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執行猶予

舞台裏です。
どうかお気になさらず。

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土曜の夜に花束を

 舞台裏です。
 本編には関係ございません。
 ただのヒトリゴトです、お気に障ったらごめんなさい。



 最後の頃で、ちらっと6月号のネタバレしてます。
 コミックス派の方はご遠慮ください。

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執行猶予(12)

執行猶予(12)







『いい加減にしろ! 今、真っ最中だってさっきも言っただろ!』
 電話の向こう側から不機嫌な声がする。そういえば、そんなことを聞いたような気もする。
 相手の苛立ちとは対照的なのんびりした声で、小野田は言った。
「待たしときなよ。愛があれば待てるはずだよ」
『彼の愛情は、僕の財布の中身にあるんだよ。時間との勝負なんだ』
「またそんなことやってんのかい? いい加減にしなきゃいけないのはどっちだろうね、中園参事官」
『どういったご用件でしょうか。小野田官房長どの』
 ころりと口調を変えて、電話の相手は小野田に媚を売る。警察官にとって、上役の命令は絶対なのだ。

 彼の名は中園紳一。小野田の同期で古くからの友人だ。彼は今、ロンドンにいる。スコットランドヤードに出向中だ。
 中園には昔から困った性癖があって、かわいい男の子と見ると口説かずにはいられない。つまり、真っ最中というのはそういうことだ。美人の奥方と子供もいるのだが、このクセだけはどうしてもやめられないらしい。ただ、中園の場合は相手と恋愛関係になるのではなくて、何時間かを共に過ごせればそれで満足だ。後腐れのない関係ということで、3日も経てば顔も忘れてしまうという。
 外見はロマンスグレーでやさしそうで、どこに出しても恥ずかしくない紳士っぷりなのに、中身はけっこうな遊び人だ。小野田の友人だから、もちろん仕事のほうもデキる。薪がこの先も小野田のところに来てくれないなら、中園を呼び戻そうと思っていたくらいだ。

「ぼくの天使がさっきここに来てね、別れたくないって言うんだよ」
『だから、今は無理だって言っただろ。デキてから1ヶ月なんて、新婚みたいなもんだよ。お互いのぼせ上がってるんだから、周りがなにを言ったって無駄さ』
「うん。おまえの言うとおりだった」
『半年も放っておけば、熱も冷めるさ。それじゃなくても男同士のカップルなんて長続きしないんだ。普通は2,3ヶ月で相手を変えるもんだよ』
「そうなの?」
『その代わり、くっつくのも早いよ。淋しがり屋が多いからね、ああいう子たちは。ひとりではいられないんだ。知り合って、その日のうちにデキちゃう連中もけっこういるよ』
 男女の間でも、今時は珍しくない。そういうカップルが長続きしないのは、男も女も同じということか。

『所詮、インスタントな恋愛なんだよ。男同士のカップルの間に出来る繋がりなんて、男女が作れるものに比べたら薄っぺらいもんだ。せいぜいセックスの快感くらい。他には何もない。そんな関係が長く続く方がおかしいよ。増してやふたりともノンケだったんだろ?すぐに女のほうがいいって気付くさ』
「だといいんだけど」
 あの二人が出会ったのは3年前。いつごろから互いにそんな感情を抱くようになったのかは解らないが、インスタントな恋愛というのは当てはまらないような気がする。お手軽な恋愛をしたいなら、もっと楽な相手がいくらでも見つかりそうなものだ。

『大丈夫だって。年の差が12もあるんだろ? 断言してもいいね。すぐに若い方が満足できなくなって離れていくよ。しかし、その男も物好きだね。よく12歳も年上の男を抱く気になるよ』
「10年前、彼の身辺調査を頼んだとき、異常なくらいの情熱で必要以上に写真やらデータを集めてきたのは誰だったかな」
 薪に警視正の特別承認を下ろす際、素行不良や裏社会との繋がりがないか、中園に調査をさせた。だから中園は、薪の飛び抜けた容姿を知っているはずだ。
『あの頃は20代だったけど、彼もう40近いだろ? いいオジサンじゃないか』
「そんなことないよ。薪くんは昔とちっとも変わってないよ」
『マンガじゃあるまいし。おまえは相変わらず冗談が下手だなあ』

 中園は、海外に飛んで10年近い。そのため、現在の薪の美しさを知らない。青木の誠実で粘り強い性格を知らない。知れば見解も違ってくるかもしれないが、今のところは彼の言う通りにするしかないようだ。
「うん。じゃあ、様子を見てみるよ」
『警視長の昇格試験は2次まであっただろ? 7月と11月だよな。1次試験のときは無理でも、2次試験の時にはおまえの心配事はなくなってるだろうよ』
「わかった。それじゃ、半年経っても続くようだったら、またおまえに相談するから」
『ああ。でも次のときは邪魔するなよ』
「ていうか、いまそっちは朝の10時くらいのはずでしょ。真昼間っからそんなことをしてる方がおかし……もしもし? 中園?」
 切られてしまった。自分に都合の悪い話になったせいか、それともベッドの中のかわいこちゃんが待ちきれなくなったのか。小野田に知るすべはない。

