言えない理由&楽園にて

 舞台裏です。
 ただのヒトリゴトです。
 お話には関係ないので、スルーしてください(^^
 
 言葉も荒いので、お気に障ったらすみません。







 


 若い頃の恋愛って、無鉄砲だったよね。
 ホント、自分でもびっくりするくらい、バカなことしてなかった?って、わたしだけか?

 恋愛に限らず、今なら絶対にできないようなことも、若いうちって平気でできたなあって。
 無分別で愚かな行動だったけど、それはあくまでも他から見たときのことであって、本人はそれを自覚していない。自覚がないと言うことは、そんなことを続けていたら結局は破綻することにも考えが至らないということで、自滅コースまっしぐらに違いないんだけど。確実に不幸へとつながっているんだけど。
 でもねえ。
 本人は案外、幸せなんだよね。少なくともわたしは幸せだったな。
 この薪さんも、とっても幸せだったと思うよ。  
 
 こんなん、世間じゃ通用しないのはよくわかってるんだけど。自分をダメにするような恋愛は駄目な恋愛だって、分かってはいるんだけど。
 それでも、薪さんは最高に幸せだったと思うよ。
 相手しか見えなくて、どんどん堕ちてくバカなオトコになってるけど、それは傍から見るからそう見えるだけで、本人はめちゃめちゃ幸せな世界に浸ってたはずだよ。幸福も不幸も、所詮は自分の気持ち次第なんだよ。自分が気付かなきゃ、幸せなの。
 
 だけど、人間年を取っていろんな経験を積むと、そんなふうに簡単に自分の感情に溺れることができなくなる。
 分別を身につけた人間は、恋に飛び込むことに躊躇いを覚える。特に男同士の恋愛は、そうじゃないのかな。年を取るほどに、踏み込めなくなるんじゃないかな。
 
 現在の薪さんは昔の薪さんと違って、相手への感情を隠そうとする。恋人との別れを定められた未来だと思い込んでいる。
 バカ?いや、それって一般的な考えだと思うよ。
 だって、男同士で一生一緒にいるって、大変なことだよ。親、友人、仕事、etcを考えたら、そんなに簡単に決意できないよ。弱虫だとは思うけど、現実を考えるとなあ。その熾烈な人生を相手にも背負わせることになるって、そう思ったら余計できないと思うけどなあ。
 この関係は一生は続けてはいけない、それなら先のことを考えて予防線を張っておこう、と考えるのって、そんなに不自然なことかな。未来を決め付けるのはおかしいけど、そこは男爵だからねえ。思い込み強いからねえ。
 だからね、分別がつくのが果たして幸せとイコールなのか、というとそうでもないんだよね。結局、幸不幸なんざ本人の主観だからね。

 同性愛者に対する世間の糾弾は、薪さんの考え方の根底にあるというだけで、もちろんこんなものを書く気はない。
 5年後の現在、うちの連中は殆どかれらの関係を知ってるんだけど、みんな知らない振りでふたりを見守っている。そんなことあるわけないけど、わたしは薪さんを幸せにしてあげたいんだもん。現実なんかどうだっていいよ。  




***



 それにしてもうちの薪さんて、どうしてこんなに鈴木さんが好きなんだろう?
 青木くんに対する態度と全然ちがうよ。メロメロもいいとこだよ。鈴木さんの言うことなら、なんでも聞いちゃうんだろうなあ。

 うちの鈴木さんは。
 薪さんの恋人を、自分から降りた。友だちの立場を選んだ。それでいて、ずっと彼を愛し続けた。 
 本当に見返りを求めないって、こういうことじゃないかな。
 青木くんは頑張ったけど、それって恋人になりたいって欲があったから。鈴木さんはその立場を一旦は手に入れて、でも薪さんの未来を守るために捨てて、もう絶対に彼は自分のものにはならない、それを理解した上で彼を愛し続けた。うちの鈴木さんはそんなひと。
 だからね、これから青木くんはタイヘンだよ。
 薪さんには鈴木さんからの愛が、15年間注ぎ続けられてたんだから。薪さんは気付かなくても、薪さんの細胞はそれを憶えてるんだよ。本能でわかってたんだよ、愛されてるって。そうでなきゃ薪さんだって、15年も鈴木さんを好きでいるなんてできないよ。このふたり、わたしの中では完全に両思いだったんだよ。恋人という名前はつかないけど、ちゃんと愛し合ってた。
 それがラストカットで明確になっちゃったんだから、もう無敵のすずまきさんだよ。

 薪さんが意識して鈴木さんにのめり込んだのは、あの事件の後。
 自分の人生はかれのもの。
 そう思って毎日毎日鈴木さんのことを考え続けた。
 朝に晩に鈴木さんの写真と会話をし、愛の言葉を囁き・・・・毎日毎日そんなことを続けていたら、彼のことしか考えられなくなっちゃうのも当たり前。

 そんな薪さんの心を自分に向けさせようと思ったら、2年くらいの努力じゃまだまだ。むしろ、恋人同士になって薪さんのこころに入っていく権利を得たこれからが本番だよ。ここからが勝負なんだよ。
 だから、3部はものすごく痛いよ。
 自分でも、げっ、この展開ひでえ、と思うくらい。だけどさ、どんな試練にも耐えて薪さんを愛し続ける青木くんを見たいんだよ。鈴木さんが与え続けた15年に負けないくらいの強さと懐の深さを持って欲しいんだよ、でなきゃ薪さんを幸せにできないよ。
 薪さんのためなら全世界を敵に回してもいい、そのくらいの決心は基本だよ。
 こころに思うだけなら誰だってできる、このひとと別れるくらいなら死んだほうがマシ、だけど思ってるだけじゃ意味がない。言葉にしたところでうそ寒いだけ、男なら行動で示してもらう。行動してこそ男だよ。

 大事な薪さんを託すんだもん。
 青木くんには、この世で最高の男になってもらわなきゃ。





 『楽園にて』より、薪さんの愛の一言。

 『鈴木、はやい!』
 『じゃあ、日替わりで』

 鈴木さんの15年って(笑笑) 

土曜の夜に花束を(2)

土曜の夜に花束を(2)




 青木の家のカレンダーには、毎日バツマークが付けられる。
 それは4月の3週目の月曜から始まった習慣で、今朝は4つ目のバツマークを書き込んだ。二重丸の付いた目標の日まであとわずか。その日が近付くにつれて、青木の頬は緩んでいく一方である。その日はきっと、青木にとって生涯忘れられない日になるはずだ。
 今週末の土曜日。2年も掛けてようやく口説き落とした可愛い恋人と、初めて一夜を過ごす予定なのだ。

 青木が2年もの長い間、わき目も振らずに恋をしてきた相手は、自分でもびっくりすることに12歳も年上の男の人だ。しかも職場の室長という役職に就いている。自分など足元にも及ばない、とても優秀な捜査官である。
 そのひとの名前は薪剛。年は37歳。しかし見た目が異様に若くて、どう見ても青木より年下にしか思えない。

