たとえ君が消えても(4)

 ブツブツ切ってて誠にすみません。
 いやー、今の役所はメールで設計書送って来るから、時間外でも油断ならないねっ。 夜の9時とかねっ。 (木曜の夜に会社のメールに届いてたんですよー。 竜也、仕事早いな)
 おかげで週末無くなって(TT)、更新遅れてすみませんでしたー。
 でも、日曜日に粗方やっつけたんで。 後は手直しと検査待ちです。

 この話ね、できれば次のメロディ発売前に終わらせたくて、だけど既に2日に1回の計算だと間に合わないのねー。 84Pあるからねー。←長すぎ。 
 さくさく更新して行きますので、よろしくお願いします。




たとえ君が消えても(4)





 その夜の10時に、青木は桐谷と第四研究室で待ち合わせた。青木が時間通りに研究室に行くと桐谷は既に部屋に居て、小坂の机の前に座っていた。
「青木さん、どうも。パソコンは立ち上げておきました」
 相変わらず、桐谷は意欲満々だ。軽く頷いて、青木は小坂のパソコンに手を伸ばした。ハードディスクはすでに温められており、それは桐谷の勇み足を悟らせる。内心の溜息を隠しつつ、青木は尋ねた。

「桐谷さんのパソコンのパスワード、教えてもらえますか?」
「私の? どうするんですか?」
「データの保存場所を探すんです。同じ型のパソコンだから、エリアも同じはずです」
 二台のパソコンを起動させてから、半時間ほどで青木は目的のデータを探し当てた。宇野直伝のATAパス解除テクニックにかかれば、この程度のセキュリティはロックされているうちに入らない。

「青木さん、すごいですね。私はアナログな人間でして、こういったものはどうも」
「ご謙遜を。常にIT技術の最先端を行く神戸支局の方が、そんな」
「いやあ、職員と言っても私は中途採用で。主な仕事場は庶務課と資料室。実質、雑用係と言った所ですよ」
 そんな会話をこそこそと交わしながら、二人は一時間も経たないうちに問題の帳簿を見つけ出した。当然、パスワードを入力しなければ開かないようになっていたが、こちらは小坂の生年月日と言うお粗末なものだった。
「ATAパスワードを過信し過ぎるとこんなにことに、――えっ?」
 いざ帳簿を開いてみて、二人は息を飲んだ。適用に『GE』という文字があり、そこに何度も支払いが為されている。小坂の隠し口座と思われたが、問題はその金額だ。

「……2億?」
「お土産のエビフライが、えらいもんに化けましたね。オレ、ブランドには詳しくないんですけど、腕時計ってそんなにするもんなんですか?」
「まさか」
 釣り上げた獲物の大きさに怯んだのか、桐谷はゴクリと唾を飲み、自分の懼れを振り落すように強く首を振った。
「私はドアの前で見張りをします。青木さんは、もう少し詳しい調査を」
「わかりました」

 日付を遡って帳簿を確かめてみると、『GE』への支払いは三年前ほど前から五十回以上に渡り、アイディア料やメンテナンス代などの無形費用を装って振り込まれていた。トータルすると2億以上になる。飲食費どころの騒ぎではない。
「遊興費にしては額が大きすぎますね。桐谷さん、この『GE』というのはどういう会社なんです?」
「グリーンアース。『緑の大地』って意味だよ」
 聞き覚えのない声が響いて、青木はパソコンの画面から横に視線を走らせた。髭面の見知らぬ男が、こちらに銃を向けていた。後ろにも二人、黒いシャツとズボンに身を包んだ男がアサルトライフルを両手に構えている。

「なんでバレたのか分からないって顔だな。タネは簡単、その帳簿が動くと、こちらにも分かるようになってるんだよ。こんな時間にデータが動くのは初めてだからな。来てみて良かったよ」
 リーダー格らしい髭の男は、年の頃40前後。がっしりした体つきで、身長は180センチくらい。色黒で髭が濃く、髪は短く刈り込んである。彼は精悍な顔にニヒルな笑いを浮かべ、楽しそうに青木の胸に銃口を押し付けた。
「下手な正義感は命取りってな」
 データ検索に夢中になっていて気付かなかった。警察官の自分はともかく、桐谷は。
 そっと様子を伺うと、桐谷は既に男の仲間に捕えられていた。口にガムテープを張られて、涙目になって青木を見ている。小柄で痩せ型の彼は、仲間の一人に軽々と担ぎ上げられた。手足を縛られているからロクな抵抗はできないが、ジタバタと足を動かしているところを見ると、大きな怪我はしていないようだ。

