きみはともだち 前編(2)

 こんにちは!
 図面描いてたらあっという間に5日も経っちゃいましたー。 放置してすみませんです。



 ところで。
 ちょっとしづの愚痴を聞いてくださいー。
 こないだ、衆目の中で酷い辱めを受けたんです。(;;)

 先週、高校の同窓会がありまして、120人ぐらいで集合写真を撮ったのですけど。
 わたしの席は前から二番目の真ん中辺でした。 懐かしい友人たちに囲まれて座っておりましたら、写真屋さんがつかつかとこちらに近付いてきまして、
「しづさん、周りの人と顔の高さが違ってしまうので、中腰になっていただけますか」
 まさかの空気椅子!!
 しかも周りの連中、わたしを指差して爆笑しやがっ、いやだって、20年ぶりに顔合せたのに一瞬で笑い者ってひどくない!? 人のこと小さい小さいって、気にしてるのにっ、ほんっと、昔っからロクな友だちいないよ!

 ……類は友を呼ぶとか言った?! 言ったよね、今っ! ←言い掛かり。

 5回も撮り直す間、腰を浮かしていたので太腿の筋肉がぷるぷる言いました。
 1年に1回くらいは同窓会やろうねって盛り上がったので、来年も行こうと思います♪ ←懲りない。






きみはともだち 前編(2)







 大学を出て歩くこと20分――その間、薪は鈴木の発した言葉を悉く無視した――到着したのは、商業ビルの7階にあるITオフィスだった。

 薪のバイト先が、受付を通さなければ入れないようなオフィスであることを確認した時点で鈴木は帰りたくなったが、自分から言い出した手前、引くに引けなくなってしまった。内心のため息を押し隠しながら、受付嬢に渡されたゲストカードを首から下げ、IDカードでドアロックを解除する彼に続いて、社内に足を踏み入れる。
 社会で働く者たちの熱気と緊張感が、広いオフィスを満たしていた。カシャカシャとキィを打つ音と、ブーンというファンが回る音。ずらりと並べられた黒い箱型のPC機器、その表面を彩る赤や青のランプが規則的に点滅を繰り返している。
 慣れない場所で緊張した面持ちの鈴木をちらりと見やり、薪は人を見下すような眼をした。まるで、おまえがここに来た本当の理由も何もかも、全部お見通しだ、と言われているような気がした。
 二の足を踏む鈴木とは対照的に、薪は臆することなくオフィスの奥へと足を進めた。鈴木も後を追う。彼とは未だまともな会話も成り立たないが、それでもこの場所では唯一の知り合いだ。取り残されたくはなかった。

 薪は途中、何人かの社員に声を掛けられては、大学で教授とすれ違う時のように黙礼を返していた。その殆どは女子社員で、「今日も可愛いわね」などと言いながら彼に微笑みかけてきた。鈴木にはそれが不思議だった。まともな返事も返ってこない相手に、どうして寛大になれるのか。鈴木が見た限り、その日彼が普通に会話をしたのは彼の直属の上司らしき男とだけであった。

「よお。薪くん、待ってたよ」
「こんにちは、芳賀さん」
「あれ、そっちの子は?」
 薪は芳賀と呼んだその男に、鈴木が自分と同じ大学の生徒であることを説明し、「今日は見学で」と尤もらしい嘘を吐いた。鈴木が見学目的で薪に着いて来たことは事実だから嘘とは言い切れないが、しかしその対象は彼個人であってこの企業ではない。鈴木の胸がちくりと痛んだ。
 芳賀は、部下の嘘にも鈴木の複雑な表情にも気付かないようで、それと言うのも、彼はかなり切羽詰った状況下にあったらしい。

「いやあ、参ったよ。こないだのプログラムだけど、セカンドステージでフリーズしちゃってさ。先に進めないんだ」
「エラーリストは? こんなに? セカンドステージでこの調子じゃ、プログラミングし直した方が早くないですか?」
「相変わらず手厳しいなあ。そう言わず、頼むよ」
「フリーズはおそらく85ブロックのループが原因だと思うので、ブロックを増設してそっちから別ルート組めば解消されると思いますけど。このエラーは量的にちょっと」
 今日中に終わるかな、と薪が眉根を寄せると、芳賀は、まるで神様にでも祈るように両手を顔の前で合わせた。
「頼むよ。追加料金払うからさ」
「では、端末をもう一台貸していただけますか。彼にも手伝ってもらいますから」

