アイシテル 前編(1)

 先日、いっぱい拍手いただきました。嬉しかったです♪
 ご新規さんも常連さんも、いつもありがとうございます(^^


 
 さて。
 最近、すっかり鈴薪ブログになってる自覚がありますが、管理人はコテコテのあおまきすとです。おかげで深刻な青薪欠乏症です。だれかわたしに青薪さんを恵んでください。贅沢は言わないので甘いのお願いします。

 そんなわけでこちら、
『管理人は本当にあおまきすとなのかSS第1弾』でございます。←おい。

 鈴木さんに片思いする薪さんです。
 薪さんと一緒にきゅんきゅんしてもらえたらうれしいな~。




アイシテル 前編(1)





 想像もつかなかった。自分にこんな感情が生まれるなんて。


 派手な水しぶきと共にプールに波柱が立った。爆音に近い水音と波柱の高さは落下物の大きさを示している。かなりの大物だ。
 周囲で談笑していた人々が何事かと注目する中、水面から勢いよく顔を出した若い男性がプールサイドに向かって叫んだ。
「ひどいわっ。何するのよ薪くんたら!」
 黒髪を額に張り付かせ、喚きながらも笑っている彼はかなりのハイレベル。プールサイドの女子が浮足立って頬を染めるくらいのハンサムだ。
「蹴り落とされるようなことする鈴木が悪い」
 冷たく言い捨てた彼は、細い腰に手を当ててプールサイドに立っている。こちらは何と言ったらいいものか、つまり生物学的な論争が巻き起こりそうなレベル。フォルムは男性、髪型や水着もごくごく一般的なもの。なのにその美しさと言ったら。
 プールに落ちたイケメンを指して『ね、あの人ちょっとカッコいい』と友人の耳元で囁いていた女子が言葉を失う。見惚れてぽーっと赤くなる。それが隣の人間に伝染する。賑やかなアミューズメントプールの一角だけが、一瞬、妙に静かになった。

 静まり返った気配と大勢の視線を感じて、薪はその原因が自分にあることを知る。理不尽だと思った。飛び込み禁止と書かれているけれどみんなやってる。なんで僕だけ。

 不平等に扱われることへの反発はあったが、何十人もの眼に注目されたら自分の非を認めないわけにはいかない。薪はすっとプール縁に屈み、自分が突き落とした友人に手を差し伸べた。
「悪かった。ついカッとなって」
「周りの人に迷惑っしょ」
「大丈夫だ。ちゃんと確認してから蹴った」
「冷静じゃん」
 救いの形に伸ばされた手を握り、長い脚を有効に使ってプールサイドに一足で上がった鈴木は、長身を屈めて友人の顔を覗き込み、楽しそうに笑った。
「ちょっとふざけただけなのにー」
 そのちょっとが問題なんだ、と薪は動揺を表に出さないように顔の筋肉を引き締める。鈴木は本当に、何も分かっていない。

『薪の背中、すっげーキレイ』

 プールサイドで鈴木と落ち合ったとき、開口一番に言われた。それでこんなことになったのだ。
 薪は、一身上の理由で男子更衣室に長居したくない。だからプールに行くときは必ず家から水着を着てくる。ロッカーに荷物を入れ、「プールサイドで待ってるから」と連れに声を掛け、誰とも眼を合わせないようにして足早に居室を出た。
 未だに更衣室はトラウマだ。早く忘れたいのに、この季節に蒸し暑い更衣室に入ると嫌でも思い出してしまう。口に突っ込まれた汗臭いタオルと、無理やり服を剥がされる痛みと恐怖。吐き気を伴う記憶に胃の下底が疼いた。
 薪のダークな心中とは裏腹に、周りは水遊びに興じる人々の歓声に満たされていた。賑やかな水しぶきが時おり虹を作る、平和で幸せな光景。その中でこんな事を思い出している自分は、この場に相応しくない気がして。薪は室内プールの屋根を支える大柱の陰に隠れるようにして友人を待った。

 程なくして友人が現れ、おかげで薪はやっと自分の居場所を広い空間内に見つけ出すことができた。此処へは彼に誘われたから来たのだ。彼の傍になら、居てもいいはず。
 そこまでは彼に感謝したが、その後がいけない。鈴木は男相手に先刻のセリフをしゃあしゃあと言ってのけた後、「エステとか行ってんの?」とバカみたいな質問をした。
「僕は女の子じゃないし、そんなことに使うお金もない」
「何もしなくてこの状態? いいなあ。ニキビ跡一つないじゃん」
「鈴木だってないだろ」
「オレはあるよ。左の肩甲骨の辺り」
 同性だからと言ってあまりジロジロ見たら失礼だと、それまで薪は鈴木の身体から眼を逸らしていた。思いがけなく許されて、欲求に勝てずに見蕩れた。広い肩幅、逞しい胸に引き締まった腹と腰。腰の位置が高くて脚が長い。理想的なプロポーションだと思った。

