若いってこわい(6)

 この章は、イタ~イRです。
 Rが苦手な方、薪さんが肉体的に傷つくのはイヤ、という方にはごめんなさいです。




若いってこわい(6)








 自分から誘っておきながら、薪はひどく緊張している。
 キスもぎこちないし、手も震えている。鈴木の服を脱がそうとしているが、うまくボタンが外せないようだ。見かねて鈴木のほうから手を伸ばす。こちらの経験なら割と豊富だ。

 キスをしながら、服を脱がせる。その肌の白さに、なめらかさにびっくりする。女のような柔らかさはないが、程よい弾力が手に心地よい。
「すずきっ」
 抱きついてくる、細いからだ。
 アルコールの匂いに混じって石鹸の匂いがする。自分が来る前に、ちゃんと風呂に入っておいたらしい。わがままなくせに、よく気が利くし、ひとに気を使う。薪の性格は複雑だ。

 薪の小さな手が、鈴木のズボンの中に入ってくる。そこを握られて、扱かれる。男の手とは思えない繊細な手だった。
 やがて硬くなったそこに、薪はためらいながらも顔を埋めてきた。
 どこでこんなことを覚えてきたのか、それとも知識だけの初めての行為なのか、その稚拙な技から後者である可能性が高い。
 拙くはあるが、可愛らしい。
 薪の口唇はもともと小さくて、それがいっぱいに広げられて自分の欲望を咥え込んでいる様子を見ると、懸命さが伝わってきてうれしくなる。
 小さな亜麻色の頭が上下に動いて、くぐもった呻き声が聞こえる。のどの奥に当たってしまったらしく、途中で咳き込んでしまう様子も愛らしい。

「大丈夫?」
 失敗した、と顔に書いてある。こんな素直な薪は滅多に見られない。再び試みようとした薪の頭を押さえて、鈴木は首を振った。
「もう充分」
 拒絶されたと思ったのか、薪の顔が悲しみを帯びる。本当に素直だ。
「床じゃ痛いから、ベッドいこうか」
 鈴木の言葉に、薪はうれしそうに微笑んだ。

 ……なんてきれいに微笑うんだろう。
 これほど完璧に整った美貌は、映画のスクリーンでもなかなかお目にかかれない。
 男にしておくのがもったいないとは思うが、女になってしまったらこの目を離せない危うさは消えてしまうのだろう。

 薪をベッドに運び、そっと横たえて、少し迷う。
 女の子と同じ扱いでいいのだろうか。何しろ男はこれが初めてだ。
 薪は、不安を秘めた眼差しで鈴木の顔をじっと見つめている。先刻まで鈴木の昂ぶりを咥えていた唇は、明らかに鈴木の接吻を待っている。

 鈴木はいつものように薪の髪を撫でて、にっこりと笑いかけた。
 薪は詰めていた息をそっと吐いて、微笑みを返してきた。

 くちびるから首筋、首筋から鎖骨へと、舌と指で愛撫していく。平らな胸に違和感はあるが、その肌はとても甘かった。
 薪の身体が震え始める。息が荒くなってくる。このままいっても良さそうだと判断して、小ぶりな乳首にしゃぶりついた。
 女のように大きいものではないから吸いづらい。感じてくれるのかどうかも、すこし疑問だったが、薪はとっさに息を呑み、びくりと背筋を反り返らせた。
 よかった。感じるらしい。
 しかし、これからが問題だ。
 当たり前だが、やはり男の身体だ。望んでいるのはわかっているが、下のほうに手を伸ばすのはかなり勇気がいる。
 
「いいよ。鈴木はじっとしてて」
 ためらいを見抜かれたのか、薪は自分が上になると言い出した。
「気持ちよくしてあげる」
 小さくてやわらかい舌が、鈴木の中心でうごめく。下手をすると、女の中より気持ちのよい行為だ。淫らに開かれたくちびるで扱かれると、たちまち昇りつめてしまいそうになる。今度はさっきのような失敗はない。ちゃんと角度を合わせて上下させ、舌を絡めて吸い上げる。
 
「―――― っ、薪、ちょっと」
 イキそうだ。
「もっ、やばい、ストップ!」
 薪の頭を押さえつけて、何とかやりすごす。
「いいよ。このまま出して」
「これじゃ風俗みたいだろ。セックスするんじゃなかったのか?」
「男同士なんて気持ち悪いだろ?」
 自分で誘っておいて、まったくこいつは……!
「おまえがしようって言ったんだろが」
「だって鈴木。どこ使うか知ってるのか?」
「知ってるよ。ここだろ」
「ひゃっ!」

