たとえ君が消えても(26)

 法十版「明日に向かって撃て」、楽しかったとのコメント、ありがとうございました。(^^

 そ、それでねっ、
 この話、実はあと6回も残ってて。 
 メインの銃撃戦部分は終わったんですけど、お話のクライマックスはこの先です。ええあの、事件が全部解決したのに『クライマックス』と予告されたメロディ6月号のように。(笑)
 紛らわしいこと書いてすみませんでしたー。

 メロディ発売前には終わらせますので、それまでよろしくお付き合いください。



 ちょっと私信です。

 拍手コメントくださった方、ありがとうございました。(〃▽〃)
 そうなんですよ、拍手コメントは管理人じゃないと訂正できないんです。 ので、誠に勝手ながらこちらで修正させていただきました。 でも、お名前の間違いは分からなかったので、すみません、そのままで。 
 勿論、ご希望でしたら元通りにできますので。 遠慮なく、おっしゃってくださいね。(^^

 





たとえ君が消えても(26)






「薪警視長、無事ですか」
 小野田と入れ替わりに駆け寄ってきた南雲に、薪は軽く頭を下げた。

「そこに、真鍋がいるはずです。無事だといいのですが」
 薪が指した窓を顎で示し、南雲は部下たちをユニットハウスに向かわせた。ほどなく部下の一人が窓から首を出し、「真鍋哲夫の死亡を確認しました」と無情に告げた。
「そうですか。残念です」
「まあ、生きていてもあいつが検察側の証人に立つとは思えませんがね」
 それは薪の落胆を慰めるための、不器用な南雲らしい言葉だったのだが、薪は険しく眉を吊り上げて、
「証言が欲しくて彼の無事を願ったわけではありません。犯罪者は生きて捕え、罪を償わせる。それが日本警察です」
「そんなことは解ってますよ」
 傲然と言い放った薪に、南雲は言い返してきた。その口調に、青木は自分の知らないところで起きた諍いを慮る。何度も繰り返されたのだろう、二人ともうんざりした様子だった。

「しかし、テロの現場と言うものはねえ」
「南雲課長! もう一人は生きています!」
 二人は弾かれたように振り返り、部下が顔を出している窓辺に急いだ。青木も後を追う。先程は見えなかったが、真鍋は仲間の誰かと一緒だったのだろう。あの銃弾の嵐の中で生き残った幸運な男を、果たして青木は知っていた。
「桐谷さん!」
 割れ落ちたガラスの中に、血塗れになった桐谷が倒れていた。その先に、胸を撃たれ、壁にもたれる形で息絶えている真鍋の無残な姿。床には真鍋のものであろう銃が2丁、転がっていた。

 駆けつけた救急隊員たちが桐谷を担架に乗せ、訓練された動きで救急車に運ぶ。桐谷の青白い顔と出血量に、青木は彼が心配で堪らなくなった。
「薪さん。オレ、桐谷さんに付き添ってきていいですか?」
「付添いじゃなくて、おまえはさっさと頭診てもらってこい。頭部損傷は後が怖いんだ」
 薪の命に従い、青木は桐谷と一緒に救急車に乗り込んだ。サイレンを鳴らして遠ざかって行く車を見送って、南雲がぼそりと呟く。
「もう一人の人質か。無事で良かった」
 ホッと胸を撫で下ろす様子の南雲に、薪は嫌味っぽく、
「そうですね。さぞ良い証言が取れるでしょう」
 途端に南雲は苦虫を潰したような顔になって、「あんたねえ」と声を尖らせる。まったく、薪は人に恨みを買う名人だ。

「いい加減にしなさいよ。所轄の前でみっともない」
 官房室首席参事官の鶴の一声で、二人の男は口を閉ざした。しかし、その目は決して自分の非を認めず。互いに、後で決着を着けてやるとでも言いたげな目つきで相手を睨んでいた。
「薪くん。南雲君に、ちゃんとお礼言いなさい。彼がSITを抑えてくれたんだから」
 東京から飛んできたヘリには、中園と、どうしても行くと言い張る小野田、そのSPたちが同乗した。兵庫県警のヘリポートから車で20分、彼らが現場に到着した時には、銃撃戦の真っ最中だった。泡を食って止めに入ろうとしたが、SPに全力で阻止された。
 そこに、南雲が現れた。南雲はその体躯と怒声でSITの隊列に食い込んでいき、強引に発砲を止めさせた。当然異議を申し立ててきた大石と南雲が言い争いになったところに、中園が逮捕状を提示したのだ。
 南雲は薪に連絡を受けて、直ぐに現場に向かったのだった。南雲の参入があと5分遅れたら、薪は死んでいたかもしれない。彼は恩人だと、中園にそう窘められればさすがの薪も殊勝にならざるを得なかった。
「ありがとうございました」と薪が頭を下げると、南雲は、公安二課の課長職に相応しい態度でそれに応え、薪に依頼された調査内容について報告した。

