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パートナー(4)

 こんにちは、ちょっと間が空いちゃいました、すみません。
 実は、実家のお母さんがウォーキングの帰りに骨折しちゃって。
 現在は、実家のお嫁さんが面倒見てくれることになったので大丈夫なんですけど、最初はわたしが通い家政婦にならなきゃいけない状況だったので、しばらくの間はバタバタしておりました。

 それと、
 後はあれよ。警視庁24時。(笑)
 期間限定で別記事に上げますので、お暇な方はどうぞ。





パートナー(4) 



 その晩はリビングに布団を敷いて、叔父たちにはそちらで休んでもらうことにした。
「薪さんもそちらへどうぞ。オレはナッシーと寝ますから」
 大人だけの家にあるのは不自然な人形、その事情説明を面倒がった薪のせいで、成人しても人形遊びを止められない男のレッテルを張られた青木は、薪の嘘を裏付けるとも皮肉ともつかぬ口振りで、薪に親子水入らずの就寝を勧めた。しかし薪は首を横に振り、いつも通りの寝場所を選んだ。「おやすみなさい」と叔母夫婦に声を掛けて、青木と一緒に寝室に入った。

 この頓狂な人形が薪の家に置かれることとなった春の事件の時も思ったが、薪は、青木と共に生きると決めたことを、堂々と主張するようになった。あくまで必要に駆られた時だけだが、それだって今までに比べたらえらい進歩だ。
 きっかけは何だったのだろう、と考えて、昨年の秋に起きた悪夢のような事件を思い出す。あの時、すべてを諦めて死を選んだ薪に、岡部が青木が滝沢が、それぞれの立場からそれぞれのやり方で、彼を生かそうとした。彼の人生に幸福が存在することを認めさせようとした。その中のどれか一つでも効果があったのなら喜ばしい限りだが、そういうことじゃない気がする。この人は、基本的に人の話を聞かない。耳を貸さないのではなく、他人に言われて自分のスタンスを変えるような人ではないのだ。だからこの変化はきっと、年を取ったら言い訳するのも面倒になったとか、そんな身も蓋もない理由だ。

 ダブルベットの左側に青木が、右側に薪が横になる。薪は頭の下に両手を組み合わせて、しばらくの間薄暗い天井を見つめていたが、やがてぽつりと言った。
「叔父さんが言うことは気にするな」
 薪との関係を否定され、青木の母親にダメ出しをされた。自分の身内がそれをしたことを、申し訳なく思っていたのだろう。彼の気遣いが嬉しかった。
「平気です。オレは何を言われても」
「大人のクセにあの人形はないだろうって、僕にさんざん言ってたから。明日、皮肉られるかもしれないけど気にするな」
 30過ぎても人形遊びが止められない男だと誤解させたのは誰ですか。
「薪さん。それはきちんと説明すれば」
「叔父さん、何をしに来たんだろう」
 薪に遮られ、青木の抗議は不発に終わる。とりあえず、薪は人の話を聞かない。
「かわいい甥の様子を見に来られたんでしょう。20年振りのサプライズってのがすごいですけど」
「いや。今までも4,5年おきに来てた」
 そうなのか、知らなかった。だったらその時、呼んでくれればよかったのに。そうしたらこんなグダグダなカミングアウトにならずに済んだのだ。――まあ、一緒に暮らす前の薪にそれを求めるのは無理だったか。
「でも、今回みたいな抜き打ち検査は初めてだ」
「ぷ。抜き打ちって」
 国税局じゃあるまいし。

「可愛い甥か……生憎、そんな麗しい親子関係じゃない。小さい頃はそうでもなかったけど、僕が警官の道を選んだ日から、あの人とはケンカばかりだ」
「そうなんですか?」
 青木の父も、第九に勤めることには反対だった。でも父は最後に――否、今際の際になって考えが変わったのではなく、もっと以前から認めてくれていたのだと、後で母が教えてくれた。改めて言葉にするのも気恥ずかしくて、それで伝えるのが遅くなっただけなのよ、と。
 海を渡って顔を見に来るくらいだ。薪の叔父も、そういうことじゃないのかと思いたかったが、あの言い争いを目撃してしまっては、それも難しかった。やはり、父親と叔父では見方が違うのかもしれない。そう言えば、青木の叔父も青木の仕事には懐疑的だった。

