たとえ君が消えても(23)

 ハロウィンが近いので、カボチャのお化け時計のブログパーツを貼ってみました。
 本当はね、テンプレ替えればいいんですけど、カウンターとかアクセス解析の設定とかメンドクサ、いえその。

 日曜日にしては更新の時間が早いのは、今日は町内のゴミ拾いだからなんですー。 せっかくの日曜日なのに、メンドクサ、いえその。 

 お話の方は、メインイベントの銃撃戦に突入でございます。(>▽<)←楽しそう。
 いつもながら、内容と前振りがミスマッチですみませんー。
 行ってきますー。




たとえ君が消えても(23)






「大丈夫ですよ。薪さんと一緒なら、何とかなります」

 青木の眼に、迷いはなかった。薪にはどうしても捨て切れない恐れや不安、でも青木にはその片鱗すら見えなかった。
 青木は勇猛果敢な男ではないし怖いもの知らずでもない。ただ薪と一緒に居られるなら、其処がどんな環境でも何をさせられても、頓着しないだけだ。彼と共にあること、それが自分の人生に於ける最重要課題だと迷いなく思える。そういう人間を世間一般的にはストーカーと言うのだが、その一般論は青木の自意識の外にある。問題外だ。

「大凡ですけど、武器庫の方角は分かるので、そちらへ向かいましょう。みんな、その近くにいると思うし、逃げ出したと分かれば人質は眼の届く所に置くでしょうから」
 薪に貸してもらったハンカチを後頭部に固定するため、青木はネクタイを外して頭に巻いた。ネクタイで鉢巻なんて、ガード下の酔っ払いオヤジみたいだと本人は思い、それを口にしたら薪に白い目で見られた。
「まったく。緊迫感の無い男だな」
「それ、テツさんにも言われました」
「テツ? 真鍋哲夫か?」
「フルネームは知りませんけど、メンバーがテツって呼んでて」
「どうでもいいけど、テロリストをさん付けで呼ぶのは、――っ!」

 突然、ガラスの割れる耳障りな音が響いて、二人は反射的に音のした方向に眼を向けた。それは青木が目指していた方向と一致していた。外気が流れ込んできて、割れたのは窓ガラスらしいと分かる。目的地の東に進路を取り、彼らは慎重に歩を進めた。10mも進まないうち、今度はもっと手前のガラスが割れた。反対側の壁に銃弾がのめり込んでいる。銃声が聞こえなかったから、サイレンサー付の銃で撃ったものと思われた。

「な……投降の呼びかけも無しに、こんな」
 信じられない暴挙だった。とても警察のする事とは思えない。不意打ちなんて、これではテロリストと一緒ではないか。
 銃声は聞こえずとも、狙撃によってガラスが割れたことはテロリストたちの知るところとなった。程なく倉庫内から外に向けて発砲する音が聞こえ、そうなれば相手も遠慮なく撃ってくる。次々とガラス窓が割れ落ちる音が奥の方から聞こえ、テロ集団の位置を二人に報せた。桐谷も其処にいるとしたら、彼の命は風前の灯だ。

「南雲さん、僕は建物の中にいます。青木と一緒です。僕たちは自力で逃げられますが、一般人が一人人質になってます。発砲許可を取り消してください」
 薪は、迷わず南雲に電話をした。現場指揮者に話を付けなければ、この状況は改善されないとの判断だ。
「え、テロリストの仲間を逮捕? 西署付近で?」
 多分、サトシたちのことだと青木は思った。彼は陽動作戦の為に外出していたが、神戸西署に動きがあると、テツに連絡をしてきた。署の付近で探りを入れていて、捕えられたに違いない。
「じゃあこちらの指揮は誰が……神戸西署の大石署長が自ら? またどうして。……そうですか、ならば署長に連絡を、うわ!」
 ガラスの砕ける音が聞こえた瞬間、薪は乱暴に床に押し倒されて、したたかに背中を打った。痛みに顔をしかめながら眼を開けると、青木の精悍な横顔が見えた。青木の視線の先を追って、薪は壁に食い込んだ弾丸を発見する。さっきまで、薪の頭があった位置だ。

