Dog not to eat it (3)

 お正月休みも今日で最後です~。
 明日からはまた現場なので、すみません、更新空きます。
 お話は今日のでお終いなので、ちょうど区切りもよいかと。

 新年の挨拶いただいた方、ありがとうございました。ぼちぼちお返ししますので、気長に待ってやってください。(正月休み中に返すとか言ってなかった?←ちょっと旅行疲れと怠け癖が、いやその)

 





Dog not to eat it (3)






「青木。3人目の画は出たか」
「はい。こちらです」
「ここにナイフが落ちていると言うことは、現場に残された凶器はミスリードか」
「ええ。この形状のナイフは主に登山に用いられるもので、調べを進めているんですが種類が多くて」
「凶器の特定は科警研に依頼しろ。犯人の動機を探ることが優先だ」
「解りました」

「……3、4、5、あ、ほんとだ」
 事件資料から目を離してあらぬ方向を見ている曽我に、「なにやってんだ」と注意を促し、小池は舌打ちした。こいつのポカは今に始まったことではないが、今それが発揮されたらペアを組んでいる自分まで室長に怒られる。
「いや。小池が言った通りだと思ってさ」
「うん?」と小池が首を傾げると、曽我は青木のデスクから離れていく薪の方を見て、
「5秒間、しっかり絡んでた」
「そっか」
 あの後仲直りしたのだろう。本当に分かりやすい。
 見れば、青木は今日はシャキッとしてるし、薪は薪でお肌つやつや。分かりやすいと言うよりはあからさま、てか、本気で隠す気あるのか、あんたら。

「まったく。犬も食わねえっての、分かるわ」
 休憩時間にコーヒーを飲みながら曽我とこそこそ愚痴を言い合った。立ち聞きの得意な室長は、青木と二人で室長室の中。今日は安心して話ができる。
「さんざん周りに迷惑かけて。昨夜なんかおれ、薪さんを青木のアパートまで送って行ったんだぜ」
「え。青木、家出してたんだ。けっこう本格的なケンカだったんだな」
「なにが原因だか知らないけどさ、それで職場の人間に当たり散らすって。室長失格だと思わないか」
「……なんかされたっけ」
「携帯歪むほどの勢いでゴミ箱にダンクされただろうが。忘れちゃったのか」
 自分が受けた被害を次の日には忘れる、曽我の楽天は時として小池を苛立たせる。自分ばかりが怒っていると、まるで小池が執念深い人間みたいじゃないか。

「今だって、二人きりで室長室だろ。この書類出したいけど邪魔するのも悪いかなって思うじゃん。職務にまで支障をきたして、あーあ、職場でデキちゃうやつらって、他の人間にはなんのメリットもないよな」
「小池。おまえちょっと、過敏になってない?」
 てっきり同意してもらえると思っていた親友から思いもかけない言葉が出て、小池はコーヒーカップから顔を上げた。
 コーヒーの湯気の向こうに、親友の真面目な顔が浮かんでいる。少し困ったような、お人好しで人との諍いを嫌う彼が、それでも耳に痛いことを言わなきゃいけない、そんなときの顔。

「おれも最初はそう思ったんだけどさ、考えてみたら薪さんて普段からああじゃん。携帯が鳴ればおれのだけじゃない、誰のだってゴミ箱にぶち込むし、無駄話してればペナルティを課す。急ぎの捜査があれば昼休みは棚上げだし、バックアップも更新時期が迫ればみんなで残業。いつもと同じだよ」
 曽我は説教は苦手中の苦手で、仕事のことならギリギリ言えるけれど、それ以外のことで他人を諭すのは額に脂汗が浮かぶほど。でも小池は親友だから。二人は大切な仲間だから。自分が踏ん張らなきゃいけないと、そう思ったのかもしれない。

「二人のこと、本当はショックだったの知ってるよ。でも、そういう目で見てたら何でもそう見えちゃうだろ。あの二人が付き合ってるのは事実なんだから、職場でももっと気を利かせてやればいいのかもしれないけど、薪さんも青木も、そういうのは喜ばないよ、きっと」
 出して来いよ、書類。
 曽我に促されて、小池は席を立った。ものすごく気まずかった。だって多分見抜かれてる。自分が青木に嫉妬してること。
 小池は薪のことを悪しざまに罵ることが多いけれど、心の中ではとても尊敬している。警察の男なら誰だってそうだと思う。他者に大きく水をあける、室長の捜査能力に憧れない刑事はいない。その薪のプライベートを独り占めする青木に嫉妬する。我ながらカッコ悪い。

