ミッション(4)

 辻褄合わせの雑文、これでおしまいです。 つまんないもの読ませちゃってゴメンナサイ。 
 次の本編はこれよか幾らかマシだと思います。 よろしくです。






ミッション(4)












 幸せだ、と青木は思った。
 やさしさと慈しみと愛情に満ちて、こんな夜なら何度やり直してもいい。
 この後に続く行為もこんな風に流れていくのだろうと青木は思い、でもそのときになったらきっと、初めてを装うことなんかできなくなってしまうだろうと予想する。自分の下で乱れる薪の、あんなしどけない姿を見たら。青木の中には一片の理性も残らない。その辺は薪も分かっていると思っていた。
 ところが。

 未だ着衣のままでいる薪のパジャマを脱がせようと青木が腕を解くと、薪は突然起き上がり、
「よし、ミッション完了!」
 ……えっ!?
「あー疲れた、肩凝った。慣れないことはするもんじゃないな」
 薪は身軽な動作でベッドから下り、手を組み合わせて腕を頭上に伸ばした。それは薪がデスクワークの途中で時折見せる肩凝りをほぐす仕草で、彼が本当に気疲れしていることの証だった。

「ちょっと待ってください。これでお終いなんですか?」
 勢いよく半身を起こし、青木が当然の抗議をすると、薪はキレイな顔を歪めて吐き捨てるように言った。
「若いってのは面倒だな。仕方ない。もう一度だけだぞ」
「いや、オレじゃなくて。薪さんの方が」
「僕はいい。てか、この先のことはシナリオに無いし」
「はあ!?」
 シナリオに無いって、ここから先が重要なんじゃ!?

「どうしてですか」
 期待を裏切られた気持ちで青木が非難がましく尋ねるのに、薪は困った顔になって、
「僕ができるのはここまでだ。この先は無理」
「そんな中途半端な」
「中途半端って言われても。これ以上、僕にどうしろって言うんだ。まさか青木、僕に男役やって欲しいのか?」
「薪さんがしたかったら受けますけど、できれば役割はいつもの分担で」
「そのパートでどうやってリードするんだ?」
 心底不思議そうに訊いてくる薪に、青木は彼の輝かしい性遍歴を思い出す。片手に余るほどの、しかも相手は9割が玄人女性というスカスカな経験しかしてこなかった。そもそもベッドの中で主導権を握った事があったのかどうかも怪しいのに、自分が受ける側に回ったら尚更どうしていいのか分からないに違いない。
 そこを責めたら薪がカワイソウだ。しかしここで完結されたら青木はもっとカワイソウだ。
 WinWinの精神で青木は自分を導いてくれた年上の女性達のことを思い起こし、最も容易いと思われる解決法を提案することにした。

「薪さんがどうして欲しいか、口で言ってくれればいいんですよ」
「ばっ……!」
 大きく口を開いて、しかし言葉は中途で止まる。見る見る顔を赤らめて、ついさっきまであんなに淫らなことをしていたはずのくちびるが激しい拒絶の形に歪められた。
「そんなこと、言えるわけないだろっ」
「普通はみんなそうしますよ」
 最初なんてそんなものだ。いくら男同士でも別々の人間なのだし。性感の強さもそれぞれ違うのだから、力加減とかポイントとか、口に出さなかったら伝えようがない。
「だからそれはAVの見すぎだって」
 どうしてオレって周りの皆にAV大好き人間だと思われてるんだろう。自分では1本も持ってないんだけどな。
「そんな恥ずかしいこと、口に出すくらいなら痛いほうがいい」
 だからあの時、あんなことになっちゃったんですね……。

 薪の複雑な性格と、性に対する極度の恥ずかしがり屋な性癖を考え合わせ、納得して、青木は計画を変更することにした。
「じゃあすみません。もう一度だけお願いします」
 うん、と頷いてベッドに近付いてきた彼の腕を捕らえ、さっと引き倒す。カンのいい薪は直ぐに青木の意図を察したが、その時には既に背後から押さえつけられる形でベッドにうつ伏せになっていた。
「こ、こら! よせ!」
 起き上がろうとするのを敢えて止めず、上体を起こしたところで素早く仰向けに組み伏せる。彼の両手をベッドの上に自分の両手で縫いとめ、悪態を吐こうとした口唇を唇でふさいだ。んんっ、と呻いて首を振ろうとするのを強く吸い上げて為させない。
「やっ、あっ」
 僅かに逃れるもそのくちびるはたった二文字の単語を綴ることも許されず、また青木に捕らえられる。言葉どころか呼吸さえままならない激しい交合に、次第に抵抗が弱まっていく。

