Are you happy?(1)

 い・そ・が・し・いっ!
 もう本当に忙しい! 文字通り、心を亡くすほど忙しいっ! メロディ、まだ2回しか読めてないよー!

 でもどんなに忙しい時でも、薪さんは「僕は忙しい」と言わない。そんな暇はない、と言うことはあるけど、忙しいとは言わない。心を亡くしたら、薪さんの仕事はできないんだろうなあ。
 時間は作るもの。わたしも薪さんを見習って、時間を作ってブログの更新します。(仕事から逃げてるだけだろうとか言わないでw)


 が、さすがに長編の再読は無理なんで(^^;
 予告いたしました「青木さんがんばれSS」(「あの内容で?」とか言われそうだ)の前に、メロディ10月号で凹んだとき、リハビリに書いた雑文をひとつ。

 自分の気持ちをオープンにしないのは薪さんのデフォルトだと思うし、薪さん自身、そんな自分を不幸だとは露程も思っていないに違いない。薪さんが青木さんに手にして欲しい幸せは、青木さんが望む「薪さんと家族になること」じゃない。その信念に基づいて行動している。自分の気持ちを無理やり押さえてるんじゃない。やりたいからやってるんだと思う。
 それでも言いたくなっちゃうんだよなあ。こんな形の幸せもあるんだよって。
 わたし、おばちゃんだから。おばちゃんて、お節介な生き物なんだよ☆





Are you happy?(1)




 鬼のかく乱か青木の風邪か。六年目にして、初めて彼が寝込むところを見た。

「ウィルスを拡散するな。大人しく寝てろ」
 朝、ゴホゴホやりながら出勤のために起きてきた彼に、厳しく言い付ける。風邪と言うのは病気ではなく、疲れが蓄積し過ぎて体力の限界を超えたときに働くリセット機能みたいなものだ。大人しく寝ていれば三日で治るのに、無理に動くからこじらせたりする。そんな理屈で彼を寝室へ戻らせようとする薪に、青木は熱で潤んだ瞳を向けて、
「毎回毎回、意識不明になるまで我慢しちゃう人に言われても、ごほっ」
 ンだと、こら。
 風邪は気合で治すが薪のポリシーで、実際それで上手く行くときもある。しかし風邪ウィルスは宿主の気が緩んだ途端急激に増殖する性質を持っていて、瞬間的に身体を乗っ取られたようになる。それが意識混濁の原因であり、決して自分の体調管理が未熟なわけではない。ちょっと油断しただけだ。

「職場のみんなに伝染されたら困る。寝てろ」
「はい。――あ、薪さん。ロビーにSP呼んでおきましたから。勝手に行かないでくださいね」
 部下の手回しの良さに、薪は思わず舌打ちする。
 余計なことを。久しぶりに電車に乗れると思ったのに、がっかりだ。
「オレの風邪が治ったら、電車でお出掛けしましょうね」
 その上、子供っぽい我儘を見抜かれたと思ったらめちゃくちゃ腹が立った。薪は盛大に舌打ちし、「行ってらっしゃい」の声に答えもせずに玄関の戸を閉めた。



*****




「室長。渋谷の強盗殺人の報告書です」
 窓の外を眺めながらコーヒーを飲んでいた上司に、今井は声を掛けた。すぐに机に戻って報告書を手に取る、彼の敏捷を好ましく思う。役職者の中には、報告書の類はまとめて夕方に処理する者も多い。ろくに中身も見ないで判を押すだけならその時刻で充分、というわけだ。
 この上司にあってはそのようなことは絶対にないし、その精査は必要以上に厳しい。だから製作者側にも気合が入る。点の辛い彼に一発で承認印を押してもらえた職員は、第九では密かな英雄になる。

「鞄から被害者のネックレスがはみ出していた、と。確定だな」
 パラパラとページをめくりながら、決め手になった証拠について確認する。事件の概略を知っているとはいえ、あの早さで報告書を流して理解できるのだから、やっぱり薪の能力は飛び抜けている。この人には逆らえないと職員たちが思うのは、階級よりもむしろ、こうして圧倒的な力の差を見せつけられたときだ。
「いつも洗練された報告書で助かる。よくまとまってるし、内容が頭に入りやすい」
「恐れ入ります」
 詳しい精査は後で行うのだろうが、とりあえずは及第点だ。ホッと頬を緩めた今井の前で、薪が飲みかけのコーヒーに手を伸ばす。その細い指はカップの取っ手を掴み、持ち上げかけて止まった。小さく揺れたマグカップの白い内壁で、限りなく黒に近い焦げ茶色の液体がやるせなく波打つ。
 薪の口元に運ばれることなく沈黙したコーヒーを見て、今井は、病欠の届が出ている後輩を思い出した。

