夢のあとさき(6)

 こんにちはー。
 
 ここ2ヶ月ばかり、鈴薪妄想しかしていないことに気付きました、あおまきすとのしづです。おかげで切実な青薪不足です。
 こういうのも自業自得っていうのかな。




夢のあとさき(6)






「薪さん、起きてください」
 揺り起こされて気が付くと、そこは車の中だった。

「着きましたよ。早く行きましょ」
「着いたって、どこに」
「東照宮ですよ。家康公の墓所、お参りするんでしょう?」
 青木の言葉に周りを見回せば、相も変わらずごった返す人混みと神社を抱く広大な森。
 思いついて薪は、眼前の男の滑らかな額を手のひらでパシッと叩いた。「痛い!」と大袈裟な悲鳴を上げる男に冷ややかに言い放つ。
「ダメだろ。ボディガードが対象から離れちゃ」
「すみません。……え?」
 身に覚えがなくても、青木は薪に怒られたら条件反射で謝るクセが付いている。夢の中の出来事を持ち出して八つ当たりされるのなんかしょっちゅうで、でもその理不尽を飲み込めないようではこの人とは付き合えない。

「絶対に僕から離れるなよ」
 そう言って、薪はシートに置かれていた青木の手を握った。温もりを感じて安堵する。夢で良かった。
 何となく放し難くて、人混みを幸いに手をつないだまま歩いた。他人の眼は、その時は気にならなかった。知り合いにさえ会わなければいいのだ。青木はとても嬉しそうで、それだけでも危険を冒す甲斐があると薪は思った。

 入口に近いこともあって、先に鳴竜を観ることにした。過剰な見学者数に薬師堂は入場制限がされており、薪たちは2回の入れ替えの後ようやく天井の竜と対面となった。

 お堂の中ほどに柵で仕切られた一画があり、そこに男性の係員がいた。修行僧のような恰好をして、拍子木を持っている。彼はその拍子木を部屋の隅と竜の頭の位置で交互に叩き、響きの違いを観光客に聞かせていた。部屋の隅で打ち鳴らされた拍子木がカンと乾いた音を立てるのに、竜の頭の下で発せられた音は、くわんくわんと長く響く。
「今日は鳴竜も大忙しですね」
 青木は面白そうにその様子を見ていたが、構造に興味があった薪は、天井の板の形状や材質などを観察していた。天井一面に描かれた竜、あれは只の画だ。今にも動き出しそうな迫力のある絵だが、このアトラクションの中枢は天井板が形成する緩やかなアーチなのだ。両端を僅かに曲げることに因って、跳ね返った音を部屋の中心に集めるような造りになっている。重なった音は増大し、人の耳に竜の鳴き声になって届く、という仕組みだ。

 こけおどしの竜に関心はない。そんな薪の態度が癇に障ったのか、一度も天井の竜を観ようとしない彼の耳に非難がましい声が響いた。
『何故おれを見ない?』
「おまえは只の画だろ。本当にすごいのはこれを造った、――あ?」
 竜に話しかけられた気がして上を見上げると、竜がこちらを睨んでいた。
「……いかん。寝ぼけているらしい」
 眼を覚まそうと首を振る。肩をぽんと叩かれて振り向くと、そこに竜が立っていた。

「なんだ。寝ぼけてるんじゃなくて夢を見ているのか」
『見かけによらず肝が据わっているな』
「この世に怖いものなど何もない」
 それは嘘だったけれど、竜自体は本当に怖くなかった。彼の見かけが、何とか言う漫画に出てくる願いを叶えてくれるドラゴンにそっくりだったせいもある。あれは人に危害は加えなかったはず。だいたい、神社を守っているのだから悪い竜のはずが無い。墓荒らしでもしに来たなら良心の呵責もあろうが、宮を維持するためのお布施まで払ったのだ。感謝されこそすれ、恨まれる理由はない。

「見る価値も無いようなことを言って悪かった。立派なものだ」
『素直でよろしい。その心掛けに褒美をやろう』
「じゃあひとつ、深田○子ちゃんを僕のお嫁さんに」
『たやすいこと』
 夢だと思って言いたい放題、言ってみたのが拙かった。
 竜は頷くと、口から息を吐いて薪に吹きかけた。もくもくと黒い雲のようなものが周りを取り囲み、あっという間に薪は周囲から隔絶される。本格的に夢だなと瞑目し、今までの経験から、これで何も見えなくなるか気を失うかすると夢から覚めるものと予想を立てた。

 黒雲の中で意識が途切れる瞬間、ああ、また家康公の墓所を参り損ねた、と薪は思い、次に目覚める場所があの森奥の穴の底でないことを祈った。





テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
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