仮面の告白(3)

仮面の告白(3)








 翌朝、薪は珍しく寝坊した。

 岡部は薪の目覚めを辛抱強く待っていたが、時計が10時を回った時点で諦めて、他人の家の台所を勝手に漁り始めた。
 白いごはんに生卵というえらく簡単な朝食ができた頃、薪はようやく起きてきた。
 岡部に手を上げて挨拶の代わりにし、冷蔵庫の水を呷る。冷たいペットボトルを額に当てて、ため息を吐いた。
「も~、酒やめた」
 どうやら二日酔いらしい。

「あれ、青木は? 泊まっていかなかったのか」
「泣きながら帰っちゃいましたよ」
 岡部が青木の様子を大げさに報告すると、薪はにやりと笑った。予想はしていたが、やはり計画のうちか。
「そっか。帰ったのか。ここでもうひと押しだな」
 何を押すつもりでいるのか、聞くのがコワイ気がする。
 目的のためなら核兵器のボタンでも平気で押しかねない薪の性格を、岡部は嫌というほど知っている。

 岡部の向かいに腰掛けて、薪は頬杖をついた。深酒のためか、少し目が腫れぼったい。
 そのせいか、いつもは涼やかな印象を与える亜麻色の瞳は妙な色香を含んで、いっそ官能的ですらある。岡部以外の男だったら、道を間違えてしまいそうだ。

「岡部。それさ、ネギ混ぜてフライパンで焼くと美味いんだ。やってやろうか」
 計画通りに事が進んでいるらしく、薪は上機嫌だ。岡部が混ぜている生卵とごはんを指して、新しい食べ方を教えてくれるという。
 フライパンに岡部の食べかけの生卵とご飯を入れて、長ネギのみじん切りを加える。香ばしい匂いがしてきて、薪のオリジナル卵ごはんが出来上がった。
「ほんとだ。美味いです」
「だろ?」
 卵チャーハンとも卵かけごはんとも違う味だ。味付けはいくらか濃い目で、岡部の好みに合わせてある。
「これ、鈴木が好きでさ。よく作ってやったんだ」
『卵焼きごはん』ていうんだ、と言って薪は笑った。薪のオリジナル料理は、かつての親友の好物が多い。岡部以上に頻繁に薪の家に出入りしていたのだろう。

 ピーピーという電子音が、バスルームの方から聞こえてきた。薪は立ち上がり、そちらのほうへ歩いていく。薪の休日は、朝風呂から始まるのだ。

「岡部。おまえこれからどうする?」
「家に帰ります。お袋に、家庭菜園の手伝いをするように言われてるんですよ」
「うん、わかった。お袋さんによろしくな。ぬか漬けごちそうさま。美味かったって言っといてくれ」
「はい」
 やがて、風呂場からシャワーの音が聞こえてくる。
 岡部は食事を終えて食器を洗い、キッチンを軽く掃除してから薪のマンションを出た。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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Aさまへ

Aさま、こんにちは。


>薪さんはわざと、自分に幻滅させようときわどい下ネタトークを繰り広げたんですね(^^)

そうなんですよ~。
青木くんの目を覚まさせてやろうとしたのです。
覚めませんけどね★


>素人は面倒くさいと言うのは本当でしょうけど。鈴木さんとは純愛だったのにね(笑)

人間、15年も経てば変わりますって(笑)
だけど、鈴木さんに対しては一途なままなんですね。 青木くん、カワイソウ♪


>薪さん、原作でも横たわってましたから

なんか、女の子相手に汗をかいて挑む薪さんが想像つかないんですよね(^^;
薪さんは男の方なので、これってかなり失礼な言い方ですけど、相手が男でも女でも受け身になってそう(笑)


>あ、私も残りのご飯に卵とネギの炒めご飯作ることあります。薪さんのようにおいしくはないと思いますが・・

これはオットの好物で、お義母さんがよく作ってくれるんですよ。
しょうゆ味なんですけど、意外と美味しいです。
ふふ、Aさまも本当は、料理お上手でしょう? 残り物でささっと作れるのは、しっかり主婦してらっしゃる証拠です。(^^
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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