 先週の日曜日。玉砕覚悟で望んだ勝負に、青木は見事に勝った。前半戦であっさり敗退したときにはすべてを諦めたのだが、物事はやってみなければわからないものだ。勝算はマイナスだと思っていた後半戦、何故か相手は青木の気持ちに応えると言ってくれた。
 正確には『受け入れられるように努力する』と言われたのだが、これは恋人になってくれる、という意味にとって間違いないはずだ。青木としては2年近くも恋情を募らせていたのだから、その場で抱いてしまいたいくらい相手のことが欲しかった。せっかく相手がその気になってくれたのだ。このチャンスを逃す手はない。

「薪さん。これからオレの家に来ませんか?」
 愛しさを掻き立てる華奢な体を抱きしめたまま、青木は薪に誘いを掛けた。が、明日の仕事を理由に、その誘いは断られてしまった。その理由付けはいかにもとってつけたようで、まだそこまで許す気にはなれない、という意味かと思ってしまった。
 しかし、それは違った。

「週末なら。土曜日に、家で待ってるから」
 恥ずかしげに顔を伏せたまま、薪は固い声で言った。
 その場凌ぎの言葉ではない。このひとは、自分の言ったことには責任を持つ人だ。
 受け入れると言ったからには、心も身体もすべて受け入れる。そこまでの覚悟がなければ、初めからそんなことは言わない。

 青木はその言葉を信じて、こうしてカレンダーに印をつけている、というわけである。まったくおめでたい男だ。彼のそんな特性も、勝因のひとつだったのだが。
 そんなわけでその週の青木は、傍目から見ても浮かれていて、それを第九の先輩たちに指摘され「春だから」という曖昧な理由で追求を逃れていた。薪はさすがに大人の余裕か冷静そのもので、これまでとなんら変わりがなかったから、青木に巡ってきた春と氷の室長とを結びつけるものは誰もいなかった。

 そして決戦の土曜日。
 その日はたしかに青木にとって、生涯忘れられない日になったのだ。
 ただし――― とても苦い思い出として。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

土曜の夜に花束を(1)

 ここから第3部に入ります。

 再三申し上げました通り、これまでとはカラーが違いますので、ご注意ください。具体的にはBL色が強いです。
 これまでのお話は恋愛問題ばかりではなく、色々なことを書いてきたつもりなんですけど。仕事のこととか、青木くんの成長とか、薪さんの苦悩とか。
 でも、ここからはそれしか書いてないです。まるっと恋愛小説です。ギャグは入れてるんですけどね。なので、お好みの方だけ読んでいただきたいです。
 Rも当たり前みたいに出てくるので、18歳未満の方、Rが苦手な方はご遠慮願ったほうがよろしいかと。

 そ、それと~~、
 3部以降の作品につきましては、勝手ながら、
 Rに関する苦情は一切受け付けません。(言い切ったよ、サイテー)
 すみません、自分でグロイの分かってるので~~~、でも美しく書けないの、あれで精一杯なの、見逃してくださいっ。


 どうか、女神さまのように広いお心をお持ちいただいて、(いや、女神さまはこんなもん読まないだろ)
 よろしくお願い致します。






土曜の夜に花束を(1) 






 井之頭通りに何軒かある花屋の中で、閉店時間が一番遅いのは『しらいし』という店だ。
 亭主に先立たれた女主人が経営する小さな花屋ながら、花の種類は豊富で質も良く、値段は安くはないが、そのぶん長持ちする。加えて、店主のラッピングと花束のセンスはなかなかだと、近所でも評判の店だった。
 ホステスへの手土産にと夜更けに花を買う客が多い銀座や歌舞伎町と違って、吉祥寺では夜の9時過ぎまで営業している花屋はめずらしい。ここは夜の店が少ない街だからだ。が、これには理由があって、実はこの店を訪れるひとりの客が仕事の関係で、この時間に花を買いに来ることが多かったからなのだ。
 といっても、彼はそう頻繁に店を訪れるわけではない。それほど大量の花を購入する上得意客というわけでもない。しかし彼女には、彼のために店を開けておいてやろうと思えるだけの理由があった。

 初めて彼がこの店を訪れたのは、たしか3年前の夏だった。
 その日はバイトの娘が花の配達先を間違えて、そのフォローに回ったため、閉店時間を1時間も過ぎてしまった。明日は早いのにと心の中で愚痴りながらシャッターを閉めようとしたところに、彼が現れたのだ。
「すみません。まだ間に合いますか?」
 亜麻色の短髪に同じ色の大きな目。長い睫毛とつややかなくちびる。夏の夜だというのにダークグレーのスーツをピシリと着こなして、そのひとは涼やかに佇んでいた。お客を外見で判断するわけではないが、かれがこれほどの美貌の持ち主でなかったら、「どうぞごゆっくりお選びください」と言うセリフは出てこなかったかもしれない。
 そのとき彼は、迷うことなく白い百合の花を選んだ。その花はまさに彼のイメージにぴったりで、店主はこころの中で密かにこの青年に『白百合のきみ』という乙女チックなあだ名をつけた。

 最近この近くに越してきたばかりで、前に住んでいた街と違って、どの店も早く閉まってしまう事に驚いている、と話した。仕事の関係で9時前に自宅に帰ることは殆どないので、平日は買い物を諦めていたが、今日はこの店が開いていて良かった、と微かに笑った。
 それはひどく悲しそうな微笑で、店主はそのことに違和感を覚えた。花屋に花を買いに来て、悲しそうな顔をする客というのは少ないからだ。
 店主の持論は『花はひとを幸せにする』というものだった。たいていの客は自分が花束を作って渡すと嬉しそうな顔になるし、中には「わあ、きれい」と感嘆の声をあげてくれる人もいた。
 そこで店主は、頼まれてもいないラッピングをこの客にサービスすることにした。自分もこの技術にはひとかどの自信を持っていたし、なにか悲しい出来事があったらしい青年を元気付けてやることは、悪いことではないと思えたからだ。
 店主が花束用に花を重ね始めたのを見て、ラッピングは不要です、と青年は声を掛けてきた。謙虚で気遣いを含んだ態度に、店主は好感を抱いた。

「初めてのお客さんですから、これはサービスです。奥さんだってこの方が喜びますよ」
「僕には妻はいません」
 左手に指輪はなかったが、男の人が自宅用に自分で花を購入することは少ないから、てっきり妻帯者だと思った。
「それは失礼しました。じゃ、恋人ですか?」
 苦笑して首を振る。口元は優雅に微笑みの形を作るが、今にも泣き出しそうな顔だ。
 どうして彼がこんなふうに笑うようになったのか、店主は気になった。
 彼はまだ若く身なりも良く、とてもきれいな顔をしているのに、まるで年老いた老人のように人生を諦めた表情をしていた。