「な、けっこうヒドイだろ」
 返答を促されて、慌てて彼の背中を見る。全体的な均斉美に心を奪われて、指示された部分を見ていなかった。薪の視力は両目とも2.0だが、鈴木が言う「ヒドイ」箇所は見つけられなかった。
「よく分からないな」
「そうか? じゃ、さわってみ」
 何でもないことみたいに鈴木は言うが、誰かの背中に直に触るなんて薪には初めての経験だった。でもそれは自分に友人が少ないせいで、鈴木やみんなには普通のことなのだろうと考えた。友人とのコミュニケーションスキルに関しては、薪は鈴木の足元にも及ばない。その自覚があるからか、薪はこの手の鈴木の言葉には比較的素直だった。

「ああ、うん、さわると少し。でも全然目立たないよ」
「ほんと? よかったあ。背中汚いと彼女に嫌われちゃうからさ」
 鈴木が彼女に背中を見せたり触らせたりする状況を想像して薪は、水着姿の彼に見蕩れたり、ほんの少し彼の肌に触れただけで胸をときめかせている自分をバカだと思った。
 なるべく考えないようにしているのに、鈴木は割と無神経で。たびたび変わる彼女のことを逐一薪に話して聞かせる。どういう所が可愛いとか、ベッドの中ではこんなだったとか。聞きたいなんて、せがんだことは一度もないのに。

「薪の背中はキレイだよな。しかもすっべすべ」
「ちょ、さわるなよ」
 彼の大きな手に背中をひと撫でされて、心臓が口から飛び出るかと思った。こんなにドキドキしてるのに、普通に話せるのが不思議だった。
「いいじゃん。真っ白だし細いし、なんかこう」
「うん?」
「後ろから抱きしめたくなっちゃう感じー」
 冗談は口だけにしておけばいいのに、実行に移したから堪らない。驚いた薪は爆発的な力でそれを振り解き、彼の脛を思い切り蹴り飛ばした。結果、周り中の顰蹙を買う羽目になった、というわけだ。

「薪はホント性格キツイよなー」
 耳に水が入っちゃった、と右に傾げた頭を手首でトントン叩いている鈴木を、でき得る限り冷たく見据え、薪は腹立ちを装って腕を組んだ。手の震えをもう片方の手で押さえる時の要領で、一向に落ち着かない心臓を抑えようとした。
「いきなりああいうことされたら、10人中9人の男は僕と同じように相手をプールに突き落とすと思う」
「残りの一人は?」
「刺し殺す」
 抱き返すんじゃないんだ、と口の中で呟く鈴木に、
「よかったな。僕が穏やかな性格で」
 言い放って薪は意地悪く笑った。




テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Aさまへ

Aさま。

>薪さんて絶対、自分の女性っぽい容姿にコンプレックスありますよね。だから、鈴木さんの爽やかな容姿や男らしい体型に憧れがあったと思います。

あれだけ綺麗だと、ナルシストになるかコンプレックスになるかどちらかだと思うのですけど、
薪さんの場合は澤村さんのこともあるから、やっぱりコンプレックスになったと思います。
鈴木さんの容姿には憧れたでしょうね~。
自分が持ってないものに憧れる気持ち、分かります。わたしも背の高い人、憧れます。


>着替える前に一緒にシャワーを浴びるのってヤバイのでは(^^;)

Aさんたらww 
大丈夫ですよ、一つのシャワーを二人で使うわけじゃないから。
みひろさんとこの青薪さんだと始まっちゃうんだろうなあ。(なにが?)



管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
メロディ6月号、読みました。
一言感想 「どひゃー……」
文字サイズをお選びください
最新記事
最新コメント
拍手のお返事
いつもありがとうございます!

最新拍手コメのお返事はこちらです。

過去の拍手レスの確認は、該当記事の拍手欄を押してください。
鍵拍手コメのレスは、記事のコメント欄にお返しします。
月別アーカイブ
カテゴリ
詩 (1)
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
QRコード
QRコード
FC2カウンター
こんにちは(^^
現在の閲覧者数: