青木警視の殺人(16)

 雨で午後から休工になりました。
 更新しますー。


 現場は大変ですけど、面白いことも多いです。
 もちろん仕事は真剣にやってるんですよ。重機が動きますからね。ふざけてて、事故でもあったら大変ですので。
 ただ、男の人ばかりなのでノリがいいと言うか冗談がきついと言うか。女性の代理人は珍しいから、構われるんですかね(^^;

 年末、役所の安全パトロールがあったんですよ。でね、
「2×日は役所のパトロールがあるので、安全管理をしっかりお願いします」と言いましたら、
「その日は休むかー」「みんなして腹痛くなって」「誰も電話に出ないで」
 ひーどーいー!!
 てな調子で毎日遊ばれてます。楽しいけどねっ。





青木警視の殺人(16)





 それから3日間、青木はホテルに閉じ込められた。すぐに容疑は晴れるものと思っていたが、事態は青木の予想よりもずっと深刻であるらしかった。
 青木の耳には、現在の状況が全くと言っていいほど入ってこなかった。雪子に付いていた監視は、当然薪にも付いただろう。薪が小野田を頼ることは捜査本部も察しているだろうから、官房室の人間にも。それで連絡をしてくることができないのかもしれない。

 小野田が寄越した坂崎と言うボディガードは、青木の身辺警護と同時に監視役も担っていた。外出どころかロビーにも出してもらえなかった。身を隠しているのだからと、外部へ連絡することも封じられ、携帯電話も取り上げられた。一日中同じ部屋にいて、青木が席を立てば後ろから着いてきて、窓に近付こうものなら強引に引き戻された。夜は寝室にこそ入ってこなかったが、リビングのソファで仮眠を摂りつつ見張りをしていた。
 どうして薪や小野田がSPを嫌がるのか、青木はやっとわかった。職務に忠実な彼らには悪いが、ウザ過ぎる。
 せめてもの慰みに、青木は寝室にパソコンを持ち込むことにした。幸い、インターネット回線は寝室にも引かれていた。検索しても事件の情報は得られなかったが、朝から晩まで部屋に籠り切りなのだ。何かすることがなかったら過ごせるものではない。

 最初の日、青木は朗報がもたらされることを信じて、じっと待った。2日目は、部屋の中をうろつくことで過ごした。座っていることが苦痛に感じられたのだ。
 3日目には、貧乏ゆすりが止まらなくなった。終始イライラして、食事も喉を通らなくなった。最初食べたときには感動を覚えるくらい美味しかったホテルのルームサービスは、いまやレトルトのカレーよりも味気なかった。
 軟禁は、神経に堪えた。
 自分が動くことは、青木の濡れ衣を晴らすべく奔走している小野田たちの足を引っ張る行為だと、分かっていても辛かった。知り合いの女性が死んだのだ。監査官と監査対象者という関係ではあったが、二人で食事に行ったりもした。色々な話をした。監査の聴取だったのに、なぜか仕事以外の話が多かった。その分、彼女に対して親しみも湧いた。薪に誤解されたくないと身構えてはいたが、彼女と過ごす時間は決して不快なものではなかったのだ。
 その彼女が殺された。なのに、自分は何もできない。警察官として、これ以上の苦痛はなかった。

 悶々とした時間を過ごして3日目の深夜。ポーンポーンと繰り返す電子音に、青木は眠りを破られた。
 軟禁生活のせいで眠りが浅くなっていたこともあって、青木は眼を覚ますと同時にそれがメールの着信音であることに気付いた。暗い部屋の中、画面に点滅する手紙のマークをクリックする。メーラーが起動され、青木宛のメールが表示された。
「宇野さん?」
 それは、第九の先輩である宇野からのものだった。どうして宇野がこのパソコンにメールを送ってくることができたのか、青木には見当もつかなかった。外部との接触を禁止されている青木は、メーラーを起動させるのも初めてだ。アドレスも登録されていないパソコンに、どうやって?