「それじゃ、ご自分へのご褒美ってことで。リボンは何色がいいですか?」
 リボンの見本を差し出すと、青年は困ったように目を伏せて低い声で言った。
「お祝い事ではないので。リボンは結構です」
 これはしくじった。さては弔事用だったか。それなら先刻からの悲しそうな表情も頷ける。もしかしたらこの青年は、大切なだれかを亡くしたばかりで、この花はそのひとに供えようとしていたのかもしれない。

「そういうことなら、シルバーのリボンはいかがですか? こちらならお供え物にしても」
 おずおずと申し出た店主に青年は頬を緩めて、亜麻色の頭を掻いた。
「すみません。よけいな気を使わせてしまいましたね。そういうわけでもないんです」
 それから青年は、リボンの見本の中から濃い緑色のリボンを選ぶと、これでお願いします、と切ない目をして言った。
「ありがとうございました。これからもどうぞご贔屓に」
 大きな花束を抱えて、夜の街に消えていく頼りない背中を見ながら、店主はその青年のことが気になって仕方なかった。今日はたまたまバイトの娘の失敗のせいでこんな時間になってしまったが、もしもあの青年がこれからもここに来るようだったら、この時間までは店を開けておいてやろう。

 果たして、それから彼は月に2回くらいのペースで、この店に来るようになった。
 彼が買う花はいつも決まって、白い百合の花だった。その端麗な容姿を見て、アルバイトの娘も、店主がこっそりとつけたあだ名で彼のことを話すようになった。
 白百合がお好きなんですか、とかれに訊くと、自分ではなく大切なひとが好きだった花なのだ、と語った。過去を振り返る話し方に、やはりこの青年は自分と同じように大事な人を亡くす痛みを知っているのだ、と店主は確信した。

 季節が移るごとに、少しずつではあるが明るくなっていく彼に、店主は安心を覚えていた。特に最近は花を渡す際に笑顔を見せてくれることが多く、それは彼女にとっても喜ばしいことだった。
 かれは痛手から立ち直りつつあるのだ。もしかしたら、亡くしたひとに代わる誰かを見つけることができたのかもしれない。

 その青年はここ1年ばかり、仕事が忙しくなったのか、1月に1度くらいの割合でしか店を訪れなくなっていたが、この店の白百合の売り上げは変わらなかった。別の固定客がついたからである。
 新しい白百合のリピーターは、黒髪のメガネをかけたとても背の高い男だった。
 彼は『白百合のきみ』とはまったく逆で、最高に嬉しそうな顔をしてこの店を訪れた。店主の花束作りの技術を絶賛し、どの花屋よりもきれいだと言ってくれた。

「恋人へのプレゼントですか?」
「いや、まだ恋人ってわけじゃ」
 テレテレと頭を掻いている。独り者の店主にしてみたら、後ろからどついてやりたくなるようなヤニ下がった顔だ。 
「花は白い百合だけでいいんですか? 他の花も混ぜたほうが、華やかになると思いますけど。お値段もその方が抑えられますよ」
 女の子は、色とりどりの花束を好むものだ。それに百合は夏の花だから、冬の季節はかなり値が張る。他の花を加えてバランスを取ったほうが、安く上がるのだ。
 が、店主の提案を、彼は申し訳なさそうに断った。
「白い百合が好きなひとなんです。そのひと自身も白百合の化身みたいなひとで」
 白百合の化身とは恐れ入った。この男の想い人と白百合のきみと、果たしてどちらの美貌が上だろう。
「おきれいな方なんですね」
「はい。身も心も、すごくきれいなひとです」
 恋人に贈るための花束を買いにくる男は大勢いるが、ここまで言い切った男は初めてだ。後ろからではなく、横から蹴りを入れてやりたい。

「リボンはどれにします?」
 彼が選んだのは、濃い緑色のリボンだった。20種類以上ある色の中から、白百合のきみと同じものを選ぶなんて、人物像は正反対なのに面白い、と思った。
「ありがとうございました」
 スキップでも踏みそうな弾んだ足取りで、かれは去っていった。選ぶ花は同じでも、両極端なふたりだ、とその当時の店主は思っていた。



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楽園にて~あとがきと近況報告です~

 ご無沙汰です、1週間ほどネ落ちしてました。
 コメントくださった方々、お返事が遅れてすみませんでした。m(_ _)m
 おかげさまで、突貫工事の書類のほうは何とか間に合わせまして。多分今日の夕方返って来て、土日で直して再提出してお終いです。
 後は自分の受け持ち現場の検査が2本残ってて、こいつをやっつけると今期の仕事は終わりです。3月一杯で組内の班長も終わるし、ひねもすのたりの日々が待っております。 
 そしたらネットやり放題。がんばれ自分。(←基本ダメ人間)
 

 
『楽園にて』は、1年半くらい前に書きました。
『若いってこわい』『聖夜』『楽園にて』の順番で書いたらしいです。2008年の10月というと、5巻でがっつり落ちてた頃なので、すずまきさんの方へ逃げてたのかもしれません。
 こちら元ネタは、はい、アニメの最終話ですね。だから題名が『楽園にて』なんですね。
 と言っても、わたしはハッピーエンド主義者なので、アニメは全滅エンドではないと思ってます。なのでエンディングから天国ネタに結びついたわけではなく。薪さんが草っ原で寝てたシーンからこの話ができたんですね。
 あのシーンで、どうして室長はこんなに胸元を開けてるんだろう、視聴者サービス? と思ったんですが、ああ、防弾チョッキを脱いだのね、と感動を覚えました。(アニメで感動したのって、ここだけだっだような(^^;)) かれが防弾チョッキを脱いだということは、自分の過去や苦悩にある程度の踏ん切りをつけた証拠だろうと嬉しくなりました。
 それで幸せな薪さんのお話になったんですね。いや、死んじゃってますけど、そこはスルーで。

 死んだ薪さんを思い続ける青木くんが可哀相、というコメをいただきました。
 ホントにねえ、それが薪さんにはあんまり通じてないところが、果てしなく鬼ですねえ。「これから恋人見つけるだろ」とか言ってますもんね。ひどいよ薪さん。
 わたし、この頃よっぽど青木さんが憎らしかったんですね。(笑)


 実はずーっと、原作の青木さんのこと苦手だったんですけど。
 青木さんて一言で表すと、真っ直ぐで正義感が強くて、それを素直に表面に現わせる好青年。わたしのようにヒネたオバサンには、彼はどうも眩しすぎるんですよね。で、苦手意識が強かったんですが。
 4月号の青木さんは好きです(〃∇〃)
 成長したな、いいオトコになったじゃん、青木さん!(←何様?)
 山本さんにウソ吐いてたところと、イヤラシイ作戦がポイント高かったです。わたし、嘘つき男も陰険男も大好きなんです。
 原作の青木さんが好きになったので、これからはきっとすずまきさんは書かないと思います。わたしの中で、ようやく薪さんの相手として認めてやってもいい、と思えたので。(←どんだけ女王様?) 今まではね~、どうしてこんな男がいいのよ、薪さん?? とこっそり思ってましたから。



