ランクS(6)

 最近、ツイッターの「ふなっしーとリヴァイの同棲bot」に癒されまくりです。 主にふなっしーとリヴァイの会話で構成されてて、とってもかわいいのー♪ ふなっしーはリヴァイに削がれたり梨汁ぶちまけたりしてますけど、基本的にラブラブです。
 青薪さんの同棲botもあればいいのにww。





ランクS(6)






 暖色照明が演出するロマンチックな非日常空間。ここは半月の丁度真ん中辺り、21階のツインルームである。
 歓楽街の店が営業を始める時間帯、窓に広がる夜景はますます豪奢に光り輝いている。それを眺めながら濡れた髪を拭いている、彼は白いバスローブ姿だ。白い肌はほんのりと桜色に染まって、首元からは石鹸のいい匂いがする。

「ホテルの風呂って狭いのが難点だけど、ここのはけっこう広いぞ」
 夜景を楽しむためにカーテンはホテルマンの手によって開けられていて、青木の位置からは黒い夜空が見える。漆黒の垂れ幕をバックに、彼の白い腕と、上気して赤くなったくちびるが交互に動く。
「二人で入るのは無理だけどな」
 含み笑いと共に吊り上がる口角が何とも艶かしくて、青木は思わず彼から目を逸らした。今は第九へ帰る途中、つまり仕事中だ。青木は自分を戒めた。
 以前仕事中に薪に欲情して、こっぴどく叱られたことがある。「そんなにやりたきゃソープへでも行け」と、ものすごく蔑んだ目で言われた。同じ失敗は繰り返したくない。
 部屋を取って飲み直そう、と言い出したのは薪だが、ここで青木が劣情に負けてオオカミになったら、窓から蹴り出されるに違いない。薪は身勝手で、さらに厄介なことに自分の媚態に自覚がないのだ。

「いいんですか、こんなにゆっくりしてて。第九に帰って、例の事件の資料を読むんでしょう?」
 すっかりくつろぎモードの薪に、青木は控えめに抗議した。保身の意味もあったが、本来の目的を思い出してもらおうとしたのだ。しかし薪は、いつものように無造作な手つきで髪を拭きながら、
「あれは明日でいい。曖昧な箇所を2,3確認するだけだ。5分で済む」
 え、と思わず頓狂な声を出して、青木は目を丸くした。

「あの事件資料は一度見たことがある。まだ捜一に居たとき」
 ぽかんと口を開けたままその場を動かない青木に、薪は使い終わったタオルを放り投げて、「それ、風呂場に戻しておいてくれ」と遠回しに青木にもバスを使うよう命じた。
「新人の頃、資料整理やらされてさ。当時資料室にあった捜査資料は一通り眼を通した。その中の一つだった。だから事件そのものは覚えてるんだけど、16年前の話だから。記憶違いがあったら拙いと思って」
 濡れたタオルをタオル掛けに掛けて部屋に戻ると、今度はバスローブを放られた。四の五言わずに入ってこい、と言わんばかりだ。

「そういうわけだから、おまえも早く」
「それなら、あの場で確認すれば済んだんじゃ」
 青木が言葉を遮ると、薪はやや不機嫌な形に眉をひそめて、
「自分用に持ってきたんじゃない。竹内に渡すんだ。どの資料にヒントがあるかなんて教えてやらないぞ。何日も徹夜で調べて、関係箇所を探すといい」
 ……鬼ですか。

 動かない青木の背中を、薪が実力行使とばかりに両手で押した。その手を掴み、青木は薪の名を悲しそうに呼ぶ。
「薪さん」
 何度も命令を拒否されて、薪の眉が本格的に吊り上がった。青木にとって薪の命令は公私の区別なく絶対で、でもどうしても今日は素直に聞くことができない。
「あのダンボールいっぱいの資料、全部覚えてるんですか」
「今、言っただろ。僕が整理したって」
 しかしそれは薪が新人だった頃、16年も前のことだ。事件に直接関わったわけでもなく、整理のために資料をざっと読んだだけ。それも、膨大な数の中の一つに過ぎないものを鮮明に覚えている。そんなことが可能な頭脳。

