雨の名は沈黙(11)

 最終章です。
 お付き合いいただいてありがとうございました。

 題名、やっと決まりました。
 いくつか候補はあったんですけど、決断したというか、時間に迫られて妥協したというか。(^^;







雨の名は沈黙(11) 




 眼を開けると、眩しい光が広がっていた。

 うなされてたから、とすまなそうに青木が言った。薪の肩を揺らした手を離して、心配そうに薪を見た。
「昔の夢だ」
 薪は右手で額を押さえ、長い睫毛を伏せた。
 真冬のサンルームで、外は北風がびゅうびゅう吹いているけれど、天気がいいからこの中は春の陽気だ。青木も彼の姪の舞も薄いシャツ一枚で、舞に至っては豆腐だか厚揚げだか忘れたが、四角くてピンク色のぬいぐるみと一緒に床にころころ転がっている。どうして大豆製品がピンク色で、しかもそれがぬいぐるみになったとして何処が愛らしいのか薪にはまったく理解できないのだが、舞はこのシリーズがお気に入りなのだ。女と言う生き物は、こんな子供の時分から謎だらけだ。

「青木」
 床に置いた胡坐の膝に料理雑誌を広げて、今夜の食事に並々ならぬ期待を寄せる彼に、薪は未だ夢から醒めきらない虚ろさの中で問うた。
「僕は舞を、ちゃんと愛せてるかな」

 僕を育ててくれた両親のように。血の繋がりはなくとも、溢れんばかりの愛情で。彼らに貰ったものを、ちゃんと伝えることができているのかな。

 薪の夢も過去も知らない青木は、無邪気に笑って、
「本人に訊いてみたらどうですか? 子供は正直ですからね。ハッキリ言うと思いますよ」
 子供は自分に対する愛情に、とても敏感な生き物だ。それはもはや本能的とも言える鋭さで、言うなればその素直な感性は、か弱い生命体に神さまが与えたシックスセンスなのかもしれない。
 そんな素直さを持ったまま大人になったような男は、薪には決して真似のできない行動に出る。彼のそういう性質を、薪はとても好ましく思っている。

「舞。コウちゃんとマキちゃんと、どっちが好き?」
「マキちゃん!」
 即答されて、何とも情けない顔になる青木に、薪の腹の底がぴくぴく震える。おそらく彼は、「どっちも好き」という公平な答えを期待していたのだ。
「なるほど。子供は正直だな」
 意地悪そうな薪の声を聞いて膨れる青木の姿は、12歳の年の差を差し引いても幼くて、薪のニヤニヤ笑いは止まらなくなる。くくく、と笑い声まで飛び出した。

「コウちゃんの方がいつも舞と一緒なのに、なんでっ!?」
 眺めていた料理雑誌をその場に置き、青木は舞に詰め寄った。大人げないやつだ。
 それを軽くあしらうように、返した舞の答えは、
「ちっちゃくてかわいいから」
「なっ!?」
「ぷくくっ。子供は正直で、い痛ったあぃ!」
 噴き出した青木の頭めがけて投げつけた雑誌が、バシッと軽快な音を立てる。的が大きいと当てるのも簡単だ。

「もおっ、止めてくださいよ。舞が真似したらどうするんですか」
「うるさい」
 座椅子のヘッドレストに頭を載せて、寝直そうとした薪を咎めるように、舞の甲高い声が響いた。
「コウちゃんもマキちゃんも、ケンカはダメよ。なかよくしなさい」
「「……はい」」
 この年頃の女の子はおませで、自分が子供だという自覚がないどころか、お母さんにでもなった気でいる。舞は、自分の3倍はありそうな青木の手を取り、薪の傍に寄ってきて、薪の手の上にぽんと置いた。
「はい。なかなおりのあくしゅ」
 多分これはあれだな。保育園の先生の受け売りだ。
「舞もー!」
 元気よく宣言して、舞が自分の右手を重ねる。

 大中小と、大きさも色合いもばらばらの手が3つ。折り重なって握り合って、日向のサンルームに負けない温かなぬくもりが生まれる。
 今年の5月は3人で、両親の墓参りに行こうと薪は思った。




(おしまい)



(2013.3) 



 どこがリハビリなんだって病状悪化させてんじゃないかってごめんなさい。
 薪さんの重荷、ぜんぜん軽くなってなくてすみません。
 結局ね、生きてる薪さんを救えるのは生きてる青木さんなんだなって。 澤村さんにしても鈴木さんにしても、死んじゃったら誰も救えないんだよ。 だから、
 澤村さん、死なないで。 ←創作で殺しておいてこの要望はどうかと。



