きみのふるさと(15)

 最終章ですー。
 読んでいただいてありがとうございました。(^^





きみのふるさと(15)





 全員で軽く昼食を摂った後、青木は薪と一緒に仏間の片付けをした。
 灯籠は分解し、樟脳を入れてビニル袋に密閉、箱にしまう。青木はいつも、片付ける時には上手く箱に入らなくなってしまうのだが、薪はどのパーツがどの位置にどの順番で入っていたのかを記憶しているらしく、部品の入れ直しを一度もしなかった。

 御膳の洗浄と部屋の掃除は三人の女性に託して、笹立てを解体する。軍手をはめた両手で笹を引き抜こうとする薪の、頼りない足腰が可愛らしくて、ついつい緩む口元を意識して引き締める。青木の体重で締め固めたのだ、薪の力では抜けまい。
「これは建設機械が必要だな」
 痺れた手をひらひらと振りながら口にした彼の冗談に笑いながら、青木は太い腕と大きな手で持って、青笹を引き抜いた。片手ですぽすぽと笹を抜いて行く青木を見て、薪は眼を瞠り、ちっ、と舌打ちする。プライドに障ったらしい。
「薪さんのおかげで大分緩みました。ちょっと力を入れただけで、ほら」
 慌てて彼のご機嫌を取ろうとするが、白々しいお世辞は言わない方がいい。火に油の結果になって、薪は本格的に拗ねてしまった。つまらなそうな顔でもくもくと地面の穴を埋め、足で踏み固める。その動作の乱暴なこと。あの地面にはきっと、青木の顔が描かれているに違いない。

 そんな些細なトラブルはあったものの、片付けはスムーズに進み、出発予定の半時間前にはすっかり綺麗になった。青木の、いや、薪と青木二人の母親が淹れてくれた温かい緑茶で喉を潤せば、ぴったり予定の時刻だ。
 出掛ける間際になって薪が、「まだアルバムを見せてもらってない」と駄々を捏ねだした。次の機会に、と青木が宥めると、「嫌だ、いま見たい」と薪は譲らず。それはまったくいつもの彼らしくて、青木は必死に薪を説得しながらも嬉しくて仕方なかった。薪の我が儘は彼が元気な証拠。借りてきた猫みたいに大人しい彼も可愛いけど、やっぱり青木は普段の彼がいい。

 表の通りまでタクシーを呼んで、青木たちは家を出た。せめて通りまで、と申し出た母と姉と幼馴染の見送りを、寒風に晒されて風邪を引いたら大変だから、と断り、玄関前で別れた。
 別れ際、薪はもう一度だけと言って草太を抱かせてもらい、彼とのスキンシップを楽しんだ。「子供は嫌いだ」と宣言しておきながら、すっかり仲良くなっているのが可笑しく、微笑ましかった。

 来るときに歩いた砂利道を薪と二人辿りながら、青木は冷たい風に身を竦ませる。
「薪さん、寒くないですか」
 声を掛けて隣を見れば、薪はいつの間にか青木の後方に居て、いま自分たちが後にしてきた家を見ていた。
「薪さん?」
「この両側の田んぼと後ろの棚田、田植えの時期は壮観だろうな」
 柔らかい緑に包まれた故郷の光景を、青木は脳裏に思い描いた。懐かしくて誇らしい、それは青木の原風景。叶うことなら、その美しい風景を薪にも見せてやりたい。

「見に来るか。来年」
 両手をポケットに入れたまま青木の方を振り向いて、薪は微笑んだ。
「そうすれば、アルバムも見られるし」
 薪が再びこの地を訪れようと思ってくれたことが嬉しくて、青木は躍り上がりたいような気持ちになる。「はい」と返事をして、本当はもっと感謝と嬉しさを伝えたかったのだけれど、咄嗟のことで何も言えず。でも、薪はにっこり笑ってくれた。