 やがて押し返そうとしていたはずの手指はしっかりと青木の指に絡み、拒んでいたはずのくちびるは開かれて。受け入れた青木の舌を確かめるように、薪の舌は忙しく動く。
 互いの口中で生まれて混ざり合うことで甘さを増した液体を二人は、この世に一杯しかない貴重な美酒を分け合うように飲み下し、それでようやくくちびるを離して息を吐く。

「もう……どうしていつも不意打ちなんだよ、おまえは」
 詰るような言葉とは裏腹にすっかり蕩けた様子の亜麻色の瞳を見れば、この先の展開は容易に想像がついて。いつもの余裕を取り戻した青木は、貝殻みたいに白くて形の良い耳を唇に挟み、その中に息を吹きかけながら、
「だって。そうしなかったら薪さん逃げちゃうでしょ」
「そりゃあおまえ。明日の予定とか考えたら、被害は最小限に留めたいと思うのが人情だろ」
「『被害』って言い方はないでしょう?」
「じゃあ災害」
「……覚悟してくださいね」
「冗談! 冗談だからっ、ちょっ、待っ、放せえええ!!」
 声の調子をガラリと変えて脅すように言えば、過去の悪夢を思い出したとでも言うように薪は大げさに抵抗してみせる。

 それは彼らにとってはデモンストレーションのようなもの。
 逃れようとする薪の身体を両腕で戒めて、覗き込めば笑いを堪えた薪の顔。眼が合った途端吹き出すように笑いあって、やっぱりベッドの中の薪はこれくらいコケてた方が楽しい。

 クスクス笑いが収まらない恋人の、パジャマのボタンを青木の指が外していく。露わになった彼の首筋から胸に掛けてのラインを指先でくすぐると、こそばゆそうに彼は華奢な肩を自分の右耳に擦り付けた。
「ここ、感じるんですよね?」
 先刻、ここを弄られてもくすぐったがるばかりの青木を不思議がっていた彼に、自分がされたことをそっくり返してやる。すると彼は青木とはまるで違った反応を示した。
 あっ、と仰け反り息を詰め、ひくっと背筋を震わせる。指と唇で丹念に捏ねれば小さな実は赤みを増して、その熟度と糖度を色合いに映し始める。青木の唇から与えられる刺激で濃密さを増す甘味はやがて彼の身体中に広がり、吐息に声に、青木に縋る指先に、僅かな焦燥を加えて滲み出す。
 せわしさを増す呼吸の下で薪が青木の名を呼ぶ。くびれた腰の辺りに埋めていた顔を上げて彼を見ると、上気させた頬と潤んだ瞳にぶつかる。その視線が恥ずかしそうに彷徨う先を追えば、彼の求めるものは直ぐに分かる。
 ズボンに手を掛ければ素直に腰を上げる。自分から膝を曲げて青木の仕事に協力する。触れるだけで開かれる両脚は、その間に青木が入って自由に振舞えるだけのスペースを用意してくれる。

 薪の手が青木の頭髪に触れ、愛撫するように指先が動いた。
 細い指先と青木の頭部は同じ意志を持って動くひとつの生物のように、その動きを等しくする。薪は手に力を入れない、でも青木は決して動く方向を間違わない。
 青木、と薪がもう一度名前を呼んだ。同時に青木は薪を口中に収める。計ったようなタイミングに、薪は思わず声を上げる。
 内腿を震わせて、その白い肌を薄紅色に染め替え、爪先でシーツを乱す。短い声を洩らしながら何かを打ち消すように首を左右に振る。でもうれしいことに、彼の手指はしっかりと青木の頭髪に絡んで青木をそこから離そうとはしない。
 青木の口中で弄られた薪は、次第に青木の唾液以外のものでその身を濡らしていく。薪の快楽を立証するそれを、先端を甘噛みするようにして吸い取り、下方へ唇を滑らせる。行き止まりの部分を舌先で捏ねながら、ますます自身を濡らしていく薪の蜜汁を親指で弄った。