 この下、うちの青薪さんの会話です。

「はあ。薪さんたら、すごい過去を背負ってたんですね」
「いや、うちの親、普通だったから。普通に交通事故で死んだから」
「そうなんですか?」
「この過去背負ってたら、僕みたいなとっちらかった性格にならないだろ」
「あ、ご自分で分かって、いったあい! ……でも、それってどうなんでしょうね、二次創作として」
「おまえだって、舞ちゃん引き取ってないだろ」
「オレの姉、生きてますから。2番目の子供生まれてますから」
「……めちゃめちゃだな、この話。てか今までの話全部」
「本当に。管理人はこの始末をどうやってつけるつもりなんでしょうね」
「無責任が服着て歩いてるような女だからなあ。この後、平気で『キセキ』を公開する気でいるらしい」
「えっ。話つながらないじゃないですか」
「そうなんだよなあ」
「まあ、オレは出番が増えて嬉しいですけど」
「僕はできれば公開して欲しくない。あれは恥ずかし過ぎる」
「いまさら何ですか。さんざん恥かいてきたじゃ、だから痛いですってば、ネコ爪刺さってますって!」

 というわけで、次のお話は『キセキ』です。 あおまきさんです。 
 時間が20年くらい、ついでに時空もワープしてます。 よろしくお願いします。





テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Rさまへ

Rさま。

4月号、ショックでしたよね。
分かりますよ~、わたしも3作くらい並列で書いてたの、吹っ飛んじゃいましたもん。
ショックも大きかったですけど、この過去背負ってたらこうはならなくね? という思考に囚われてしまうとダメですね。

まあね、わたしの場合は、青雪さんが婚約した頃から書いてて、それこそ、
「原作では絶対に無理」
を強硬に押し通してきたから。 今更って感じもします。(^^;


> その後を書くなら、あの過去も含め救われた幸せな未来を書きたい

そうなんですよね。
薪さんのあの過去が分かって初めて、舞ちゃんが青木さんに引き取られたことを肯定できました。 彼女は薪さんと家族になって彼の過去の傷を癒す、そういう縁だったんですよね。
だから書くとしたら、舞ちゃんは欠かせないキーパーソンになると思います。


Aさまへ

Aさま。

「澤村さん良い人計画」にご賛同いただき、ありがとうございましたっ(;▽;) ←うれし泣き。
ここまで甚だしい捏造話も珍しいと思います。なんたって澤村さんが善人になっちゃいましたからね。
この話はジェネシスの最終話の前に書いたんですけど、結末を読んだら普通に悪い人でしたね(^^;


>澤村さんの過去を考えると

そうですねえ。
どうも世の中に対する逆恨み感が拭えませんねえ。
でも、どのような描かれ方をしても、やっぱり彼のしたことは許されないと思います。同情はするかもですけど、同じ立場に立たされたら自分も、とは思えないなあ。

わたしの場合は記事に書いたように、
そのことで薪さんが自分の存在を否定してしまうことになるのが嫌で、それを回避しようとこの捏造話を作ったのですが、書き上がってみたら、
澤村さんが犯人ではなかった事実を薪さんが知ることはなく、鈴木さんを殺めてしまった時に父親と自分が重なってしまうという、血は争えない、犯罪者の息子はやっぱり犯罪者、みたいな救いのない話になってしまって。一体なんのために書いたんだか(^^;
最終的には青木さんと家族を作っていくことで自らを癒していく、という結末になりました。薪さんの人生には青木さんが必要であるという、あおまきすと理論に則った話になっております。



Aさまのお体のお話、お気持ちお察しします。わたしも子供に恵まれなかったので。
ん~、でもまあ、
子供を持てなかったことに対してわたしはそんなに悲観的じゃなくて、いたらいたで苦労して、いなきゃいないで寂しい、そういうものだろうと思ってます。
子供を持つって素晴らしいことよ、と言われてそれを否定するつもりは毛頭ありませんが、できないもんは仕方ないじゃん。できないことをクヨクヨ悩んで、自分の人生はつまらないものだとか思いたくないしね。


>知らない恋愛世界のことを

いや、ちょっと待って!
これ、参考にしちゃダメですよ!
わたしだって恋愛経験なんか数えるほどしかないんですから!


>恋愛ができる人はそれだけで幸せ

本当にそうですよね。
自分以外の誰かを自分のこと以上に大事に思えること、幸せなことだと思います。
だから薪さんも、傍からは報われないように見えましたけど、青木さんを好きになることができて幸せだったんだろうな、って今は思ってます。

偏見は、
本当に悲しいですね。
事情を知りもしないで単なる偏見で彼らを迫害する人には腹が立ちますが、
逆に彼らをよく知り、だからこそ許せない家族や友人との軋轢は、誠に悲しいです。



それと、これから先の原作ですが、
2014年に秘密再登場、とメロディ本誌の予告にあったそうですよ♪ 今から楽しみです♪♪♪


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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60Pを超えました(笑)
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7/20 推敲の結果、70Pになりました。←バカじゃないの。
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