「大石の経済状況は、部下に調べさせました。警視長の見立て通り、大石は株で失敗して、多額の借金がありました」
 それを埋めるために署の金を流用、後に会計監査が入ることになって追い詰められた大石は、昔から付き合いのあった刑部に強盗計画を持ちかけた。そこから先は、ほぼ薪の推理通りで、刑部は大石に裏切られ、奪った金品もすべて大石の手に渡ってしまった。
「証拠は第九で見つかった。2年前、品川で起きた通り魔殺人の被害者だったよ」
 当時、神戸西区警察署の管理官を務めていた警察官が新宿南署に転勤になり、そこで不幸にも連続殺人の被害者になった。薪が考えた通り、彼の脳には、刑部と大石の密会の様子が映し出されていた。
 その脳を見た捜査官を不注意だと責めることはできない。刑部長陽が世間を騒がせてから1年以上経っていたし、殺人事件には直接関係のない事柄だ。気付かなくても無理はない。が、第九で脳がMRIに掛けられた以上、薪はその事実を知っている筈だと真鍋は考えた。その上で意図的に口を噤んでいるものと判断し、薪に脅しを掛けてきたのだ。

 県警本部長と話をしている小野田を横目に、中園は薪の右腕を取り、自分たちが乗ってきた公用車の後部座席に乗せた。病院まで送ってくれるつもりなのだろう。中園は自分も薪の隣に乗り込み、彼の細い腕の血の滲んだ箇所に自分のハンカチを巻き付けながら、
「自業自得だよ。僕の言うことを聞かないから」
 ぎゅ、と中園が力を入れると、薪は痛そうに顔をしかめ、でも素直に謝罪した。
「命令に背いて、すみませんでした」

「君の居場所はGPSで追ってたし、君が現場に向かったことは救難バッジから流れてきてたから。一刻も早く此処に来たかったんだけど、総監がごねて、逮捕状が請求できなくてねえ。で、どうしたと思う?」
 逮捕状を下ろすのは裁判官の仕事で、まずはその請求を裁判所に出さなければならない。請求は警部以上の役職にあれば可能だが、転んでも只では起きない中園は、証拠を見つけた第九の有能さをこの機会にアピールするべく、長官に話を通した。ところが、場に居合わせた警視総監からクレームが付いてしまった。
 逮捕すれば警察の醜聞になる、そんな重大なことをMRI画像だけで決めていいのか。もしも間違いがあったらどう責任を取る気だ。第一、大石と刑部に交流があったと言うだけでは、事件を画策した証拠にはならない。逮捕状を請求するのだったら、まずは物証を持ってこい。
 警視総監の提言は尤もで、時間があれば中園もそうしたかった。が、今は時間がないのだ。
 所轄の不始末は警視総監である自分に懸かってくるのだ、その私の許可も無くそんなことは許さない、と強固に詰め寄られて、長官は逃げ腰になった。結果、大石署長の逮捕状は警視総監と協議の上請求すること、という指示が官房室に下された。
 仕方なく、中園は手ぶらで現場へ行こうとしたのだが、現実にはこうして逮捕状は中園の手にある。つまりそれは。

「長官の命令を無視したんですか? それはちょっと拙いんじゃ」
「君じゃあるまいし。小野田は長官相手に、そんな無謀な真似はしないよ」
 では、警視総監を説得したのだろうか。いったい、何と引き換えに?
「取引なんかしてないよ。直球勝負さ。小野田が総監の首根っこ締め上げたんだよ」
「下らない敵愾心でわたしの大事な跡継ぎを殺す気か」と総監に詰め寄ったらしい。あの小野田が実力行使に出るなど、薪には想像も付かなかった。
 小野田はまた、こうも言った。
 神戸西署の失態の責任は、総監一人で負うものではない。我々上層部全員が世間に詫びるべき問題だ。国民の信用を取り戻そうとするとき、警察庁と警視庁は協力し合わねばならない。それができなければ警察機構は朽ち果てるばかりだ、と。

「人間、年を取ると短気になっていけないね」と中園は肩を竦め、
「あんなに怒った小野田を見たのは二度目だな」
「前にもあったんですか?」
「うん。君が美和ちゃんとの婚約を解消した時。めちゃくちゃ怒ってた」
「……すみません……」
 二度とも自分が絡んでいたことを知って、薪は消え入りたい気持ちになる。小野田のことは大好きだし、とても尊敬しているのに、迷惑を掛けてばかりだ。

 俯いてしまった薪をニヤニヤと眺め、中園は愉快そうに、
「あの古だぬきが目を白黒させてたのも、これで二度目だな」
「一度目は?」
 第九の室長として、意見を戦わせることの多い総監のこぼれ話に興味を示した薪を、中園は意味ありげな目つきで見た。それからひょいと肩を竦め、洒脱に嘯いた。
「さあ、いつだったかな。忘れちゃった」




*****


 警視総監が目を白黒させてた1回目の原因は、やっぱり薪さんだったりします。
『GIANT KILLING』というお話に書いてあります。 雑文カテゴリにありますので、よろしかったらどうぞ。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま。

別に構いませんよ~、腕だろうと脚だろうと、そこはストーリーに関係ないので。 楽しんでいただければ何でもいいんです。(^^


> 原作の薪さんにも小野田さんや中園さんがいればよかったのにね。

本当にねえ。
庇ってくれる人が誰もいなかったんですよね。 
でも、薪さんのあの絶対的な孤独感は、読者が彼から眼を離せなくる要因の一つでもあるんですよね。 やっぱり先生はスゴイな。

 
> 南雲さんと薪さんのやり合いが楽しいです(^▽^)

わたしもです。
薪さんの皮肉と嫌味、久しく書いてなかったので、めっちゃ楽しかったです。(^^

新キャラ、出るでしょうね。 楽しみですね。
南雲みたいなのが出てきたら、薪さんとケンカになっちゃいますけど……あ、でも、容姿がビースト系なので、薪さんの美貌を引き立てることはできますね。
いいかも。(〃▽〃)

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しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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