 んん、と呻き、薪が両の爪先と背中で体重を支えて腰を浮かせれば、ベッドと薪の間に青木の手が入れる分の隙間が空いて、次の段階に進むときがきたことを青木に教える。薪のそこは、解れるまでの時間と具合で今日の体調と気分を青木に伝えてくる。自分からあんなことを仕掛けてきただけあって、今日の彼は心身ともに二重丸。
 やわらかい肉の奥、さらりとした彼の肌からは想像もつかない淫蕩な感触の内部。それを恥らうように薪は初めこそ侵入者を拒む素振りを見せるが、青木の指がある意志を持って動くのを知るとすぐに警戒を緩める。その後は青木に協力し、青木の指が簡単にその場所を探り当てられるように、やや前方に腰を突き出す。
 青木の髪に絡ませるだけで満足していた薪の指が、ぎゅっと握られたら正にそこ。逃さず攻めればキュンと締まる肉の感触と、じわりと湧き出す液体。控えめだった薪の声は、引き攣れたような悲鳴に変わる。
 薪の指に挟まれた青木の髪が痛いほど引っ張られて、それに気付く余裕もないのだと青木に訴えてくる。あおき、と彼が最後に名前を呼ぶのは、もう一刻の猶予もなくなるまで追い詰められている証拠。

 青木は指を抜き、彼の太腿を両手で持ち上げて自分の膝の上に乗せた。与えられる刺激が止んだこの隙に幾らかでも理性を戻そうとする薪にその間を与えず、青木は彼の両足を腕で押すようにして開かせ、今まで自分の指を埋めていた場所にそれに代わるものを擦り付けた。
 薪の入り口は、青木が指を引き抜いた際に中から漏れ出した液体で濡れている。その周辺をなぞる棒状の熱源は、彼の理性を奪った指よりもっと彼を狂わせるもの。
 その熱で表面を擦られ、互いの体液が混ざり合う。大きく動かせば薪自身の熱と触れ合って、薪の身体を大きくわななかせる。

 薪さん、と青木が呼びかければ、薪はきつく閉じていた目蓋を苦しそうに開いて、すっかり涙に濡れた亜麻色の瞳を覗かせる。弱気に下げられた眉と、やや垂れた眦の愛くるしさに青木が男の本能を掻き立てられると、薪は自分から腰を動かして、つながりやすい位置関係にその身を置いた。
 薪の意思を確認して、青木は彼に捧げる次の快楽の準備をする。薪が自ら用意してくれたアイテムと、ベッドシェルフの引き出しに入れてある小瓶。どちらも薪の身体のために必要なものだと、今の青木は知っている。
 青木の指で最高のコンディションに整えられたその場所は、軽く力を入れるだけで簡単に青木を飲み込んでいく。くぐもった呻き声を上げながらも薪の足は青木を抱え込むように動き、両腕は青木の背をかき抱く。
 青木のすべてが薪の中に入ると、薪は深く息を吐き、くちづけを求める形に唇を開いた。誘いにのって青木が薪のくちびるを塞げば、彼は青木の首に摑まるようにして腰を浮かし、動くよう促した。

 薪の狭い肉は動き出そうとする青木を制約する。しかし青木の舌を夢中で吸い上げる彼のくちびるは、それを全力で否定する。
 細い腰を両手で掴み、彼の奥に何度も打ちつける。たまらず、くちびるを離して大きく喘ぎ、薪は左右にかぶりを振った。青木が抽挿を穏やかなものに変えると、薪は青木の背中にしっかりと抱きつき、自分から腰を揺らしてくる。
 激しいものを欲しがっていると分かる、その動き。応じて力強く繰り返せば、背中に回った薪の指が猫のように立ち、薄い爪が青木の肉に食い込んだ。
 短い悲鳴を上げ続けながら、薪は懸命に青木の動きに合わせて身体を揺らす。その声と美肉に酔いしれるように、青木は夢中で彼を抱く。ベッドが軋む音に薪の声が重なって、部屋は官能のメロディに満たされていく。

 二人してそのときを迎えそうになって、でもまだ終わりたくないと青木は思った。だって今夜の営みは常になく素晴らしくて、あっさりと到達してしまうのが惜しいような気がする。
 多分薪も同じ気持ちで、だから青木が動きを止めたとき薪も静止したのだと思う。ふたりとも自分からは動かずに、つながったまま呼吸が落ち着くのを待つ。

