Dog not to eat it (2)

 今日はこれから成田山参拝です。
 その後いつもの銚子温泉に泊まって、明日帰ってきます。
 ではでは、行ってきまーす。






Dog not to eat it (2)






 二日後。今日も第九では、新しい事件が職員たちを待っていた。

「ではこの事件の担当は宇野と、青木。おまえに頼む」
「はい」
 二日前は互いを見ることもしなかった彼らは、しっかりと相手の顔を見て職務の伝達を行なった。与えられた指示を青木が復唱し、薪がそれに頷く。
 その様子を見て、曽我は安堵する。安心を分かち合いたくて、隣でキーボードを叩いていた小池にニッと笑い掛けた。

「仲直りしたみたいだな、あの二人」
「いや。まだだな」
 小池の見解は曽我とは違っていた。何故そう思うのかと尋ねると、小池は訳知り顔に、
「必要事項を伝達し終えたら、すぐに自分たちの机に戻っちゃっただろ」
「それが普通だろ?」
「いいや。あの二人の視線は会話終了後たっぷり5秒間は絡むんだ。目で会話してるってやつだ。
『しっかりな、青木』
『はい。でもオレ、薪さんがキスしてくれたらもっと頑張れるんですけど』
『それはここでは無理だ。家に帰ったらな(テレ)』
『はい、頑張りますっ(はあと)』
 てな感じで、うぉわおおうっ!!」
 話に夢中で気付かなかった。いつの間にか後ろに誰か立っている。
「何を話していたか知らないが、当然事件のことだろうな? それだけ喋ることがあるなら経過報告書は今日中に提出できるな?」
 気付けば周りは無人になっていた。誰もこちらを見ようとしない。先日の経験から学んでいるのだ。
「おまえなら簡単だろう、小池。今話していたことを書けばいいんだから」
 実のある報告書を期待しているぞ、と笑みを浮かべながら小池の肩をポンと叩く、薪の額の青筋はもう数えきれない。

 つまりその日、一番の地獄を見たのは小池だった。
 本気で勘弁して欲しい。痴話喧嘩で周りを巻き込むくらいなら、いっそ別れちゃえよおまえら。
 そう言いたいのをぐっと堪え、何とか薪が望むレベルの報告書を書き上げたのは、夜の十時を回っていた。

「ごくろう。帰っていいぞ」
 小池が提出した書類を処理済みの箱にポンと入れ、薪は立ち上がって帰り仕度を始めた。今日は彼も帰るらしい。が、第九に残っているのは小池だけだ。薪はどうやって帰る気なのだろう。
「あの、薪さん。帰りの車は」
「この時間ならまだ終電に間に合う」
「ええとその、青木は」
「さあ。今週はずっと家に帰ってこない」
「え。心配じゃないんですか」
 浮気とか。
 飛び出しかけた言葉の尻尾を捕まえて口に戻す。提出したばかりの報告書が危うくシュレッダーに掛けられるところだった。
 小池の慌てぶりを、薪は呆れたようにせせら笑って、
「子供じゃあるまいし」
 いや、子供じゃないから心配なんでしょうが。

「何処に寝泊まりしてるか分からないんでしょう?」
「前のアパートだ。電気も水道も止まってるけど、寝るだけなら平気だからって」
 恋人とケンカして家を出たのに居所を明らかにしておくなんて、ものすごく青木らしい。電気もない部屋で大きな身体を丸めて泣きながら眠る様子が眼に浮かぶようだ。
「場所が分かってるなら迎えに行ってあげたらどうですか」
「すぐ前に公園があるからそんなに不便じゃないだろう。トイレもあるし、販売機も」
 そういう問題ではない。
「でもそれって職務違反じゃないんですか。運転手とボディガードは青木の仕事なんでしょう?」
 本当はこういう問題でもなかったのだが、そこは口の巧い小池のこと。変化球を利用した交渉術は得意中の得意だ。

「……ああ」
 薪は大きな眼をまん丸くして、呻くような声を発した。小池に言われて初めて気付いたというように、ていうか本気で気付いてなかったんですか?
「そうだ、職務違反だ。僕には青木に帰宅を命じる権利がある」
 要するに、珍しく青木が怒っちゃったもんだからパニくってたわけですね。で、普通なら簡単に立てられる策も思いつけなかったと。
「さっそく電話を、いや、行った方が早いな。小池、青木のアパートまで送ってくれるか」
 思いついたら矢も盾もたまらなくなっちゃったんですね。分かりやすいですね。

 何て言うか、可愛い人だと思う。彼らの秘密を知らないうちは分からなかったけれど、改めて見直せば薪は本当にかわいい。青木を苛めるときは生き生きしてるとか、青木が淹れたコーヒーを飲むと機嫌がよくなるとか、分かりやすいことこの上ない。気付かない自分たちがバカだったのだ。

