キセキ(13)

 こんにちはー。

 週末からゴールデンウィークに突入ですね。 楽しみですね~。
 わたしは明日の27日から3日間、恒例の家族旅行に行きます。 ので、その間はお休みします。 よろしくお願いします。

 帰ってきたらがんばろうと思うのですけど、メロディショックで落ちる可能性を考えると約束できないのがツライとこ。 秘密、おそるべし!!
 忘れもしない、去年のこの時期も旅行先でメロディ読んで、それが最終回だったものだからしばらく押入れから出てこれなくなry。 (その節は大変ご迷惑をおかけしました)

 こ、今回は大丈夫! リハビリ済みだし!
 

 ではでは行ってきます。(^^






キセキ(13)





 その日は朝からおかしなことばかりだった。
 出勤し、モニタールームに入ろうとしてIDカードを通したらエラーになった。何度かやってみたが、結果は同じだった。
 自動ドアの前で立ち往生していると、副室長が出勤してきた。事情を話すと岡部は、「磁気がいかれたんでしょう」と自分のカードでドアを開けてくれた。

 役に立たなくなったIDカードは再発行の手続きを取らなければならないが、その手続きはなかなかに煩雑なものらしい。岡部が言うには、再発行の依頼書はもちろん、指紋から声紋、静脈認証まで添付しなければならない。彼は憂鬱な気分になった。
「親指から小指まで、こちらのシートに押してください。それから静脈認証はこいつで読み取りを。書類は俺が総務に届けてきますから」
 指紋を採られるのは複雑な気分だが、まあいい。データは全部修正してある。万が一にも自分の正体がばれることはない。

 ところが不思議だった。提出した指紋も声紋も、保存されていたデータと合致しないのだ。職務開始直後に提出した書類が夕方には悉く返されてきて、彼は戸惑った。室長室の自分の席に腰を落ち着け、この不可思議な状況の裏側を探ろうと考えを巡らせる。
 何故だろう。ちゃんと自分のデータを上書きしておいたはずなのに。
 誰かに元に戻された? あいつには無理だ、キーボードを叩くこともできないようにしてやったのだから。警察庁のデータバンクに侵入できてデータを改竄できるような人間なんて、可能性としては宇野ぐらいしか思いつかないが、彼には動機がない。
 返却された書類の上に差した影に気付き、彼は顔を上げた。腹心の部下が、彼を厳しい眼で見下ろしていた。

「どういうことです、薪さん」
 いかつい見かけに依らず普段はとてもやさしい岡部は、今日に限って人が変わったようだった。
「指紋、声紋、静脈認証まで。これは今朝あんたから採取したものだ、俺が採ったんだ。それが全部合わないって、あんた一体」
 詰め寄られて、思わず席を立つ。ハッキリとした敵意が伝わってくる。身体中の力が抜けていくような気がした。
「しばらく前から様子がおかしいと思っていたが。あんた、薪さんの偽者じゃないのか」
 一番の部下に疑いの目を向けられて、彼は焦った。あの男が家から出て行って、ようやく自分の思い通りにことが運ぶと思った矢先に、なぜこんな。

「何を言い出すんだ、岡部。僕の顔を忘れたのか?」
「データは嘘を吐きません。それに顔なんか、整形手術でいくらでも変えられますよ」
 ばれるはずがないと高を括っていた。可能性があるとすればそれは、あの男が身も心も開いた恋人の青木だけ、しかし彼は一欠片の疑いすら持っていない。それを単なる職場仲間に暴かれるなんて。ありえない。

「やめろ、そんな眼で見ないでくれ。僕は」
 冗談じゃない。それでなくとも計画が狂って、充分なエネルギーが補給できていないのに。
 あの青木という男、とんだ見掛け倒しだ。期待していたのに、ろくに食べさせてもくれないで。仕方がないから女子職員からの差し入れで飢えを凌いでいた、でも差し入れのものは濃度が薄くて食べた気にならない。岡部を始めとした部下たちの信頼まで途切れたら、枯渇してしまう。

「念のためです。身柄を拘束させてもらいますよ」
 乱暴に腕を掴まれて、怖い顔で凄まれた。最初のうちはこの男も、彼にご馳走を食べさせてくれた。なのに、今は強い猜疑心が伝わってくる。彼を恐怖が襲った。
「岡部、頼む。やめてくれ」
「そんな弱腰、薪さんらしくないですよ。あの人が部下にこんなことをされたら即座に回し蹴りです」
 彼が哀願しても、岡部は頑なだった。憎しみすら籠もった眼で彼を睨みつけ、ドスの効いた声で、
「研究が足りないんじゃないですか、偽者さん」