 えっと、次のお話なんですけど。
 本編に戻りまして、ラストカットのつづきになります。

『土曜の夜に花束を』というSSなんですが、これ、題名はロマンチックなんですけど、中身はヒドイです。とりあえず最敬礼で謝っときます、すんません。
 わたしのお話はここから第3部に入るんですけど、以前も申し上げましたとおり、3部はかなーりRがキツクて、精神的にも痛い話が多いです。うちのふたりだから、全然らぶくないし。2部までと同じお話だと思えないくらい、カラーが違うかもです。すみません。
 もともとは公開しない予定だったので、飛ばしすぎちゃったところとかたくさんあって、現在、その修正をしてます。具体的にはRの削除ですねっ! 

 ということで、もう少々お待ちください。
 よろしくお願いします。 
 



 

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楽園にて(3)

 ようやく18禁が外れました。
 と思ったら、これでおしまいだったりして。(笑)






楽園にて(3)








「とりあえず、ひとのせいかよ」
 裸のまま寝転んで、鈴木は薪のことを非難した。が、その眼は笑っている。しょうがないなあ、といつものように薪の頭に手を載せて、優しく撫でてくれる。

 鈴木はここで、薪のことを待っていてくれた。自ら輪廻の輪を外れる事を選んで、ひたすら薪のことを待ち続けていたのだ。
 うれしかった。
 夢中で抱きついてキスをした。
 ここがどこなのか、自分はどうなったのか、なぜ鈴木がここにいるのか――― それらの疑問を言葉にするより前に、薪は鈴木とからだを重ねていた。
 それから5年。ゆるやかに時は過ぎて、薪はすっかり穏やかな顔つきになった。

「下はクリスマスかあ。薪のかわいい部下たちは、なにやってるかな」
 鈴木は草の上にうつ伏せになって、両肘で上半身を起こす。ここの地面は必要なときにはベッドのように柔らかくなるから、裸でごろごろしているのがとても気持ちいい。
「仕事だろ。第九にクリスマスは関係ない」
「クリスマスと言えば第九だろ」
「……寒いよ」

 鈴木が下界の様子を見られるように、遮防壁を解除する。
 薪は慌ててワイシャツを着込んだ。下着をつけてズボンを穿く。本当は風呂に入ってからにしようと思っていたのだが、仕方がない。
 薪が服を着てしまったのが不満らしく、鈴木は少しつまらなそうに頬杖をついた。
「下からは見えないぜ」
 薪もそれは分かっているが、やっぱり恥ずかしい。こういうところは死んでも変わらないものだ。

 下の世界は相も変わらず、喧騒と騙し合いと傷つけあう人々で地獄のようだ。死んでから地獄に行くのではなく、今まで生きていた世界が地獄だったのではないか、とここに来た者はみな同じ気分を味わう。
 その中に、オアシスのように薪の心を和ませる一角がある。
 科学警察研究所法医第九研究室、通称『第九』。
 薪が生涯を捧げた職場だ。
 壁一面のモニターに大映しにされる凄惨な殺人の現場。モニターの前に立って事件の概要を説明しているのは、チタンフレームのメガネを掛けた真面目そうな男だ。黒髪で、とても背が高い。
 現在の研究室は、薪がいた頃よりも備品や捜査官の数が増えていて、薪の後を継いだ室長の努力が認められる。きっと彼の人当たりのよさと、しつこい性格のおかげだ。

「青木が室長とはね。第九のエリート集団説もあやしくなってきたな」
 実際、ノンキャリアの職員も増えている。
 第九は薪の頃から徹底した実力主義を貫いていて、他の部署とは違って役職に関係しない命令系統が築かれる。従ってノンキャリアに使われるキャリアも第九には存在している。キャリアのプライドから、その殆どは長続きしないようだが。
 そんな複雑な人間関係を室長の青木はうまくまとめて、第九のチームプレイは警察庁の中でも有名になりつつあった。なんといってもあの複雑怪奇な性格の薪を恋人にしていた男なのだ。これぐらいは朝飯前なのかもしれない。

「よくやってるじゃん。さすがおまえが一から仕込んだだけあるよ」
 鈴木の褒め言葉に、薪は素っ気無く肩をすくめる。自分の部下の成長を認めてもらえて本当はかなり嬉しいのだが、鈴木の前で青木のことを褒めるのは気が引ける。そんなことに拘るほど鈴木は小さい男ではないと思うが、やはり心配だ。
「それこそ手取り足取り、さ」
「なんか言い方が嫌味っぽいんだけど」
「わかる? ヤキモチ妬いてんの、オレ」
 どこまで本気なのか、分からない。にこにこしながらそんなことを言われても、まるで真実味がない。とりあえず、嫌味には嫌味で返すことにする。

「男のヤキモチなんか、みっともないぞ」
「おまえに言われたくないよ。オレがちょっと他のやつと話すだけで、じろじろ睨んでたくせに」
「あれは」
 これまで、鈴木が薪にヤキモチを妬いてくれたことなど一度もない。薪はいつも鈴木と他の人間のことを嫉妬していたが、逆はなかったと記憶している。
 膝を抱えて顔を伏せ、薪は拗ねた口調でぶちぶち言った。

「どうせ僕は嫉妬深いよ。僕ばっかり鈴木のことが好きだったんだよ。鈴木は僕にヤキモチ妬いてくれたことなんて、一度もなかったろ。僕の気持ちが少しは分かったか」
「オレ、おまえにキスしようとしたやつのこと、殴らなかったっけ?」
 そういえば、そんなことがあった。
 しかし、あれは恋人同士になる前のことだ。あの頃はまだ、ただの親友だったはずだ。
「自分でもびっくりするくらい腹が立ってさ。オレ、あんなに怒ったの初めてだった」
「でも、あれは――まだ僕が鈴木とこうなる前のことだったと……」
「気が付かなかったのか? オレ、最初に会ったときからおまえに惚れてたぞ」
 鈴木がこういうことを言ってくるときの魂胆は解っている。ちゃんと目的があるのだ。

「……今日は何が食べたいんだよ」
「オムライス!」
 やっぱりこんなことだ。
「はいはい。ケチャップ味とデミグラスソース、どっちがいい?」
「ケチャップがいい」
「相変わらずおこちゃまだな」

