きみはともだち 後編(1)

 こんにちは!
 先日、清水先生のサイン会に参加された方、お疲れさまでした! 
 よかったですね~! ツイッターやブログを読ませていただいて、こちらにもその感動が伝わってきました。こんなに好きになれるものがあるって幸せだよね(^^


 さて。
 今日から公開しますこのお話、以前お目汚しした鈴薪話『きみはともだち』の後編でございます。当ブログの鈴薪さんが恋人同士になる前のお話です。原作とはいろいろ設定違ってます、すみません。特に鈴木さんの妹。2060年に成人式の設定で書いちゃったから、この頃は幼女ということに……ごめんなさいです。
 
 それとこちらのお話、4万拍手のお礼にしたいと思います。よろしくお願いします。 






きみはともだち 後編(1)






 テーブルの上に用意した来客用の茶菓を検分する目つきで眺めて、鈴木塔子は満足げに頷いた。紅茶はファーストフラッシュのダージリン、手作りのアップルパイは表面に塗った卵黄の輝きが見事で、切り口も崩れていない。
 誰にも文句は言わせないわ、と彼女は強気に腕を組む。知らず知らずのうちに好戦的な顔になっていたのだろう、夫に宥められた。
「そんなに神経質になるなよ。ただの女友達だろう」
 何を呑気なことを、と彼女は心の中で夫の楽観に呆れる。まったく、男親はこういうことに鈍くて困る。

 息子が女の子を家に連れてくることは珍しくなかった。でもそれは必ず、何人かの友人と一緒だった。一人だけ、それも彼女の夕飯も用意してくれとまで頼まれたのは初めてだ。何でも彼女は独り暮らしで、家庭の味に飢えているらしい。
 独り暮らしの女子大生、しかもあの容姿。誰に似たのかメンクイな息子が、これまで家に連れてきた娘の中でもダントツだ。母親なら当然心配になる、既に彼女は息子と深い仲になっているのではないか。すねかじりの大学生とは言え二人とも結婚できる年齢だ。今年中に彼女がこの鈴木家の嫁になることも、可能性がないとは言い切れないのだ。

「最初が肝心なのよ。お茶は厳選、お菓子は手作り、克洋はそういう家庭の子供だってことを分からせなくちゃ。あの子の将来を任せることになるかもしれないんだから」
「気が早いなー。まだその娘が克洋の恋人だと決まったわけじゃないだろう」
「でもね、あのお嬢さんは自己紹介を下の名前でしたのよ? いくら克洋にそう呼ばれてるからって、普通はしないわよね。もう嫁気取りってことじゃないの?」
 彼女にファーストネームで自己紹介された時、息子との特別な関係を匂わされた気がした。結局はそれが一番、カンに障ったのかもしれない。
「どうせ結婚するんだからお母さんも私のことは下の名前で呼んでくださいね、て意味で」
「おい」

 夫の声に長舌を遮られて初めて、彼女は台所の入り口に息子と彼女が並んで立っているのに気付いた。二人とも眼をまん丸くして、こちらを見ている。
 しまった、と口を噤んだが遅かった。塔子の嫌味はすべて彼女の耳に入ってしまったに違いない。彼女はその美しい顔を曇らせ、困ったように息子を見上げた。
 上向いた彼女の頭は克洋の肩の下、つまり背丈は塔子といくらも変わらないくらいだ。少々潔いくらいの短髪にベビーフェイスと華奢な体つき。服装のせいかもしれないが、最近の女の子にしては凹凸の寂しい身体をしている。
 零れ落ちそうな亜麻色の瞳に見つめられて、克洋は苦笑した。「気にするな」とでもフォローするのかと思ったら、こちらに向かってすたすたと歩いてきた。では親の方に説教するつもりか、結婚もしないうちから嫁の味方か、そう来るなら夕飯は作らないわよ、と心に決めて、塔子は息子の顔を睨み返した。

 ぽん、と肩に手を置かれた。塔子の二の腕まで覆ってしまう大きな手。父親も自分もそれほど大柄ではないのに、本当にこの子は誰に似たのだろうと塔子は思う。
「母さん。マキは下の名前じゃなくて苗字だよ」
「あ、あら、そうだったの。珍しい苗字だからてっきり」
 塔子の勘違いは息子のせいでもある。克洋はこれまで、親しい娘は下の名前にちゃん付け、それほど親しくない娘は苗字をさん付けで呼んでいた。息子が苗字を呼び捨てにするのは男友達だけ、それが刷り込まれていたのだ。
「ごめんなさいね、マキさん」
 いいえ、と彼女は首を振った。細くて真っ白な首。襟元まできっちりと止められたボタンと白いシャツが清楚さを強調しているが、見た目に騙されてはいけない。20歳にもならない女の子の独り暮らしなんて、他にどんな付き合いがあるか分かったものじゃない。人生経験の浅い息子の代わりに自分がよく見極めてやらないと。

