年の春からの2年。薪はずっと、そのやさしさに包まれてきたのだ。

「なにか、知ってるのか」
 薪の問いかけに、青木は哀しそうな眼で薪を見た。
 まるで、傷つけられたのは自分だとでも言いたげな表情。言いたい放題言ったくせに、なんでこっちが加害者意識を味あわなければならないのだ。
 
「着いてきてください。鈴木さんの本当の気持ちを見せてあげます」
「鈴木の……?」
 薪の返事も聞かず、青木は薪に背を向けて歩き出した。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

ラストカット 後編(14)

ラストカット 後編(14)





 最高に楽しい休日になった4月の連休。
 とっぷりと日が暮れた頃、二人は長野から帰ってきた。
 今日も朝から温泉三昧で、さすがに湯疲れしたのか、薪はヘリに乗ってすぐに眠ってしまった。気がついたら横浜だった。
 せっかくの風景を見損ねたことを青木に訴えると、まだレンタルの時間があるという。それなら時間いっぱいまで飛べ、と命じて遠回りさせた。青木の宿泊代も払ってやったのだから、これぐらいしてもらってもいいはずだ。

 空からの夜景は素晴らしかった。
 俗物と言われても否定できないが、レインボーブリッジやお台場の辺りは七色の光がきらきらしていて、男の薪ですら思わずため息が出た。
 これが女の子だったら、間違いなく落ちる。青木がその目的のために航空機免許を取ったというのは、あながち冗談ではなかったのかもしれない。

「すごいな。これ、全部人間が造ったんだよな」
「そうですよ。人間が創り出した芸術も、なかなかでしょう?」
「うん」
 いつもなら捻りのきいた皮肉の一つも返すところだが、この光景を見てしまってはとてもそんな気になれない。きらめく夜景は、人の心を素直にする力を持っているのかもしれない。

 夜の空中散歩を楽しんだ後、薪はもうひとつのお楽しみに出向くことにした。
 夜桜見物である。

 場所は、青木のアパートの正面に位置する公園。
 ここの桜は見事なもので、昼間はたくさんの花見客が訪れていた。しかし、日曜の夜ともなれば明日の仕事のことも視野に入れて、人出はぐっと少なくなるはずだ。薪の狙い目はそこだ。
 読みは当たり、ざっと見た限りでは煩い酔っ払いはいないようだ。人影もちらほらといったところで、ベンチに座って桜を見上げている男女が何組かいるだけだ。桜並木を散策しているものはおらず、薪はゆっくりと夜桜を楽しむことができた。

「ああ、もう桜も終りですねえ」
 隣を歩く背の高い男が、桜の木を見上げながら寂しげに言う。食い気ばかりのこの男に、行く春を惜しむ気持ちがあるとは驚きだ。
 青木の言うとおり、桜は時おり吹いてくる弱い風にも花びらを散らしている。その光景は先刻の夜景に負けず劣らず美しくて、薪の顔をうっとりとした微笑に変える。

「薪さん。憶えてます? 2年前も一緒に、ここで夜桜を見ましたよね」
 青木は突然、昔話を始めた。
 ああ、と適当に相槌を打って、薪は桜に意識を向ける。こんなにきれいな桜に、人間の声は似合わない。薪の花見は、沈黙がセオリーだ。
 しかし青木は喋り続ける。
「あのとき、薪さんはオレのことを助けてくれましたよね。第九に入ったばかりで、MRIの画に慣れることができなくて、不眠症だったオレに睡眠薬をくれました」
 先刻の夜景を見ていたときには奥床しく口数の少なかった男が、突然饒舌になっている。なにか、話したいことがあるのだろう。
 薪は自分のセオリーを、少しだけ緩めることにした。
「ああ、あの酸っぱいの」
「よく効きましたよ。今でも眠れないときは飲んでます」
「単純バカにはよく効くんだ、あれは」
 その薬の正体が、ただのビタミンCであることは、青木にも分かっているはずだ。今でも飲んでいると言うならば、同じものを探して自分で買い足したのだろうから。

