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新人教育(1)

 今回のお話は、青木くんが警察官として大事なことを学ぶ、というお話です。
 原作の青木くんは、その辺、初めからよくデキてて、偉いなあ、と思いました。
 うちの青木くんは最初の頃はヘタレ設定なので、青木くんファンの方は幻滅必至です。どうか、寛大なお心でお願いします。




新人教育(1)






「見つけましたよ、この角の看板の黒い部分です」
 得意満面という顔つきで、青木が画面を指差した。
 この新人は、最近とても調子がいい。このように、小池でも気づかなかったところを指摘することもしばしばある。調子付くと怖いタイプだな、と小池は思う。

「黒い文字の上だから分かりにくいんですけど、拡大すると……ほら、血が付いてます」
「現場検証では無かったな。こんな立て看板」
「ええ。血が付いた可能性があると思って、現場からここへ持ってきたんですね。けっこう気の回る犯人ですね」
 自分の発見に興奮して饒舌になる新人に苦笑して、小池は報告書の添付ファイルのフォルダにその写真を追加した。発見者の欄に、ちゃんと青木の名前を載せる。かなり有力な手がかりだ。あとで室長のお褒めの言葉があるかもしれない。

「でも、MRIにかかればこの通り。ほんと、神様みたいなシステムですよね。何でもお見通しってやつです」
 青木はまだ喋り続けている。普段はそれほど口数の多い男ではないが、自分が一番最初に手がかりを見つけたときの高揚感は、小池にも良く分かる。こんな時にはつい、軽口を利いてしまうものだ。
「面白いですよね。MRI捜査って」
「……面白いって、おまえ」
「あ、すいません。殺人事件の捜査を面白いって言い方はないですよね」
 小池の非難するような眼に気付いたのか、素直な後輩はすぐに謝罪してくる。しかし、それほど悪いとは思っていないようで、続けて自分の意見の補足にかかる。
「でも、自分が予想したところにピタッとはまる画を見つけた時って、オレってすごいとか思っちゃうじゃないですか。なんかゾクゾクしちゃいますよね。エンドルフィン出てるぞ、みたいな。室長なんかもっとズバズバ当てちゃうから、脳内麻薬バンバン出てるんでしょうね」
「青木。言葉に気をつけろよ」
 小池の口調が厳しくなる。普段は軽い皮肉が得意な小池が、こんな風に真面目に叱ることはあまりない。

「すいません。ちょっと調子に乗りすぎました」
 今度はきちんと反省したようだ。しおらしく頭を下げる。
 青木は東大の法律学部を卒業した秀才なのだが、自分の頭の良さを鼻にかけるようなことはしない。頭の出来が良いと周りの人間がバカに思えてきて、周囲の苦言を素直に聞く心を失っていくものだが、青木はそれを失わない。エリートらしからぬ素直で可愛い後輩なのだ。あまり表立って褒めたことはないが、小池は青木のそんなところをとても高く評価している。どこかの誰かに、爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいだ。
 しかし。

 小池はそのどこかの誰かに、青木のことを相談する必要性を感じている。
 このところ、青木の言動はときどき小池の理解を超えることがある。
 べつに、生意気だとか反抗的だとかいうことではない。誰よりも熱心に仕事をするし、先輩の言うことは素直に聞くし、叱られれば真面目に反省もするのだが、なんとなく根底の部分が浮ついているというか。

 警察官にとって最も大切なものを、この新人はまだ手に入れていないのではないか―――― 小池には、そう思えてならない。

 仕事熱心な後輩は、せっせと次の画の解明に取り掛かっている。眼鏡の奥の真剣な瞳は、しかしどこかしら面白がっているようで、それが小池に不安の種を植え付ける。
 後輩に対するこの疑念は自分でも不明確で、はっきりとした言葉にはできない。そんなあやふやなものがあの人間味のない室長に伝わるかどうか不明だが、とにかく報告はしておいたほうがいい。
 きっと、早いほうがいい。なんとなくそんな気がする。

 報告書のファイルと一抹の不安を抱えて、小池は室長室の扉をノックした。


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
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