 初めての家で緊張しているのか、彼女は直立不動の体勢で突っ立ったまま、息子がお茶セットのトレーを持ってくるのを待っていた。手を出そうともしない辺り、世話焼きタイプではないらしい。さらには眉を吊り上げて息子を睨み上げ、
「鈴木。面白がってるだろ」
 なんて口の利き方。息子が早くも嫁の尻に敷かれているのかと思ったらカッとなった。
「マキさん、女の子ならもう少し」
「母さん。薪は男」
「やさしく――えっ!?」
 耳から入った言葉の意味を理解するまでに、多少の時間がかかった。年齢のせいだとは思いたくない、40を過ぎたあたりから鈍くなったと自分でも感じているが認めたくない断じて。

「男……の子?」
 その一言で、ボーイッシュな美女は絶世の美少年になった。なんてことだろう、滅多にお目に掛かれない美人だとは思っていたけれど、こんなにきれいな男の子、テレビでだって見たことがない。
 思わずぽーっと顔を赤らめた塔子に向かって、彼は初めて会ったときと同じように、ぺこりと頭を下げた。
「下の名前は剛です。克洋君にはいつもお世話に、……笑うな、鈴木っ!」
 紅茶のカップがカチャカチャと音を立てるくらいに震えながら笑っている息子に、彼は威勢よく叫んだ。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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やったー(歓喜)

まッ待っておりました~!!!やったー今日から暫くしづさんの鈴薪が読めるなんて、本当に毎日浮き足立ちます(´∀`)嬉しいですv
鈴木家にやって来た薪さん・・・はぁはぁ。もう何もかも萌えましたvおかーさん(笑)
続き楽しみにしております~v

きゃっほー!

えあこさんの書き込みを見て、私も久し振りにこちらに。
私もずっと楽しみにしてましたー!
薪さんも鈴木さんもカワエエ〜^^

えあこさんへ

えあこさん、こんにちは~。
早速のコメントありがとうございます。

9月に入って、一人鈴薪祭りを開催しております。
でも一人はちょっち寂しい……えあこさんも一緒にやろーよー。←ふってみた。


うちの鈴薪さん、ちょーっと原作から遠ざかっちゃったんですけど(^^;
色んな設定が違っちゃって申し訳ないです。妹さんの名前とか年齢とか。
なにより、
鈴木さんのお母さんは絶対にこんな性格じゃないと思いますww。


原作の鈴薪さんは最初はロミオとジュリエットのように互いの親からは歓迎されなかったから、大学生の薪さんが鈴木さんの家に遊びに行くことがあったかどうか。薪さん、遠慮したんじゃないかな……だからきっと、鈴木さんの通い婚(?)だったんだと思います。

Aさまへ

Aさま。

前々からやりたかったんですよね、このギャグ。
名前の間違い、ありそうでしょ?(笑)


>葬儀では二度とうちの敷居を跨ぐなと言われてたので遊びに行ったことあると思ってましたね。

ああ、そうか~。
病院にお見舞いに行ったときガン無視されてたから、家に遊びに行くこともなかったんじゃないかと思ってたんですけど。二度と、ってことは何度か来てたってことですよね。そうかあ。

あれが切なくってねえ。
たった一人の親友の親に嫌われるのって、辛いよね?
で、ついついこちらでは鈴木さんの家族は全員薪さんのファン、みたいに書いちゃったんですけど、
あの事件の後それが豹変してしまうの、余計に残酷かなって。
機会があれば、鈴木さんの13回忌に出席する薪さんを書きたいです。

めぐみさんへ

めぐみさんへ


「きゃっほー!」って、めぐみさんまで(笑)
うちの嘘んこジェネシス、楽しみにしてくださって嬉しいです(^^
色々、本当にいろいろ捏造しちゃってるので、その辺ぬるーく流してくれるとありがたいです。

実はこれから鈴薪さん3連発の予定なんですけどね、
ツイッターでもちらっとお話ししたように、3作目はあおまきすとさんはおろかすずまきすとさんにも怒られそうな内容になってて、ツイッターで返信いただいたときに、たぶん、
めぐみさんしか読んでくれない、と思いました(^^;
公開は10月か11月くらいになると思いますが、その時はよろしくですー。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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