セルフィッシュ

 この記事はお話ではありません。
 最終回からエピローグまでの地獄の2ヶ月、懸命に薪さんを理解しようとがんばった、その軌跡です。
 男爵に、わたしの気持ちを代弁してもらいました。 こんなやり方でしか気持ちに整理を付けられないわたしって、やっぱりちょっとおかしいのかも~。

 一応、過去記事にして隠しましたが、がっつりネタバレしてますので、
 もし見つけちゃっても、コミックス派の方はご遠慮ください。











  十番目の研究室におけるM氏とA氏の会話






「どうしたんですか?」
「……なんでもない」
「押入れに籠もって膝を抱えてる人に、何もないって言われても」
「本当に大したことじゃないんだ。おまえに話したって分からないだろうし」
「決め付けないでくださいよ。薪さんの悪いクセですよ」
「じゃあ話す。自分の好きな人に自分以外の誰かと結婚して欲しいって、本気で言えるもんなのかな」
「状況によると思いますけど。もう少し、詳しく話してもらえますか?」
「M氏(♂)とA氏(♂)とY嬢(♀)はA氏を巡る三角関係だったんだ」
「いきなりハードな説明ですね。はい、頑張って着いて行きます、先をどうぞ」
「そんなに複雑な話じゃない。色々あって結局、M氏が引いたんだ。A氏はY嬢に恋をして、M氏の想いは最後までA氏には伝わらなかった」
「M氏の完敗ですか」
「その辺は微妙なところなんだよな。A氏はY嬢といても、ずーっとM氏のことばかり考えてるし……彼女を抱きながら、M氏のこと思い出してたりするんだぞ。自覚が無いだけで、本当はM氏と両思いなんじゃないかと」
「Y嬢の気持ちは?」
「A氏が好きだって言って、婚約までしてた」
「じゃあ決まりじゃないですか。M氏の方が邪魔者でしょう」
「それがさ、Y嬢は本当はM氏が好きで、彼に相手にされない腹いせにA氏のプロポーズを受けたって」
「……フクザツな心理ですね。オレにはよく分かんないです」
「まあ、単純バカには無理だろうな。でも、その辺のことはケリが着いたんだ。問題はM氏が身を引く時に、A氏に言った言葉だ。『Y嬢と結婚して自分の子供を持て』って」
「へえ。大したもんですね。寛大な人なんですね」
「だよな。僕には無理だ」
「何言ってるんですか。恋人に結婚を勧めるのは薪さんの十八番じゃないですか。それとも、あれは全部口から出任せだったんですか?」
「いや、あの時は本気だった」
「じゃあ、疑問に思うことないじゃないですか」
「でも辛かった。辛くて冷静になれなくて、だから悉く失敗して」
「めちゃくちゃ墓穴掘ってましたもんね、って、痛ったいっ!! 自分で言ったくせに、どうしてオレに当たるんですか」
「ひとに言われると腹が立つ」
「勝手なんだから……まあ、顔で笑って心で泣いてって経験は誰にでもありますよね。その人も同じなんじゃないですか?」
「それが違うんだ。彼は心で泣くこともしないんだ。心の底からA氏にY嬢と結婚して欲しいと思ってる。彼だってA氏が好きなはずなのに、そんなことが可能なのかな」
「お釈迦様みたいな人ですね」
「うん。ある意味、本物だと思う」
「素晴らしいと思います。まさに真実の愛ですね。人間的にも最高級、徳の高い方だと思います」
「そうだよな。あれが人間的成長ってことだよな。……なんか、自分がすっごく駄目な人間のような気がしてきた……」
「ぷ。今更ですか」
「そんな言い方ないだろ。僕だって頑張ったじゃないか。あと何回か繰り返せば、成功したかも」
「無理ですよ。ご自分が一番よくお分かりでしょう?」
「ど、どうせ僕は未熟で」
「よかった。薪さんがダメ人間で」
「誰がダメ人間だ!!」
「その分、オレの入る余地があるってことです。本当に良かった」
「……ダメな人間の方が、世俗的な幸せに近い場所にいるのかもしれないな」
「真理かもしれませんねえ」
「青木。おまえ、僕と居て幸せか?」
「もちろんです」
「だけど、A氏は別の道を選ぶかもしれないぞ」
「A氏とオレの幸せは違いますから」
「いや、そこが違っちゃうと二次創作として成り立たない気が」
「薪さんとM氏が光の単位で乖離してる時点で成り立ってないと思いますけど」
「それを言っちゃおしまい……まあいいか。僕には手の出しようがないし」
「その人にはその人の幸せがあるんですよ」
「そうかな」
「オレたちにはオレたちの幸せがあるでしょう? オレたちが彼の幸福論に着いていけないように、それは彼には重要ではないのかもしれませんよ」
「僕たちの幸せって?」
「こうして当たり前みたいに、あなたと居られること。何気ない日常の中で、他の人たちと同じように小さな楽しみを共有できること。他愛ない幸福をたくさんたくさん重ねて、穏やかに暮らせること。オレはこれ以上の幸せはこの世にないと思ってます」
「僕もそう思う。でも彼だって、本当は欲しいんだ。自分でも気付いていないけど、『誰よりも欲している』んだ。それをA氏は知って、涙を流してた」
「そうなんですか? だったら心配することないですよ。A氏はきっと、M氏にそれを与えてくれますよ」
「それがなんか、駄々っ子みたいになっちゃって。M氏がアメリカに旅立つっていうのに、口も利けないんだ」
「あちゃー。若さが出ちゃいましたねー」
「そういうとこは、おまえの方がマシだな。『頑張ってください。身体に気をつけて』くらいは鼻水垂らしながらでも言うよな」
「まあ、オレは彼より大分年上ですから」
「年上だったら泣いちゃ駄目だろ」
「だけど、気が付いたなら。彼はM氏を放っておかないと思います」
「そうかなあ……なに期待しても無駄のような気がするけど……」
「そんなことないですよ。だって、オレは彼から生まれたんでしょう?」
「まあ一応」
「共感性の高さや思いやりの心、真っ直ぐな気性と奥ゆかしさを持ち合わせながら、時に周りを瞠目させるほど大胆な行動に出る。オレのルーツは、そんな人間なんでしょう?」
「……うん」
「もう一度だけ信じてみましょうよ。今まで信じてきたんですから、最後まで信じましょうよ」
「だけど、このままM氏の想いが封印されてしまったら ?」
「その時は、オレが慰めて差し上げますから」
「……分かった。おまえがそこまで言うなら信じて、て、ちょっと待て」
「はい?」
「慰めるって、誰を? M氏をか?」
「え。いけませんか?」
「ダメに決まってるだろ!」
「何故ですか? あっちも薪さんには変わりないでしょう」
「ふざけんなっ、原作の綺羅綺羅しい彼と比べられたら僕なんか」
「そうですね。外見は酷似してますけど、中身は月とスッポン、痛っ!」
「おまえは僕のモノだ! 原作の彼にだって渡さないぞ!」
「とうとうモノ扱いですか。薪さんはM氏の分身だったはずなのに、最終的には似ても似つかない人間になりましたね」
「うるさい、おまえだって」
「オレは最初から別人です。A氏は管理人の苦手な天使くんタイプでしょ。腹の中真っ黒な管理人に書けるわけがない」
「だったらM氏の方で、おまえなんか願い下げだ。彼は原作の天使みたいなA氏が好きなんだ。周りが歯痒さを感じるほどの、彼の純真さを愛してるんだ」
「天使は時に残酷ですよね。純真だからこそ気付かないこと、多いんでしょうね」
「そうなんだ。だからM氏が可哀想で」
「でもまあ、そういうA氏だから、M氏は彼を好きになったんでしょう?」
「うん」
「じゃあ仕方ないですね。結局は、惚れたほうが負けですよ」
「そうなのかな」
「そうですよ。だからオレは、あなたに勝てないんですよ」
「惚れた腫れたがなくても、おまえが僕に勝てることなんか何一つないだろ」
「…………」