 薪が必要な材料と料理器具を思い浮かべると、それらは現実のものとなって現れた。本来なら出来上がったものを想像するのが正しいやり方なのだが、鈴木は薪が作ったものを食べたがるのだ。
 エプロンを掛けて包丁を手に取る。鮮やかな手つきで玉ねぎをみじん切りにする。小さく切った鶏肉と一緒に炒めて、大盛りのご飯を混ぜ込む。鈴木のリクエストのケチャップをたっぷりと入れて軽く塩コショウ――― その様子を鈴木が楽しそうに見ている。
「手伝えよ、鈴木。てか、服を着ろ」
 口ではそういったものの、鈴木の手伝いは期待していない。鈴木は青木と違って一人暮らしをしたことがない。台所に立ったことなどないのだ。

 ケチャップ味のチキンライスの上にやわらかいオムレツを載せて、ぺディナイフで裂け目を入れる。とろりと流れ出す半熟卵の黄色がケチャップの赤と美しいコントラストをなして、レストラン顔負けの出来栄えである。
 生野菜のサラダをたっぷりと付け合せて、鈴木の好きなマヨネーズを添え、薪は皿を差し出した。
「はい。野菜もちゃんと食べろよ」
 鈴木が満面の笑顔で、薪からオムライスの皿を受け取る。鼻をうごめかせて匂いを嗅ぐ。とても満足そうだ。
 ピクニックのように草の上に胡坐をかき、鈴木はスプーンを用意した。薪が冷たい飲み物とコンソメスープを出して、楽しい食事が始まる。
 結局、鈴木がしたのは服を着たこととスプーンを出したことだけだ。まったく役に立たない。しかし悪びれる様子はない。
「薪も一緒に食お」
「うん」
 本当は食事は必要ない。
 が、食べるのが楽しみの鈴木は、ここではいくら食べても太らないとばかりに毎日よく食べている。薪はあまり食事には興味がないので、ひとりのときはコーヒーだけで済ますが、鈴木と一緒のときはちゃんと食べることにしている。

 下界ではクリスマスイブだというのに、第九の職員たちがモニターに釘付けになっている。まったく、人間味のない連中だ。何が楽しくて生きているのだろう。
 どんな理由からか、室長は職員たちを怒鳴りつけている。あんなに大人しい男だったのに、青木は室長になってからとても怖い上司になってしまった。そんなところまで受け継がなくていいのに、とこれは第九の職員たちの総意である。
 青木の変貌が、薪には少し意外だ。青木の怒った顔など、共に過ごした10年のうちに数えるほどしか記憶がない。
「あんなに怖い顔して怒らなくたっていいのに」
「おまえが言うなよ」
「だって、あれじゃ部下に恐がられるだろ」
「おまえはあれの10倍はおっかなかったぞ」
「ウソだろ。僕ってそんなに怖かったのか?」
「……自覚なかったのかよ、おまえ」
 どこまでも自覚がないのが薪の特徴とはいえ、これはさすがにひどい。

「あいつ、まだ独り身なんだ。雪子さんは竹内と結婚しちゃったし。もう40近いのに、どうするつもりなんだろう」
「おまえのこと、忘れられないんだろ」
 自分の分を食べ終えて、薪の残したオムライスに手を伸ばしながら、鈴木はぼそりと言った。鈴木の分はずいぶん大きく作ったつもりだったが、やはり足りなかったらしい。
「そんなことないと思うけど」
 室長室に帰った青木は、机に向かってPCを操作している。室長所見を打ち込む手が、あの頃の自分に負けず劣らず速くなっている。努力家の青木らしい。

 ――― 年を取るほどに、青木は男前になる。
 真剣に画面を見つめる横顔は、薪がつい見とれてしまうほどだ。すっと通った鼻筋と、口唇から顎のラインがとてもセクシーだ。自分と恋仲だったときより、さらにいい男になったような気がする。さぞや女性にもてることだろう。
 一区切り付いたところで椅子の背もたれに寄りかかり、大きく伸びをする。左手で右の肩を揉んでいる。どうやら肩こりの辛さがわかるようになったらしい。
 眼鏡の奥の切れ長の目が、何を思ってかふっと和んだ。
 青木は机の一番下の引き出しから、薪の形見の分厚い洋書を取り出す。そこには以前、薪の親友の写真が挟んであったのだが、いま挟まれているのは薪本人の写真である。
 にっこりとこの上なく美しく微笑む美貌に、青木は何事か語りかけている。鈴木が防音壁を外すと、青木の声が聞こえてきた。

『薪さん。オレ、あなたに負けないくらいいい男になってそっちへ行きますからね。それまで待っててくださいね』
 誰も見ていないのをいいことに、写真の薪にくちづける。
 思わず、薪の顔が赤くなる。
 青木はまだ僕のことを想ってくれている――― 薪の心の奥のほうが、ざわりと蠢く。この気持ちは困惑か。それとも……。

「あんなこと言ってるぞ」
「……」
「あいつがこっちに来たら、おまえどっちを選ぶんだよ」
「どっちって」
 わからない。
 だって、ふたりが自分の前にいっぺんに現れたことなどない。
「答えろよ」
「じゃあ、日替わりってことで」
「! ――っ、ふざけんな!」
「冗談なのに……殴らなくたって」

 本当にいずれか片方を選ばなければならないとしたら、自分はどちらを選ぶのだろう。
 しかし、それはまだ先のことだ。
 青木だって雪子さんのように、これから新しい恋人を見つけるだろう。それこそ自分なんかより、素直で愛らしい相手を。きっと今度はかわいい女の子だ。

 やっぱり僕には鈴木しかいないな、と薪は結論付ける。
 未来のことは誰にも分からない。きっと神様にもわからない。

 鈴木の言うように青木がここへ来て、僕を2人で取り合ったら面白い見ものになるかもしれない。想像したら、顔がにやけてきた。
 隣に座っている親友の大きな肩にからだを預けて、薪はくすくすと笑った。


 ―了―


(2008.10)



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楽園にて(2)

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楽園にて(1)

 7000拍手のお礼です。

 エロエロすずまきさんです。(予告とちがう)
 18歳未満の方とRが苦手な方、及びあおまき派の方はご遠慮ください。
 って、こんなに禁止項目が多くて、お礼になるのか?



