たとえ君が消えても(22)

 こんにちは!
 施工計画書と格闘中のしづです。 見たこともやったこともないポリ管の融着継ぎ手について、さも詳しそうに嘘八百を書き連ねております。 ペーパー代理人(←ペーパーテストで資格が取れるので、土木業界にはゴロゴロいると思う)はハッタリが命。<オイオイ。
 便覧とか融着機の使用説明書とか調べて書くんだけどさ、現物を見たことがないから殆ど想像で書くしかないんだよねえ。 ……仕事でも二次創作?(笑)
 以上、近況でした。
 
 さて、お話の続きです。
 本日も広いお心でお願いします。





たとえ君が消えても(22)






「安心しろ。テログループと戦って華々しく死んだことにしておいてやる」
「わざとじゃありません! 信じてください!!」
 喉元に拳銃を突きつけられて、青木は夢中で叫んだ。真鍋に銃を向けられたときより、遥かに怖かった。
 青木の弁解は真実だ。彼は本当に気絶しており、薪の抱擁と涙で眼が覚めた。初めは何が起きているのか分からなかったし、状況が状況だっただけに、薪が自分に抱きついていると分かったときは天国に来てしまったのかと思った。手を伸ばして触れてみて、薪がスーツを着ているなら現実だと考えた。ここが天国なら薪の衣装は絶対に天使のそれであるはずだと、その理論は30過ぎの男としてどうかと思うが、彼の供述が正しいことに変わりはない。

 両手を挙げてブルブルと首を振る青木の頭部から血が飛び散って、薪は忌々しそうに舌打ちした。ポケットから真っ白なハンカチを取り出し、患部に当ててやる。頭部の怪我は、損傷の割には出血が多い。患部を圧迫して安静にしていれば、10分程度で血は止まるはずだ。
「痛むか」
「いえ、どっちかって言うと背中の方が……何処も痛くないですっ、本当です!」
 最後の供述は嘘だったが、これは緊急避難に該当する。人間、生きる為には嘘を吐かなければいけないこともある。

 出血こそ派手だが、どうやら命に係わるような怪我ではないと、青木の様子にすっかり平常心を取り戻した薪は、持っていた銃を床に置いた。それから、青木のポケットから勝手にハンカチを取り出し、彼の顔に付いた血を拭いてやりながら、道で転んだ友人を冷やかすような軽い口調で、
「なに誘拐されてんだ、バカ」
「オレだって好きで誘拐されたわけじゃ」
「助けに来てみりゃ呑気に寝てるし」
 優しい手つきとは裏腹に、薪の言葉は辛辣だ。自分のヘマに腹を立てているのだ、と青木は思い、怯えながらも控えめに抗議した。
「いやあの、寝てたわけじゃ。オレだって大変だったんですよ、横領の証拠データをパソコンから引き出してたら、突然テログループに拉致されて」
「うるさい! 僕なんか中園さんに苛められて公安とケンカして岡部に捕まって監禁されて終いにはミニスカポリスのコスプレまでさせられたんだぞ!」
「すみません、薪さん側のストーリーのどの辺がこの事件に絡むのか解りません」
 おまえなんかに分かって堪るか、と薪は吐き捨てて、だったら言わなきゃいいのに、よっぽど腹に据えかねる何かがあったらしい。だけどこっちは自分と桐谷の命が懸かっていたのだ、自分の方が事態は深刻だったはずだと思いつつも、青木は悲しいくらいに薪には弱い。

「コーヒーのメッセージ、薪さんなら分かってくれると思ってました」
 乾きかけて落ちにくい頬の汚れを丹念に拭いてくれる薪に、ありがとうございました、と青木はにっこりした。此処はテロリストの巣窟でいつ彼らに見つかって殺されるかもしれないのに、太平楽もここまで来れば表彰ものだ。そう言いたげな目つきで青木を睨む薪の、手つきは相変わらずやさしい。
「血が止まるまで、しっかり押さえておけ」
 やっと拭き終えて、止血のハンカチを青木に託し、薪は立ち上がろうとして、すると整理棚の陰に投げ捨てられている角材が眼に入った。何本かの角材は立てかけられており、その一本だけが床に転がっていた。取り上げてみれば予想通り、血痕が付着している。

「どうやら、凶器はこの角材だな」
「そんなもので……なんか、急に痛くなってきました」
「殺されなかっただけ有難いと思え」
 相手はテロリストだ。逃げ出そうとしたのが見つかったなら、殺されていても不思議はない。交渉の道具にするために生かしておいたのだろうが、ならばどうして青木を此処に放置したのだろう。
「ウドの大木が幸いしたか」
「はい?」
「いや。考えるのは後だ、とりあえず逃げるぞ」
「それは駄目です。桐谷さんが」
 一緒に逃げたはずの桐谷が此処に居ないのなら、彼は青木を襲ったテロリストに捕まったのだろう。見るからに文系の彼が単独で逃げおおせたとは、いくら楽観的な青木でも思えなかった。

 桐谷の名前を出すと、意外なことに薪は不思議そうな顔をした。
「桐谷って、神戸支局の桐谷吾郎氏か? 彼も人質に?」
「はい。横領の告発をするって仰って、一緒に証拠のパソコンを調べてて、で、一緒にテロリストに捕まって……伝わってなかったんですか?」
「人質はおまえ一人だと思ってた。昨日、おまえの足取りを調べるために神戸支局にも行ったけど、彼は休暇扱いになっていたぞ?」
「それは課長の小坂氏の仕業だと思います」
 二重帳簿のファイルが開かれたことはログで分かる。翌日、桐谷が出勤しなければ、彼を疑うのは当然だ。会社から彼に連絡が入ったりしないよう休暇扱いにし、自分は逃げ出す算段を整えていたに違いない。