「まったく。薪くんといい中園といい、どうしてぼくを困らせるようなことばかり」
 小野田の文句は、ふいに途切れた。
 ソファの上に水色の紙袋が置いてある。さっき薪が持っていたものだ。忘れ物なんて、薪にしては珍しいうっかりだ。
 中を覗いてみると、何やらいい匂いがする。ランチマットに包んだ四角い箱。中身は弁当のようだ。飾り気のないメッセージカードが添えられている。きちんとした読みやすい文字で『小野田さんへ お身体ご自愛ください』と書いてある。
 蓋を開けてみると、卵焼きに鰆の塩焼き、ほうれん草の胡麻和えにひじきの煮付け。小野田が好きな筍の炊き込みごはん。薪の意外な特技は岡部から聞いて知っていたが、なるほど見事なものだ。特にこの卵焼きは絶品だ。末広亭の上を行く。
 ふっくらと仕上がった出汁巻き卵を頬張りながら、明日は休みを取ろうかな、と小野田は考えた。


 ―了―



(2009.5)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

執行猶予(11)

執行猶予(11)







 そして。
 週末の夜は恋人たちの時間だ。

 昨日の今日だから無理をさせるつもりはなかったが、薪の方から誘ってくれた。昨夜の傷はまだ癒えていないはずなのに、明日は休日だから、と意を決した顔で自分から服を脱いでくれた。
 傷の具合を確かめようと、明るい照明の下で足を広げさせる。いつもなら激しい抵抗にあうのだが、今日は何も言わなかった。ぎゅっとくちびるを噛んで、顔を腕で隠している。首まで赤くなっているから、恥ずかしいのを我慢しているのだろう。
 そこには生々しい傷が残っていて、周りも赤く腫れている。今日は無理だ。指でほぐすのも痛いだけだろう。
 こういうときには、薪が一番喜ぶことをしてやろう。

 部屋の照明を落として、薄暗くしてやる。強張っていた薪の身体がほっと緩み、優雅な腕の下から亜麻色の瞳が覗いた。
 やさしく抱きしめて横向きに寝かせる。キスをして気分をほぐす。
 相手の手を取って自分の局部に触れさせる。手を伸ばして相手のそこに触る。お互いを手で刺激しあう。要は中学生くらいの子供がアソビでよくやる、相互オナニーというやつだ。
 いい大人がするものではないが、薪のレベルだとこのくらいが一番抵抗なくできるらしい。部屋を暗くしてやるとリラックスするのか、感度も高くなる。普段はあまり反応がない乳首や背中も、この状態で撫でてやるとビクビク震えてかわいい声を上げてくれる。
 その代わり、達するのも早い。青木を悦ばせてくれるはずの手のほうはすっかりお留守だ。自分の快感を抑えて相手を愛撫するなんて余裕はない。他人に劣ることなど何もない薪だが、これだけは本当に中学生レベルなのだ。

 互いに押し付けるように触れ合わせた昂ぶりを、やんわりと手のひらで包む。揉みしだきつつ上下に動かせば、青木の胸に顔を伏せていた恋人は背中を反らせ、切羽詰った声と共に顎を上げる。
「うっ……くっ!」
 夢中でしがみついてくるほそいからだ。我を失うほどに愛しさが込み上げる。
 絶対に守ってみせる。誰にもこのひとを傷つけさせたりしない。もう二度とあんな涙は流させない。

 荒い呼吸を吐きながら、薪が身を寄せてくる。そんなふうに自分に甘えてきてくれる薪はかわいくてかわいくて、抱きしめずにはいられない。
 一般に、恋というのは年数が経つにつれて熱を失っていくものだが、薪への想いは長くなるほど深みに嵌っていくような気がする。初めのうちは分からなかった薪のやさしさや、さりげない気遣いや、かわいらしさがどんどん見えてきて、それは青木の恋心をまた新たに生まれ変わらせる。より強く、より激しいものへと―――― 薪に最初に恋をしたときより、今のほうが何倍も好きになっている。
 誰かの為に死んでもいいと思うなんて。自分にこれほど激しい恋が訪れるとは思わなかった。

「青木」
「なんですか?」
 大好きな亜麻色の瞳が、とろりと快楽の余韻に濡れて青木を見つめている。あの薪にこんな目をさせているのは自分だと思うと、心の底から喜びが湧いてくる。
「ひとりで頑張らなくていいんだぞ」
「何回も言ってるじゃないですか。オレは薪さんが、気持ちよくなってくれるのを見るが好きなんです。そのほうが興奮するんです」
「……おまえ、そのことしか頭にないのか」
 セックスのことではなかったらしい。薪の言葉はちょくちょく目的語が抜けるから、青木はよくこんな勘違いをする。