 薪は大きく息を吐くと、眼を開き、青木の顔をじっと見た。
 背中に回していた手を青木の顔に移動し、彼の額に掛かった前髪を軽く持ち上げる。前髪の下の額には汗が浮いていた。その味を確かめるように、薪は青木の汗がついた指先を自分のくちびるに含むと、指を咥えたままで青木を見つめた。
 亜麻色の瞳が意地悪そうに眇められる。何か企んでるな、と青木が思っていると、薪は自分の中の青木を意識的に締め付け、力を入れたまま腰を捻った。
 中で捻られた状態になって、青木は思わず声を上げる。
 ただでさえ締め付けのきつい薪の中、彼の肉壁は青木に吸い付くように絡んで、その状態で捻られたら堪ったものじゃない。強い快感に脳が痺れそうだ。
 思いがけない逆襲に、青木は再開を余儀なくされる。
 薪の身体を横向きにし、彼の片足を自分の肩に乗せ、捻った形で律動を始める。左肩を上にした薪の手が伸びて、シーツをぎゅっと握り締める。ベッドが軋むたびに零れる艶っぽい声と、さらに青木を煽り立てようとする彼の腰の動きは、彼がこの体勢での交わりを望んだ証明。

 女性パートからリードなんかできない、と薪は言ったけれど。いつだってこうして彼は青木を導いている。それは薪が考えている年上の恋人の導きとはまったく別のものだけれど、結果的には同じことだと青木は思う。
 そしてまた、薪も思っている。
 僕が欲しいものを間違いなく差し出す、青木はいつの間にそんな能力を身につけたのだろう。最初の頃はタイミングも呼吸も合わなくて、あんなに苦労していたはずなのに。今では隠したいと思う最高に恥ずかしい部分まで見透かされて、身も世もなく善がらされて。
 本当はこうして青木に抱かれるのがうれしいと、身体で白状させられて、口惜しいと同時に幸福でたまらない。
 一番知られたくない僕の真実。それもおそらく青木には分かっている。だからあんなに強引に仕掛けてこれるのだろう。
 まるで、僕の心が読めるみたい。

 互いの足を十字に組み合わせる形でつながって、青木は薪の奥を穿つ。薪が激しくかぶりを振って、青木の方へ手を伸ばしてくる。
 その手を捕らえて指を絡ませ、再びベッドに押し付ける。薪はきつく眼をつむって、青木の肩に掛けた左足を支えに、ぐんと腰を捻った。それはもっと強くと彼を求める仕草。
 薪さん、と彼の名前を呼びながら青木は彼を貫く所作を速くする。薪は細い指を青木の手の甲に食い込ませるように、強く強く手を握る。
 薪の爪が白くなり、青木の指が痛みを覚え、しかしそんな微かな痛覚など消し飛ぶような快感の中で青木は自分を解放する。その後を追うように、青木を包む薪の肉が大きく震え、崩れていくような声と共に薪は果てた。

 青木の左腿に飛び散った薪の白濁の、微かな温もりを感じる。自分の汗と混じり合って腿を伝い落ちていく彼の残滓を青木は指先で掬い取り、薪がしたようにそれを口に含んだ。純粋な薪とは違う味。少しだけ塩気があって味わい深い。
 力を失くした青木を受け入れたまま、茫洋としていた薪の瞳が瞬いて、物欲しそうに青木を見た。これは薪の口には合わないだろうと思いつつ、青木は自分の太腿から一粒の混合液を掬い、薪の口にそれを運んでやった。
 薪はちょっとためらってからチロッと舌を出して青木の指を舐め、ウッと横を向いた。
 やると思った。薪はこういうのは苦手なのだ。その最中で興奮状態にあれば可能かもしれないが、冷めていく途中にあっては絶対に無理だ。
 薪の口元にティッシュを持っていくと、薪は青木の手から紙を受け取って口を隠し、もごもごと動かした。
 それから、今度はしっかりした眼で青木を見据えると、
「おまえってエスパー?」

 ……薪の考えることはやっぱりよく解らない。


(おしまい)


(2011.2)



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま。

そうですかあ? てれてれ。
二人とも成長したんですねえ。しみじみ。


>原作の青木って、最終回に近づくと予知夢をみたり、エスパーみたいでしたね(笑)

そうそう、きっと次は空飛ぶよ、とか言われてww。
尤も、青木さんは薪さんに関しては最初からエスパーだったんですよね。 何となく居場所が分かるとか、薪さんが鈴木さんの脳を見に来る日時が正確に分かっちゃったりとか、テレパス☆

Ⅰさまへ

Ⅰさま。

ありがとうございます。 「けなげ」に1票いただきました♪
うちの薪さんは本当にオヤジ体質で、健気さはあっても言葉足らずで不器用なんです。 分かり難いけど、可愛いですよね(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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