「青木、風邪ですか」
 ああ、と生返事を返しながら薪は、再度報告書に目を落とす。薪は青木が淹れるコーヒーが大のお気に入りだ。今日はそれが飲めなくて、残念な思いをしているのだろう。
「珍しいですね。あの元気の塊みたいな男が」
「バカは風邪引かないってのは迷信だな」
 皮肉を言いながら、ふっ、と笑った。薪が仕事中に冗談なんて珍しいことだ。鬼の室長も青木と暮らし始めて人間らしさが出てきたか、と今井はなんだか嬉しくなって、仲間内で話すときのように軽い口調で言った。
「そう言えばこないだテレビで、『バカは風邪を引かないのではなく、風邪を引いたことに気付かないんだ』って言ってましたよ。青木はこれまで独り暮らしだったから、その状態だったんじゃないですか」
「そうかもしれないな。……やり直し」
「え」
 分厚いファイルを突き返されて、今井は戸惑う。付箋も赤ペン添削も無いんですけど、これはいったいどうしたら。
「あの……どの辺りを」
「言わなきゃ分からないのか」
 無意識に持ち上げたマグカップを、今度はあからさまに机に戻して、薪は別の書類に手を伸ばした。絶対拒絶のオーラが出ている。賢明な今井は、一礼してファイルを持ち帰った。

 ドアを開けると、小池と曽我のコンビが揃ってニヤニヤしていた。中の様子を窺っていたに違いない。肩を竦めた今井に、笑いながら小池が、
「あの人、自分が青木の悪口言うのは平気だけど、人に言われると面白くないんですよ」
「知ってるよ。失敗したー、つい軽い気持ちで言っちゃったんだよ」
「根に持つタイプですからね。一週間は苛められますよ。お気の毒に」
「おまえも気を付けろよ」
「大丈夫。簡単ですよ、逆に褒めればいいんです」
 自信に満ちた足取りで、今井と入れ替わりに中に入っていく。曽我と二人、ドアに張り付いて聞き耳を立てていると、小池の報告書にも難はなかったようで、「ご苦労だった」と言う室長の言葉が聞こえてきた。

『薪さん、青木は本当に優秀ですよね。たまに休まれると、あいつの重要さが分かります』
『そうか。具体的にはどんな?』
『ええっと、掃除とか買い出しとかお茶汲みとか。ホント面倒で』
『そういった雑用を、まだ青木一人に押しつけてるのか』
『ち、違いますよ。押しつけてるわけじゃなくて、あいつが進んで』
『同僚として感謝している?』
『もちろんです!』
『では週末の青木のバックアップ当番、おまえにシフトでいいな』
『え』
『普段の感謝を表す意味でも、喜んでやってくれるよなあ、小池』
『……はい』

 情けない顔で出てきた小池に、吹き出したいのを堪えるのが大変だった。隣で今井と同じように顔を赤くしていた曽我が、ようやくに笑いの衝動を治めて、
「バカだな、小池。おれは失敗しないぞ」
 ムッとした表情の小池に、曽我は邪気無く言った。
「青木は確かに仕事できるけどさ、薪さんみたいにズバ抜けて仕事できる人にそこをプッシュしても当たり前だって思われるだけだろ。それよりは青木の人柄を褒めるんだよ。結局は薪さんだって、青木のそういうところが気に入ってるんだから」
 曽我がドアの向こうに消えて、今度は小池と二人でドアにへばりつく。そんなことを繰り返していれば他の職員が関心を持つのは当然のことで、曽我の舞台は満員御礼の大賑わいとなった。