「小野田さんになんか言われたんだろ。それで悩んでるんじゃないのか?」
 見抜かれている。相変わらず鋭いひとだ。顔に出した覚えはなかったのに。
「寝てないんだろ。目の下クマできてるぞ。それに今だって」
 ぱあっと頬に朱を散らして、つややかなくちびるを窄める。むちゃくちゃかわいい。恥らう薪の表情の威力は、核兵器に匹敵する。
「いつもはもっとすごいだろ? 僕がイキそうになると手を止めて、根本を締めて、な、何回もその」
「もっとして欲しいんですか?」
「違う! そうじゃなくてっ!」
 真っ赤になっている。このひとは何回ベッドを共にしても恥らう気持ちを失わない。理性が飛んでしまったときは別だが、熱が冷めると途端に恥ずかしがり屋になる。

「僕たちは、共犯者だろ」
 薄暗がりの中に猫のようにきらめく大きな目が、青木の瞳を捕らえる。
「おまえひとりが責めを負うことはない。僕だって同罪なんだ」

 同罪? 共犯者?
 それは違う。
 薪には何の罪もない。これは、青木の方から一方的に押しまくって作った関係だ。薪はずっとそれを拒絶していたのだ。
 ある意味、小野田に渡した事件調書は正しい。レイプに近いこともしているし、脅しているわけではないが関係を迫っているのは100%自分の方だ。

「どうして小野田さんが出てくるんですか?」
「とぼけるな。官房室の来訪者名簿におまえの名前があった。金曜日の12時27分。あの日は午後から何となく様子がおかしかったし」
「お弁当をご馳走になっただけです。末広亭の松花堂弁当。さすが老舗の弁当は違いますね、すっごく美味しかったです」
 本当は半分も食べていない。味なんか全然わからなかった。
 薪に余計な心配をさせることはない。薪は小野田を敬愛している。小野田が自分たちの仲を知り、不快に思っていることを知ったら悲しむだろう。

「じゃあそのクマは」
「昨夜は勉強してたんですよ。オレだって警視の昇格試験、再来月なんですから」
「僕を騙そうなんて、10年早いぞ」
 騙せるとは思っていない。言いたくないだけだ。
「小野田さんに、なんて言われたんだ?」
「口止めされてます」
「話せ」
「できません」
「上司の命令に逆らうのか?」
「はい。小野田さんの方が薪さんより階級が高いですから。こういうときには高官の命令に従うのが正しいかと」
 ぐっと言葉に詰まって、薪は黙り込んだ。これはたしかに青木の言い分が正しい。

 薪は部屋の照明を点けた。
 自分の身体にきっちりとシーツを巻きつけると、ベッドから抜け出した。シャワーを使いに行くのだろう。
 首から上しか出さない用心深さに、笑い出したくなる。こうなる前は平気ではだかで歩いていたくせに。普通は逆じゃないだろうか。
 青木の苦笑を読んだかのように、薪がドア口で足を止める。振り返って青木を厳しい上司の目で見た。

「警視の昇格試験のことだが」
「はい」
「一次の学科試験、ベスト10に食い込め。できなかったらおまえとは別れる」
「え!?」
 薪の突拍子もない命令は今に始まったことではないが、今回のはとびきり無茶だ。
 警視の試験を受ける者は、全国で何万人もいる。その中でベスト10入りしろと言われても。自分はそれほど頭の良いほうではないし、この試験は上位何名が合格というものではなく、7割以上正解すれば人数制限なく合格できる代物だから、それなりの勉強しかしてこなかった。

「な、なんで急にそんなこと」
「僕はバカは嫌いだからだ」
「試験の結果なんてクソの役にも立たん、とか言ってませんでしたっけ?」
 薪は、ペーパーテストで昇任を決めるのはおかしいと常日頃から公言していたはずだ。実績と能力に基づくべきだと。それが急に意見を変えるなんて。

「僕の恋人なら、そのくらいできて当たり前だ」
 捨て台詞のように言って、薪は扉を閉めた。
 青木はベッドの上で頭を抱える。
 大変なことになった。ベスト10なんてとても無理だ。それを目標に1年前から勉強してきたならともかく、2ヶ月前の今になっていきなりなんて。

「いったい……ん?」
 ――― 僕の恋人なら、と薪は言った。
 ということは、ベスト10に入れば恋人として認めてくれる、ということか? 現在のような『限りなくセフレに近い恋人』ではなくて、愛の言葉を交し合うような相手として見てくれると?
 だとしたらやるしかない。薪の心を射止めるチャンスなら、どんなに可能性が低くてもチャレンジしなければ。

 ベッドを抜け出して服を着る。今夜は泊まっていこうと思っていたが、帰って勉強だ。
 多分、薪もこれから勉強するのだろう。リビングの机の上には、何冊もの参考書と3冊のノートが積み重ねられていた。もちろん白いカバーの掛かったものではなく、ちゃんと表紙に昇格試験対策と表記があるものだ。