「でも、桐谷って」
 何処かで聞いた名前だと、薪は思った。
「神戸支局で名前を知る前に、どこかで……」
 薪の頭の中にはスパコンに足が生えて逃げ出しそうな超高性能のコンピュータが搭載されており、無尽蔵に人物の氏名と顔を記憶できる。その検索機能が自動的に動いて、しかし名前だけでは完璧なヒットにはならない。薪は、この場での追及を諦めた。

「そうか、それでおまえを置いて行ったんだな」
 人質がもう一人居るなら、交渉には充分だ。体の大きな青木を苦労して引きずっていくことはない。こうなると、青木が殺されなかったのは幸運としか言いようがなかった。おそらく、頭部を殴られて派手に血が噴き出たのも幸いしたのだ。放っておいても死ぬと思ったのだろう。

「きっと彼らに捕まったんです。助けなきゃ」
「青木、もうすぐ応援が来る。SITも手配済みだ。だから桐谷氏のことは」
 助けが来ると聞いて、青木は安心した。それなら、自分が助けに行くよりも確実かもしれない。SITは籠城事件の専門家だ。専門職であるネゴシエイターもいるし、平和的な解決が望めるだろう。
「じゃあ安心ですね。……薪さん?」
 青木を安堵させておきながら、何故だか薪は憂慮に沈んだ。いや、と口の中で否定の言葉を呟き、彼にしては長いこと考え込んだ。
 やっと顔を上げた薪の瞳に静かな決意が宿っているのを見て、青木は彼がまた、自分の知らない何かを抱え込んでいることに気付いた。

「桐谷氏は僕が救出する。おまえは外で、応援を待て」
「薪さんが行くならオレも行きます」
 迷いない青木の答えは、薪の言葉を予想していたかのようだった。何故、と青木は訊かなかった。この状況で詳しい説明などしてくれるはずがない、それが青木の命を脅かすことに繋がるなら尚のこと。青木は薪と言う人間を知っていた。
「怪我人は足手まといだ」
 ジャギッと不吉な音をさせて撃鉄を起こす薪の横顔はひどく冷たくて、彼の表情をそんな風にさせるのはこの差し迫った状況ばかりが原因ではないはずだと、それは青木にはハッキリと分かるのに、具体的なことは何一つ解らない。多くの問題を独りで抱え込んでしまう薪の癖は、青木が彼の恋人になっても変わらなかった。

「桐谷さんを助けることは賛成ですけど、薪さんと別行動になるのは却下です。第一薪さん、桐谷さんの顔知らないでしょ」
「人質とテロリストの区別くらい付くさ」
「駄目です。オレはあなたのボディガードです」
「青木。これは命令だ」
「聞けません」
 青木が頑固に言い張ると、薪は困ったように眉尻を下げた。
「青木、僕は」
「薪さんて頭いいのに、どうして時々、そんなに的外れなんですか?」
 薪の言葉を、青木はわざと遮った。彼が何を言うのか、確信があった。
「オレだって同じです。あなたを死なせたくない」

 薪は観念したように眼を閉じて小さくため息を吐き、それは青木の推察を裏付ける。薪が青木を死なせたくないと思うなら、それは青木も同じこと。昔の薪なら我を通したかもしれないが、今は違う。
 だって、彼は言ってくれたから。青木と一緒に生きてくれると、死ぬまで一緒に生きてくれると、誓ってくれたから。

「大丈夫ですよ。薪さんと一緒なら、何とかなります」



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Sさまへ

こんにちは!
コメントありがとうございます。

Sさんの疑惑の人。
ふふふふー、勘繰られるの、嬉しいです。 どうぞ疑ってください。(^^

Sさまのブログ、いつも拝見させてもらってます。
お仕事の事とか、変化があったみたいですね。 ここでは何なので、またそちらにコメ入れに行きますね!
ありがとうございました。
 

Kさまへ

Kさま。

コメントありがとうございますっ!
何度も訪れてくださったとのこと、とても嬉しく思いました。


いえいえ、ブログと仕事の両立なんて出来てませんよ~。 仕事が混んでくると、ブログは放置しちゃいます。 根性なしなので。(^^;
かと言って、いつでも仕事に集中できているかと言うと、そうでもなくて。
第九編がハッピーエンドで終了したので、今はけっこう落ち着いてますが、前はヒドイもんでしたよ~。 特に最終回直後なんて、青雪復縁フラグにガッカリして何も手に付かず。 立派な秘密廃人でございました☆
その後のエピローグで、まさかの青薪成就に、地獄から天国に一気に駆け上がり。 今は安心して、のんびりやってます♪


しづが楽しんで創作をしている、とKさまに言われて、
あははー、バレてるー。 
これ、拍手のお礼SSですからね、本来なら皆さんに楽しんでもらえる話にすべきなんですけどね。 それなのに銃撃戦てなに? って感じですよね。
すみません、わたしが一番楽しんでます。(キッパリ) 
何のかんの言って、創作者の立場が一番楽しいんですよね。 自分の好きなこと書けるんだもん。←こんなスタンスでやってるからあんな無茶苦茶な話が。


これからも青薪小説を、とのお言葉、ありがとうございました。
はいー、わたしの中はまだまだ青薪さんでいっぱいなので、てかそれしか入ってないので、これからもメインはこの二人です。 よろしくお願いします。(^^

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
メロディ6月号、読みました。
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