 彼らの関係に早くから気付いていたのは飲み仲間の岡部と、不思議なことにコンピューターオタクの宇野だ。岡部は薪に一番近しい存在でプライベートも一緒に過ごすことが多かったから当然として、宇野はどうやってその事実を知ったのだろう。彼らとの親密度は自分や曽我と同じくらい。違うのはシステムメンテナンスの為の休日出勤や残業が多いことだ。捜査以外の法定外出勤のときの薪は存外穏やかだから、そのあたりで何か思う事があったのかもしれない。
 小池はそんな風に考えを巡らせたが、何のことはない、休日出勤をすると何故か必ず青木が来るのだ。さらに、これまた必ず出勤してくる薪が弁当を差し入れてくれるのだが、それがちゃんと青木の分も用意されている。デザートのカップケーキまで3人分とか、事前に打ち合わせが済んでいるとしか考えられない。分かって当たり前だ。

 青木のアパートまでは車で5分。到着したのは時計の長針が真下を指した頃だった。薪は車から降り、運転席の小池に声を掛けた。
「すまなかったな」
「いいえ。どうします? おれ、ここで待ってた方がいいですか」
「いや。帰っていい」
「そうですか。ではおやすみなさい」
「おやすみ」
 挨拶もそこそこに、薪は鉄製の階段を駆け上がっていく。時間も時間ですから足音に気を付けて、と注意してやりたかったが今夜は見逃してやることにした。

「青木。ここにいることは分かっている。無駄な抵抗は止めて出てこい」
 立て籠り犯ですか。

 1分もしないうちにドアが開いて、青木が出てきた。真っ暗な部屋に二人は入って行き、後には静けさだけが残された。しばらく待っても出てくる様子がなかったので、小池は穏やかに車をスタートさせた。今夜は薪も、電気も水道もない部屋で寝るのかもしれない。
「明日は薪さんの機嫌が直ってるといいけど」
 ゆっくりとハンドルを切りながら、小池は苦く笑った。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Cさまへ

Cさま。

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


>『あーああああ~もうやってらんねえなあ』という小池のつぶやきに同情してしまいそうな青薪さんですね。

相変わらず傍迷惑な二人ですみません(^^;

え、家族?
そうですね、薪さんが我儘言えるのも我を通せるのも家族的な関係が築かれているからと言うことで。
……なんかものすごいブーイングが聞こえた気がします(笑)

Bさまへ

Bさま。

あけましておめでとうございます。
昨年はご愛顧くださりありがとうございました。今年もよろしくお願いします(^^


>「アイシテル」では、薪さんはどうなるのか、鈴木さんがまさか消滅!?とドキドキしながら読んでいました。

楽しくドキドキ、最高の褒め言葉でございます♪


>今回のお話、薪さんと青木君はたくさんの厳しい経験を経て一緒にいるので、けんかしていられる位が平和でいいなあなんて感じてしまいました(^^;)

そうなんですよ~。
痴話喧嘩ができるのって、幸せなことですよね。
そして、

>薪さんと青木君のけんかにアレコレ言って墓穴を掘りながら、それでも二人を心配している小池さん、ああいった彼らの関係がとっても好きで、読んでいて顔がニヤケてしまいました。

ありがとうございます。
わたしなりに楽しい第九を書いたつもりなので、こういう感想をいただけて嬉しいです。



仕事へのお気遣いもありがとうございます。
Bさんは、去年は大変だったのですね。疲れが溜まってしまったのでしょうね。大事にならなくて、本当によかったです。
やっぱり健康でないと何事も上手く行かないですよね。お互い、仕事もブログも無理をしないでやっていきましょうね。

Aさまへ

Aさま。


>久し振りの第九コメディ

いつもの法十に戻った気がします(笑)


>鈴木さんがいたらこうはならなかったのかな。

いや、意地悪は変わらなかったんじゃないかな~。
意地悪は薪さんの好意の表れなので、好ましく思う相手ほど意地悪な態度になって行くわけですよ。青木さん、愛されてるねっ。


>八つ当たりされたくないというより、純粋に仲直りさせたいという感じがします。

え、そうですか?
それはきっと、読んでるAさんがいい人だから、そんな風に思えるんですよ。うちの第九、仲悪いですよww
ま、楽しくケンカできるのもいい関係だとわたしは思いますが(^^

Sさまへ

Sさま。


>鈴木さんも薪さんの分身がいて、いつかきっと本物の薪さんがくるって信じているから寂しくないんですよね。

はい。
鈴薪さんに、過去の幸せではなく今現在あげられる幸せを模索した結果、こうなりました。あおまきすとが書いた鈴薪にしてはハッピーエンドになってます、よね?


>その後2人のエリアになんとなく第九メンバーも引き寄せられちゃったり…

ないないww
だってマズイですよ。鈴木さんとはラブラブモード全開ですから。


>今回のお話はしょっぱなからギャグタッチで楽しいですね。

ずーっと鈴薪さん書いてたから、ギャグリミッター振り切れそうになってて。(鈴薪だと思い切ったギャグができない) いい感じで発散できてよかったです。

拙作が気分転換になるとのこと、嬉しいお言葉ありがとうございます。
今年も思いつくままに下らない妄想を垂れ流していきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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毎日たくさんの拍手をありがとうございます。励まされてます。
おかげさまで、しづは元気で仕事してます。(10/28)
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