 改めて突きつけられた薪の天才性に、青木は絶望する。
 彼がただの上司だった時節、見せつけられる度に憧れを強めたそれは、彼と恋人という関係になってからは、我が身との格差を思い知らされる最大の要因になりつつあった。
 一度見たものは忘れない、聞いたことも忘れない。そういう特別な頭脳を持つ人間に、自分のような凡人はどう映るのだろう。
 何もできない、無益な人間。そんな自分が彼のために何かをしても、果たして彼に届くのだろうか。
 つまらない人間が為したつまらないこと。青木がどれだけ尽くしても、自分の献身はその程度のことではないのか。薪はやさしいから、子供の手伝いを褒める親のように大して役にも立たない青木の仕事を喜んでくれるが、実際は何もしていないのと同じではないのか。

 結果を出せていない――青木が自分に不信を抱き出したのは、今年の夏。
 毎年、薪は夏になると精神的に不安定になる。それは彼の過去を思えば仕方のないことだが、睡眠不足が彼の美貌を儚くする様子を昼間の彼に見つけるのは辛かったし、現実にうなされる薪を見るのはもっと辛かった。苦しい以上に、悲しかった。
 青木は、自分の存在が薪を安定させると、無意識に自惚れていたのだと思う。

 あの夏の夜。自分が上げた悲鳴に驚いて飛び起きて、夢中で縋りついた青木の背中を爪で抉りながら泣きじゃくった。彼の痛みは5年前からまるで変わっていない――その事実に、青木は慄然とした。
 自分の愛で彼に辛い過去を忘れさせてみせる。そう誓ったのに。
 結局自分は、彼の役に立っていないのではないか。彼に捧げた愛も献身も、青木の自己満足に過ぎなくて。薪には何も届いていないのでは?

「そんなことはどうでもいいから、早く風呂に入って月見酒と行こ」
 それほど強く払ったわけではないけれど、薪の手首と青木の手のひらで立てたパシッという音は、薪の唇を強制的に閉じさせた。青木が薪の手を払うなんて、よほど激昂しているときだけだ。薪が一瞬で怯んだのも無理はなかった。
「……青木?」
 薪の声に滲んだ気遣いは、青木に届かなかった。短い下睫毛の上で、今にも表面張力を振り切りそうになっている涙を零さないようにするだけで、彼は精一杯だったのだ。

「オレは岡部さんみたいに仕事で薪さんの右腕になれるわけじゃないし、竹内さんみたいに薪さんが興味を持ちそうな事件情報を持って来ることもできない。未だにオレ、第九で一番仕事できないし」
「どうしたんだ、急に」
「急じゃないです。ずっと考えてました。オレはちっとも薪さんの役に立ててない」
「おまえの役立たずなんて、今に始まったことじゃ……なにも泣くこと無いだろ」
 不安定な恋人の不安定な感情に嫌気が差したのか、薪は小さくため息を吐いた。

「役に立ってる。今夜だって」
 おまえと一緒で楽しかった、と薪は小さな声で、それは不器用な彼の精一杯の意思表示だったに違いないのに、今夜の青木の胸には全くと言っていいほど響かなかった。
 悲しみが心を鈍くする。今の青木は、陰になった月の半分を見ることができない。

「具体的に言ってください。オレ、何の役に立ってますか」
「……コーヒーが美味い」
「あとは?」
「高い所のものを取るとき便利だ」
「それから?」
「おまえを苛めるとストレス解消になる」
「その他は?」
 見えないものを得たいと強く願う青木は、言葉に頼ると言う愚かな行動に出る。薪のような人間相手には、最悪の方法だった。