 薪はまだ風呂に入っている。きっと1時間は出てこない。薪は長風呂だ。
 メモを残して帰ろうと思い立ち、ペンを探すが机の上には見当たらない。他人の机の引き出しを開けるのも躊躇われた青木だったが、ノートに筆記具らしきものが挟まっているのを発見した。
 ノートを開いてみると薪のきれいな文字が並んでいて、解りやすく試験のポイントがまとめられている。青木が読んでいる参考書よりよっぽど理解しやすい。
 さすが薪さんだな、と思いつつ、その内容を自分が理解できる矛盾に気付く。
 警視の試験勉強しかしていない青木は、当然そのレベルの問題しか見たことがない。薪が受けようとしている警視長の試験は、これよりずっと難しいはずだ。
 参考書の表紙をあらためて確認すると、果たしてそこには『警視』の文字が。

「薪さん。オレのために?」
 背筋がぞくぞくするくらい嬉しい。
 自分の勉強で忙しい中、青木の為にこのノートを作ってくれていたのだ。薪がどうしてそこまでして青木にベスト10入りして欲しいのかは分からないが、薪の期待には応えたい。
 
 ぐっと拳を握り締め、青木は自分に誓いを立てる。
 今までは薪の役に立てるようにと、努力を重ねてきた。これからは薪に相応しい男になれるように、研鑽を重ねる。薪によくやったと褒めてもらえるように。それでこそ僕の恋人だ、と言ってもらえるように。

 既に仕上がった2冊のノートを手にしてリビングのソファに腰掛け、青木はそれを読み始めた。



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執行猶予(10)

執行猶予(10)








「薪くん、いい加減にしなさい。ぼくがいつまでもきみの我儘を聞くと思ったら、大間違いだよ」

「証明してみせます」
 怯む様子も見せず、薪は胸を張った。
「小野田さんは僕が堕落してるって仰いましたけど、そんなことはありません」
 どこにも自分の非はない、と信じきっている人間の態度だ。思い上がりも甚だしい。
「僕がこんなに昇任に対して積極的になったのは初めてです。今まではなんとなく、人に言われるがままに試験を受けて、そこそこ努力して。僕が自分から試験を受けて上の役職を目指そうと思ったのは、青木が僕に鈴木の本当の気持ちを見せてくれたからなんです」
「鈴木くんはきみの出世を望んでいたからね。ぼくともそんな話をしたことがあるよ」
 あの新人との間にどんな経緯(いきさつ)があったのかは知らないが、そこには薪の親友が絡んでいるらしい。そうなると、これは我儘を通すための言い逃れではないかもしれない。薪は亡くなった親友のことを、とても大切に思っているからだ。

「だったら余計、別れるべきだ。そんな関係がマイナスにしかならないのは、薪くんだってわかっているだろう?」
「小野田さん。それがちょっと違うんです」
 薪は、ここに来て初めての笑顔を小野田に向けた。少し照れたように、気恥ずかしそうに、それは誰かの好意に包まれている人間が見せる笑顔だった。
「僕も始めはそう思ったんですけど、青木が解らせてくれました。鈴木が僕に本当に望んでいたのは、僕が出世することじゃなかったんです」
「出世じゃない?」
 鸚鵡返しに聞いた小野田に、薪はこくりと頷いた。

「鈴木は、いつも僕に心から笑ってて欲しいって。そう願ってくれてました」

 そんなの当たり前だろ、と言いかけて小野田は口を閉ざした。
 そんなことは小野田だって、とっくに気付いていた。鈴木の性格や薪に対する態度を見ていれば、誰だって分かることだ。それを青木が解らせてくれた、と薪は言ったが、解らなかった薪の鈍さにびっくりだ。
 犯人や被害者の心情は驚くほど正確に読むくせに、自分のことはまるで見えていない。薪のこういうところは昔から変わらない、彼の大きな欠点だ。

「心から笑うには、心のままに生きること。自分の意志を曲げないこと。
 警察機構の中で自分の信念を貫くためには、上層部に食い込むしかない。これは小野田さんが僕に教えてくれたことです。そうでしたよね?」

 昔、薪にそんな話をしたことがあった。
 薪が第九の室長になって、初めての隠蔽工作をさせられたときのことだった。被害者の脳に残った画から犯人ははっきりしているのに、権力を持った代議士の息子だと言う理由で、そのMRIはなかったことにされた。
 薪は泣きそうな顔になって、小野田に事の次第を訴えてきた。しかし、警視総監の判断は正しかった。当時の小野田の力でどうにかできるほど、その代議士は小物ではなかった。