「ずい分正確ですね。このガラスの汚れ方では、オレたちの姿は見えないはずなのに。赤外線センサーを使ってるのかな」
 サイレンサーに赤外線センサーなんて、殺し屋のようだ。公安にはそういった闇の仕事をする者もいるらしいが、此処に来ているのは神戸西区警察署のSITのはずだ。こんなやり方は通常ではあり得ない。
「ちょっと南雲さん、早くしてくださいよ。このままじゃ青木も僕も蜂の巣に、え、現場と連絡が取れない? 無線機の故障ですって? 勘弁してくださいよ、この非常時に焦らしプレイは無しですよ」
 青木のことを呑気だ何だと言うが、薪も負けてない。大体、青木の豪胆さは薪に付き合わされているうちに自然に身に付いてしまったのだ。年がら年中、生死に係わるトラブルに巻き込まれている薪を守ろうと思ったら、青木の生まれ持った大人しい性格ではとても対応しきれない。

「わかりました、こちらはこちらで何とかします。その代わり、調べて欲しいことが」
 薪はかなり一方的に2,3の頼みごとをし、電話を切ると、自分たちの置かれた状況について、事情の分からない青木に大まかな説明をしてくれた。
 今回の捜査は公安二課と神戸西区警察署の合同捜査となっているが、3年前に起きた『赤羽事件』の遺恨から、西区警察署は真鍋哲夫率いるグリーンアースに過剰な攻撃態勢を取っている。強引極まるこのやり方は、そのせいだと思われる。通信機も意図的に切っている可能性が高い。彼らは、建物内で動いている者はすべてテロリストだと思っている。薪たちのこともテロリストの仲間だと見做して攻撃してきたのだろう。

 簡潔に言えばこういうことだ。
 自分たちは狙撃班の銃弾をかいくぐって、桐谷の救出に向かわなければならない。

 体勢を低くして窓からの狙撃に備え、薪と青木はゆっくりと進んだ。途中、犯人の死体が一つ、転がっているのを見つけた。名前は知らないが、青木のコーヒーを美味そうに飲んでいた男だ。右手に拳銃を握ったまま、額を撃ち抜かれて死んでいた。
「頭部を一発なんて。まるで殺すのが目的みたいだ」
 青木は低く呟き、辛そうに唇を噛んだ。例えそれが大勢の人を殺めてきた犯罪者であろうとも、人が死ぬのは見たくない。さっきまで生きて動いていた、それを知る身にあっては尚更、横たわる彼を見るのは辛かった。肩を落とす青木の背に、薪の声が掛かる。

「青木」
 よそ見をしている余裕はないぞ、という叱責を覚悟したが、薪の言葉は青木の予想とはまるで違っていた。
「神戸西署は、何かを隠している」
 敵を警戒してか、薪の声は、傍にいる青木にだけ聞こえるような小さな声だった。しかしそこには、揺るぎない信念があった。

「おまえの言う通り、これは殺害を目的とした撃ち方だ。表のSITとは別に、狙撃班がいるんだ。この指示を出したのが大石署長となると、あの事件はやはり」
「どういうことですか?」
 いつものことだが、薪には事件の裏に隠された真実が見えているらしかった。それを青木に説明してくれないのもいつものことだ。
「証拠が揃えば大石の逮捕は可能だろうが、問題はこの場をどう切り抜けるかだな。頼みの綱は南雲か。間に合えばいいが」
「あの、薪さん。オレ、さっぱり解らないんですど」
「真鍋哲夫はその事実を知っていた、と言うよりは同志だったんだろうな。だから彼の誠意を信じて、今まで待った。仲間を13人も失って、組織立った活動ができなかったと言うこともあるだろうが。でも1週間前、刑部に対して死刑判決が下りて、彼が裏切り者だったことが証明された。それでこの事件を」
 青木の質問を完全に無視して、薪の中で話が進んでいく。青木に語りかけていると言うよりは、言葉にすることで自分の考えを確認している、という感じだ。
「すみません、薪さん。オレにも分かるように説明してください」
 青木が薪の肩に手を掛けると、薪は今まで青木の存在を忘れていたかのようにびくりと身を震わせた。それから簡潔に、実に淡々と、事件のあらましを教えてくれた。

「3年前の赤羽事件は、神戸西区署長の大石が刑部と組んで起こした事件だ。その事実を真鍋哲夫は知っている。だから大石は、彼とその仲間たちを皆殺しにしようとして狙撃班を動かしている」