 このお話は1年半くらい前に書いたんですけど、そのときはうちの薪さんて、鈴木さんのことこんなに好きだったんですねえ。
 現在の薪さんは、筆者が引くほど青木くんのこと好きになっちゃってて、天国に行って鈴木さんに再会してもこんなことはしないだろうな、と思います。なので、これはパラレルということで。本編とは切り離して考えていただきたいです。
 よろしくお願いします。






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言えない理由 side A ~あとがき~

 薪さんの失恋話にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。


 うう、ツラかったです。青木くんと別れる話は平気で書けるのに(??)鈴木さんが相手だと、ものすごくイタイです。
 だって、鈴木さんには未来がないから。
 どんな幸せな話を書いても死んじゃうのが分かってるから、思い出にしかならないから、だから何を書いても苦しいです。 それでこんな、表面的に流して書いちゃったんですね~。 根性なしですみません。
 
 この話はsideAで、当然sideBもあるんですけど、そっちは鈴木さんの視点からの別れ話なんですけど、あまりに辛くて書けません。もう、薪さんの殉職話とどっこいどっこいのキツさで、勘弁してくださいってカンジです。
 でもこれを書かないと、鈴木さんがどれだけ薪さんのことを想ってたのか、分からないんですよね。きっと薪さん以上に相手のことを大事に思っていたはずなんですけど。
 なんて思いつつ、大して好きじゃなかったらどうしよう。 薪さんの一方的な片思いで、鈴木さん他に彼女いたらどうしよう。 そんなのやだー。(@@) 書いてみるまで本当にわからないんですよね、わたしの場合(^^;
 春になって気力が充実したら、書いてみようと思います。
 
 
 最終章の、薪さんのモノローグですが。
 とっても後ろ向きな考え方をしてるんですけど、この頃はまだ付き合い始めて1年くらいなので、こんなもんなんですね。ずっとこのままでいるわけじゃないですから、ご安心を。
 何年か後には「僕のためにおまえの親を捨てろ」と言い切るほど前向きになりますから。(←ヒトデナシMAX)
 



 次のお話なんですけど。

 痛いすずまきさんのお口直しに、甘いすずまきさんを。
 7000拍手のお礼の『楽園にて』を公開します。

 って、読み返してみたら、Rキツっ! なんだ、これ!?
 甘いんじゃなくて、エロいんじゃん!?
 ????
 

 どうしてこんなの書いたんだろうとプロパティを調べたら、初書きが2008年の10月だから『若いってこわい』を書いた直後でした。 薪さんが痛い思いしてかわいそう、じゃあ次はキモチイイ薪さんを書いてあげよう、とでも思ったんですかね?(1年半も前のことなんか、記憶にない) 


 本当は3部の地獄の初夜(笑)を公開しようと思ってたんですけど、あれはあちこち修正しなきゃいけないので~、もう少し、お時間をいただきたいと思います。


 ではでは、すずまきすとのみなさま、よろしくお願いします。
 あおまきすとさんは、もう少々お待ちください。
 



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言えない理由 side A (6)

言えない理由 side A (6)








 鈴木との苦い経験で、僕は学習した。
 誰かを好きになっても、その気持ちを全部相手に押し付けてはいけない。特に男同士は絶対にうまくいかなくなる。
 相手の100%を欲しがってもいけないし、自分のすべてを捧げようとするのも駄目だ。何故なら、そんなものを捧げられてもお互い責任が取れるわけではないからだ。僕たちは結婚もできないし、家庭も作れない。この関係は一時のものに過ぎない。
 その場限りというには長すぎるけれど、これはバカンスみたいなものだ。男同士で一生恋人でいることなんか、できない。それが良く分かった。

 男女の仲もそうだけれど、恋は一生続くものじゃない。ひとはそんなに強いものじゃないから、同じ感情を永遠に持ち続けることなんか不可能なんだ。でも、男と女の場合にはその間に夫婦という絆があったり子供という楔があったりで、それを支えに愛し合っていくことができる。激しい恋愛感情がなくなっても、もっと崇高でやさしい気持ちで相手を思いやる関係が作れるのだ。
 だけど、僕たちの関係はそうじゃない。
 なにも作れないし、なにも残せない。だからお互いの、いやどちらかの感情が冷めてしまったら、そこでお終いだ。鈴木と僕のように気持ちが通じ合っていてさえも、人間が感情の生物である限り、それは避けられない運命で。
 だから問題は、そこから後をどうフォローするかだ。

 鈴木とは、二度と会えなくなるところだった。
 フォローのしようがないくらい、僕が鈴木を傷つけてしまった。やさしい鈴木が僕に別れを告げるのに、僕に言葉の刃を向けるのに、自分自身をどれだけ深く傷つけたのか。あのころの僕は、そんなこともわからなかった。
 あの時は雪子さんがいてくれたから鈴木と僕は親友に戻れたけれど、青木とはそうじゃない。上司と部下の関係なんか、書類一枚で簡単に切れるつながりなんだ。

 今度は失敗しない。
 おまえを失いたくないから。
 避けられない別れを迎えたときに、傷つけあいたくないから。
 別れた後も、おまえの顔を見ることができるように。ただの上司と部下にいつでも戻れるように。その絆だけでも、僕に残しておいて欲しいから。

 だから、僕はおまえを好きだって言わない。
 おまえがその言葉を望んでいることは分かっているけど、これは二人のためだから。

 青木。
 おまえは知らなくていい。
 僕が、おまえの顔も見ることができないのなら死んだほうがマシだと思うほど、おまえのことを好きだなんて。仕事中だけでもいいから一緒に過ごせれば、それを支えに生きていけると思えるほどに、おまえの存在が大切だなんて。
 おまえは知らない方がいい。
 知ってしまったら、やさしいおまえは僕を捨てることを躊躇うはずだから。鈴木のように、僕を傷つけたくなくてずるずると別れを引き延ばして、それは結局おまえを苦しませることになるから。
 身体の関係だけだと思っていれば、そんなに苦しまずに済む。また新しいセフレを見つけるから大丈夫だ、と僕が笑ってみせれば、次の日から元の上司と部下に戻れるはずだ。僕たちの関係はそれでいい。

 でも、万が一。
 おまえが僕を好きでいてくれるうちに、幸運にも僕に死が訪れて、おまえが僕を看取ってくれるようなことがあれば、そのときは。
 そのときはちゃんと言葉にしよう。

 ずっと愛してる。心の底から、おまえだけを愛してる。

 その日が来るまでは。
 愛してるとは言わない。


 ―了―



(2008.11)



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言えない理由 side A (5)

言えない理由 side A (5)







「さよならだよ。もう会わない」

 そして、僕のアパートのドアは閉ざされた。
 それと一緒に、世界も僕の前で閉じていった。僕は再び独りぼっちになって、でも、今度はもう耐えられなかった。一旦は僕を受け入れてくれた世界にまた閉めだされるのは、我慢できなかった。
 死んだほうがマシだと思った。
 僕なんか、どうなってもいいと思った。

 どうやってアパートを出て、あんな場所を歩いていたのか覚えていない。気がついた時には、僕はホテルの一室でどこかのオヤジに抱かれようとしてた。
 我に返ったのは、行為の寸前で。
 目の前に知らない男の顔があって、僕は足を開かされて下腹部をまさぐられていた。男の指が僕の中に入ってきて、その痛みで僕は自分を取り戻した。

「放せ! 僕の身体に触れていいのは鈴木だけだ!」
 突然暴れだした僕に、相手の男はびっくりしてた。でも、途中で止めてくれる気はないみたいで、僕はベッドに押さえつけられた。
「いやだ! 鈴木、鈴木っ! たすけて!」
 必死で鈴木の名前を呼んだ。助けに来てくれるなんて都合のいいことは思わなかったけど、僕にはそれ以外、すがるものは何もなかった。
 だけど、助けは現れた。