「今回は総監の言う通りにしなさい」
 小野田の言葉が信じられないという表情で、薪は小野田を見た。信じていたひとに裏切られたような、ひどく悲しげな顔つきだった。
「きみの気持ちはわかるけどね、仕方ないときもあるんだよ」
「仕方ないってなんですか!」
 次の瞬間、薪は怒りを顕にして小野田に向かってきた。
「人ひとり死んでるんですよ!? これじゃ何のためのMRIなんですか!」
 燃えるような瞳だった。血を吐きそうな叫びだった。

「こんな汚いことをさせられるくらいなら、僕は室長なんか」
「辞めてもいいよ。きみの代わりはいくらでもいる」
 冷たい言葉に、若い警視正は怯んだ。小野田が薪にこんな冷酷なことを言ったのは、そのときが初めてだった。
「他の人間ならきみみたいに、聞き分けのないことは言わない。総監に言われるがまま素直に口を閉ざして、ぼくのところに言いつけに来たりしない」
 言いつける、という言葉に薪の頬が赤く染まった。自分がしたことの愚かさに気付いたらしい。薪がしたことは、生徒が教師にクラスメイトの悪戯を言いつけているのと、なんら変わりない。それはとても恥ずかしい行為だ。

「よって、総監の思い通りの隠蔽工作がされることになる。ぼくだったら何とかなる類の犯罪でも、匿われてしまう可能性があるわけだ」
「え?」
「ぼくはいま、今回はって言ったんだよ」
 薪は黙り込んだ。
 悔しそうにくちびるを噛んで、うつむいた。そのまま頭を下げて、官房室を出て行こうとした。小野田は、その小さな背中に語りかけた。

「薪くん。自分の信念を貫きたいと思ったら、出世することだよ。ここでは権力を持たないものは何もできないんだ。今のきみがどこで何を叫ぼうと、それは負け犬の遠吠えだ」
 薪は出口で立ち止まり、小野田の方に向き直った。真剣な表情で小野田の言うことを聞いている。
「早く上がっておいで。待ってるよ」
 薪は深く一礼して、官房室のドアを閉めた。ドアが閉まる直前に見えた亜麻色の瞳は、強い光を取り戻していた――――。

 
「だから僕は、警視長の昇格試験を受けようと思った。青木がいなかったら、僕のこの決心はなかった」
 そのときと同じくらい強い目をして、薪はいま小野田と対峙している。つややかなくちびるが開いて、薪の決心のほどを小野田に告げた。
「警視長の昇格試験。僕は必ず一発で合格してみせます」
 いまだかつて、警察庁でその快挙を成し遂げたものはいない。現在は警務部長の間宮隆二が、3回目で合格したのが最高記録だ。
 薪ならやるかもしれない。その結果は、若輩を理由に薪を拒む上層部の老人たちを黙らせる武器になるだろう。
 しかし、自分の翼下から飛び出した愚かな雛鳥に、小野田の言葉は冷たかった。

「なに言ってんの。そのくらいのことで、ぼくを納得させられると思うかい」
 つらそうな顔をして、薪は下を向いた。
 小野田はいつだって薪には甘かった。厳しい顔を見せたのは、数えるほどしかなかった。だから余計にショックなのだろう。
 長い睫毛が震えている。亜麻色の瞳が苦しげに眇められる。薪のこの表情は、小野田の期待を裏切ったことへの自責の念だ。

 仕方ない。お灸を据えるのはこのくらいにしておくか。
 薪はようやく立ち上がりかけたところだ。ここで潰してしまっては元も子もない。

 小野田は手を伸ばして、亜麻色の小さな頭をぽんぽんと叩く。びっくりした目で薪が顔を上げた。
「トップ合格しなさい」
「……はい!」
 薪は、小野田のことを尊敬している。言葉には出さないが、いつも感謝している。小野田もそれは分かっている。今回の昇格試験だって、薪なりに小野田の尽力に報いようとしてのことだ。
 笑って人生を歩むのが目的なら、今のままでもいいはずだ。第九の室長というやりがいのある仕事に、自分を熱愛してくれる恋人。仕事もプライベートも充実して、最近の薪は笑顔が多くなったと第九の職員たちも話していた。
 たしかに、薪の笑顔は輝いている。2ヶ月前にはこんな顔はしなかった。これもあの青二才の手柄ということか。

「それとね」
 あまりにも幸せそうな薪の笑顔に、小野田は意地悪をしたくなってしまう。小野田の命令に背くのだから、多少の試練は受けてもらわなくては。
「きみたちは一蓮托生なんだろ? だったら青木くんにもがんばってもらわないとね」
「え?」
「警視の昇格試験、10位以内で通過してもらおうか」
「そんな! 絶対にムリですよ。青木は頭悪いんですから」
「ムリじゃないよ。彼はきみの後輩だろ。それにキャリアで入庁してるってことは、Ⅰ種試験を全国で100番以内に通ったってことだよ」
「きっとそれは何かの間違いです。だって本当にバカなんですよ、あいつ」
 ひどい言い草だ。小野田だってここまでは言わなかった。
「薪くん。きみホントに彼のこと好きなの?」
「え!? いや、好きとかそういうんじゃなくて、その……」
 赤くなっている。
 身体の関係はあっさり認めたくせに、薪の恥ずかしさの基準は普通と違うらしい。