 薪のそこはものすごく狭かった。
 女の比じゃない。処女も何回かいただいたことがあるが、女は濡れる分、まだマシだ。
「おまえ、これ……入るのか? こんなんで」
「わっ……かん、ない。でも、したい」
 果たして快感なんてあるんだろうか。女にするように指でほぐしてみるが、どうみても気持ち良さそうには見えない。完全に嫌悪の表情だ。
「ムリだろ、これ」
 生理的な嫌悪感からか、薪のものはすっかり萎えてしまっている。

 それでも。
 したい、と薪は繰り返した。

「鈴木。じっとしてて」
 足を大きく広げて、鈴木の上に跨る。鈴木の昂ぶりを手で持って、そこにあてがう。もう片方の手で自分の入り口を広げて、薪は腰を落とした。
「――――― ッ!!」
 薪のきれいな顔が痛苦にゆがむ。ものすごく痛いらしい。
「おまえ、もしかして初めて?」
 鋭い痛みに逃げようとする身体を、必死に抑えている。シーツを握り締めた右手の震えが、その凄まじさを伝えてくる。
「痛いだろ、それ」
「平気っ……うっ」
 強がりを言って無理に押し込む。正直、鈴木のほうもかなり痛い。
 奥歯を食いしばって、薪はさらに腰を落とした。

「くっ……いっ、痛ッ、がっ、あああ―――ッ!」
 今度こそ、悲鳴があがった。
 しっかり根元まで深く入っている。青ざめた顔で、薪はけなげに笑ってみせた。
「ほら、入った……だろ」
 ぬるっとした赤いものがつながった部分から流れ落ちて、鈴木をつたい、シーツを汚した。

「待って、いま」
 腰を上下に動かそうとするが、痛みが激しすぎて思い通りにならない。第一、きつ過ぎて動かない。
 薪の顔は涙でぐしょぐしょになっている。可哀想で見ていられない。
「やめよう、薪。壊れちゃうよ、おまえ」
「だいじょう、ぶ、だからっ……もう少し、いっ、ぎっ!」
 なおも抽出を繰り返そうとするが、自らを痛みに追い込む行為は続けるのが難しい。とうとう薪は折れて、鈴木に哀願した。

「鈴木。たのむ、協力して」
「うん。じゃ、ゆっくり抜くから」
「抜いてどうするんだよ。逆だろ? 僕の腰押さえて、鈴木の方から突き上げてくれよ」
「だっておまえ。死んじゃうだろ、そんなことしたら」
 鈴木は起き上がって、薪の細いからだを抱きしめた。やさしく背中を撫でて、小さな亜麻色の頭を包み込む。
「もういいだろ。ちゃんとできたじゃん」
「いやだ」
「ひとつになれたろ? セックスだろ、これ」
 いやだ、と薪は繰り返した。
「ちゃんと鈴木が満足してくれないと……僕の中でイッてくれなきゃ、いやだ」
 鈴木の大きな背中に手を回して、薪は懇願した。

 鈴木の中に、愛おしさが突き上げる。
 痛くないはずがないのに。薪には苦痛しか感じられないはずなのに。
 それでも自分と愛し合いたいと――――。
 こいつ、こんなに健気なやつだったか?

「……無理だと思ったら、すぐに言えよ」
 向き合って、抱き合ったままの姿勢で細い腰をつかむ。ゆっくりと浮かせてそっと沈み込ませる。が、いくら丁寧に行っても痛みは激しく、薪は苦痛の声を上げた。
 その度に鈴木は手を止めるが、薪はその続きを要求する。薪の身体を気遣っての緩やかな動きは、どうやら苦痛を長引かせるだけのことらしい。
 自分が達するまで、薪は地獄を味わい続ける。だったら短い時間で終わらせたほうが薪のためだ。
 
「す、ずき?」
「がまん、しろよ」
 正常位に切り替えて、薪の足を自分の肩に乗せる。この体勢が一番はやく、いける。
 薪の腰を抱えあげ、ぴったりと密着させる。大きく腰を動かして引き、力強く打ち込む。
「ひああっ!」
 薪が凄まじい悲鳴を上げた。
 声を殺す余裕もない。たぶん20年の人生の中で、今が一番、痛い。
「うっ、ぐっ! ぐあっ!!」
 痛いとかやめろとか、聞き取れるような言葉にはならない。
 断末魔のような叫び声。とても情事のあえぎ声には聞こえない。色気のかけらもない声だ。