「最後に来たのはいつだったんですか?」
「確か、6年前だ」
 6年前と言えば、薪とは恋人関係にあったものの、現在のように一緒に暮らしてはいなかった。そう頻繁に彼の家に出入りしていたわけではないし、週末も薪が「今週はダメだ」と言えば、その理由を質すことはしなかった。その「ダメだ」の中のどれかに、彼らの帰国はあったのだろう。
「じゃあ定例訪問じゃないですか。今回はサプライズにしてみたってだけで」
 そうかもな、と頷いて薪は目を閉じた。納得したというよりは話を打ち切ったように感じられたが、そう返されれば青木も会話を終えるしかない。

 胸の内にある不安に寒気を感じたのか、すり寄ってきた薪の背中を抱いて、青木は彼の髪に鼻先を埋めた。
「おやすみなさい」と声を掛けるも応えはない、それはいつものことだったけれど。青木の背中に回った薪の手に、ぎゅ、と力がこもったのは、とても珍しいことだった。



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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

パートナー(3)

 こんにちは~。

 この章には、昔、ちょっとだけ晒した、地下倉庫の一つがネタに含まれてます。
 分からない方はそのままに、分かった方は、
 どうかスルーで! スルーでお願いしますねっ。

 本日もよろしくお願いします。







パートナー(3)





「ではお疲れさまでした。おやすみなさい」
「ちょっと待て。私に野宿をしろとでも」
「ご安心ください、日本の夜は安全です。オレたち警察が目を光らせていますから」
「そういう問題じゃない。今は11月だぞ」
 よかったらこれどうぞ、とにっこり笑って毛布を手渡され、叔父は目を白黒させた。ニコニコ笑いながら押しが強い。青木の恐ろしさはここだ。

「青木。そのくらいにしておけ」
 青木が振り返ると、腕を組んだ薪がニヤニヤ笑っていた。左手の拳を口元に当て、吹き出したいのを堪えている様子だ。
「薪さんが、そうおっしゃるなら」
 母親のことも自分のことも、青木は本当にどうでもいい。すべてのものを守るなんて、自分には無理だ。青木の守備範囲はそんなに広くない。
 青木は薪のボディガードだ。
 薪のことだけ。守れたらそれでいい。

「お布団、ここに敷きますね。干してないから冷たいかもしれませんけど……あ、そうだ。湯たんぽ入れましょう。用意してきます」
 切り替えの早さは見事なもので、それはおそらく上司の影響。雪山の天気のようにコロコロ変わる薪の機嫌を取り持つには、3秒前の発言を瞬時に忘れられる能力が必要なのだ。
 客用の布団と湯たんぽを取りにクローゼットに向かう青木の後ろ姿を、叔父と甥は並んで見つめた。青木を良く知る薪は慣れたものだが、叔父の方はその変わり身の早さに付いていけず、たった今、自分の身に起こったことが夢か真か、判じかねる様子でしきりに目を瞬いていた。
 その様子に薪はとうとう耐え切れず、クスクス笑いを拳に降り掛け、
「いい男でしょう」と右隣の叔父の顔を見上げた。

「人を見る目のないおまえにしては、まあまあだ」
 ありがとうございます、と薪は冷静に返したが、内心ではとても驚いていた。
 初対面で、あの皮肉屋の叔父からこれだけの賛辞を引き出すとは。鈴木ですら初めて会った時には「パッとしない友だちだな。本当に東大生なのか」と陰で言われたのだ。
 初対面の評価が鈴木に勝ったことを青木が知ったら、さぞ喜ぶだろう。青木は単純だから、それだけで叔父を好ましく思うかもしれない。先々のことを考えるとそれはとても有益な方法に思えたが、いかんせん、薪は人間関係にそういう細かなネタを仕込むタイプではない。
「彼個人の人柄とおまえたちの不適切な関係は、また別問題だ。私は絶対に認めんぞ」
 叔父さんに認めてもらわなくとも、なんら支障はありません。
 出掛かった言葉を舌の根で抑え込む。冷たい言葉を冷酷な言葉で打ち返せば、倍の冷たさで返ってくるに違いない。舌戦の泥沼に戻るのを回避するため、薪は話題を変えることにした。

