ランクS(7)

 憧れのメロンさんとリンクしてもらいましたー。(^^)
 ご紹介するまでもないと思うので今回はパスです。 何言っても蛇足になる。 言語で絵の美しさを語るには限界があるのですよ。←語彙力貧困者の言い訳。
 Nさんじゃないけど本当に、アニメのキャラデザと作画、メロンさんがなさればよかったのに~。

 





ランクS(7)







 翌日の朝、青木は捜査1課を訪れた。昨日、入手してきた資料を竹内に渡して来いと薪に命じられたのだ。
「悪かったな、青木」
 捜一の仕事なのに、と竹内は済まなそうに箱を受け取り、心安い笑みを見せた。
「いえ。あと、室長から伝言です。この中に有力な手掛かりがあるから、よく確認してくださいって」
「え、どこに」
「それが……訊いても教えてくれなくて」
「徹夜して探せばいい」などと上司の意地悪をそのまま伝えるわけにも行かず、青木は口ごもった。何とか上手いフォローはないものかと考えるが、思いつくのは白々しい嘘ばかりで、余計に竹内を怒らせそうだった。

「はは、室長らしいな。ま、俺でもそうするけど」
 意外なリアクションを受けて、青木は眼を瞠る。薪の仕打ちは鬼だと思ったのに、常識人の竹内がその行動に賛同するなんて。
「だってそうだろ。犯人はあの男で間違いないし、これ以上被害が拡大することもない。あと必要なのは、本当の動機を見つけることだけだ。この事件が犯人の動機に深く関わっているのなら、細部に至るまでしっかり読み込んで理解すべきだ。それは事件担当者である俺の仕事だ」
 合理性や時短などが優先されがちな一課の仕事だが、警察の仕事で一番大切なのは犯罪を防ぐことだ。それには犯人の心を理解し、その上で彼らを送検することが重要だ。再犯防止は取調室から始まると言っても過言ではない。
 昔、捜査一課に在籍していた薪はそれを知っていて、だから竹内にはちゃんと彼の気持ちが伝わったのだ。単なる意地悪だと思った自分を、青木は峻烈に恥じた。

「青木。室長に礼言っといてくれ」
 よっ、と段ボール箱を持ち上げて踵を返そうとした竹内は、青木の顔色に気付いて足を止めた。カウンターに箱を戻して青木の顔を下から覗きこみ、「どうした?」と優しく聞いた。言い方が薪にそっくりだと思った。竹内は捜一のリーダー、部下の悩みを聞くことも多いのだろう。またひとつ、二人に共通する項目を見つけて、青木はジリジリと焦げ付くような痛みを覚えた。
「なんかおまえ、今日めちゃめちゃ元気なくない? ていうか、眼、赤くない?」
 薪とケンカしてしまったのだ。当たり前のように寝不足で、食欲もない。
「昨夜ちょっと寝不足で」
「なに。もしかして女?」
「……実は」

 話の内容を察して、竹内は青木を喫茶室に誘ってくれた。喫茶室と言っても自動販売機と吸引式灰皿が3台と古ぼけた3人掛けのソファが2つ置いてあるだけの部屋だが、始業前にここを利用するものは少ない。内緒話には適していた。
 そのとき青木が竹内に昨日のことを話してしまったのは、相談したかったわけじゃない。優越感を抱きたかっただけだ。
 竹内は薪のことが好きで、捜査官としての彼をとてもよく理解しているし通じるものも多いけれど、現実に薪の傍にいて彼と過ごしているのは自分なのだと、自分に言い聞かせたかった。もちろん薪の名前は伏せて、相手は交際中の彼女だと偽ったが、後から考えてみれば危ない橋を渡ったものだ。

「ふーん。仕事に付き合って欲しいって頼まれて、帰りにホテルのレストランに誘われて、彼女がもっとワインを飲みたいからって部屋を取ったと。おまえ、その状況で『これから仕事だったよね』て相手に言ったわけ? バカ?」
「だって最初からそういう約束で」
「それ、普通にホテルデートじゃん」
 ホテルデート? 薪が?
 ないない、と青木は首を振った。

