カエルの王子さま(3)

 こんにちは!

 こないだの入札、2件も落札しちゃいました♪
 着工書類の作成も2件分なんで超忙しくなるんですけど、そこは自分の会社なんでね、仕事ないと会社潰れちゃうから頑張るです。書類を作る間、少し更新空くかもですが、よろしくです。
 9月からは現場に出ることになると思います。工事が終わる3月末までは去年みたいに更新減っちゃうかもですが、気長に待ってやってください。

 それと、一昨昨日あたりからたくさん拍手くださってる方々、どうもありがとうございますっ。
 過去作への拍手はクオリティ的には恥ずかしさMAXでございますが、昔の話の方ががっつり恋愛してて、読んでは面白いかもと思ったりします。薪さんも青木さんも、悩んで傷ついてぐちゃぐちゃになってるあたり。そこから大事なものを見つけ出していくんですよね。
 現在もこのスタイルは変わってないのですけど、「タイムリミット」の後の二人は永遠を誓い合っちゃってるので~、見つけるのが愛以外のものになってしまう傾向が強く、恋愛小説にはなってないと思います。何より、薪さんが大人になっちゃって、書いててもつまんない。とは言え、彼ももうすぐ50だしねえ。いつまでも男爵やっててもねえ。
 現在の青薪さんに波風立てるのは嫌なので、日付を戻して、男爵がカンチガイで地球の裏まで突っ走る恋愛話を書こうかなー。


 さてさて、続きです。
 短いですがどうぞです(^^




カエルの王子さま(3)





 開け放しのフランス窓から舞い込む冷たい風に、男は身を竦めた。立ち上がって窓を閉める。快晴だったはずの空は、いつの間にか濃灰色の雲で埋め尽くされていた。山の天候は変わりやすい。特に今時期は不安定だ。
 暦は既に5月だが、山際の森では季節の足運びに1月程度の遅れがある。新芽の芽吹く頃で、旧い深緑と新しい黄緑色、それと冬の間に死んだ枯れ木の砂色が広大な山麓で不規則に混じり合い、さらには山桜のぼやけたピンク色が点在する。この時季は毎年思う、見苦しいことこの上ない。

 男は窓の反対側に置かれたベッドまで戻り、再びその上に腰を下ろした。大きな枕の上にちょこんと載っている小さな顔を見つめ、ふうむ、と何度目かのため息を漏らした。
「本当にきれいだなあ」
 目を閉じた彼の、長い睫毛を人差し指の先で弄びながら、男は独り言を言った。彼は長い間話し相手のいない生活をしてきたせいで、独り言を言うのがクセになっていた。
「これで男なんだもんな。惜しいなあ」
 人里離れた山奥の屋敷の、豪奢な部屋の中に居るのはたった二人。どちらかが女性ならドラマになるのに残念だ。男はそんなことを思いながら掛け布団をめくり、仰向けになった男性の胸に手を当てた。
 規則正しく上下する胸の奥に、力強い鼓動を感じる。女性にはない筋肉の固さと、高い体温。女性のように揉みしだきたくなる感覚は生まれないが、手触りは悪くなかった。彼の肌はさらっとしてすべすべだ。一般的に評価の高い「手に吸い付くようなもち肌」ではないが、男の好みは痩せ形の女性だ。もち肌は纏わりつくようで気持ち悪い。

「ありか? いやいや、さすがにそれは」
 過去の恋人たちの中には、まだ乳房の膨らまない年齢の少女もいた。付き合ううちに、彼女は少女特有のエロスを醸し出すようになった。少女がイケるなら男もイケるかもしれない。男は中性的な体型が好きだったし、何よりもこの顔。
「顔だけなら文句なしにナンバー1だ」
 小枝にでも引っかけたのか、頬に小さな傷がある。それを除けば非の打ちどころがない滑らかさだ。どれだけこまめに手入れをすれば男の頬がこんなに綺麗になるのか、それとも最近は男でもエステに通って肌の手入れをするのが普通になったのか。一緒に暮らしていた彼女が、そんな話をしていた気がする。

「しかしこいつは……まずいな」
 それは彼の身分と職業を証明する手帳だった。上部には、制服を着て真面目な顔をした彼の写真があった。
 上着にこんなものが入っていると分かっていれば、助けなかった。あんまりきれいだからつい拾ってきてしまったが、彼がこんな職業に就いているなら、自分の計画は無謀すぎる。もう夕方だし、今夜一晩は泊めるしかないだろうが、明日は早々にお引き取り願おう。

 念のため、幾つかの部屋に鍵を掛けるべきだと気付き、男は彼の傍らを離れた。
 ドアに近付いた時、んん、と微かな声がした。振り返ってみれば、寝台の上に身を起こす彼の姿があった。意識を取り戻したらしい。思わず、男は舌打ちした。
 面倒なことになった。彼が眠っているうちに片付け物をしておくのだった。

 心に感じた痛痒をおくびにも出さず、男はにっこりと微笑んで彼に近付いた。街に出て、好みの女の子に近付くときのように。
「眼が覚めましたか。どこか、痛むところは?」
「ここはどこです。いったい何がどうなって、あ、痛っ」
 覚醒したばかりで混乱している様子の彼は、起き上がったことで急な痛みに襲われたらしい。倒れるようにして、再びベッドに沈んだ。包帯や絆創膏だらけの自分の身体を見下ろして、深く息を吐く。
「僕は何故こんな怪我を」
「森の中に倒れていたんですよ。上の道から落ちたんでしょう。でもあなた、ラッキーですよ。それくらいの怪我で済んで」
 男は、彼を見つけた時の状況を頭に思い浮かべた。彼は厚く積もった落ち葉の上に仰向けに転がっていた。彼の身体の下には折り取られたばかりの枝も数本あったから、崖から落ちて木に突っ込んだのだろう。あの崖はかなりの高さがあった。骨折や内臓破裂など、重傷を負っても不思議ではない高さだ。それが打撲に擦過傷、捻挫程度で済むとは、えらく幸運な男だ。顔がいい男は運も強いと見える。

「無理をしないで。もうしばらく休んだ方がいい」
 自分の額を包む彼の手に、男は自分の手を重ねる。そうされて、彼は初めて男の存在に気付いたらしい。彼の眼がぱっちりと開き、亜麻色の瞳が男の顔を映しだした。
 瞬間、男はいつも最初の時に味わう手酷い絶望を覚悟した。
 相手の眼に浮かぶ、嫌悪の色。蔑み、恐怖、同情か嘲笑か判じ難い曖昧な笑い。そんなものばかり向けられてきた。特に、若く美しい者からは。

 ところが彼は違った。眠りから覚めたばかりだったせいかもしれないが、男の顔を見て、ふんわりと微笑んだのだ。
「あなたが僕を助けてくれたんですか。ありがとうございました」
 その顔はとても愛くるしかった。一瞬、男は彼との生活を脳裏に描いた。悪くないと思った。詮索好きで細かいことばかり気にする女性より、返って上手く行くかもしれないと期待さえした。

「あなたのお名前を教えてください」
「桂木省吾だ」
 つい本名を答えてしまってから、自分の抱いた幻想に失笑する。そんなこと、できるわけがない。だって彼は。
「桂木さんですね。ありがとうございました。僕は」
 潰えたとばかり思った夢が蘇ったのは、次の瞬間だった。彼は右手を口元に当ててしばらくの間口ごもり、何とも不思議そうに言ったのだ。

「僕は誰でしょう?」



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
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2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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