 タクシーが来たらしく、合図のクラクションの音が通りから聞こえた。足を速めて二人は、砂利道を軽快に歩く。
「その時は、一緒に風呂に入ろう」
「えっ! で、でも、さすがに母の前でそれは」
「今度は僕が草太を風呂に入れてやる。楽しいぞ、きっと。男3人で風呂ってのも」
「ええっ! 草太の目の前でですか? 薪さん、なんて大胆な」
「……なんか、別のこと考えてないか?」
 ついつい妄想が先走る己が性癖を恥じるが、用事も終わって薪と二人きり、どうしても青木の気分は浮かれてしまう。そちらの方面の欲求も、家まで待ち切れないくらいだ。

「あ、あのう、薪さん。今日はこのまま博多のホテルにもう一泊なんて」
「却下」
 冷たい眼で見られて、即座に切って捨てられた。青木のシタゴコロなんて、薪にはバレバレだ。
 はは、と笑って駆け出す薪を、青木は二つのスーツケースを抱えて追いかけた。




―了―



(2012.10)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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No title

v-287 きみはともだち、新作、とってもうれしいです。第九編が終わって、「薪さんがしあわせになりますように」と皆さんが思われていた、ベストに近い原作の終了が、うれしいけど、さびしくて、メロディの新シリーズを読み始めましたが、これはこれで、ドキドキ!ですが、二次創作をやめられたり、ストップされている方が多く、おいそがしい、しづさまが、続けていただき、とてもうれしいです(*^-^*) 文も絵もつづれない私で、悲しいですが、こころから応援しています。

お仕事とおうちとお忙しいと思いますが、更新を楽しみにしています。

きみのふるさと、完結も、ありがとうございました。(*^-^*)

junさんへ

junさん。
コメント、ありがとうございます。(^^)


第九編が終わった後、創作のペースがゆっくりになったのは、わたしも同じですー。
薪さんと青木さんと雪子さんの複雑な関係にも一応の決着が着いて、そうしたらなんか、安心してしまって。
エピローグ読後、薪さんは原作の世界で幸せになるわ、と思えるようになったので、妄想三昧の二次創作で薪さんの幸せを書かなくても心の均衡を保てるようになりました。 みなさん、同じような気持ちなのかもしれませんね。

ラストの解釈は人それぞれだと思いますが、「ベストに近い原作の終了」と言うことは、junさんはハッピーエンドだと思われたのですね? 
よかった! わたしもそうですー。 最高のラストだと思いました♪♪♪


新作を楽しみにしていただいて、ありがとうございます。
拙い作品ですが、ていうか、
原作との違いがすごいことになっちゃったんですけど(^^;)、原作とはまた別に、楽しんでいただけたら幸いです。

Sさまへ

Sさま。

Sさまの初コメントは、そうでした、このお話でしたね。 もう半年にもなりますか? いやー、月日経つの早いー。


> 薪さんのどこが好き
> 容姿とか容姿とか容姿とか

あははは!
そっくり同じこと、うちの青木さんが言ってましたよ! 「ミッション」て雑文で、あ、これまだ公開してないな。 そのうち公開しますね。(^^


> 過去にとてもひどいトラウマがあって、それを乗り越えられなくても力強く生きている
> とても強いのに儚い。とても儚いのに強い。今にも壊れそうなのに壊れない。

うー、分かりますっ。
わたしの場合は、萌える、というか、憧れる、というほうが近いですが。 彼らのように強くありたいと思う。


うちの薪さんは中身オヤジだし、原作ほど強くも美しくもないんですけど、強くあろうとする気持ちだけは失わない人と言う設定で書いてます。 原作の薪さんがこんなに強い人だとは最初は思わなかったので、強がりばっかり言うオヤジになっちゃったんですね~。 
強がり言ってないでもっと青木さんや岡部さんに頼っちゃいなよ、と思ってたんです。 そしたら、周りの皆を守るために彼らから距離を置いてた、なんて事実が分かって、実はものすごく強い人だったんだなあって。 薪さん、カッコイイ。(*^^*


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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