「あたしの友だちに何すんのよ、このエロオヤジ!!」
 大きな女の声がして、太った中年男の身体が宙を舞った。とっさには何が起きたのか解らなかった。
「そいつは自分から服脱いだんだぞ! なんで俺が、ひっ!」
 黒いハイヒールの足が、備え付けのソファを蹴り飛ばした。ドガッという鈍い音がして、二人掛けのソファは床に転がった。
「窓から投げ落とされたい? それともこのソファの下敷きがいい?」
 彼女はめちゃめちゃ怖かった。男は服を抱えて、裸のまま逃げていった。
 
「あんたのせいで映画の指定券、無駄になったんだからね。後で弁償しなさいよ」
 僕に乱暴に服を投げつけて、彼女は後ろを向いた。僕から鈴木を奪った張本人に助けられるなんて、最悪だ。
「助けてくれなんて、頼んでない」
「よく言うわよ。泣きながら助けてって叫んでたくせに」
 かあっと目の前が赤く染まった。恋敵に自分の情けない姿を見られて、しかも窮地を救われて、とことんカッコ悪い自分を認めたくなくて、僕は自分に向けるべき怒りを彼女に突きつけた。

 ふざけるな。
 だれのせいでこうなったと思ってんだ。おまえが僕から鈴木を奪ったから。
 鈴木は僕のすべてだったのに!

 その時の僕は、心の底から腐っていた。助けてもらっておきながら、相手に感謝することもできなかった。それどころか彼女の顔を見た途端、憎しみが湧きあがってきて。僕はいとも簡単に、そのどす黒い感情に飲み込まれた。

 僕が。
 今までどれだけ僕が、おまえを恨んでいたか、知っているのか。
 作り笑いの裏側で、乾いた笑い声の奥で。
 いつもいつも、殺してやりたいと思っていた。
 鈴木と3人で仲良く肩を並べて歩きながら、ここに車が突っ込んできて、この女の命を奪ってくれればいいと思っていた。気の狂った男が刃物を持ってやって来て、この女を刺し殺してくれればいいと思っていた。
 その考えは普通じゃない、と自分でも解っていたけれど。僕にはその空想を止めることはできなかった。
 そうしなかったら、自分が崩れそうだった。
 だって、鈴木は僕にとっては、世界そのもので。それを僕から奪っていく彼女を憎むなと言われても。

 僕は雪子さんを憎んで憎んで、でも、その気持ちを鈴木に悟られるわけにはいかなかった。だから彼の前では、一所懸命に自分の感情を押し殺した。
 僕たちは鈴木を挟んで、ずっとライバルだった。雪子さんだって僕のことを決して快く思っていないはずなのに、それをおくびにも出さないところが狡猾だと思った。友だち面して親しげに話しかけてくるのが、許せなかった。
 今だって、僕のことなんか、どうでも良かったくせに。こうすれば自分の株が上がると計算して。鈴木を自分のものにするために、おためごかしの善意をひとに押し付けて。
 そんな捻じ曲がった考え方しか、僕にはできなくなっていた。他人の好意もやさしさも、何も信じられなくなっていた。
 自分自身を黒く塗りつぶした僕は、彼女に見当違いの非難を叫ばずにはいられなかった。

「僕なんかどうなったっていいんだよ! もう僕には何にもないんだから!」
 言い返したら、引っぱたかれた。しかも往復ビンタだった。ものすごく痛かった。
 他人に、それも女の子に顔を叩かれたのは初めてだった。
「あんた、鈴木くんの親友なんでしょ。だったら、彼に恥をかかせるようなことしないでよ」

 親友。
 鈴木の親友。
 恋人という甘い響きに釣られて、僕が捨てた宝物。思い返せば鈴木の恋人になったときより、親友だと言われたときの方がずっと嬉しかった。それこそが僕に相応しい、鈴木との関係だったんだ。
 そのポジションに戻れるなら。この1年をやり直すことができるなら。
 魔女に魂を売ってもいい。

「鈴木は……僕とはもう会わないって」
「あんたは? 会いたくないの?」
「会いたいけど。僕は鈴木に嫌われちゃったから」
 言葉にしたらそれが現実になって、鈴木に嫌われたって思ったらすごく悲しくなって。
 この女の前でなんか泣くもんか、と思っていたのに、涙はぼろぼろ溢れてきて。男のクセに泣くなんて情けないわね、とか蔑まれることを覚悟していたけど、雪子さんはそんなことは言わなかった。

「会いたいときに会えるのが親友。ほら、早く服着なさい」
「でも」
「鈴木くん、あんたのこと夢中で探してるわよ。待ち合わせに遅れてきたと思ったら、『薪を探してくれ!』って」
 雪子さんは何故自分がここに来たのか、事情を説明してくれた。鈴木がどんなに僕のことを心配してくれているのか、ということも。
「あんたとケンカして、頭が冷えてからアパートに戻ったら、鍵が開いてるのにあんたがいなくなってたって。ひどいことを言ったから、きっとどこかで泣いてる。早く見つけてやらないと大変なことになるかもしれないからって、すごい剣幕でまくし立てられたのよ。あんな鈴木くん、初めて見た」

 雪子さんの話を聞いて、僕は泣いた。
 鈴木はやっぱりとてもやさしくて。それが恋人に対する愛情ではないことは分かっていたけれど、でも嬉しくて。
 鈴木の親友に戻りたいと思った。
 だけど、今はできない。僕はあまりにも最低の人間に成り下がってしまっていて、もう一度自分を見つめなおす期間が必要だと考えた。

 僕が泣き止むまで、雪子さんは何も言わずに待っていてくれた。ただ黙って、僕に背中を向けていた。
 思い切り泣いたら、いくらかすっきりした。
 僕は顔を上げて、雪子さんの方を見た。凛として、しっかりと地に足をつけた立ち方だった。僕の頭の中で、数え切れないくらい駅のホームから線路に突き落とされていた女の後ろ姿は、僕の目に初めて美しく映った。

「鈴木に伝えて下さい。僕は大丈夫だって。心の整理をつけたら、ちゃんと会いに行くから心配しないでくれって」
「なに寝言言ってんの。行くわよ」
「今は、鈴木に会わせる顔がありません。もっと自分に自信が持てるようになったら、必ず鈴木の友だちに戻りますから」
 僕は自分の気持ちを正直に言ったのに、雪子さんは聞く耳を持たなかった。腕を引っ張られて部屋から引き摺りだされて、強制的に廊下を歩かされた。僕が渾身の力を込めても、抵抗しきれなかった。こいつは本当に女なのかと疑った。
「今はダメなんです。いま鈴木の顔を見たら、またひどいことを言ってしまうかもしれない。自分を抑えきれる自信がないんです。だから」
「あんたのそれは、ただの逃げ」