 無我夢中で腕を払い、彼は逃げ出した。既に退庁時刻を回っていたこと、クリスマスイブと言うイベントも手伝って、モニタールームには誰もいなかった。今の話を他の部下に聞かれずに済んだことに胸を撫で下ろす。岡部の疑惑がみんなに伝染したら、吊るし上げられるところだった。
 洗面所に直行して鍵を掛け(第九の公共トイレは入り口に鍵が掛かる珍しい造りになっている)、彼は洗面台に取り縋った。落ち着け、と自分に言い聞かせて呼吸を整える。
 岡部は、仲間内では非常に信頼の厚い男だ。その影響力は脅威ですらある。一刻も早く、彼の信頼を取り戻さなければならない。
 さほど難しいことではない。保存データの書替えを行い、もう一度照合をやり直す。そうすれば自分が薪剛本人であることが立証されるはずだ。
 データバンクに侵入するには『端末』を使うか、本来の姿に戻らなければならない。『端末』は自分と同じ顔をした男に付けっぱなしにしてあるから、選択肢は一つしかない。他人に見られてはならない行為ゆえ職場で行うのは危険だが、今はスクランブル発動中だ。多少のリスクは止むを得ない。

 彼は決意を固めて顔を上げ、すると鏡に映った自分の顔が見えた。
「……っ!」
 反射的に退いた。そこに映っていたのは、ぱさぱさに乾いた白髪の、干からびたミイラのようになった男の姿だった。
 慌てて両手を見ると、爪が何枚か剥がれ落ちている。エネルギーが不足して、人間の形を保てなくなってきているのだ。

「くそっ、青木のせいだ」
 彼が一緒に居てくれないから、だからこんなことに。彼とは今朝電話で話したきり、電話じゃダメだ、現実に触れ合うことが肝要なのだ。
 この状態の自分を救えるのは青木しかいない。あの男が持っているものが一番大きくて良質なのだ。あれを食べることができれば、回復できる。
 データを修正して岡部の信頼を取り戻し、彼から当座のエネルギーを貰って、青木の所へ行こう。彼は今日は非番だが、構うことはない。電話で呼び出して、会いたくてたまらなかったと縋れば、いつものように抱いてくれるはずだ。

 服の下に隠れた部分に回していたエネルギーを顔面に集め、集中補修を施す。彼の顔は完璧な美貌を取り戻し、10枚の爪は元通りに細い指先を飾った。が、見えない部分では活力の枯渇による風化が始まっていた。
 本当にもう時間がない。彼は焦っていた。
 IDカードが使えなくなった彼は、カードなしでも入れるエリアに設置されたパソコンを探した。人目につきにくい場所で、できれば個室がいい。談話室にもパソコンはあるが、あそこは鍵が掛からない。
 うろうろと彷徨う彼の目に、信じ難い幸運が飛び込んできた。
 第4モニター室の扉の開放ランプが点灯している。中に誰かいるのかと様子を伺うが、人の気配はない。好都合だ、ここのパソコンのスペックならハッキングの時間も短縮できる。

 彼は素早く中に入り、内側からドアロックを掛けた。真っ直ぐにパソコンに駆け寄り、電源を入れる。モニター画面に両手を当てると、その明かりを吸い込むように彼自身の身体が発光した。
 画面に触れた指先から、彼の身体がバラバラと崩壊していく。細かく分解した彼の身体は机上に落ちることはなく、秩序を保った軍隊のように整然とモニターの中に侵入して行った。
『なるほど。そうやって電脳世界に入るのか』

 背中に掛かった声に、彼は飛び上がるほど驚いた。普通の人間の耳には猫の鳴き声にしか聞こえないその音声を世界でたった一人、彼だけは理解することができた。その声の持ち主は、彼のビジュアルのオリジナルパーソンだったからだ。
『記憶のサーチもその方法で? 便利な身体だな。特技、ていうか一発芸、いやいや、忘年会の余興という手も』
 あれだけいたぶって追い出してやったのに、彼はいつの間にか本来の不遜さを取り戻していた。ペンを持つこともできなくなった手を横柄に組んで、細い顎を高慢に上げている。半開きになった亜麻色の瞳は陰険に光っていて、それだけでも彼の悪辣な性質は予想が付いたが、その口から飛び出す毒の強さを目の当たりにすれば、彼から人間の言葉を奪った自分の行為は他人から賞賛を受けるべき善行のような気さえしてくる。
『ああ、邪魔して悪かった。続けろよ』
 鬼の首を取ったよう、という表現が正にピッタリだ。本当に性格の悪いやつだ。こんな男を選ぶなんて、青木の眼は腐ってる。

「どうやってこの部屋に」




*****


 あれっ、こんなとこで切れちゃった。 半端で落ち着かないですよね?
 明日の朝、時間取れたら続きアップします。 よろしくお願いしますー。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま。

> やはり、薪さんはこうでないといけません!

ですよねっ。
薪さんは常に自信に溢れてて、ちょっと人を見下すくらいがいいんです♪ それなのに陰ではちょっと弱気だったり、精神的に脆かったりすると激萌え。


> 偽薪さんの弱点は愛情を受けないとパワー不足で元の姿に戻ってしまうということ?

端的に言うとそうですね。
だから彼は薪さんをターゲットに選んだんです。
この辺は後ほど、薪さんの方からこじつけ、じゃない、補足説明がありますので。 そこで詳しく解説します。 が、何分にも後付設定なので、ちゃんと筋が通るかどうか心配です~。(^^;


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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