「薪くん。これはあくまで執行猶予だからね。僕は君たちの仲を認めたわけじゃないよ」
「はい、それで充分です。執行猶予は最長で5年ですよね。それだけあれば、お釣りがくると思いますから」
 少し哀しそうに笑って、薪は立ち上がった。部下と同じように、深く一礼して部屋を出て行く。その細い背中には、2ヶ月前までは見られなかった微かな色香が漂う。
 こういうものは自然に現れてしまうものだ。間宮に牽制を放っておかなくては。

 そんなことを思いながら、小野田は電話のリダイヤルを押す。
 今日、この番号に掛けるのは二度目だ。青木がこの部屋を出て行ってから一度。その後で薪の来訪を受けた。今話したことを報告して、指示を仰がなくては。

「もしもし、中園?ぼくだけど」



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執行猶予(9)

執行猶予(9)







 官房室に次の来訪者が訪れたのは、その電話を終えてから20分後だった。
 先刻、ここに来た捜査官の上司だ。いや、彼の恋人と言うべきか。いやいや、小野田の大切な秘蔵っ子だ。
 紙の手提げ袋を右手に持って、細身の体にぴったりと合った薄いグレーのスーツを着ている。ポロシャツとジーパンの小野田とは対照的だ。

「嬉しいね、薪くん。ぼくに会いに来てくれたの?」
「お話したい事がありまして。お時間は取らせません」
 薪の固い表情から、話の内容は察しがついた。
 あの青二才め。薪には絶対に気付かれるなと言ったのに。

 憤懣の片鱗も見せずに小野田はにっこりと微笑み、薪にソファを勧めた。仕事の手を止めて自分も向かいに腰を降ろす。2度のロスタイムが日曜出勤を余儀なくしたとしても、大事な薪のためだ。
「さて。どういった話かな?」
「5月26日金曜の12時27分。うちの部下がここに伺いましたよね。官房長と一介の警部が、何をお話になったんですか?」
 正確な時間まで掌握しているからには、受付の名簿を調べてきたのだろう。薪自身はここへは顔パスで、いちいち名簿に名前を記載する必要はない。それをわざわざ受付で確認してきたというわけか。ご苦労なことだ。

「一緒にお弁当食べただけだよ。黒部代議士の息子の事件、スピード解決したっていうから、きみへのご褒美に末広亭の松花堂弁当を取ってあげたんだよ。でも、あの時きみは眠ってたから。捨てるのももったいないと思って、彼に食べさせてあげたんだ。彼って見かけによらず小食なんだね。ちょっとしか食べてなくて」
 亜麻色の瞳が、すうっと細められた。瞬間小野田は口を閉ざすが、遅かったようだ。
「それはおかしいですね。青木は見たまんまの大食漢ですよ。あの弁当なら3つは軽いです。彼の食欲を失わせる何かがあった、と考えるのが順当かと」
 小野田の供述の綻びを見つけて、鋭く切り込んでくる。が、まだまだ甘い。このくらいの切り返しは余裕だ。
「なんだ、じゃあ昼食を済ませたところだったんだな。ぼくが強引に誘っちゃったもんだから、断りきれなかったんだね。青木くんらしいや」
 小野田の見事な言い逃れに、薪はくちびるを噛んだ。小野田を誘導尋問に掛けようなど、10年早い。それを悟ったのか、薪は尋問口調を止めた。いつもの喋り方に戻って「小野田さん」と呼びかけてきた。

「どうして僕にまで、そんなウソを吐くんですか」
「ウソなんか吐いてないよ。それとも青木くんが何か言ったの?」
「いいえ。でも、様子がおかしかったので。誰かに何か言われたんじゃないかと」
「その相手が、どうしてぼくだって?」
「青木は正直な男です。昨日の午前中は普通だったのに、午後から急におかしくなったんです。昼休みに青木と会ったのは、小野田さんだけです」
 状況証拠も完璧だ。どうやら容疑は確定だ。
 小野田は肩を竦めて両手を広げて見せた。それは薪の推測に対する肯定だった。
「いくら小野田さんでも困ります。青木は僕の部下です。室長の僕を通していただかないと」

 小野田は黙秘権を行使することにした。
 この話は、薪にはしたくない。薪を泣かせたくはない。
 計画では、あの青二才が小野田に恐れをなして薪と別れ、同じ職場にも居づらくなったところで薪に官房室への転属を勧めるはずだった。その計画はどうやら頓挫したようだ。