 彼女はぐいぐいと僕の腕を引いて、力ずくでホテルの外に連れ出した。傍から見たら、僕たちは修羅場のカップルに見えたかもしれない。この状況はどう見ても「浮気の現場を押さえられた男が彼女に引き摺られている画」だ。
「もっと自分に自信が持ててから?自分を抑えきれないかもしれない? なにその意味不明の言い訳。友だちの間にそんなもん必要ないでしょ」
 普通の友だちだったらそれでいいかもしれないけれど、僕たちはただの友だちじゃない。からだの関係まであった恋人同士で、その関係が破綻したから友だちに戻るなんて無謀なことをしようとしてるのに、何の計画もなしに動くなんてできない。

「違うんです、僕たちは」
「薪!」
 人ごみの中から、大声で名前を呼ばれた。顔を上げると鈴木が息を弾ませて、向こうから走ってくるところだった。
 雪子さんとのデートのためにおしゃれに整えた髪はぐしゃぐしゃで、冬なのに顔中汗まみれで。走るのが嫌いな鈴木がずい分走ったとみえて、まともに喋れないくらい呼吸が乱れていた。
「すずき……」
 僕は咄嗟に足元に視線を落とした。鈴木の顔が見られなかった。
 鈴木がここに来たということは、雪子さんから事情を聞いたということだ。僕がどこかのオヤジとホテルに入って何をしようとしたのか、知っているということだ。

 うつむいた僕の視界に、さっと影が差した。鈴木が僕に近付いてきた、と分かった。
 雪子さんみたいに僕をひっぱたく気かもしれない、と思った。そうされても仕方ないと思った。
 でも違った。
「よかったあ……無事だったんだ」
 広い胸に抱きこまれて、頭を撫でられた。僕は部屋着のままで外に出てきてしまっていたから、薄いシャツを通して鈴木の大きな手の暖かさがじわりと伝わってきて。

 その手は恋人の手じゃなかった。
 僕の性感を刺激しようと蠢く手じゃなくて、大切なものを慈しむ手だった。
「あんまり心配させないでくれよ。心臓に悪いよ」
 僕は鈴木に抱きついて、わあわあ泣いた。道端で、しかも場所はラブホテルの前で。
 道行く人たちが目を丸くして見ていただろうな、と後で気付いたけど、その時は人目を憚る余裕もなかった。ただ、雪子さんの凶悪な声が「なに見てんのよ!」「見せもんじゃないわよ!」「ブッ飛ばすわよ!」と怒鳴り散らしているのが聞こえてきただけだ。

 僕が落ち着くのを、ふたりはずっと待っていてくれた。雪子さんは自分の彼氏に抱きついて泣き続ける僕を不快に思ったはずなのに、何も言わなかった。
 鈴木は薄いシャツ一枚だった僕に、自分のダッフルコートを着せてくれた。雪子さんは首に巻いていたカシミヤのマフラーを貸してくれた。ふたつの防寒具は、僕を心地よく暖めてくれた。
 僕が泣きやむと、二人は携帯を取り出して何本もの電話を掛けた。

「あ、木村? うん、見つかった。ありがとな。今度メシ奢るから」
「麻子? うん、大丈夫だった。ありがとね。はいはい、ケーキバイキングね。OK」
 その調子で二人とも、10本以上の電話を掛けていた。サークル仲間やゼミのメンバー、クラスメイト。僕を探すのに二人がありったけの知り合いに声を掛けてくれて、みんなが僕のことを探してくれていたのだと知った。
 僕はその温かさを噛み締めていた。こんな大事なものを、今までずっと自分から捨ててきたのだと、ようやく分かった。

「走ったらハラ減った」
「あたしも。ちょっと暴れたから、おなかペコペコ。なんか食べに行きましょか」
 30人近い相手の飲食費をどう都合するか、二人はコソコソと相談しながら歩き始めた。割のいいバイトを探さないと、と言う雪子さんに、鈴木が肉体労働はイヤだ、とわがままを言って、後頭部をどつかれていた。
「三好さん」
 雪子さんは、ぎくっとした顔で振り返った。
 今まで鈴木に乱暴なことをすると、僕に怒られていたのを思い出したらしい。でも、僕にはもうそんな気はなかった。雪子さんの手に込められた溢れんばかりの愛情を、僕は自分の両頬で知っていた。

「助けてくれて、ありがとうございました」
 ぐっと奥歯を噛み締めて、腹の底に力を入れた。両足を踏ん張って、背筋を伸ばした。雪子さんの顔を見て、僕ははっきり言った。
「鈴木をよろしくお願いします」
 言ってから頭を下げた。それは僕の敗北宣言だった。

 雪子さんは、こっくりと頷いた。隣で鈴木が『だから雪子とはそういうんじゃないって』とか言い訳してたけど、僕は雪子さんと話してるんだ。鈴木の話は聞かない。
 もう涙は出てこなかった。さんざん泣いた後だったから、枯れてしまったのかもしれない。
 悲しみは僕を支配しなかった。それよりも肩の荷が下りた感じで、身体が軽かった。

「じゃ、『昇楽』の特盛りチャーハン食べに行くわよ」
「おっそろしい女だな。あれに挑戦するつもりなのか」
「こないだ、あと3口ってところだったの。今日はいける気がするわ」
「マジで? オレ、あれは諦めたのに」
 肩を並べて歩いていくふたりから、僕はそっと離れた。お似合いだな、と思ったらまた泣きたくなったけど、奥歯を噛んで我慢した。そして自分のアパートに帰るために、二人とは反対の方向に歩き出した。
 ところが、2,3歩歩いたところでぐいと後ろ襟を掴まれた。

「逃がさないわよ、薪くん」
 雪子さんが気を使ってくれてるのは分かっていたけど、仲の良いふたりを見るのはやはり僕には辛いことで。できればこのまま帰りたかったのに、彼女はそれを許してくれなかった。
「友だちでしょ。付き合いなさいよ」
「ともだち? 僕が?」
 恋人の元カノ(いや元カレ?)と友だちになろうなんて、僕が知っている女性の中にこんな考え方をするひとはいなかった。
「薪と友だちって……おまえ本気?」
「鈴木くんだけじゃ面倒見切れないでしょ。こんなの」
「そうだけどさ。薪の友だちは半端な根性じゃ務まんないぞ」
「わかってる。覚悟してるわよ」

 おかしな女だと思った。
 むちゃくちゃな女だと思った。
 ……とても敵わないと悟った。

「大変。早く行かないとランチタイム終わっちゃう。薪くん、早く!」
「三好さん」
「雪子でいいってば」
 大きな口を開けて屈託なく笑う彼女に、僕は心からの笑顔を返した。
「はい。雪子さん。お供します」



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プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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