「それは違います。そういうことしてくれる人じゃないんですよ」
「どう聞いてもそうとしか思えないけど。ちなみに何処のホテル?」
「横浜のPホテルですけど」
「ほら見ろ、確定だ。夜景が綺麗なことで有名なホテルじゃないか。しかもスカイレストランの窓際席なんて、飛び込みで取れるもんじゃないだろ。彼女、前々からおまえのために予約してあったんだよ」
 さすが竹内、デートスポットと女心には詳しい。が、この場合は当てはまらない。薪は男だからだ。

「昨日は火曜日でしたし、たまたま空きがあったんじゃないですか。本当に、夜景とかホテルデートとか、そういうロマンチックなシチュエーションに興味がない人なんですよ。基本、床に胡坐で家飲みだし」
「ふうん。いま流行のオヤジ系女子ってやつだな」
「オヤジ系というか、オヤジそのものというか」
「そんなにオヤジ化が進んだ女なのか? おまえも変わった趣味してんな。……まあ、俺も今のところ、人のこと言えないけど」
 竹内がそんなことを呟いたから、青木は内心、ひどく驚いた。竹内の彼女と言えばモデルとか女優の卵とか、とにかく人目を惹く美人と相場が決まっていたのに、現在はオヤジ系女子と付き合っているのか。興味はあったが、それを聞くと自分のことも話さなくてはいけなくなるので、聞こえなかった振りをした。

「どっちにせよ、女が『らしくない』行動を取るときってのは何かあるんだよ。そこを察して、彼女が胸のうちを曝け出せるようにしてやるのが恋人の役目だろ」
 なるほど、捜一の光源氏らしいポリシーだ。青木の相手は女の子ではないが、竹内の言うことにも一理ある。
 思い出してみれば、昨日は珍しいことの連発だった。薪は何か自分に話があったのかもしれない。それは重要なことで、それでホテルのレストランに誘ったのかも。

「昨日はオレ、ちょっと考えてたことがあって」
「だろうな。おまえ、少しヘンだったよ」
 竹内が薪を送ると言ったとき、ついムキになってつっけんどんな態度を取ってしまった。竹内が違和感を覚えたのはそのことだろう。
「言ってみろよ。恋愛相談なら仕事より得意だぜ」
 竹内が奢ってくれた缶コーヒーを弄びながら、青木は痛烈な自己嫌悪を味わっていた。竹内は親切心から忙しい時間を割いて青木の相談に乗ってくれているのに、自分の本心は彼に負けたくない気持ちでいっぱいだ。いつの間にこんなに嫌な人間になったのだろう。謙虚さとか素直さとか、若輩ゆえに手にしやすい美徳を、自分はどこで失くしてきてしまったのだろう。

「オレ、本当にダメだ……」
「そうだな。なに考えてたか知らないけど、自分の考えで頭いっぱいで、彼女のオトメ心にも気付いてやれないようじゃダメだな。……俺も人のこと言えないけど」
 竹内もオヤジ系女子に振り回されているらしい。敢えて聞かないが。
「ですよね。オレ、あの人に相応しくないのかも」
「なんでそう思うんだ」
「すごくレベルの高い人なんです。仕事もできるし、美人だし、年上だし。オレみたいに低スペックの年下と付き合うより、もっとあの人を幸せにしてあげられる人が沢山いるんじゃないかって」
「それはおまえが決めることじゃない。彼女が決めることだ」
 それはそうだと思った。薪が自分で選べばいい。青木が口を出すことじゃない。
 だけど、そう潔くはなれないのが恋の厄介なところで、青木のように直ぐに気持ちを切り替えられない男には、スマートな恋愛はなかなかに難しい。

「彼女に決めさせるんだ。おまえはおまえらしくしてりゃいい」
「竹内さんみたいに、自分が相手に選ばれる自信がある人はいいですけど」
「俺だって自信なんかないよ。ここ4年ほどで何人の女に振られたか知ってるのかよ」
「え。竹内さんでも振られることなんてあるんですか?」
 オブラートも被せずに聞き返してしまった。それほど驚いたのだ。竹内は一瞬固まり、缶コーヒーの小さな飲み口から中身が噴き出るほど強く缶底をテーブルに打ちつけながら、
「ああああああるわけないだろ! 俺を誰だと思ってんだ、捜一の光源氏だぞ!」
 意外と分かりやすい。
「他人にヘンなこと言うなよ?!」
「はいはい」
 青木が気のない返事を返すと、竹内はわざとらしく咳払いをして、「とにかく」と仕切り直しの言葉を発した。