「薪。大丈夫? やめる?」
 亜麻色の頭が激しく左右に振られる。細い腕が鈴木の背中に回され、強く抱きしめられる。
 耳元で薪の苦しげな声が、鈴木の名前を繰り返し、呼ぶ。
「すきっ、鈴木っ、大好き!」
 びくびくっ、と薪の身体が痙攣する。それは快感によるものではなく、純粋な痛みゆえの反応である。薪の悲鳴に耳を塞ぎ、苦痛の表情に目を瞑り、鈴木は腰を激しく動かした。
 
「す、すずきっ、いい? ね、気持ちいい?」
 途切れ途切れに、苦しそうな呼吸の合間に訊いてくる。
「いいよ。すごく、いい」
 それは、相手を思いやっての嘘ではなかった。
 本当に素晴らしい快感だった。男相手のセックスが、こんなに良いとは夢にも思わなかった。これで相手が悦んでくれたら最高なのだが。
「うれ、しいっ、いあっ!」
 耳元で繰り返されるうわごとのような薪の声。
 好きだ、好きだと何度も叫ぶ。
 
 やがて鈴木にも限界が来て、相手を気遣う余裕がなくなる。激しく抜き差しを繰り返す、射精のための抽出に動きが変わる。
 薪の痛みは限界を超えている。鈴木の背中に縋り付いて、細い指が折れてしまいそうなほど爪を食い込ませる。
「すずっ、―――― きぃっ!」

 もう、言葉にならない。
 アルトの声も枯れている。
 亜麻色の髪は乱れに乱れ、汗のためにぐっしょりと濡れて、いつものさらさらした感触はどこにもない。その美貌に普段の冷静さなどかけらもない。

 いつ果てるとも知れない激痛の最中、からだの奥に待ち焦がれた愛しい男のほとばしりを感じ、薪は心を震わせた。
 動きを止め、重くのしかかってくる鈴木の体躯。そっと身体を離して隣に仰向けになる。

 逞しいからだ。大きな手。激しく上下する胸。汗の浮いた横顔。乱れた黒髪。
 ぜんぶ、ぜんぶ、だいすきだ――――。
 そう思ったのを最後に、薪は意識を手放した。



テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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いいです・・・。

こんにちは

えっちいのに、薪さんの心情のほうが強いせいか、あまり変態っぽくない感じがします。
(うーん。薪さんだとホモでも許せるのかなあ)

それとも、私がすでに変態化しているのでしょうか?

でも、鈴木がいやがったんですよね、この後。
あれ? 薪さんが嫌だっていったんでしたっけ?
(もいちど聖夜を読もう)
普通の友人としての付き合いに戻ったんですから。

そんなに、そんなに好きなのに。
それでも鈴木が遠ざからないように、男とセックスなんか、もう嫌だと言い続けて来たのですか?

ううう(TT)
薪さん・・・。健気!

Re: いいです・・・。(第九の部下Yさんへ)

第九の部下Yさん、こんにちは。
何度もコメくださって、ありがたいです。

> えっちいのに、薪さんの心情のほうが強いせいか、あまり変態っぽくない感じがします。

変態です。(笑)
書いてる本人が変態ですから。(自爆)
やることやってんのに色気がないのは、薪さんがイタイだけだからです。(はっ・・筆力不足・・・それを言っちゃあ、おしまい)

> (うーん。薪さんだとホモでも許せるのかなあ)

・・・・そうだよ。
なんか忘れてたけど、第九の部下Yさんて、ノーマル思考だったんですよね?
どちらかのコメに、青雪だって書いてあったような・・・(記憶違いだったらごめんなさい)
うちのRは描写がきわどいので、ご無理なさらないでくださいね。飛ばしても話は通じるように書いてるつもりですから。
話が通じるなら書く必要はないように思えますが、わたしは完全にあおまきで、R指定を冒頭に掲げてるので。ってか、書きたいんです!R!!(恥も外聞もありゃしねえ)

> それとも、私がすでに変態化しているのでしょうか?

そんなことないです。
まだ『かぎろひ』の途中までなんですが、第九の部下Yさんのところの薪さんは、ノーマルで素敵です。
まさに清涼剤です。

・・・・はやくこっちに堕ちてきて欲しいです。(腐れ笑)

> そんなに、そんなに好きなのに。
> それでも鈴木が遠ざからないように、男とセックスなんか、もう嫌だと言い続けて来たのですか?

そうです。
(1)で『鈴木を傷つけて、結局ふられた』と回想しているとおり、うちの薪さんは鈴木さんに振られちゃうんです。
それからは普通の親友に戻って、清い関係でいるんですよ。
まあ、鈴木さんにキスとかされちゃってますけど。(笑)

> 薪さん・・・。健気!

ありがとうございます。
薪さんのけなげさを感じていただけたら、しあわせです。それが書きたかったので。


プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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