 黙ったままの小野田に、薪は眉根を寄せた。
 観念したように瞼を閉じる。長い睫毛の美しさは相変わらずだ。

「小野田さんが研究室まで受験票を届けて下さった、と部下から聞きました。そのとき、第九の仮眠室で僕と彼がしていたことを、ご覧になったんですね? そのことで青木を非難されたんじゃないですか? それで青木は落ち込んで」
「青木くんが凹んでたからって、それは少し短絡的じゃないかな。仕事のこととか、友人のことで、何か悩み事があったのかもしれないじゃない」
「青木が落ち込むとしたら、僕に関することだけです。あいつの頭には、僕のことしか入ってませんから」
 ものすごい自信だ。まあ、わからないでもないが。
 端から見ていても、あの男が薪にぞっこんなのはわかる。理性を保っている職場でさえそうなのだから、薪とふたりきりのときはもっとメロメロの状態なのだろう。

「小野田さんの非難は、僕に向けられるべきものです。あれは僕の方から……あの時は、気分が高揚してしまっていて。軽弾みな行動だったと反省しています。今後は二度としません」
 申し訳ありませんでした、と薪は頭を下げた。

「彼と付き合ってるの?」
「はい」
「身体の関係を持ったんだね?」
「はい」
 即答だ。自分が悪いことをしている、という意識はないらしい。ということは、薪のほうも本気だということだ。
 薪の性格からしてそうだろうとは思っていたが、よりにもよって自分の部下とは。発覚した際に何枚のカードを切ればいいのか、見当もつかない。

「がっかりだな。君も堕落したもんだ」
「小野田さんが何を心配なさっているのかは、分かります。お気持ちは嬉しく思います」
「じゃあ、ぼくが言いたいことも解るよね?」
「解ります。だけど、その命令には従えません」
 きゅっとくちびるを結んで、眉をきりりと吊り上げる。
 凛々しい顔だ。女のようにきれいな顔なのに、弱さを微塵も感じさせない。昨日のおどおどした大男とは対照的だ。

「やれやれ、君もまだまだだね。あんな道端の石ころに躓いてるようじゃ」
「青木は、石ころなんて可愛いもんじゃありません。岩みたいな男です。でも」
 亜麻色の目が強い光を宿す。真剣な瞳が真っ向から小野田に向かってくる。
「僕は、その岩を背負って歩く覚悟があります」
「それはぼくに逆らうってこと?」
「小野田さんのお気持ちによっては、そうなるかもしれません」
 挑戦的な目だ。薪は昔、いつもこんな目をしていた。小野田はこの目に惚れこんで、自分の跡を継がせたいと思ったのだ。

「どうやらきみを、自由にさせすぎたみたいだね」
 薪がこの目を取り戻せたのは、あの男のおかげなのかもしれない。が、上層部へ入っていく覚悟ができたのなら、こんな下らないことに使う時間はない。
「きみがそのつもりなら、もう容赦しないよ。きみは来月から警察庁に異動だ」
「いやです!」
 そう言うと思った。
 しかし、ここは捻じ伏せてでも納得させなければならない。薪は未だ、片羽を捥ぎとられて飛べなくなった鳥の状態だ。自分の手元に置いて、飛び立つ準備をさせてやらねば。具体的には小野田が連れ歩いて政界や上層部に人脈を広げていく、ということだ。

「約束が違います。僕が警視長に昇任しても、2年間は第九の室長を続けさせてもらえるという話だったじゃないですか。岡部を室長にするには、あと2年必要なんです」
 岡部は現在39歳の警部だ。室長を務めるには警視正以上の階級に昇任しなければならない。年齢が40になれば、警視までは警務部長の判断で昇任させることができる。現在の警務部長は岡部の実力を高く評価しているから、申請さえ出せば来年は警視になれるはずだ。次の1年間はみっちり試験勉強をさせて、なにがなんでも警視正になってもらう。自分の警察庁への異動はその後で――― 薪は先週ここに来て、そんな勝手なお願いを小野田にしていったのだ。

「先週、小野田さんは僕の意向を尊重してくれるって」
「きみに拒否する権利はないよ。警察はそういうところだろう? 上官の命令をきけない警察官なんて、いくら優秀でも要らないよ」
 つややかなくちびるをぎゅっと噛んで、薪は反論を止めた。薪も管理職の端くれだ。その現実は骨身に沁みているはずだ。

「どうする? 警察辞めて二人で喫茶店でも開く? そこまで堕ちてしまったのなら、もう引き止めないけど」
「そんなバカバカしいことはしません」
「じゃあ、ぼくの言うことをきく?」
「いやです」
 いやだいやだと子供のように繰り返す薪に、小野田は苛立ちを覚えた。可愛さ余って憎さ百倍だ。小野田は滅多に出さない低い声で薪を威嚇した。
 
「薪くん、いい加減にしなさい。ぼくがいつまでもきみの我儘を聞くと思ったら、大間違いだよ」



*****


 うう、薪さんと小野田さんのケンカは、書いててすっごくツライです。 青木くんとはいくらケンカしても平気なのに。
 今更あおまきすとを主張しても、だれも信じてくれないだろうな(笑)


