カエルの王子さま(4)

 昨日の日曜日、プチオフ会に参加してまいりました~。
 幹事さんになってくれたうかさん、お疲れさまでした。わたしのようなド田舎のおばちゃんにまでお声掛けてくださって、ありがとうございました。
 東京のお洒落なお店で美人さんに囲まれて薪さんトーク。とても楽しいひと時でございました。遊んでくださったみなさん、感謝です。途中、えらい羞恥プレイになって身体溶けるかと思いましたケド(・◇・)
 機会があったらまた参加したいです(^^


 



カエルの王子さま(4)






 当日の探索は断念するとの決断が下ったのは、日没の1時間前であった。天候の崩れもあり、これ以上の捜索は危険であるとの判断がされたのだ。

 まだ日が沈む時間じゃないのに、と駄々を捏ねたのはもちろん現実が見えていない若造だ。他には誰も隊長の判断に異を唱える者はいなかった。彼らはこの道のプロだし、経験豊かな先達たちは全員二次災害の危険を承知していたからだ。
「オレだけでも残って探します」
「あのね青木くん。君が森でのたれ死ぬのは勝手だけど、僕たちの眼の届かないところでやって欲し、……岡部くん、ちょっと乱暴じゃない?」
 頑固に言い張る青木を説得しようと言葉を重ねる中園の努力を無視して、岡部は一言も発せずに青木のみぞおちに拳を入れた。急所への不意打ちに、青木はあっさり気を失う。
「なに言ったって無駄ですよ。こいつのことです、一晩中どころか3日でも探してますよ」
「1週間後には野犬のエサだねえ。それもいいなあ」
「小野田。冗談に聞こえないよ」
 繰り返すが、青木は薪の秘密の恋人である。薪を自分の後継者にしたい小野田としては、もう自分の娘じゃなくてもいいから彼に女性と結婚してほしいのだ。青木は当然邪魔者だ。新聞で死亡事故の記事を見るたびに、「これが青木くんならよかったのに」と呟く小野田を日常的に見ている中園には、まったく冗談にならない。

「ありがとうございます、中園さん。青木を心配してもらって」
 小野田が青木を疎んじていることはもはや、第九と官房室の人間なら誰でも知っている。その情況下で、中園が青木を庇ってくれるのはありがたかった。
「青木くんも薪くんも、代わりはいくらでもいるからね。死ぬのは勝手だけど職務中は困る。僕の責任問題になる。それだけだよ」
 中園は素直じゃない。本当は薪のことも心配でたまらないのだ。常になくイライラした様子に、不安が表れている。
 ここにいる3人は全員、気持ちは青木と同じだ。できることなら一晩中でも森の中を探し回りたい。その行為が間違いなく二次遭難につながること、助かった薪がその事実を悲しみ、自分の罪として背負うだろうことを確信しているから言わないだけだ。それを証明するかのように、中園がこっそりと岡部に耳打ちした。
「ただ、僕もちょっと早い気がする。日没までまだ1時間もあるんだ。空が曇ったところで道しるべのロープもあるし、保険の掛け過ぎじゃないかな」

「おっしゃる通り、保険を掛けてます」
 岡部だけに聞こえるように言った中園の皮肉を、3mほど後方にいた隊長が聞きとがめた。さすが森林捜索のプロ。耳がいい。
「この森は行方不明者が多いんです。それも、ここ3年ほどで20人以上と言う異様な数です。今は正常にコンパスが使えますが、応援に入ってもらった地元の消防団員の話では、これがまったく役に立たなくなる時があるそうです。そういう時は捜索を諦めてしまうのだとか。だから、見つけられることを嫌う自殺者も非常に多い」
 それは、岡部たちが知らされていない事実だった。コンパスがまるで役に立たないとなると尋常ではない。磁鉄鉱を多く含む地層は磁気を発してコンパスを狂わせるが、かの有名な富士山麓の樹海とて、せいぜいが1,2度ずれるだけで方向が分からなくなるほどではない。コンパスを無効にするほどの強烈な磁力が、この森のどこかから発信されているのだろうか。

「この森は人を喰うと、近くの町の住民は恐れているくらいです」
 青木に聞かれなくて良かったと、岡部は心から思った。そんな曰くつきの森だと分かったら、青木が何をするか分からない。原因不明の病に侵された薪の治療をしろと、第五の職員たちを竹刀で脅した男なのだ。隊長を人質に取ってでも、捜索を続けさせるかもしれない。
「危なかった……岡部くんグッジョブ、――っ、だからおまえは何処に行くの!」
 森から出ようとする岡部たちと、無言ですれ違おうとした男の腕を、中園は遠慮なく捕えた。指先が白くなるくらいの強さで握りしめる。男の顔も蒼白であった。
「話を聞いてたか?」
「聞いてたよ。薪くんの命が危ないってことじゃないか。あの子に何かあっ」
 相手が言い終る前に、中園は相手の頬を平手で引っ叩いていた。岡部の眼が点になる。思わず肩に担いだ青木を落としそうになった。先輩である岡部でさえ青木の言い分を全部聞いてから殴ったのに、そもそも参事官が官房長をひっぱたくって。

「頭を冷やせ」
 瞬間、二人の間に生まれた稲妻のような感情の衝突に、岡部は軽いパニックを起こした。官房長と首席参事官のガチバトルなんて滅多に見れるものじゃない。ていうか見たくない。絶対に出世にひびくよ、これ。
 が、小野田はすぐに自分の激情を収めた。さすがは官房長を務める男だ。
「ありがとう中園。おかげで冷静になれた」
 叩かれた頬の赤味以外は、普段とまったく変わらぬ穏やかさで、
「上官に対する暴力行為は査問会の対象だ。首席監察官にはぼくから電話しておくよ」
 ……さすが官房長。

「それだけは勘弁してください、官房長殿。査問会は嫌いです」
 説教は、するのは好きだけどされるのは嫌いだ、と言っていた身勝手な上司を思い出す。この森のどこかで、救助を待っているかもしれない彼。しかしこの状況にあっては、まだ所轄の調べが及ばない何処かの病院に収容されていることを願うしかなかった。
「3年連続で減俸処分なんて。これ以上給料減らされたら生活できなくなる」
 減俸と聞いて、岡部は中園に同情した。多分、2066年のウィルス事件と翌年のテロ事件だ。犯人逮捕に協力したとはいえ、あれだけの騒ぎを起こした薪に何の処分も下りないのはおかしいと思っていたが、中園が被ったのか。
「男の子が買えなくなるの間違いじゃないの」
 ……うん、減俸くらいはいいんじゃないかな。ウィルス事件の翌月、薪は中園に命じられた潜入捜査のおかげで死にかけたんだし。

 その捜査に協力することを自分が薪に勧めたことはちゃっかりと棚上げにして、岡部は青木の巨体を担ぎ直した。筋肉がしっかりと付いた青木の身体は、以前にもまして重くなっていた。
 青木自身のスキルアップもあって、最近は寝技を返すのが難しくなってきた。次の昇段試験では青木に二段を受けさせてみようと岡部は思い、その階級が薪と同じであることに気付いた。たった一つ、薪が青木よりも上に位置する武術として拠り所にしているそれに青木が追いついてしまったら薪はどう思うだろうと余計なお世話を焼きつつ、岡部は森を抜けた。

 暗い森の中から外へ出る。自然に振り仰いだ夕暮れ間近の春の空は、いつの間にやら濃灰色に染まって、彼らの不安を映し出すかのようだった。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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