夢の続きは二人で(4)

 あとがきその4です。長くてすみませんー。





夢の続きは二人で(4)







「青木、どうした?」
「いや、この部屋、誰かいませんか?」
「そんなわけないだろ」
「声が聞こえるんですよね。誰かに見られてるような気もするし」
「え。僕のこんな恥ずかしい姿をおまえ以外の誰かに?」
 しまった。羞恥心の強い薪にそんな不安を与えたら、即座に守りに入ってしまう。彼の気をベッドから逸らすまいと、青木は慌てて彼の腰を押さえようとした。が、拘束されたのは青木の方だった。

「薪さん?」
 薪の細い脚が、青木の腰を抱きしめるように絡んでいた。抜くどころか離すこともできない。動きを封じられた青木に、薪はぐいぐいと自身を押し付けてくる。
「ヤバい。スイッチ入っちゃった」
「は?」
「あおきっ」
 下から強い力で押されて起き上がり、青木はベッドに尻を着いた。次のターンで押し倒された。寝室の照明器具が眼に入り、直ぐに薪の快楽に溺れた顔が見えた。
 誰かに見られていると思ったら、火が点いたらしい。そうと分かっていれば野外エッチに誘ったのに。何なら窓際に立たせてブラインド開けて窓ガラスの前で、などと不届きなことを考えている間に、薪は再び青木を捕えていた。

「薪さん、あの、うっ……!」
 主導権は完全に薪に移り、青木は彼の下で彼がくれる快楽に呻いた。ごく稀にこの体位で愛し合う時もあるが、薪の上位はあまり長続きしない。快楽よりも疲れが勝って、すぐにへたばってしまう。それが今日はどうだろう。
 疲れ知らずの絡繰り人形のように、薪は飽くことなく同じ動作を繰り返し、青木の精を悉く絞り尽くした。自身も幾度となく達して、それでも直ぐに続きをねだってくる。手指と青木を包む肉を自在に操り、重ねすぎてもはや数えることもできなくなった高みに再び昇ろうとする。先に限界を迎えたのは青木の方だった。

「ちょ、ちょっと待ってください。少し休憩しましょう」
 舐めても吸っても何の反応も示さなくなった青木の下半身に、薪は「お疲れさま」と軽いキスをした。それから上方へと伸びあがり、青木の唇に軽いキスを落とすと、にっこりと微笑んで寝室から出て行った。シャワーを浴びに行ったのだろう。青木も一緒に汗を流したかったが、もう指を動かすのもしんどかった。
 精魂尽き果てて、だけど大満足でベッドで仰向けになっていた青木は、浴室から帰ってきた薪の姿を見てひどく驚いた。バスタオル姿ではなく、外出用のシャツとズボンを身に付けていたからだ。

「あの、どちらへ?」
「セフレその1の家に行ってくる」
「はあ!?」
 起き上がろうとし、それが為せないことに青木は驚く。骨が無くなってしまったかのように、身体がぐにゃぐにゃだ。青木が暴走してしまった翌朝、薪がよく起き上がれない状態になっているが、あれはこういうことか。

 薪は襟元の紫色のスカーフの形を整えながら、青木を憐れむような眼で見て、
「だっておまえ、これ以上できないんだろ? だったら仕方ないじゃないか」
「いやあの、だからってセフレ直行って、しかもその1って」
「セフレは常に5人ほどキープしているが、なにか?」
 どうやらニニの仕事には、重大なミスがあったらしい。薪をセックスに強くしてくれたのはいいけれど、これじゃ本末転倒だ。本棚に置いてある充電器から携帯電話を取り上げた薪に、青木は悲痛な声で訴えた。
「ヒドイじゃないですか! オレ以外の男とそんなこと、薪さんはオレを愛してないんですか」
「何を言ってるんだ、セフレとのセックスは単なる性欲処理で、僕が愛してるのはおまえだけだ。その証拠に僕はセフレの名前を一人も覚えてない。全員、番号でしか呼んだことないぞ」
 どういうことですか、最中に「ああ、その1っ」とか声上げてるんですか、それはそれで笑えますけど死んでも聞きたくないです。

「……薪さん、10分だけリビングで待っててください」
「10分で、またできるようになるのか?」
「はい。ですから何処にも行かないでくださいねっ」
 涙目になって青木が頼むと、薪は外出しないことの証に、携帯電話を元通り充電器の上に置いてくれた。「待ってるから」と薪が寝室の扉を閉めたのを合図に、青木は大声で叫んだ。
「ニニさんっ、居るんでしょ!」

 ベッドの最中に時々聞こえてきた呟きの主に、青木は薄々気付いていた。エリートエイリアンのニニは自分の仕事の首尾を見届けるべく、寝室の何処かに忍び込んでいたに違いなかった。
 青木が思った通り、呼びかけに応じてニニの薄闇に光る瞳が現れ、次に子猫の身体が現れた。チェシャ猫を真似ているのか、イギリスの古い童話を知っているなら貞節を重んじる日本の旧い美風も覚えておいて欲しい。
『どうした』
「どうしたじゃないですよ、何ですか、あれ!」
『何って。薪をセックス無しではいられないカラダにしてくれって言ったの、おまえだろ』
 いや、望みましたけど、「青木に抱かれないと眠れない」とか、一度でいいから言われてみたいとか思ってましたけどでもっ!!

『そういう薪が良かったんじゃないのか?』
「オトコだったら誰でもいい薪さんはイヤです! オレだけを求めて欲しいんです!!」
『勝手だなー。てかそれ、生物学的にどうこうできる話じゃないだろ。要はおまえに対する愛情の問題なんじゃないのか?』
「遺伝子操作で彼をサチリアジス(男子色情狂)にはできても、カサノバ型かドンファン型かは選べないってことですか」
『その通りだ、セフレその6』
 うわああああんっ!!