「あんたは自分で歩いてくれよ。そんな図体、負ぶったら腰が痛くなっちまう」
 両手を上げて降参の証を立てる青木の胴体を、男の手が探る。内ポケットの中の身分証に気付いた男の目が、冷酷に光った。
「警官か……ここで殺しておくか」
 銃の撃鉄を上げる音に、思わず肩が竦んだ。人生で、他人に銃を突きつけられたのはこれで二度目だ。二度とごめんだと思っていたが、ここで引き金を引かれたら三度目はないわけだ、とパニックに陥りそうな脳で妙に冷めたことを考える。
「それは困ります」
 青木が率直に返すと、見かけに因らず肝が据わってるな、と男は不敵に笑い、青木の手首を後ろに捕えてガムテープで拘束した。
「銃は持ってないみたいだな。いいか、命が惜しかったら大人しくしてろ」
 携帯電話と財布を取り上げられて、青木は焦った。電話にも財布にも、薪の写真が入れてある。現金はいいから写真だけは返して欲しいと思ったが、口には出せなかった。言ったら問答無用で撃ち殺されそうだ。

 研究所の裏門に、箱型の車が止まっていた。車好きの青木は瞬時に車名と年代を見極めたが、肝心のナンバープレートは辺りが暗くて見えなかった。
 車に乗せられた時点で、アイマスクを付けられた。青木は神戸には土地勘がないから、何処をどう走ったのか、まったく分からない。時計を確認すると走行時間は2時間弱だったが、神戸の道路事情を知らなければ、自分たちが何処に連れてこられたのか見当の付けようもなかった。

 そこは、倉庫のような建物だった。剥き出しの鉄骨と高い屋根。コンクリート敷きの床は汚れていて、空調もないから部屋はひどく暑く、じめじめして不快だった。
 廃屋になって久しいらしく、天井の照明器具も壊れており、泥だらけの窓から差し込んだ頼りない月明かりが中の様子を、間接照明のように照らしている。だだっ広い空間に、今は使われなくなった大型機械が埃を被っている。ドラム缶や角材、ジャッキなどが数えきれないくらい置かれて、只でさえ薄暗い視界を遮っている。遠くに、埃まみれの壁とドアが見えた。ユニットハウスのようだ。
 青木と桐谷は、両手を戒められたまま床に座らされ、そのまま朝まで放置された。見張りは小銃を持った男が一人だけという、警官相手にしては緩い警戒態勢だったが、一般人の桐谷がいる以上、彼の命を脅かすようなことはできなかった。

 ささやかな内部告発の心算がとんでもないことになってしまって、生きた心地もない様子の桐谷を元気付けようと、青木は小さな声で彼に話しかけた。
「大丈夫ですよ、桐谷さん。オレが付いてます。あなたのことは必ず守りますから」
「青木さん。申し訳ありません。私のせいで、あなたまで危険な目に」
「何を言ってるんです。桐谷さんは、正しいことをしようとしたんじゃありませんか。善行を積んだ人間には必ず運が向いてきます。神さまは見てますよ」
「そうそう。カミサマは見てる」
 見張りの男が、青木たちの会話に入ってきた。彼は、青木たちを拉致した3人組の中で一番若く、髪を金髪に染めていた。
「おれ達にはカミサマが付いてんだよ。おまえらのことも、カミサマが教えてくれたんだ」

 一瞬、グリーンアースとはカルト教団なのかと思った。しかし、彼はすぐにゲラゲラと笑い出した。「ばっかみてえ」と足で小突かれたので、いい年をして神様なんてものを信じている青木を嘲笑ったのだと分かった。
 髭の男が言っていた、「帳簿が動くとこちらにも分かるようになっている」。データが上書きされると指定されたメールアドレスに自動的にメールを送信する、そういうプログラムが組まれていたのだろう。金髪の男が言うカミサマとは、多分その通知システムのことだ。

 青木が黙ると、桐谷は一層悲しげな顔付きになって、
「青木さん……すみません、本当にすみません」
 自分が余計なことをしたばかりに、と謝り続ける桐谷を宥め、体力温存の為に少しでも寝ておきましょう、と彼の目を閉じさせた。が、こんな状況で普通の人間が眠れる訳がない。この暑さの中、コンクリートの床の上、その上銃で脅されて。青木だって泣きたいくらいなのだ。一般人の桐谷はもっと辛いだろう。
 結局、二人はまんじりともせずに朝を迎え、さらに待つこと3時間。昨夜の髭面の男がやって来て、見張りをしていた金髪の男にコンビニの袋を渡した。袋の中には菓子パンと牛乳が入っており、それを見た青木の腹がぐうと鳴った。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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