きみはともだち 前編(11)

 終章です。
 読んでくださってありがとうございました。



きみはともだち 前編(11)





 それから二人は、互いに一番多くの時間を共有する友人になった。季節が完全な夏になる頃には、薪の部屋には鈴木専用のクッションが置かれていた。
 薪の家は古い学生向けのアパートで、エアコンは年代物だし空気清浄機は付いて無いしで快適とは言い難かったが、鈴木は此処で過ごす時間が一番のお気に入りだった。

「そうだ、鈴木。夕飯ご馳走様でしたってお母さんにお礼言っといて。あのハンバーグ、すごく美味しかった。鈴木のお母さんて本当に料理上手だな。羨ましいよ」
 鈴木の横に座って、男性向けのファッション誌を一緒に眺めながら薪は言った。「あ、このバングル欲しい」と細い指が写真を指差す。
 鈴木の影響か、薪は身なりに気を使うようになった。髪も分け目を付けて根元をふんわりさせて、首にはチョーカー。決して高価なものではないけれど、十分に彼の首の美しさを引き立てている。ワンサイズ大きいロゴ入りのTシャツと膝の抜けたジーンズは、彼の美貌にフランクな親しみやすさを添えていた。この格好でこの顔つきなら、おばあさんも子供も気軽に道を尋ねることができそうだ。

「それでさ、塔子さんに何かお礼をしたいんだけど。紅茶が好きだって言ってたから、好みの銘柄とか、……鈴木、聞いてる?」
 鈴木が相槌も打たずにいたせいで、薪が不審そうに眉を顰める。下から顔を覗きこまれて、ハッと我に返る。夏でも白い薪の首筋と胸元が、なんだか妙に眩しい。目を細めると、薪が不思議そうに小首を傾げた。

「なに?」
「薪と知り合って間もない頃。『君のような軽薄な男は大嫌いだ』って言われたことを思い出して」
「え。僕、そんなこと言ったっけ」
 この男が忘れるはずがない。たとえ本人が望んでも、その天才的な頭脳は忘れてくれないはずだ。鈴木の予想通り、薪は眉毛を弱気に下げて、バツが悪そうに髪を弄った。
「言った方は忘れても、言われた方は忘れられないなあ」
 重ねて責めると、薪はますます困った顔をして、でも絶対に素直に謝ったりしない。だって本当のことだもん、などと口の中で呟くのが聞こえる。

「けっこうなトラウマになったよなあ、あれ。ホント、あの時傷ついたもんなあ、オレ」
「……わかった。日曜日、塔子さんへのプレゼント選び手伝ってくれたら、その後ナンパに付き合うよ」
「やった! 薪が一緒だと女の子ホイホイ捕まるもんな。楽しみだ」
「ったく、ひとをゴキブリホイホイみたいに」
「中身の接着剤役はオレに任せて。君は勉学に励みなさい」
「言われなくてもそうする。女の子なんて面倒なだけだし」
 鈴木の軟派な計画を蔑むように、薪はつんと横を向いた。閉じた目蓋と長い睫毛。尖らせたくちびるがものすごく可愛い。薪のこういう顔を見るだけで、鈴木のテンションはめきめき上がる。

 よっしゃ、とガッツポーズを決めた自分の笑顔が、薪を深く傷つけていたことを鈴木が知るのは、まだ先の話。



―了―



(2012.11)


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま。

はい、おしまいです。
お付き合い下さってありがとうございました。

原作は、
大学編が終わったら、第九創生編に突入するんじゃないかな? わたしはそっちを期待してるんですけど。
理由は、わたしがオヤジ好きだからです。<おい。


> 出会い編を読むと鈴木さんの方が薪さんにメロメロ

最初に惚れたのは鈴木さんの方かもしれませんね。 無自覚だけど。
でも未来は薪さんの方がメロメロということで。(青木さんは?)

うちは薪さんもノンケだけど、気付いたのは薪さんの方が先だから、やっぱり薪さんの方が熱かったんでしょうね。 鈴木さんは普通に女の子と付き合ってたし、てか、タラシだよね、うちの鈴木さん(^^;


>薪さんが鈴木さんとカップラーメンを食べたりしてたことがとても嬉しい

わかりますー。
普通の友だちが普通にすることを彼らがしているの、見られるのがとっても嬉しい。
だから、原作で薪さんが鈴木さんと楽しく掛け合いしてるの、見られて本当に嬉しかったです。

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Sさまへ

Sさま。
お返事大変遅くなりまして、申し訳ありません~!


うちのすずまきさんのジェネシス、読んでいただいてありがとうございました。(^^

ええ、想像とか夢想ならまだ少女らしくもありますが、わたしのは妄想ですから★ おばさんの黒い妄想ww。



> 私にとって過去は、そう、薪さんが例えどんなに幸せだったとしても、その延長線上に鈴木さんの死がある。もし、出会わなかったら鈴木さんは死ななかったかもしれない。だから過去は思い出せば甘く苦いものというイメージです。

うんうん、薪さん自身はそう思ってしまうでしょうね。 それで自分を責めちゃうの、とても薪さんらしい。


ネット上のお友だちは、
そう、言われてみれば不思議ですよね。 顔も(本当の)名前も知らないのに、こんなに好意を抱けるの。
Sさんの場合は、「同じ痛みを知っている」という共通項があったから、気持ちが通じ合ったんですね。 誰かと気持ちが通じていると感じること、それが現実のSさんに力をくれたんですね。 ステキなことですね。(^^


> 私が薪さんに惹かれるのは、薪さんが過去を受け止めてそこから歩き出そうとしたから。

分かります。
わたしも、薪さんが天才だからとか美形だからとか、そういうのよりも、薪さんの生き様に憧れます。 あれだけの過去を背負いつつ、決して愛を捨てない。 自分はボロボロなのに、誰かを守ろうと必死に立ち上がる。 あんな風に、強く優しい人になりたいと、人間なら誰もが思う。


>薪さんだって鈴木さんに出会わなければよかったなんて、絶対思ってないよね。

はい、ぜったいに。

>たとえ不幸な別れがあったとしても、人はそれを乗り越えて、乗り越えられた時、思い出ってとっても綺麗なものになる

さすがSさん、いいことおっしゃる。  きっとそうなんですね。(;;)
エピローグで薪さんが、「大事なもの」を指すのに鈴木さんと自分が笑い合ってるシーンを思い浮かべるでしょう? あれがSさんのおっしゃる、「乗り越えた時の思い出」ということかしら。 
すごくすごく、貴重な一コマでしたよね……!


> 原作の方は肖像画の謎が気になりますね。

ちょおっとぉ! 4月号、読みましたぁ!? ←いきなり口調が変わってすみません。

いやー、たまげましたねー!! まさかあんな事情とは!(@@)
ショックのあまり、ヘンなもの書いちゃいましたよ。(笑)

Sさんも、メロディお読みになったら感想聞かせてくださいね。(^^


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
メロディ6月号、読みました。
一言感想 「どひゃー……」
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