 くだらない質問を延々と繰り返す青木に、薪はとうとう切れて舌打ちした。いい加減にしろ、と青木を一喝し、
「何を拘ってるのか知らないけど、おまえにはおまえの役割があって」
「つまんないことばっかりですよね。オレができることって」
 自分で言って、涙が出そうになった。言葉にしたら本当に自分が何の役にも立たない人間に思えて、もうそれはいっそ確証になって、青木を手酷く打ちのめした。
「もっと肝心なことで、あなたの役に立ちたいのに」
「仕事のことは仕方ないだろ。みんなおまえよりも先輩なんだから」
 仕事人間の薪は「肝心なこと」と言えば、すぐに仕事の話になる。青木が言いたいのはそういうことではない。薪に自分の考えが思うように伝わらないのはいつものことで、だけどこの日に限って、青木にはそれが許せなかった。

「おまえの価値は、その、主にプライベートで」
「オレは」
 こちらの方面の会話はひどく苦手な薪が、苦心して口にしてくれたのだと思うそれを、分かっていながら青木は遮った。言葉を止めることができなかった。
「オレは三好先生みたいに薪さんと大学時代の話もできません。岡部さんみたいに、子供の頃に見たアニメの話もできない。オレにはあなたと共有できるものが何もないんです。そんなつまらない人間とプライベートを過ごして、本当に楽しいですか?」
 そう尋ねると、薪は黙って青木を見据えた。睨まれるのではなく、見守られるではもっとなく、道端の石ころでも見るかのように何の感情も篭もっていない亜麻色の瞳。青木の腹の底がすうっと寒くなった。

「じゃあ、話すこともないな」
 吐き捨てるや否や、薪はバスローブを脱いだ。彼らしくもなく床に落としたそれを乱暴に踏みつけて、備え付けのクローゼットからさっき仕舞ったばかりの衣服を取り出す。
「帰る」
 2分もしないうちに身なりを整えた薪が短く予定を告げるのに、青木はようやくに自分の役目を思い出した。
「車、回してきます」
「けっこうだ。今夜はもう、おまえの顔見たくない」
 背を向けられて、青木は焦る。とんでもないことをしてしまった、という後悔が押し寄せる前に、薪の冷たい横顔を観ただけでパニックに襲われていた。
「待って、待ってください、薪さん。すみません、二度と言いませんから」
 見苦しく取り縋った。こういう行動は相手の気持ちを冷めさせるだけだと分かって、だけど青木はそうせずにはいられなかった。引き際の潔さは竹内に全く勝てない、と青木は思い、そうしたらますます自分が駄目な男になった気がした。

「ま」
 ばん、と青木の目の前でドアが閉まり、青木は言葉を失う。追い駆けろと心の奥で叫ぶ声があったが、その勇気が持てなかった。最後に見た薪の背中は、はっきりと青木を拒絶していた。追い駆けて、決定的な言葉を薪の口から告げられるのが怖かった。
 とぼとぼと戻って、ベッドに腰掛けた。ぼんやりと窓の外を眺めたけれど、その位置からは夜景も月も見えなかった。
 床に眼を落とすと、薪が脱ぎ捨てたバスローブが見えた。今宵の主を失くしたそれは冷ややかな空虚だけを抱いて、いつまでもそこに横たわっていた。




*****

 わーい、ケンカだケンカだww。←おい。

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Sさまへ

Sさま。

お久ですっ。 でもっていきなり、

>……私は楽しくないですよ。

すみません!!(>▽<) ←全開の笑顔とはこれいかに。
なんかSさんに言われると笑っちゃうんですよ~~~。


>しづさんですしね…。

やん、あんまり褒めないでww。 ←空気読めない。
そうですねえ、こういう仕様だと思って諦めてください☆
これからもうちょっとだけすったもんだしますが。
大丈夫、仲直りのシーンは甘いですよ♪(当ブログ比です、よそ様のアツアツ青薪さんと比べないでねっ) 

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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法医第十研究室へようこそ!
メロディ6月号、読みました。
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