 ***** 最終回を読んだ時点でここまで書いた。
       以下、エピローグを読んだ後に書いた。 *****





「まったく予想しない展開になりましたね」
「はは、原作の彼も大したことないな。やってることは僕と同じじゃないか」
「それ、ファンに聞かれたら大変なことになりますよ」
「だって同じだろ。結局、思い切れてないじゃないか」
「そうですね。でも、彼は薪さんにみたいに人騒がせじゃありませんから」
「ぼ、僕だって好きで騒がせてるわけじゃ」
「読者の方に、『周囲に此処まで迷惑かけるならこの二人は付き合うべきじゃない』って言われたの、忘れましたか? そんなこと言われる青薪って、オレたちくらいのもんですよ」
「うっ……正論過ぎて言い返せない……」
「やっぱり、A氏は気付いた。オレの言った通りになったでしょ?」
「うん。さすがだな。A氏の分身だけある」
「M氏の方は何なんですかね。せっかくお釈迦様の境地に至ったのに。人間に戻っちゃいましたね」
「いいんだ、あれで。彼はいま、絶対に幸せだ」
「プロポーズの手紙が来ましたものね」
「読まなくても、だ」
「? どうしてですか?」
「彼は自分の中に、大切なものが今でも息づいていることを再確認したんだ。『守りたいものがあるだけで人は幸せだ』と彼は言った。A氏とNYで再会する前のM氏には、それはなかった。彼の中は空っぽだった、いや、断ち切ったと思い込んでいたんだ。
 A氏にY嬢と結婚しろと言ったM氏に、『秘密』はなかった。彼にとって、『守りたいもの』=『秘密』なんだ。
 だから、秘密がある彼は幸せなんだ」
「え。でもそれってまだ、M氏の想いが報われたことにならないんじゃ」
「そこは重要じゃないんだ。人間が幸福を感じるために必要なのは、限りなくセルフィッシュなマインドコントロールなんだ。彼はあれで最高に幸せなんだ」
「……オレにはよく分かりません」
「単純バカには無理だ。てか、おまえは分からなくていい」
「そんな。分かるように説明してくださいよ」
「必要ないだろ? おまえのことは、僕が幸せにしてやるんだから」
「! はい、ぜひお願いします! 手っ取り早い所で脱いでくださ(どかばきぐしゃ)……イタタタ、オレを幸せにしてくれるんじゃなかったんですか?」
「前言撤回だ。ケダモノに人間の幸福を理解させるのは無理」
「…………」




 以上です。
 見つけちゃった方、ヘンなもん読ませてゴメンナサイでした。








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プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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