「それから、安眠できる方法をオレに教えてくれて。あれからオレ、よく眠れるようになったんです」
 悪夢防止策として、眠る前に好きなものを見るといい、と青木に勧めたことがある。それくらいで安眠できるとは、羨ましいくらい単純な男だ。
「おまえ、寝る前になに見てるんだ?」
 薪の問いかけに、青木は返事をしない。無視しているのではなく、言おうか言うまいか迷っているようだ。
「わかった。食べ物の写真だろ。ごはんのおかず100選、とか」
「まあ、オカズといえばオカズですかね……」
「意地汚いやつ。ここに、こんなにきれいなものがあるのに」
 ひときわ美しい桜の前で、薪は足を止める。上を向いて、陶然と微笑む。
 
「ええ。本当にきれいです」
「なんで僕の顔見てんだ。花を見にきたんだろ」
 ひとと話をするときは相手の顔を見ろ、と部下に指導している薪だが、こういうときはまた別だ。応用の利かないやつだ。

「一昨年も薪さんはここで足を止めて、この桜を見上げてました」
 2年も前のことを、よく憶えているものだ。薪に苛められたことはすぐに忘れて、またそばに寄ってくるくせに。
「その横顔がとてもきれいで。オレはあなたから目が離せなくなった」
 いつになく真剣な青木の声音に、薪は肩を強張らせる。
 頭を巡らせると、青木の視線は真っ直ぐこちらに向けられている。
 
「オレは、あの時からあなたに恋をしました」



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

ラストカット 後編(13)

 あけましておめでとうございます。
 昨年中は、うちのあおまきさんにお付き合いいただいて、ありがとうございました。
 今年もお暇がありましたら、是非ふたりの様子を覗いていただきたく、お願い申し上げます。


 えーと、ご挨拶の記事を別に上げるべきなんでしょうけど、ちょっとそういうのは苦手で。
 なのでこの下はいつも通り、この前の続きで、すみません。

 どうかよろしくお願いします。






ラストカット 後編(13)





 泣き続けるひとの弱さにつけこんでどうこうするなんて、青木にはできない。たとえ下着の中で自分の分身が、男泣きするくらい痛かったとしても、である。

 裸の薪を自分の胸に抱きこんで、青木は薪の頭を撫でてやった。布団の中でも、これは儀式だ。薪が元気になれるよう、鈴木が薪に残してくれた大切なジンクスなのだ。
 しかし、薪の震えはなかなか止まらなかった。子供をあやすように背中を撫でてやっても、薪は泣くのをやめなかった。
 そこで青木は、むかし薪が自分の涙を止めるためにしてくれたことを思い出した。
 同じことをしたら、止まるかもしれない。
 この涙は、泣くだけ泣いてすっきりする類の涙ではない。止められるものならどんな犠牲を払ってもいいから、止めてやりたい涙だ。
 小さな顔を上げさせようとしたが、薪はしっかりと青木の背中にしがみついていた。
 やむを得ず、からだごとくるりと回して薪を仰向けにし、くちびるにキスをした。薪の手が青木の背から離れないので、上から覆いかぶさる形になってしまったが、薪は逆らわなかった。
 甘い舌を味わったらつい夢中になって、首筋や腰の辺りまでキスをしてしまった。腰骨の辺りを舐めたとき、薪のからだがびくびくっと震えて、青木は我に返った。

「すいません。ちょっと、てっぺん越えちゃいました」
 薪の涙は止まったようだ。青木の顔に笑顔が戻る。
「このまま朝まで抱いててあげますから」
 安心して眠ってください、と青木が口にしかけた時には、薪はすでに眠っていた。
 くーくーという可愛らしい寝息は、安眠している証拠だ。やはり先刻の行動は、悪夢による一時的な錯乱だったのだろう。そうでもなければ、薪のほうからあんなことをしてくれるはずがない。

 結局、正気ではなかったのだ。そんな精神状態で関係を持っても、あとで後悔するだけだ。自分はいいが、そのときの薪の苦悩を思うと、これ以上先には進めない。
 夢中で恋をしている相手が、一糸纏わぬ姿で自分の腕の中にいる。据膳食わぬは男の恥だが、食べることはできない。
 薪には滅多と訪れない幸せな眠り。それを奪うことは、もっとできない。

 生き地獄のような状況だが、薪を好きになってからというもの、こんなことは恒常化している青木である。これまで、何度寸止めされてきたことか。さすがに慣れてきた。
 小さな子供のように眠る愛しいひとの体を抱いて、青木は目を閉じた――。
 これが、昨夜あったことのすべてである。

「それならそうと早く言えよ。余計な心配させやがって」
 青木との間に何もなかったと分かった途端、薪はいつものように横柄な口をききはじめた。さっきまではいくらか控えめで、可愛らしかったのに。もう少し誤解をさせたままにしておけばよかった。
 
「どんな心配ですか? さっきの恋人ってセリフに関係ありますか?」
「恋人? なんの話だ」
 しゃあしゃあと言ってのける。
「だって何にもなかったんだろ? だったら、おまえはただの部下だ。それ以上でもそれ以下でもない」
 しまった。
 薪が落ち着くのを待っていたせいで、冷静さを取り戻す時間を与えてしまったらしい。

「じゃあ、何を心配してたんですか?」
「決まってるだろ」
 薪はそこで、いつもの意地悪そうな微笑を浮かべる。
 この笑顔がでてしまったら、もうどこから攻めても無駄だ。薪の心が難攻不落の要塞になった証拠なのだ。
「どうやって完全犯罪を成立させようかなって」
「え?」
「とりあえず頭は潰して、死体はサルの温泉にでも浮かべておこうかと」
「そんなことしたら、薪さんが真っ先に疑われるじゃないですか」
「僕がおまえとここにいることは誰も知らないし、旅館の人間はおまえが女連れだったと証言するだろ。男の僕に嫌疑がかかる可能性はまずない」
 薪の意地悪は限りない。これでは自分におかしなことをしたら殺すぞ、と遠まわしに言われているのと同じだ。

「良かったな、青木。本能に負けなくて。負けてたら」
 薪は華奢な指をピストルの形にし、青木の顎の下に人差し指を当てた。
「今朝の食事が、最後の食事になっていたところだ」
「……肝に銘じておきます」
 冷や汗をかきながら青木がそう言うと、薪はふふん、と鼻で笑った。他の人間があんなふうに笑ったらとても高慢な印象を与えるのに、薪がするとかわいく思えるのは何故だろう。
 それは青木の感想であって、世間一般のひとが受ける印象とはだいぶ違うが、恋は盲目ということで説明がつく現象である。厄介なことに、これはどんな名医でも治せない病気で、青木の場合は最近ますます悪化する傾向にあるようだ。

「さあ、メシだメシ」
「バイキングって楽しいですよね。美味しそうなものが沢山並んでて、好きなものを好きなだけ食べられるんですよね」
「おまえが通った後は、何も残らないんだろうな」
「器は残りますよ」
「他の宿泊客が来たときのことも考えろよ」
「そうですね。空になった器って、何が入ってたんだろうって気になるんですよね。そうだ、器ごとテーブルに持って来ちゃえばいいんですよ」
「……一緒の席に座るなよ。恥ずかしいから」

 いつものように、くだらなくて楽しい馬鹿話をしながら、青木は隣の美しい微笑をうれしく思う。
 そして、願う。
 昨夜の自分の決心が、この微笑を消し去ることのないように。大切なひとの安らかな眠りを、妨げることのないように。再びあの写真のような、全開の笑顔を取り戻せるようにと。

 決行は今夜。
 青木には、2つのプランがある。青木としては最初のプランで終わりにしたいが、そちらはあまり自信がない。昨夜の薪の様子では、たぶん無理だと思う。
 もうひとつのプランは最終兵器だ。できれば実行したくないが。

 でも、それは今夜。まだ、薪と過ごすことができる楽しい時間は残されている。
 その後は口もきいてくれなくなるか、もしかすると本当に脳を潰されてしまうかもしれない。あれを自分が見たことを、薪が知ることになる。その事実を、薪は決して許してはくれないだろう。

「青木? 腹減って歩けないのか?」
 大広間の入口で、薪がこちらを振り返っている。歩みの遅くなった青木を、不思議そうな眼で見て小首をかしげている。……なんて可愛いんだろう。
「もう、めまいがしそうです」
「一食でも抜いたら確実に死ぬな、おまえは」
 目眩を覚えたのは、薪の可愛らしさに対してなのだが。ここはそのままにしておこう。
 呆れ顔の薪に笑いかけて、青木は広間に入った。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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