 言われてみてハッキリ分かった、さっきの薪は確かに自分を愛してくれていたけれど、それ以上に快楽に夢中だった。普段の薪は文句は多いけれど、最終的には青木に協力してくれるし、青木の快楽を優先してくれる。比べるものではないが、やっぱり青木はいつもの彼の方がいい。物足りないときもあるけど、気持ちは満ち足りてる。薪が自分のために精一杯頑張ってくれることが分かるから。
「オレが間違ってました。元の薪さんに戻してください」
『分かった』
 ニニはにやにやと笑いながら、尻尾を立ててリビングに向かった。薪の猫耳と尻尾を回収に行くのだ。それと同時に、彼の偽の記憶も抹消される。薪の中で今夜のことは夢になり、青木の胸の中だけにしまわれるというシナリオだ。

 狭い額と何がしかの力を使って器用に扉を開けたニニは、ふと気が付いたように立ち止った。振り向いて青木を見上げ、彼が犯した過ちに課せられた罰にしては重すぎる未来を言い渡す。
『ああ、それから、薪はこの先1年はセックスできないから』
「なんでですか!?」
『人間の欲情の回数は先天的に決まってるんだ。それをいま散財したわけだから』
 今ので1年分!? どんだけ薄いの、このひとっ!!
 薪は生まれつき淡白だけれど、さすがに1年も間が空くほどじゃない。月に何回か、まるで役に立たない日もあったりするが、薪はそれでも青木を受け入れてくれる。薪の献身は嬉しいが青木は心苦しい、だけどやっぱり彼が欲しいから一抹の罪悪感と共に彼を抱く。この先一年間はそのパターンが続くと宣告されて、青木は世界が消えていくような錯覚を覚えた。

『浮気の心配がなくなって良かったな?』
「……はい」
 薪に無理をさせた、その報いが来たのだと思って諦めるしかなかった。何をやっても、青木は薪以外の人間にときめかない。単なる肉の塊としか思えない物体に奉仕するくらいなら薪の家の窓ガラスでも磨いていた方がなんぼかマシだ。
『とはいえ、おまえも我慢するのは辛いだろう。僕が助けてやろうか』
 すみません、大変申し訳ありませんがあなた相手じゃ勃ちません。前作で証明済みです。
『そう言う意味じゃない。僕の特技の遺伝子操作で』

 不意に、ニニの言葉が途切れた。不思議に思う間もなく、青木の視界がブラックアウトする。ニニが途中で話を止めたのではない、極度の疲労で自分が気を失ったのだ。セックスの後で唐突に眠ってしまう薪と同じことが起きたのだと分かった頃には、青木の意識は無くなっていた。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Sさまへ

Sさま。

>人にはその人のカラーがあって、良いも悪いもすべてひっくるめてその人を好きになるんだね。
>人は完璧じゃないからいいんだなってこれ読んで思いました。

あれ、不思議ですよねえ。
長所が多いから相手を好きになるわけじゃない、欠点が多いから嫌いになるわけじゃない。 むしろ逆。
好きになったら長所がよく見えるようになるし、嫌いになると欠点ばかり目につくようになる。 そういうものじゃないかと思います。


Hに強い薪さんの望むのは、
ええ、うちの青木さんだけかもしれないです。 ていうか、
そもそもHに弱い薪さんが他にはいないんですよね。(笑)
薪さんて、出来ないことないでしょ? 一つくらい苦手があった方が面白いかなって。 青木さん、お気の毒。


>私はシャイで照れを意地悪でごまかすいつもの薪さんが好です。孤高の薪さんは辛いので…

ありがとうございます。
わたしもそういう薪さんが、書いてて一番楽しいですー。
素直になれないオヤジ薪さんですが、これからもよろしくお願いします。(^^

Aさまへ

Aさま。

あははは、うちの薪さんにそんな相手がいるわけないじゃないですか~ww。 

原作薪さんは、うん、いたと思いますよ。 4巻の目隠しの相手とか。
あれね、わたしはずっと女の人だと思ってたんですけど、ジェネシス読んで出生の秘密を知ったら、男の人だった可能性が高くなってしまって困ってるんですけどどうしたら。(@@)


弓東さんは、いいですねっ。
応援したくなっちゃうんですよね。 だって弓東さん、健気なんだもん。
腹黒中年には違いないんですけど(オカイさん、ごめん)、亡くなった奥さんのことをずーっと思ってて、やっと薪さんに恋をすることができたのに薪さんの心には青木さんが住んでて、それでも思い続けてるの、とっても切ないです。(;;)

Rさまへ

Rさま。

サイト開設おめでとうございました!
本当に大変なご苦労をなさって。 Rさん、偉いなあ。
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。(^^


> しづさんの青木君にうちの薪さんをお貸ししましょうか

Rさんちの薪さん、一晩に5回はOKですもんね。 羨ましいですー。
性格的にも、Rさんの薪さんは少年のように純粋で素直で、しかも健気ですよね。 うちのはオヤジでへそ曲がりなので、そういうところも羨ましく思うんじゃないかな。 特に、好きって気持ちを素直に表してくれるの、嬉しいと思う。

けど、それはRさんとこの青木さんに泣かれてしまうと思うので、遠慮しておきます。 
そちらの薪さんだって、うちの腹黒ヘンタイストーカーの青木さんなんかイヤでしょww。 奴隷体質で卑屈だし。 きっとRさんの薪さんは、うちの青木さんを好きにならないと思いますよ~。 
破れ鍋に綴じ蓋ってやつで、そういう青木さんにはオヤジで女王様気質の薪さんが合ってると思います☆

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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