夢の続きは二人で(1)

 あとがきです。(どこが?)
 管理人の大好物、下ネタ満載のR系ギャグです。
 性描写はそれなりにありますが、わたし的にはギャグなので。 限定公開ではありません。

 それとこの話、
『青木さん だけ がひたすらドヘンタイ』

 青木さんファンの方には申し訳ないです。 





夢の続きは二人で(1)







「お願いがあります」
 辺りに人の眼がないことを3回も確認して、青木は切り出した。マンションを囲む生垣の陰、それも北の内角など滅多に人の訪れる場所ではない。それでも声を潜めて、口の両脇に手で覆いをするという徹底振りに、相手は少々呆れ気味であった。
 彼の異常な用心深さは、頼み事の内容もさることながら、相手の外見に起因する部分も大きい。何故なら青木が頭を下げている相手は、三角形の耳と細い尻尾を持った愛らしい子猫だったからだ。
『さっさとしろよ。ここ、日陰で寒いんだから』
 彼は寒そうに身を竦め、不機嫌に言った。人間のときはそうでもなかったと記憶しているが、猫になったら寒さが身に染みるようになったらしい。甘やかされている、もとい、大事にされている証拠だと青木は思った。

「エイリアンさんには命を助けていただいた上にお願い事なんて、図々しい限りなんですけど。オレにとってはとても重要なことなので、こうしてお願いに上がりました」
『エイリアンさんとか呼ぶな。今は『ニニ』って名前がある』
「はい、ニニさん。お願いというのはですね、もう一度薪さんに、猫耳と尻尾を生やしていただきたいんです。できますか?」
 彼の依頼に、ニニと呼ばれた子猫は硬直した。大きな金色の眼を瞠って、目前に屈んだ男の顔を訝しげに見る。

『できないことはないけど。そんなことをしてどうする』
 疑問は当然だと思われたが、青木は返答に窮した。男らしい眉を沈痛にひそめ、削げた頬に苦悩を浮かべた。よほど切実な事情があるものと判断し、だったら余計に話して欲しいとニニは思った。一度は生涯を共にしようと決めた男だ、傍にいることは叶わなくなった今でも、自分が彼の役に立てるなら何でもしてやりたい。

「他に頼みたい事もありますし、思い切ってお話します」
 青木は覚悟を決めたのか、強い意志を秘めた瞳でこちらを見た。ニニの心臓がとくんと高鳴る。ニニの青木に対する感情は人間で言う恋とは少し違うけれど、とても似通っている。加えて、人間のそれよりずっと必要欠くべからざるものだ。青木の恋人に言われたほど打算まみれのものではないし、幾ばくかの純情も含まれている。それを今更理解して欲しいとは思わない。でも、今でもこうしてときめくくらいに自分は彼のことを――。

「猫耳のカワイイ薪さんともう一回エッチしたいんです」
『おまえのその腐った脳みそをもう一回分解してやろうか』
 瞬間ニニは、失意の深淵に突き落とされていた。その深さは母星が滅びゆく運命であることを知った時に匹敵するほど。こんなことならアメリカ大統領の人生乗っ取って核バクダンで地球滅ぼしときゃよかった。

 ニニの落胆を知ってか知らずか、青木はズボンが汚れるのも厭わず地面に両膝を付き、いわゆる土下座の格好になって、
「そんな冷たいこと仰らず。どうかお願いします」
『地球人てのはそんなしょーもない理由で土下座するのか。なんて低俗な種族なんだ。存在することに意味あるのか』
 青木は地球人の代表ではないし、種の存続を委ねられても非常に困る立場にある。青木の恋人は同性だからだ。しかし、ニニの怒りにもそれ相応の理由はある。
 彼に、一生尽くしていこうと決意した。夢破れてなお、青木と彼の恋人を救うために、自分の生体エネルギーの殆どを使い果たした。そこまでしたのになんだよこれ!