「……犬も食わないのはおれの方か」
 息を深く吸って、室長室のドアを開ける。開けてから、ノックをし忘れたことに気付いた。
 やばい、見たら室長に脳を潰される。

「柏市の案件か? 早いな、小池」
 咄嗟に目をつむった小池の耳に、薪の落ち着いた声が聞こえた。恐る恐る目を開けると、(と言っても薪にはその差は分からなかった。小池にとっては不幸中の幸いと言えるだろう)小池が心配したようなことは何もなく、薪は平然と室長席に座り、青木は――。
「青木、なんで正座なんですか」
「こいつ、科警研にナイフの調査依頼できなかったんだ。忙しいって断られておめおめ引き下がって来たって言うから説教してたところだ」
 忙しいのは何処も一緒だバカヤロウ、科警研の平均残業時間は第九の半分だぞ、なんでもっと粘らないんだ、この根性なし。
 床に正座で項垂れている大男に次々と罵声を浴びせる、当たり散らすとは正にこのこと。その様子に、小池の中でくすぶっていた埋み火のような仄暗い感情はきれいに氷解した。
 薪にこんな仕打ちを受けている男が羨ましいなんて、思えたらそれはまともじゃないってことだ。小池はマトモだ。

「いいか青木」
 ひとしきり毒を吐き出してしまうと、薪は立ち上がって机の前に回り、床に膝を折っている青木の前に屈んだ。俯いていた青木が、そっと顔を上げる。
「仕事ってのは抱え込むもんじゃない。効率を最優先に考えて、適所に割り振るのが大事なんだ。それでこそ最大の成果が得られる。おまえはそれを学ばないといけない」
 青木はキャリアだ。やがては人の上に立つ。上の人間は部下に仕事を割り振るのが仕事だ。それが例え困難な内容でも。人の好い青木には難しいかもしれない、だけど慣れなくてはいけない。薪はそれを青木に教えようとしているのだ。

「はい」と青木が返事をした後、いつものように二人の視線が重なった。でもそこに小池は、部下を指導する上司とそれを受ける部下以上の何も見つけることはできなかった。
 薪が「よし」と説教終了を告げると、青木はふらつきながら立ち上がった。脚が痺れたのか、ふくらはぎのあたりを擦っている。薪は愉快そうにそれを眺め、美味そうにコーヒーを飲んだ。

「そうだ、小池。昨夜は悪かったな。自家用車で送らせて」
「どういたしまして。あれから青木のアパートに泊まったんですか」
 小池は探りを入れたわけではない。自然に会話をつなげただけだ。なのに薪は飲んでいたコーヒーに突然むせこんで、
「ととと泊まったけど! 布団は一つしかなかったけど、ただ寝ただけで別になにも」
 聞いてませんけど。
 青木がそっと小池に手を合わせた。気付かないふりをしてください、と眼鏡の奥が言っている。
「失礼します」と敬礼して、小池は部屋を出た。

 ドアを閉める際に向き直ると、赤い顔をしてコーヒーを飲んでいる薪の後ろで、青木が幸せそうにそれを見ていた。
 なんとなく安心した。
 あの二人が一緒にいると、職場に安定感が生まれる。それはおそらく薪の精神的な安定から生まれるもので、やっぱり薪には青木が必要なのだろう。
 薪にとっての重要度と言う点で自分よりも年下の青木が勝ることには些少の引っ掛かりを覚えるが、小池は第九の職員。職場が安定するに越したことはない。
 ドアを背に、吹っ切れたような笑いを浮かべた小池に、曽我が自分の席からニヤッと笑い掛けた。




(おしまい)



(2013.10)



*****


 以上、新春SSでした。
 相変わらずケンカばかりの青薪さんですが、今年もよろしくお願いします。


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま。

>原作でも小池は実は薪さんが好きなのは分かりますよね(^^)

ミエミエですよね。
これ言ったら薪さんが怒るって分かってて言うんだから、構って欲しがっているとしかw



>意外に曽我の方が冷静に見ていて本当にいいコンビだなと微笑ましかったです。

お互いの足りないところを補い合ってる感じで、彼らは実に良い友人関係ですよね(^^
彼らが薪さんの冷たい視線に耐えられるのも、職場に親友がいるからからもしれませんね。

Sさまへ

Sさま。

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします(^^


>お正月はお雑煮と青薪さんに限りますよね。

「お雑煮と青薪さん」かあ。
原作の薪さんはいつも仕事に追われてそうで、お正月でまったりしてる状況が浮かばないんですけど。舞ちゃんと3人で暮らし始めたら、そういう時間もあるといいですねえ。


>まさかあの世で薪さんの魂が鈴木クンの所に行ってしまうなんてえことはないでしょうねえ。

え、ダメ?
普通にそのつもりで書いてましたけど、あおまきすと的にはアウトなの? ……やべー(^^;



>本年もどうぞ薪さんにぞっこんな青木や薪さんに溺愛な青木や薪さん以外目に入らない青木などのお話を紡いで下さるよう深くお願い申し上げます。

青木さん、いつまでも社会不適格者のまんまっすね(笑)

2014年、メロディに秘密の新作が載るんですよね。楽しみですね♪
きっと創作の内容もそれに応じたものになると思います。やはり原作の影響が一番大きいんですよね。去年はジェネシスのおかげですっかり鈴薪ブログになってましたからね。青薪命のSさんには申し訳なかったです。ゴメンね。

鈴薪ばっかり書いてたから、わたし自身、深刻な青薪不足に陥ってます。
時間ができたら青薪創作に没頭したいです。
あと2ヶ月、早く現場終わらないかなー。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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