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま。

> 原作で青木の「明日に向かって撃て」発言

確かに、青薪さんの恋愛成就を願う立場からすると、肩透かしだったかもしれませんね。 イロケなかったですからね。
わたしはあの時は大満足でした。 雪子さんが自分の負けを認めて退いたと思ったから。 どっこい、最終回でひっくり返されましたが(^^;)

あのままの関係でもいいと、あの時は思っていたんですよね。
正直な話、少女漫画ではこれが限界だろうとも思ってたんです。 秘密ってBLじゃないから、恋愛成就の形を取ることはないだろうと。 
なので、「二人の絆が他人の入る余地がないくらい強いものである」「二人のどちらにも女性の影がない」の2点だけハッキリしていれば、二人の関係は恋人未満で終わって良かったんです。
それも見事に引っくり返されました。(笑)


あの時期、青木さんが薪さんに頼り過ぎていたというのは~、
わたしはそうは思いませんでした。 
逆に、自分が折れたら青木さんが潰れてしまうと考えれば、薪さんは何が何でも生きてくれると思いました。
人間、守るものがあるから強くなれるんです。 依存上等です。 
ま、一生それでは困りますけど。 あの時は青木さんも、大変なときだったから。 あくまでも一時的な依存状態であったと見ています。

ちょっと困惑したのは、蜘蛛の糸の表現で、
青木さんは薪さんを神格化しちゃったのかな? という疑念が生まれてしまったことです。
依存ならまだしも、神格化してしまうと、それを裏切る態度を薪さんが取った時、思いが反転しちゃうんですよね。(^^;) 青木さんが薪さんのほっぺを叩いてしまったシーンでは、その不安に押し潰されそうになりました。
でも、次号では青木さん、以前と変わらずに薪さんを信じて、その身を案じていたし。 わたしの考え過ぎでしたね。


> ここでの青木は薪さんとどこまでも一緒だという対等な気持ちが感じられていいですね(^^)

原作とは状況が違いますからね~。
でも、そうですね。
コピーキャットの事件を調べていた時の青木さんは、薪さんと一緒に戦っている気持ちでいたんでしょうね。 それを裏切られて、よっぽどショックだったんでしょうね。


> あの時、既に雪子よりも薪さんを選んでいたのかな、と思えてきます(´▽`)

うーん、どうかな。
まだあの時は選んでなかったと、わたしは思います。 意識が付いて行ってなかったんじゃないかな。 だから「最後まで一緒に戦ってくれる人」発言になったのでは?

彼は潜在意識では、いつも薪さんを選んでるんですよね。 だいたい、恋人と一緒に居るのに上司のことばっかり考えてるの、ヘンですよ。
でも、彼には男性を恋愛対象として意識すると言う機能が備わっていないので、現実的には雪子さんに恋をしたわけです。 それを欺瞞だとは思いません。 気付かなかっただけだと思います。 実際、そんな人は世の中には沢山いると思うし。

彼がハッキリと薪さんを選んだのは、やっぱりエピローグではないでしょうか?
「一緒に戦ってくれる人」というのは、あくまでも「~してくれる人」でしょう? その条件が無かったら、一緒にはいられない訳ですよね。
でも、「家族」は違う。
何をしてもしなくても、一緒に居るのが当たり前の人。

最終的に青木さんがその結論に至ってくれて、うれしい限りです。(^^


Rさまへ

Rさま。

>色々見えて来た感じですね。

やっとですー。 
薪さんと公安のケンカ書くの楽しくて、ついつい引っ張っちゃいました。(笑)


>本当に色んなストーリィが書けて

えー、凄くなんかないですよ。 妄想が止まらないだけです。
てか、Rさんも書いてるじゃないですか~。
わたし、ああいう風に綺麗な余韻を残して終わるお話って自分では書けないので、(最後は必ずギャグかグダグダ) 尊敬します。 それと、いつも無駄に長くなってしまうので、あれだけの長さに物語の中核を埋め込むことができるRさまの才覚を、羨ましく思います。

わたしも一本話を書き上げると、何日かは間が空くようになりました。
昔はねえ、本当に止み間なく書いてたんですけどねえ。 原作で薪さんが幸せになったので、焦らなくてもよくなったと言うか。
今はのんびりやってます。(^^

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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