雨の名は沈黙(3)

 こんにちは!
 昨夜は竣工書類作ってて、今日が工期ですから当たり前ですけど寝てません。
 
 先刻、やっと終わりまして、これから元請さんに届けます。 でも、元請さんが見直しする時間が必要だから、役所に届くのは月曜になっちゃうんだよねえ。 うちから監督員さんに、一言言い添えておかないとなあ。
 
 睡眠不足のハイテンションで遅延謝罪文を書いてみる。


 OH、NO-!
 頑張った、BUT、残念無念!
 やっぱり書類、間に合わなかったYO!
 HEY、YOU、男なら、気にしちゃダメだゼ、細かいコト!
 月曜、朝に届けるYO、そこんとこYOROSHIKU!


 ラップ調で監督員に謝罪メール送ったら、次から指名停止になるんだろうか。





澤村さんいい人計画(3) ←だんだん考えるの面倒になってきちゃry。





 鈴木が薪を連れて通用口から逃げだした頃、澤村は屋敷の一番奥にある自分の部屋にいた。
 押し入れの天袋の奥を探り、目的のものを取り出した彼は、この差し迫った状況下にあってなお、躊躇っていた。

 これは、剛への預かり物だ。彼に渡さなくてはならない。しかしそれは、彼と過ごした10年間を憎しみの色に塗りかえることになる。

 逡巡する澤村の耳に、生意気な若造のクソ生意気な声が甦る。
『それでも人は、前を向いて生きるものです』
 たった18年しか生きていないくせに、人生の何をも知らないくせに、本気で人を憎んだことも愛したこともない、薄っぺらな若造のくせに。親に友人に教師にぬくぬくと愛され育って、それが特段の幸福であることさえ知らない傲慢な子供のくせに。
 それなのに、一番大事なことは分かっている。そしてそれを迷いなく行動に移せる。

「ったく。忌々しい」
 あんないけ好かない若造に息子を託さなければならないなど、父親として不愉快極まる。
 罵りながらも、澤村の頬は吊り上がる。文机の引き出しから取り出した封筒を見て、澤村は低い笑い声すら洩らした。

 この先、鈴木の仕事を監督することはできないけれど。ミスには制裁を加えてやる。必ず。そのために、こんな手紙まで用意したのだ。これはあの男にかける呪いだ。

 ガラガラと、派手な音が右手から響いた。廊下を伝って回って来た火が、障子の桟を焼いていた。柱が崩れる様子に、退路を断たれたことを知る。急速に侵入してきた煙に巻かれ、澤村は激しく咳込んだ。
 まだ時間はあると、思っていた自分が甘かった。この速さは普通ではない。事前に、離れにも灯油を撒いておいたのだろう。
「さすが私の息子だ。抜け目がない」

 限界まで膨張したガラス窓が爆発するように割れる頃には、澤村は立つこともできなくなっていた。もとより、今宵の澤村の行動は、火傷の後遺症が残る身体には厳し過ぎた。剛を救い出した時点で限界を超えていたのだ。
 澤村は、息子への預かりものを躰で庇い、畳に俯せて眼を閉じた。

 最後に、彼にあんな行動を取らせてしまったこと。彼の心中を思うと、焼け爛れた胸が潰れるようだった。
 恨みや憎しみではない。澤村が子供の頃毎日のように考えていたこと、きっと彼もそんな考えを持つに到ったのだと分かって、澤村は自分が避けたかった最悪の事態を迎えてしまったことを知った。
 ひどく悲しかったが、彼が一人でそれを決行してしまわなかったことは嬉しくもあった。彼は澤村のことをちゃんと考えてくれていた。そこに彼の確かな愛情を感じて、澤村は嬉しかったのだ。
 何より最後に。彼は澤村を、「お父さん」と呼んでくれた――。
 その喜びを胸に逝けることは、澤村にとって望外の幸福であった。

「剛……しあわせに」
 それが澤村の最後の言葉だった。




*****

 前振りと内容のカラーが違い過ぎること、お詫びします。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Sさまへ

Sさま。

動画、お疲れさまでしたー!
本当に、素晴らしかったです。 感動をありがとうございました。


> しづさん…これって???本当にリハビリなんですか???

わははー、そうなんですよー、死者に鞭打つ状態になってしまって。(^^;) 読んでくださる方には申し訳ないです。


まあ、わたし個人としては最高のリハビリになったんですけど。
と言うのもこの話、書けば書くほど、
『ねーな』
って思えてきて。

薪さん、ご自分の出生に苦悩するんじゃないかと思ったんですけど、これを書き終ったあと頭に浮かんだのは、
「薪。人生を切り開くのは親からもらったDNAじゃなくて、当人の意志だとオレは思う」 
なんて具合に薪さんを気遣う鈴木さんに、薪さんがスッパリと、
「人殺しの血を引いてない人間なんかこの世にいない」 
と冷笑で返す。

書いてるうちに、天才の薪さんは、凡人と同じ発想はしないだろうと思えてきたんですね。  彼、他人を思いやる気持ちはあるけど、自分に対してはすごく冷たいから。
 自分の身体に流れる血のルーツとか、気に病まないんじゃないかな。

そんなわけで、今月末のメロディ、楽しみに待ってます~。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
メロディ6月号、読みました。
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