「ところで、叔母さんはどちらに?」
「長旅で疲れが出たようでな。ベッドルームを借りて休ませてる」
「えっ!」
 何か問題でも? と問われれば心とは裏腹に頷くこともできず。かと言って自分の母親代わりだった女性を寝泊まりさせるには、そこはあまりにもリスキーな部屋だ。
 だって寝室には青木と大人の夜を過ごすために必要なあれやこれやが!! 例え引き出しを開けなくても、サイドボードにはふたりで撮ったスデディな写真が飾ってあるし、脇田課長オススメのビデオコレクションも、いや、それより。
 本棚の、一番下の隅っこに隠すように置いてある青木の血迷った買い物を思い出し、薪は瞬時に青ざめた。

「冗談じゃない! 今すぐ別の部屋に移ってください!」
 思わず叫ぶ。だってアレ、叔母さんに見つかったら僕死ぬから!!
「部屋を代われと言われても。文代はもう眠って」
「でもっ! 使ったことないって言っても信じてもらえないでしょ!?」
 未使用どころか触ったこともない。青木が使い方を説明しようとする度に思い切り蹴り飛ばして、完全無視を決め込んでいる。
 なんでそんな物が寝室にあるのかと言えば、青木が薪の浮気を心配したからだ。もちろん薪は浮気なんかする気もないし、するだけの体力も時間もない。全くの杞憂に過ぎないそれを青木は滑稽なくらい深刻に悩み、挙句、煮詰まり過ぎてあんなモノを購入してしまったのだ。バカとしか言いようがない。
 薪がそれを捨てずにおいたのは、どうやって捨てたらよいか分からなかっただけで、万が一ゴミ袋の中からご近所さんに見つかりでもしたら此処に住めなくなるから。でもまあ薪も、ほんのちょっとくらいは興味あったりとか、これから先青木と何ヶ月も会えなかったりしたらその時にはとか、そうだ、スカイプエッチのときに使ってやったら青木が喜ぶかも……いやいやいやいや!

「使わない、絶対に使わないからなっ!」
「なにを?」
「ナニって、えっ、あっ、いや」
 石鹸水とクエン酸に交互に浸したリトマス試験紙みたいに、薪の顔色が忙しく赤と青の間を行き来する様子を、叔父は怪訝な表情で見つめ、深刻な口調で切り出した。
「まさかとは思うが。剛おまえ、非合法なクスリを」
「そんなわけないじゃないですか。僕は警察官ですよ」
「じゃあなんだ。ハッパ以外、寝室に置くもので他人に見られたら拙いものがあるのか」
「叔父さん。ここは日本です。叔父さんの所みたいに、マリファナがドラックストアで買える国じゃないんですよ」
「失敬な。私はそんなものに頼ったことはないぞ」
「僕だってありませんよ!」
 微妙にズレていく叔父との会話にイライラして、声のトーンが自然と高くなる。この叔父とは、どちらかと言えば黙り込むケンカが多かったはずだが、この20余年の間に、薪はハイエナのようなマスコミ相手に、叔父は機関銃のように喋りまくるアメリカ人相手に、お互い言語中枢を発達させてきたらしい。

「なに騒いでるのよ。うるさくて目が覚めたわ」
 そこに叔母が現れた。頭痛は治ったらしく、スッキリした顔をしている。
「キッチンで青木さんに会ったわよ。感じのいい子ね」
 でた、青木の年上キラー。彼は、子供と老人には本当によくモテる。警察官なんてヤクザな商売より、保育士か介護士のような職業の方が彼の外見にも気性にも合っていると薪は思う。

「それはそうと、剛。寝室に隠してあったアレ。あなたにあんな趣味があったなんて。叔母さん、びっくりしたわ」
 ぅぎゃああああああ!!!
「ちちちちち違うんです、叔母さん! アレは青木が買ってきて、でも僕は一度も使ったことはないんです! 信じてください!」
「あら、そうなの? あれ、青木さんのシュミ?」
「もちろんです! そもそもあんな大きいの、僕には無理ですよ!」
「そんなこともないんじゃない? 確かに標準に比べれば大きいかもしれないけど、無理ってことはないと思うわ」
 え。そうなの? あれって挿入可能なサイズ? 青木が「オレのより少し小さいかもしれませんけどこれで間に合わせてください」って言ってたの、あれ、男の見栄じゃなくて?