 不思議だったが、その疑問は後回しだ。宇野から事件の情報を聞けるかもしれない。
 手紙の文面は実にシンプル、なんてものじゃなかった。タイトルもなし、前置きもなし。2行目に行き先不明のURLが張り付けてあるだけだった。
「差出人が『マーキュリー宇野』じゃなかったら、絶対に怪しいメールだと思われますよ」
 差出人が誰だって十分に怪しいメールだ。URLをクリックした途端、請求書が届く類だ。宇野からのものだと分からなかったらクリックはしない。ちなみに、マーキュリーは宇野のハンドルネームだ。何度説明されても覚えられないのだが、何とか言うアニメのキャラクターらしい。

 青木はマウスをクリックし、宇野が用意した電脳世界の部屋に入った。反応はすぐに表れた。緑色の文字が画面に表示されたのだ。
『入室者は次の質問に答えよ。室長のホクロはどこにある?』
「宇野さん……」
 セクハラネタに眩暈を感じながらも『右のお尻の下』と打ち込む。第九職員であるか否かを判断するにはナイスな質問だが、薪に知られたら二人とも回し蹴りの刑だ。
『青木か?』
 一旦画面が暗くなり、再び緑色の文字が現れる。「そうです」と打ち込むと、『無事か?』と応えが返ってくる。どうやらチャットルームのようだ。
「無事です」
『今、何処にいる?』
「あるホテルに缶詰めになってます」
 いくら宇野が相手でも、この会話を誰かに傍受されたら困る。用心するに越したことはない。
「どうやってこのパソコンにメールを?」
『UNOボックスにアクセスしたログが残ってた』
 ログから辿ってパソコンを特定したのか。そのパソコンにハッキングしてシステムを乗っ取り、メーラーを動かした。まったく、宇野は職業を間違えた。表向きシステムエンジニア、裏の顔ハッカーとして大企業に就職すれば、年俸ウン千万の生活だったろうに。

「外部との接触を断たれて事件の情報が得られません。状況を教えてください」
『俺も岡部さんから聞いた話なんだけど。捜査本部は完全におまえを犯人扱いしてるらしい。遺留品とか指紋とか、物証が作られてるって』
 一瞬、『作られている』と言う言葉の意味が分からなかった。理解したときには、ゾッと背筋が寒くなった。
 捜査本部内で証拠が捏造されている。このままでは本当に自分が犯人にされてしまう。「オレ、本当に北川さんを殺したりしてません。あの写真も偽物です。レストランで食事してるのはオレですけど、ベッドは違います。オレの偽者が彼女と」
『分かってる。薪さんから聞いたよ』
 第九のメンバーはみんな青木の無実を知っている。そう聞かされて、青木はいくらか落ち着いた。信じてくれる人がいる。それだけで、人はしっかりと立つことができる。

『安心しろ。おれが証拠を掴んだ。これを捜査一課に持ち込めば』
「もしかして、MRIですか」
 第九が青木の無実を証明してくれるなら、真っ先に浮かぶのがMRI捜査だ。青木はそう考えたが、宇野はそれを否定した。
『彼女の脳はMRIには掛けられない』
「何故です? 頭部外傷はなかったはずでしょう」
『無理だ。彼女は』
 会話はそこで途切れ、青木はしばらく待たされた。焦れて、「彼女は、なんですか?」と質問を入れてみたが答えがない。

「深夜アニメの時間だとか言わないでくださいよね」
 宇野ならあり得るが、勘弁してくれと思った。同じ質問を繰り返そうとマウスを握った青木の視界が、不意に真っ赤になった。
「えっ?」
 パソコンの画面が深紅に染まっている。そこに白抜きの文字が目まぐるしい速度で流れていく。マウスは青木が握っている、それなのに、画面は勝手にスクロールされ、エンターキーが押下される。コマンドプロンプトが表示され、文字が魔法のように打ち出されていく。セレクト、クエスチョン、承認、承認、承認。

 始まりと同じように、それは唐突に終わった。画面が真っ暗になり、ひとりでに電源が切れた。再起動させて画面を確認すると、さっきまではなかったフォルダがデスクトップに追加されていた。クリックすると、解除キーの挿入を求められた。特定のキーアイテムがないと、このフォルダは開かないのだ。
 流れ去った文字列は、青木が追い切れる速度ではなかった。が、電源が落ちる直前に画面に現れた映像は、青木の網膜に焼き付いていた。

 長い黒髪を真ん中分けにした女性。それが誰かは分からない、でも何処かで見た覚えがある。

 青木は1分だけ自分の記憶を探ったが、彼女を思い出すことはできなかった。潔く切り替えて、インターネットのブラウザを開く。UNOボックスにアクセスし、青木はその中から一つのアプリケーションを選んでインストールした。

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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