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ジャンル : 小説・文学

執行猶予(8)

 こんにちは~。

 先日、みなさまからのあたたかい『ぽちっとな』が8000を超えました!
  。.:*・゚☆\(^-^ )♪ありがとうございます♪( ^-^)/☆゚・*:.。

 (↑ 顔文字って難しい。しかも作るのにすごい時間掛かる。年寄りにはついていけない新しい文化ですね(^^;))


 お礼のSSは、以前のリク投票で3位を獲得した『間宮部長の桃色日誌』で、ってそんなもん公開したらFC2から強制削除を食らいますので~~、 ノーマル路線の間宮×薪のSSを公開しようと思います。
 こちら1月に書いたばかりなので、またもや現在のお話とは文体が違ってるんですけど、(読みづらくてすみません)
 どうかよしなにお願いします。



 それでは、お話のつづきです。






執行猶予(8)







 土曜日の官房室で、小野田は第九の新米捜査官の来訪を受けた。
 この役職に就いてから、小野田には週末というものが存在しなくなった。土曜も日曜も仕事仕事。我ながら、よく過労死しないものだ。
 青木は、小野田が金曜の昼に出した課題を提出しに来たらしい。メガネの奥の黒い目が、強く真っ直ぐに小野田を見ている。その真剣さは、いつも真っ向からぶつかってくる亜麻色の瞳といい勝負だ。
 果たして彼の解答は、小野田の過労死の危険を倍増させるものだった。

「薪さんから言い出さない限り、オレは絶対にあのひととは別れません」
 
 書類を伏せて、問題児の顔を睨みつける。昨日あれだけ痛めつけてやったのに、その翌日こんな目つきができるとは、この男は大人しそうに見えて意外としたたかなのかもしれない。まあ、そのくらいの根性が入っていなかったら警察官僚など務まらないが。
「事が公になってからでは遅いんだよ。マスコミを甘く見たら」

 言い募る小野田の前に、一枚の事件調書が突き出された。
 事件発生は4月18日の土曜日、午後6時32分。邪な欲望を抱いて薪警視正宅を訪れた部下の青木警部が、彼を刃物で脅迫。暴力的に関係を持った。更にそのことを署内に言いふらすと脅迫を重ね、事件発覚まで肉体関係を強要し続けた。
 調書によると薪は完全な被害者で、この関係は加害者側の一方的な劣情によるものだ。薪は加害者に対する情愛の一片たりとも持ってはおらず、よって和姦は成立しない、と明記されている。

「それは官房長に預けます。もしも官房長が心配なさっているようなことになったら、それを使ってください」
 被害者の欄に薪の署名がある。本人が書いたわけはないから、これはおそらく薪のサインの上に紙を被せてトレースしたものだろう。
「これ使ったら、きみは刑務所に入ることになるけど」
「構いません」
 一欠片の迷いもない。よく考えてきたらしい。

「勝手なことを言いますけど、そうなったときは後のフォローはお願いします。あのひとが馬鹿げた行動に出ようとしたら、官房長のお力で止めてください」
「本当に勝手な男だね」
 しかもバカで、考えが浅い。こんなものを敵に渡すなんて、関係の発覚を待たずに、小野田がこの調書を使う可能性を考えなかったのだろうか。
「これが事実として公表されたときの、きみの親御さんたちの心痛は考えなかったの? 警察に入るときに、保証人になってくれた叔父さんのことは? 大切なひとたちに、肩身の狭い思いをさせることになるんだよ」
「もちろん、考えました。だけど」
 メガネの奥の瞳が、軽く伏せられる。しかし、それはほんの一瞬のことで、すぐに強さを取り戻した眼光が小野田を貫いた。
「それでもオレは、あのひとと別れることはできません」

 小野田は若い男の顔を改めて見た。
 純粋な目をしている。他人を疑うことを知らない目だ。警察機構には相応しくない。薪の相手を選ばない正義感とどっちが厄介だろう。

「ひとつ聞きたいんだけど。この調書にある日時は事実?」
「はい」
 少し赤くなって青木は頷いた。
 バカ正直な男だ。本当に薪との初めての日を記入したらしい。

「下がっていいよ」
 結局は似たもの同士なのかもしれない。能力には大分差があるが。
「きみの覚悟はわかった。でも、認めたわけじゃないからね」
 冷酷な小野田の言葉に青木は深く頭を下げて、官房室を辞した。

 青木がいなくなってから、小野田はある所に電話を掛けた。それは日本ではなかったが、電話に出た相手に小野田は日本語で話しかけた。
「中園? ぼくだよ。今、いいかい。え、ダメ? ベッドの中でかわいこちゃんが待ってる? それは待たせといてよ。ぼくの天使に関する相談なんだからさ」
 誰かに負けず劣らず自分勝手なことを言って、小野田は送話口で事情を説明し始めた。



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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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