「女の人にはそうかもしれませんけど、僕は男ですから。使用する場所のこともあるし」
「そうね、所構わずってわけにはいかないわね。ちょっと恥ずかしいものねえ」
「ちょっとどころの騒ぎじゃないですよ。犯罪ですよ、あんなの」
「犯罪なんて大げさな。あんなにかわいいのに」
 かわいい? あんなグロテスクなものが? 女の人は、ブサかわいいとかキモかわいいとか、理解しがたい美的基準を持っているが、それにしたって。
「かわいいですか? アレ」
「可愛いじゃない。頭が丸くて、太くって、ズドンとしてて。頬ずりしたくなっちゃうわ」
「スゴイこと言いますね……」
 雪子の猥談もすごいけど、叔母さんもすごい。とても付いていけない。ていうか、叔母さんてこんなキャラだったっけ? 女の人は年を取ると恥じらいを失くすって言うけど、自分の身内にその実例が生じるのは複雑な気分だ。

「なんの話だ」
「あ、史郎さん。そうよね、史郎さんも見たいわよね。剛、ここに持ってきていい?」
「ダメに決まってるでしょ、そんなのっっ!」
 気でも狂ったんですか、と、その言葉を飲み込むのがやっとだった。なに言いだすんだ、この女は。正気の沙汰とは思えない。
「いいじゃない。見せてあげましょうよ。史郎さんもきっと気に入るわ」
「待ってください、後生ですから!!」
 後ろから羽交い絞めにしようとした薪の手を半歩の差ですり抜けて、叔母は寝室に入ってしまった。かくなる上は、寝室のドアに板を打ち付けてこの呪われたアイテムがある部屋を叔母さんごと永遠に封印するしかないと薪が決心した時、再びドアが開いた。
 瞬間、薪は反射的に後ろを向いた。光景は予想できるが、とても正視に堪えない。母親が掃除中に息子の寝室からエロ本見つけちゃうくらいならホームドラマでもありそうだけど、グッズはないから! 人間、そんな恥辱に耐えられないから!

「ほら、これよ」
 終わった、人生終わった。僕はこれから踏切に飛び込む。さようなら、みんな。
 鈴木、待たせたね。今行くよ。鈴木だけは僕の無実を信じてくれるだろう?
「これが可愛いのか? 女の感覚は分からんな」
 そうでしょうね……。
「頭が丸くて太くてズドンとしてて」
 叔父さんまで事細かく形容しないでください。一度見たら忘れられない、ていうか必要ないです。男なら誰でも日常的に目にしてますから。
「黄色くて青くて」
 ええ、黄色くて青くて、うん? 黄色? 青?
 人それぞれかもしれませんけど、逆に自分のは見たことありませんけど、その時の僕のは薄紅色だって青木が言ってて、青木のはやや紫がかった赤色だと記憶していますが。
「手足が異様に短い」
 はいはい、手足が、――手足? 叔父さんのには手足が付いてるんですか??

 食い違う記憶に焦って振り返る。ドアの前には巨大なぬいぐるみを抱いた叔母と、複雑な顔をした叔父が立っていた。
 そういえばこないだ、ミハルが遊びに来て。彼女の大のお気に入りの人形をクローゼットから出したはいいけど片付けるには青木の手を借りなきゃいけなくて、とりあえず寝室に置いておいたのだった。ぬいぐるみとはいえ目があるものは見られているような気がして嫌だから、頭からすっぽりとシーツを掛けておいた。それを叔母は、隠してあると誤解したのだ。

「地味に重いわね、これ」
「これが青木くんの趣味か。いい大人が、まったく」
 叔父の誤解を、薪は敢えて解かない。本当の持ち主のことを説明するのも面倒だし、誤解の内容を説明することは死んでもしたくないからだ。それに、そもそもの原因は青木のトチ狂った買い物のせいなのだから、これは自業自得だ。
「そうですね。いつまでも子供で困ったもんです」
 すべての責任を青木に押しつけて、薪は大きく頷いた。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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