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若いってこわい(4)

若いってこわい(4)






 その年の、12月24日。

『鈴木? 今日、僕の誕生日なんだけど』
 薪のいつものわがままで、鈴木はせっかくのイブの夜のデートをキャンセルさせられた。当然、彼女はものすごく怒って、結果ふられた。
 まあ、しかたない。薪のほうが大切だ。
 今日があいつの誕生日なのは知っていた。そんな日にデートの約束を入れた自分も悪かった。薪のほうにも予定があるだろうと思っていたのだが、そうではなかったらしい。あんなにもてるのに、おかしなヤツだ。

 イブの夕刻の喧騒の中、花とケーキを買って薪のアパートへ向かう。
 男の部屋を訪ねるのに花とケーキもないものだが、なんとなく薪には不自然じゃないようない気がする。薪は花が大好きだし、鈴木は甘いケーキが好物だった。

「彼女、どうした?」
 寒風吹きすさぶ屋外から暖かい部屋の中に入って、開口一番、薪が聞いてくる。自分でキャンセルしろと言っておいて、どうしたもないものだ。
「めちゃめちゃ怒って、フラれた」
「ふうん」
 うれしそうだ。
 まったく、こいつには振り回されてしまう。今までに何人の彼女と別れさせられたか。しかし、何故か嫌いになれない。
 鈴木が持ってきた花束を抱いて、にっこり笑う。このあどけない笑顔のせいか。天才と称される明晰な頭脳のせいか。それとも時折みせる翳りのせいか。

「鈴木。晩メシどうする? どっか行く?」
「どこも混んでて、レストランなんか入れないぞ」
「あれ、彼女とのデートに予約したレストランは? まさかキャンセルしちゃったのか? バカだなあ」
 ……このジコチューな性格のせいかもしれない。
「今日は彼女の家で、手料理の予定だったの」
「へえ。じゃ、よかったじゃん。まずいもの食わされなくて。僕に感謝しろよ」
 我儘もここまでくると、見事としか言いようがない。
 なんだか自分と会ってから、薪はどんどん我儘になっていったような気がする。甘い顔をしすぎたかな、と少し反省するがどうにも逆らえない。

「昨日のビーフシチューなら残ってるけど、食べる?」
「やった。薪のビーフシチュー、最高に美味いもんな」
 残り物と言いながら、薪は次々と料理を出してくる。オードブルからサラダまで、手がこんだものばかりだ。量もたっぷりとあって、これは朝から鈴木のために用意していたに違いない。
 来て良かった。薪の料理は絶品だ。
 牛スネ肉がとろけるまで煮込んだシチューに舌鼓を打つ頃には、鈴木は2ヶ月前からクリスマス用に付き合い始めた彼女のことなど、すっかり忘れていた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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