「あれから毎晩夢に見るんです。モフモフっとした薪さんの猫耳をオレが噛むと、薪さんが『うにゃあ』って善がり声を上げる夢」
『たとえ一時でもおまえと一生愛し合っていこうと思った自分の過去を猛烈に消し去りたい気分だ』
 正確に言うと、おまえの存在ごとなかったことにしたい。
「でもってですね、薪さんは生まれつき淡白というか下半身が残念な体質というか、とにかく、全然求めてくれないんです。できればその辺も改善してもらえませんか」
『薪も似たようなとこあるけど、おまえも人の話を聞かんな』
「何とかなりませんか? 猫耳の触手を使って、エッチが大好きって偽の記憶を植えつけるとか、脊椎からの遺伝子操作でもって性欲を増大させるとか」
『それは強制的な調教だよね? 可憐な少女をシャブ漬けにしてソープで働かせるヤクザと言ってること変わらないよね?』

 薪とおまえはヒトデナシ同士お似合いだな、とニニは吐き捨て、やれやれと小さな頭を振って、
『まあ、おまえには世話になったからな。僕にできるだけのことはしてやる』
「本当ですか?」
『薪を、猫耳と尻尾が生えたインランにすればいいんだな?』
「はいっ、その通りです!」
『おまえみたいな劣情の権化に愛されたいと一時でも望んだ自分が許せん』

 こいつ、生き返らせない方が薪にとっては良かったんじゃないか。
 ニニは自分の過去の決断に疑問を感じつつ、今はすっかり馴染んだ金色の瞳で青木を見た。彼の全身からは期待と興奮に満ちたオーラが沸騰するごとく立ち昇り、勢い余って割れた泡の飛沫が彼の全身を彩っていた。ダイヤモンドダストのように輝くそれは、目的の醜悪をまるで感じさせない。青木自身に自覚がない、と言うよりは、この男はセックスに快楽を求めることを卑猥だとも悪いことだとも思っていないのだろう。
 自分ならこんな恋人は願い下げだが、被害を被るのは薪だ。あいつには少々借りがある。

『わかった。おまえの言うとおり、薪に偽の記憶を植えつけてやる』
「ありがとうございます!」
 青木は嬉しそうに礼を言った。彼があまりに幸せそうで少々癪に障ったものの、薪がひどい目に遭うことが確実ならそれを為すことはやぶさかではない。借りは10倍にして返すのがニニの星の掟だ。
『薪が眠ってるときじゃないと侵入はできないぞ。それから、偽の記憶はそんなに長くはもたない』
「休日の薪さんは、お昼ご飯のあとお昼寝しますので、その時お願いします。記憶は途中で戻ってもいいです、始まっちゃえばこっちのもんですから」
 こういうのもDVって言うんじゃないのかな、こんなやつの伴侶にならなくて本当によかった。可哀想に薪のやつ、てかザマーミロ。ヒナコの方がよっぽどマシだ。時々、とんでもないもの食べさせられるけど。

 生垣の向こうから聞こえてきた足音で、ニニは飼い主の帰宅を知る。ニニの好物のチキン味のキャットフードを買ってきたに違いない。缶詰だが、馬鹿にしたものではない。岡部が母親の手料理を口に運びながら、羨ましそうにこちらを見ているくらいだ。きっと人間が食べても美味なのだ。それを自分のために用意してくれるのは、彼女が自分を愛してくれている証拠。おかげでニニの毛並みは、いつもつやつやしている。

『じゃあ、後でな』
 お願いします、と頭を下げる男を尻目に、ニニは主人の元へ走った。玄関で追いつくと、彼女はすぐに飼い猫の出現に気付き、嬉しそうに彼を抱き上げた。
「ニニちゃん、今日は靖文さんのお帰りが早いんですって。わたくし、頑張って美味しい晩ごはんを作りますわね。もちろんニニちゃんの分も」
『げ』
 ……人を呪わば穴二つ。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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