夢のあとさき(10)

 お盆休みくらい頑張って更新してみようとか口ばっかですみませんー(^^;
 15日はオットの誕生日で、家族で温泉行ってお祝いして、昨日の夕方帰ってきました。13日の夜にも義弟家族とさんざん飲んだんですけどね、また飲みすぎちゃいましたよ★




夢のあとさき(10)





 森林の露天風呂は期待通りの解放感だった。オープンして2年目で設備も新しく、浴槽に身を沈めると檜の良い香りがした。
 長時間の運転で凝り固まった背中を反らし、青木は大きく息を吐いた。隣には柔らかな表情で景色を眺める薪の横顔がある。その美しさを横目で見ながら青木が肩を回していると、視線に気づいた彼は青木に微笑みかけた。

「おまえも肩が凝る年になったか」
 笑いながら、青木の肩を揉みほぐしてくれる。背骨と肩甲骨の間をぐいぐい押されると、温泉効果で身体が温まっているからか、たちまち肩が軽くなっていく気がした。
「ありがとうございます。もう充分です」
「遠慮するなって」
「薪さんの手が疲れちゃいますよ」
「それはおまえの方だろ。運転、お疲れさま」
 薪にやさしい言葉を掛けてもらえたのは何年ぶりだろう。いやまさか年単位ってことはないか、と苦笑して記憶を辿るがとんと思い出せない。罵られた記憶ばかり甦ってきて悲しくなった青木はその作業を中断し、目前に広がる新緑の風景に心を移した。
 来てよかった、と青木は幸福感に浸りきる。眺めはいいし空気は爽やかだし薪はやさしいしで、最高の気分だ。

「ありがとうございました。お返しします」
 振り返って薪の肩をつかみ、後ろを向かせる。揉もうとすると、肩に掛けた手を握られた。
「肩よりも、こっちを」
 そう言って薪は、青木の手を自分の胸に宛がった。もう一方の手は脇下を通して腰の位置に、薪のそこはすでに硬くなっていた。
「おまえの裸見てたら何だかそんな気分になっちゃって。いいだろ」
 嬉しいけれど、ここではマズイと思う。男同士で貸切風呂の時点で限りなく黒に近いグレーなのに、喘ぎ声なんか聞こえてきたら追い出される。

「此処からは見えませんけど、隣も同じ造りになってて人がいるんですよ。ちょっと大きな声を出したら聞こえちゃいます」
「いいじゃないか。聞かせてやれば」
「えっ?」
「隣は若いカップルだ。声を聞いたら自分たちだってしたくなる。そうなればお互い様だ。文句なんか出ないさ」
 薪は自分たちの関係を他人に悟られることを極端に恐れていた。その彼が、こんなことを言うなんて。

「青木。早く」
 さばっと湯から上がって板張りの床に座り、薪は大胆に青木を誘った。湯の中ではのぼせてしまうのと、理由はもう一つ。
「ここにキスして」
 淫蕩に腰を揺らして湯中ではできないことをねだる。薪の顔つきは妖しかった。
 蛇に睨まれたカエルというかローレライに魅入られた舟人というか、とにかく逆らえるはずがない。これは青木の意志が弱いのではなく、薪が妖艶すぎるせいだ。そう思いかけて青木は、何でも人のせいにする恋人の癖が伝染ったかと恥じ入るような気持ちになった。
「ああ、青木、ああ、いい」
 口に含むとすぐに、薪は派手に善がり出した。腰を浮かせて青木の手を取り、後方を探らせる。青木の指を掴んで内部に導き、気持ちよさげに腰を捩った。
 先に進むことを躊躇う青木の腰に、薪の脚が絡んだ。脚で抱き寄せられる。そこに宛がわれたら、さすがに我慢が効かなくなった。薪は恍惚とした表情で青木を迎え入れ、結局は二人して溺れた。

 放った液体を洗い流した後、もう一度湯に浸かった。時計を確認すると10分も経っていなかった。長い時が過ぎたように感じたが、錯覚だったらしい。何だか得した気分だ。
 湯船の壁に背中を預け、自分の膝に座った薪の柔らかい太ももを撫でながら、青木は彼の後ろ首にキスをした。背後からかぶさるように緩く抱きしめて、耳の穴に舌を入れる。薪はくすぐったそうに笑った。
「なんか最近、積極的じゃないですか。こないだの旅行の帰りだって」
 強引にホテルに連れ込まれた。あんなにがっついた薪は初めてだった。
「あれは違うんだ。鳴竜が」
「あの時もそんなことを言ってましたよね。深田○子ちゃんが奥さんになった夢を見たって」
「夢じゃない、本当なんだ。願いを叶えてやるって言われて冗談で『恭子ちゃんを僕のお嫁さんに』って言ったら本気にされて。でも僕はおまえが好きだから、おまえの記憶を戻そうと必死で」
「……長い上に凝った夢ですね」
 東照宮で見た鳴竜が印象に残って、それでそんな夢を見たのだろう。竜が願いを叶えてくれるなんて、まるで漫画だ。夢以外の何物でも―― 夢?

「あれ?」と思わず声を上げたら、膝の上の薪に「どうした」と尋ねられた。
「いやあの、オレも最近、そんな夢見たなあって」
「夢? おまえも恭子ちゃんと? ていうか、したのか?!」
 そこに突っ込むか。
「ちがいます、竜の方です。――いや、違うな。薬師寺じゃなかった。もっと暗くてじめじめした所で、『何か一つ願いを叶えてやる』って言われたような」
「暗くてジメジメした所? 不思議だな、僕もその夢を見たぞ。森の中で迷って、おまえを探しに行ったら深い穴に落ちたんだ。草の上をどこまでも滑っていって」
 眼が覚めたら東照宮の駐車場だった、と薪は言った。
 それは青木も覚えている。薪を起こしたら出し抜けに額を叩かれて、「対象から離れるな」と叱られた。その時に見ていた夢のことだろう。
 ふと、青木は首を傾げた。
 では自分は、いつ夢を見たのだろう? 運転中に居眠りなどしていない。ならばもっと以前の記憶か。いや待て、暗い場所に落ちる前に森の中を彷徨ったような、自分を呼ぶ薪の声が遠くから聞こえてきたような――。

「青木。そろそろ時間だぞ」
 薪に声を掛けられて、青木は我に返った。薪はいつの間にか湯から上がって、ドライヤーで髪を乾かしていた。時計を見れば残り時間は10分ほど。せっかく薪と二人きりで露天風呂にいたのに、考え事に時間を割くなんてもったいないことをした。それも、どうでもいい夢の話に。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Sさまへ

Sさま。

>しづさんがこんないい思い青木くんにさせてる時点で

わははは!
ものごっつ鋭い見方ですね☆

まあ、薪さんが青木さんにやさしくなるとロクなことはない、というのはうちの法則みたいなものなんで。 ご安心ください、期待は裏切りません(笑)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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