若いってこわい(2)

若いってこわい(2)







 鈴木と出会ったのは、大学2年の春。薪が19のときだった。
 特別な出会いをしたわけではない。大学のサークルで、たまたま一緒になっただけだ。

 薪は入学当初から、犯罪心理学のサークルに入っていた。目的は他の学生のようにコンパではなく、サークルの費用で高い専門書を購入して読みふける事だった。
 鈴木が入ってきたのは、2年になってからだ。弁護士を目指している、とその当時は言っていた。
 よく一緒に、犯罪者の心理について討論をした。
 いつも薪が検察側で、鈴木は弁護側だった。薪は犯罪者はすべて糾弾するべきだと思っていたが、鈴木の持論はまるで反対だった。どんな猟奇犯罪にもそれを起こさなければならなかった理由がある、と言うのが鈴木の主張だった。
 持論は正反対だったが、彼との議論は面白かった。
 鈴木は薪ほどの優秀な頭脳は持ち合わせていなかったが、薪にはない優れた人間性を持っていた。
 やさしさである。

 彼ほどやさしいひとはいなかった。言い換えれば、優柔不断でどっちつかずということなのかもしれないが――― 雪子は鈴木をそう評していたが―――― 薪にはたまらない魅力に思えた。
 何より、薪にとっては初めてできた親友だった。
 薪は昔から友達が少なかった。
 それはその抜きん出た容姿のせいか、捻じ曲がった性格のせいか、あるいは小さい頃に両親を事故で亡くしたせいか。
 別にイジメに遭うようなことはなかったが、輪に溶け込むこともできなかった。クラスメイトとは普通に話すが、それは表面上のことだけで、心を許せる友人はできなかった。
 大学に入ってからは、友人も増えた。みんな大人の付き合い方を覚えていたし、学力がある程度そろうとつまらない妬みは薄くなるものだ。
 薪の容姿と頭脳はますます磨きがかかって、それがいくらか他の学生との間を邪魔していたが、サークル活動もそれなりに楽しくて、薪は充実した大学生活を送っていたのだ。
 鈴木に会ったのは、そんなときだ。
 
「へえ。君が有名な薪くんか。よろしく」
 そう言って握手を求めてきた。大きな身体に合った、大きな手だった。
「有名って、なに」
 少し険のある言い方で返した薪に、鈴木は屈託なく笑いかけてきた。
「いっつも学内の掲示板に張り出されてるだろ。学内トップの薪剛くん。論文や研究発表でも、よく名前見るよ。
一度会ってみたいと思ってたんだけど、しっかし」
 そこで、上から下まで薪のことを見た。
 薪の姿を正面からジロジロ見るものは少ない。男でも女でも、平静ではいられなくなるからだ。
 
「名前に合わないよなあ、その顔」
「余計なお世話だ!」
 自分でも気にしているのだ。初対面の相手に言われる筋合いはない。失礼なやつだ。
「なんだ。聞いてたほどクールじゃないんだ」
 自分の不用意な発言で相手を怒らせた人間にはあるまじき無邪気さで、鈴木は楽しそうに笑った。自分ばかりがムキになっている、この状況が不愉快で薪は押し黙る。

「オレ、鈴木克洋。今日からこのサークルに入ったから。よろしく、薪くん」
 薪の倍はあろうかという大きな手が華奢な手を握って、それが2人の出会いだった。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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