「男なら、いつも余裕を持ちたいよな。お互い頑張ろうぜ、オヤジ女子の攻略」
 はい、と青木は頷いた。なんだか少し、肩が軽くなった気がした。





テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま。


>恋のアドバイスはやはり、竹内さんですね(^^)

そらー捜一の光源氏ですから☆
しかし、恋多き彼も真剣に恋をするとスマートではいられないようで。 薪さんと雪子さんには振り回されております。 不憫ww。


青木さんは悩み多きお年頃ということで。
でもわたし、悩む青木さんは好きです。 絹子事件のときとか、すごく誠実さを感じました。


>薪さんが自分に何を求めているのかまず、気づく必要があるかなあ・・

これ、難しいですよね。
相手が自分に何を求めているのかって、わたしもしょっちゅう考えますけど当たった試しがないww。 
人の気持ちなんて分からないですよ。 自分が相手に求めているものすら、突き詰めて考えていくとハッキリ言えませんもの。
それでも考えること、理解しようとする努力を放棄してはいけないのだと思います。 これはそういうお話です。


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Sさまへ

Sさま。

とても大変な毎日を過ごされていることと思います。
それでも少しずつ、前に進んでらっしゃる。 記事を読むたびに、がんばれ、って心の中で思ってます。 もう十分がんばってるSさんには必要ない言葉だけど、やっぱり励ましたいの。



>ところで、青木君、いつになくマイナス思考だわ。
>こんなロマンティックな状況を自分で壊してどうするよ、青木!!

前向きなところが彼の魅力なのにね~。
前向きな人には、いっぱい悩んでその上で前向きになれる人と、嫌なことは見ないようにして前向きなこと言ってる人と、2種類あると思うんですよ。
青木くんには前者になって欲しいので、こういうエピソードも入れてみました。(ケンカが好きなだけでは?とか言わないでww)


>この頃って、薪さんが本格的に青木君に惚れ始める頃かなあ。

そうですね。
薪さんの身体の成熟度と恋心は無意識に比例してるので。 大分参ってますね。


>温泉大好き、日本酒大好きのおやじ薪さんにしては、みなとみらいのホテルでワインなんて、まあ、なんて薪さんの風貌に似つかわしい…じゃなくて、しづさんのなんて素敵な読者サービス!(けんか別れしててサービスってあんた、かな笑)

(  )内のSさんのお言葉に尽きますね。(笑)
薪さんは青木さんに喜んでもらおうとサービスしたつもりなのにねえ。 うまく行かないですねえ。

Sさまは昔、横浜にお住まいだったんですね。 いいなあ。都会の生活、憧れます。
実地の経験はまだなくて(笑)、もっぱらネットで得た情報をさも本当らしく書いてます、ので、内装などは近場のホテルがモデルになってます。 ホラ吹きですみません。


>偶然だけど、「ランクS」のupが始まる直前に、何度目かの「スキャンダル」読み終えてたので

ありがとうございますー。
何度も読み直していただいて、果報者でございます。(;▽;)

そうか、徳川園は駅から遠いのかwww。
本当だ~、名古屋駅からだとバス使わないと行けないんですね☆ 時間あるときに修正しときます。 教えてくれてありがとー(^^



>コミックスを実写化したとしたら配役は

薪さんはやっぱり hyde さんなんですね。
青木さんは伊藤英明さん? 一本気で熱い感じが出てますね。 明朗快活で素直そうだし。
彼は役柄的に「不死身の男」って感じがするので、わたしも賛成です。(^^



>青木君、まだ浮上できないかな…。最後はラブくなるといいな。
>クールから一転して甘える薪さん、可愛くて好きだもん(*^-^*)

ケンカの後は仲直りですよね。 そこが楽しいんですよね。(^^
最後はそれなりにラブくしたつもりですが、あくまで当ブログ比なので~、でもSさんに喜んでもらえるといいな。

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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法医第十研究室へようこそ!
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