『薪さん。青木がいないと、第九は火が消えたようです』
『そうか』
『第九だけじゃないですよ。あいつ、庶務課や総務の女の子にも人気あるから。メール便持ってきた庶務課のミキちゃんも、通達持ってきた総務のタエちゃんも、『今日、青木さんいないんですか』って悲しそうな顔して帰って行きましたよ』
『ふうん。……おまえ、今日から1ヶ月間メンテ当番な』
『なんでっ?!』

 曽我の悲痛な叫びが木霊する中、今井はしみじみと言った。
「バカだ」
「バカですねえ」
 下方で聞いていた山本が相槌を打つ。こいつも段々、ここの色に染まってきた。
「曽我のKYはもはや凶器だな」
「一番言っちゃいけないことだよな。薪さん、今日一日機嫌悪いぞ」
「おれも相当機嫌悪いぞ」
 こそこそ話す小池と宇野の後ろから、重低音のドスの効いた声がした。四人の肩が、びくんと上がる。
「仕事しろ!!」
 職員たちは慌てて自分の机に戻る。第九で怖いものと言えば室長のブリザードだが、副室長の雷も充分こわい。

 泣きそうな顔で出て来た曽我を訝しげな表情で見送りながら、岡部は室長室に入り、そのままの姿勢でバックで出て来た。そーっとドアを閉める。
「何やったんだ、おまえら」
 室長室が氷河期になってるぞ、とこちらを振り向く岡部に、職員たちがわらわらと寄る。この中で薪を宥められるのは岡部だけだ。彼には事情を話しておく必要がある。
「室長が青木のこと、『バカは風邪引かないってのは迷信だな』なんて言うからつい話に乗って」
「そこは否定しとけよ。あの人、自分以外の人間が青木の悪口言うと怒るんだから」
「それで小池がフォローを入れようとしたんですけど。結果的に、青木が未だに雑用全部こなしてることバレちゃって」
「まずいよ。前々から雑用は交代制にして、青木を捜査に専念させろって言われてるんだから」
「トドメは曽我のやつが。青木が女子に人気あることバラしてて」
「最悪だな。ああ見えて薪さんは、ものすごいヤキ」
「僕がなんだって」
 地獄の使者もかくやという不気味さを孕んだ声音に、岡部の剛毛が総毛立つ。まるでヤマアラシのようだと思ったが、誰も笑えなかった。

「岡部。僕に何か話があったんだろう。聞いてやるよ、人目に付かないところで」
「や、報告ならここでっ」
「遠慮するな。内緒話が好きなんだろう? 僕ともしようじゃないか」
 薪は岡部の後ろ襟を掴むと、彼を引きずるようにしてモニタールームを出て行った。岡部の巨体が薪の細腕に引きずられる違和感や、連れ去られる岡部がまるでいたいけな子牛のように見えたイリュージョンや、そういったもろもろの現象を現実と擦り合わせる努力を放棄して、残された職員たちは一斉に溜息を吐いた。
「岡部さん……」
「だから、声大きいんですよ」
 内緒話には向かない岡部の声が薪の堪忍袋の緒のみならず袋そのものを破壊して、今日の第九は針山地獄決定。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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男爵~(≧▽≦)

薪さんきゃわわ(*´∇`*)
ああ、幸せで、幸せで、幸せです。
駄々っ子薪さんも、王様薪さんも大好きですけど、
オーラを消せる上司をいつまでも学習しない第九のあいつら。愛しい~(≧▽≦)

今の所長になったカッコいい薪さんも素敵ですが。やっぱり第九でみんなに囲まれてた薪さん、あれほんと良かったですねぇ…まさに家族。そしてHappy♪
それが見られるから、しづさんのお話読みに来るのがやめられない。
そして次のお話が怖い。でもやめられないww

なみたろうさんへ

なみたろうさん。

>薪さんきゃわわ(*´∇`*)

ありがとうございます(^^)
駄々っ子でも王さまでも、薪さんが幸せならいいですよね☆


第九のみんなとの交流、よかったですよね。
なんたって「家族のようなところ」ですもんね。薪さんが心から安らげる場所だったんでしょうね。

やっぱりさ、そういう場所って必要だと思うのよ、おばちゃんは。
所長になったらなったで、また新たにそういう場所を作る必要があると思うのよ。
そこが青木さんの元だったらいいなあって、願いながら新しいお話書いてます。ワンコ、頑張れ。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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