 思いもよらない方向に話が進んで、鈴木は焦る。二人の会話もちんぷんかんぷんだし、薪が持っているリストに到っては、アルファベットと数字の羅列にしか見えない。
「ちょっと待って。オレ、こんなのやったことない」
「僕が教える」
 薪の要求を呑んで、芳賀が端末の調達に席を外すと、彼は鈴木を見て意地悪そうに笑い、
「君、有名私立から東大ストレート合格なんだろ。エリート学生の意地、見せてみろよ」
 そう言えば、薪は公立高校の出身だと聞いた。特別優秀でもない、平均的な学生が集まる都立高校だ。それも彼の逸話の一つだった。
 大学の合格率が生徒を集める学校経営の実情から、鈴木が通っていた私立高校では希望大学ごとにクラス分けをされていて、その大学の特質に合った授業を受ける仕組みになっていた。当然、入試には有利になる。しかし薪の出身は普通高校で、鈴木たちのような特別な授業は受けていない。その条件下で日本最高学府の入学試験に於いて満点に近い成績を修めるなど、天才としか言いようがないというわけだ。

 それから5時間、鈴木は薪と机を並べて、彼に言われるがままに作業をした。知識のない鈴木に命じられたのは、エラーリストに掲載された文字列を膨大なプログラムの中から探し出すこと。ブロックと番号をメモして薪に渡すと、彼はそこから網を手繰り寄せるように原因を探り出し、幾つものプログラムを修正する。
 滑るような彼のタイピングはとても見事で、鈴木は思わずそれに見惚れた。先刻手を握った時にも思った、華奢できれいな指だった。男の手とも思えなかったが、その硬質さは女性のものでもなかった。それは、鈴木の知らない手だった。

 最後のエラーを修正し終えたのは、予定時刻を1時間ばかり超過した午後10時過ぎだった。
 鈴木はひどい疲労を感じた。目蓋を閉じると眼の奥に光の点滅が見える。モニターを凝視し過ぎたせいだ。これが365日続くなんて、IT関連の、特にモニターを見続けるような仕事はとても自分には勤まりそうにない。弁護士を選択しておいてよかった。
 手のひらで目蓋を揉み、凝り固まった肩を回す。鈴木と違って慣れているのだろう、彼は眉一つ動かさなかった。最後に修正プログラムのデータを送信すると、「お疲れさま」と抑揚のない声で終わりを告げた。

 薪のバイトは歩合制の仕事らしかった。データと引き換えに芳賀から(経理担当者は帰宅した後だった)給金の入った封筒を受け取った薪は、ビルの出口で中身を出して、紙幣の半分を鈴木に差し出した。
「これ、君の取り分」
「あ、いや、いいよ。オレ、あんまり役に立たなかったし」
 レポートの作成に例えれば、鈴木がしたことは参考文献の頁をめくったくらい。他はみんな薪がやったのだ。お金なんかもらえない。
 鈴木が辞退すると、薪は鈴木の手を取って紙幣を握らせ、
「これから横浜まで帰るんだろ。もう遅いし、タクシー使った方がいい」
「平気平気。飲みに行ったと思えば、まだ宵の口」
 薪が自分の身を案じてくれていることが解って、鈴木は嬉しくなる。意外と優しいところもある、と思いかけた鈴木の心に冷や水を掛けるように、薪の素っ気無い声が響いた。
「じゃあ飲み代にでもすればいい。お疲れさま」

 薪が歩き出したのは、駅とは反対の方向だった。鈴木の家は横浜で、ここから一時間も掛かる。慣れない作業で疲れていたし、明日は1時間目から講義だし、早く帰って休みたかった。なのに、鈴木の足は自然と彼の後を追い掛けた。
「なあ。薪くんは将来、IT関連の職業に就く気なの?」
「……駅はあっちだ」
「教えてくれたら大人しく帰るよ。ITに進むの?」
 鈴木が尋ねると、薪はちっと舌打ちし、ものすごく嫌そうな顔をした。夜になっても灯りには不自由しない街中で、彼の姿も表情もよく見える。ここまであからさまだと、いっそのこと笑いたくなる。彼は天才で、学生でありながらIT会社の社員に頼りにされるほど優秀なのに、精神的にはまるで子供なのだ。これが笑わずにいられようか。

 不愉快な気持ちを態度に表しても全く怯まない鈴木に、とうとう薪は折れた。細い手で前髪をかき上げ、軽くため息を吐くと、
「いいや。僕は警官になる」
「警官?」
 意外な答えだったが、想像してみたらピッタリだと思った。傲慢なところとか、人を見下すところとか。彼なら官僚一年生にしてベテランの風格を纏うのではないかと、鈴木はまたもや皮肉なことを考えた。

「警察官僚かあ。うん、似合ってる。薪くんなら警視総監まで行けるかもね」
「いや、僕がなりたいのは普通の警官だ。交番にいる警官」
「ええ?」
 疑問符の後に笑い出そうとして、鈴木は唇を結ぶ。彼は真剣な顔をしており、冗談を言った風ではなかった。
 では、東大卒業後は警察学校に? そんな話、聞いたことがない。
「どうして? せっかく東大に入ったのに」
「君に説明する義務が?」
 どうやらそこまでだった。これ以上は何も喋らない、と、彼の冷たい美貌が語っていた。

「向いてないと思うよ、君には」



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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