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うつくしいひと(1)

 こんにちは~。

 今日から公開しますこのお話、29Pと短いのですが、5万拍手のお礼にさせていただきます。理由は、
 久々に薪さんの女装が入ってるから。←おい。

 本編に戻りまして、時期は2067年の2月。「タイムリミット」の直前です。なので、二人は一緒に暮らしておりません。
 題名は福山雅治さんの「Beautiful Life」の一節から。(ファンの方、イメージ潰したらすみません)
 それと、何人か昔のキャラが出てきます。「2066.11 イヴに捧げる殺人」の礼子嬢と、ADカテゴリの中の「折れない翼」に出てくる羽佐間さんと佐藤くん。未読でも差支えないように書いたつもりですが、気になるようでしたら併せてどうぞ。






うつくしいひと(1)






 きらびやかなシャンデリアが虹色の光彩を放つ、夜の店。目に沁みるような赤色のソファはふかふかで、一旦腰を下ろすと立ち上がるのに弾みがいる。ゆったりと背もたれにもたれれば、「いらっしゃいませ」と男性のホールスタッフがおしぼりを渡してくれる。「女の子のご指名はございますか」と尋ねる、その声に華やかな女の嬌声と男の下品な笑い声が重なり、青木は思わず苦笑した。最初の二文字しか聞き取れなかった。
 聞こえなくてもスタッフの訊きたいことは分かる。ここはそういう店だ。

「礼子ちゃんお願いします」
 此処に来たら必ず、彼女を指名することにしている。そうすれば彼女の懐に指名料が入るし、顔見知りの彼女が相手なら余計な気を遣わなくていい。
 しかし青木には不安があった。それは店の中で笑い声が上がるたびに大きくなった。本当に、この店でよかったのだろうか。
 今日は薪と二人で来たわけではない。客がいるのだ。それも薪の恩人らしい。賓客を接待するのに、銀座のクラブあたりならともかく、この店では。

「薪さん。本当にここでよかったんですか。大事なお客さまなんでしょう」
 隣で手を拭いている薪にこっそり耳打ちすると、薪は細い肩を竦めて、
「仕方ないだろ。羽佐間さん、キャバクラ大好きなんだから」
 店の喧騒に負けない声を張り上げる代わりに、薪は青木の耳元にくちびるを寄せ、
「こないだ飲んだ時、警視監昇任の監査が入ってるってウソ吐いて、キャバクラ勘弁してもらったんだ。だから今日は羽佐間さんの好みに合わせないと」
「でも。こんなところじゃ、ゆっくり話もできないんじゃ」
「こんなところで悪うございました」
 コソコソ話すうち、指名した女の子が席にやってきて、青木たちに遠慮ない口調で悪態を吐いた。細い顎をつんと反らして、怒った時の彼女のそういう仕草は薪に良く似ている。
「あ、いや、そういう意味じゃないんだよ、礼子ちゃん。ただ、こちらの方は薪さんが昔お世話になった方で。積もる話もあるんじゃないかと」
 ごく簡単に接待客の紹介をすると、礼子は客に向かってぺこりと頭を下げた。

「いらっしゃいませ、礼子でございます。本日はご指名いただきありがとうございます。精一杯務めさせていただきます。お時間の許す限り、ごゆるりとお過ごしくださいませ」
「おまえ、ちゃんと挨拶できるんじゃないか」
「当たり前でしょ」
「僕はされたことないぞ?」
「薪さんにしてどうすんのよ」
 相変わらず客扱いされていない。薪は何事か言い返そうとしたが、客の前だと思い直したのか口を噤み、でもやっぱり治まらなかったらしく、結果、青木の足を踏みつけた。
「痛った! なんでオレにくるんですか、もう」

 その光景には礼子もすっかり慣れっこになっていて、何事もなかったようにL字形に設えられた席の薪と羽佐間の間に腰を下ろし、「みなさん、水割りでよろしいですか」とにこやかにオーダーを取った。慣れた手つきでグラスに氷を入れる。店に出て3ヶ月、水割りの作り方も板についてきたようだ。今日は二人以外にも客がいるからかホステス業に徹しようとしている礼子に、よせばいいのに横から薪が茶々を入れた。
「おい。ドレスの胸、盛り過ぎじゃないのか」
「普通よ、これくらい」
「しかも空き過ぎだ。この角度からだと先っちょが見え、うごっ!」
「どこ見てんのよ、スケベ」
 表面的にはキャバ嬢の恋人が彼女のコケティッシュを独占したがっているように聞こえるが、あにはからんや、これは子離れできないお父さんと娘の会話だ。
「見えるような服を着る方が悪い。男は視覚刺激に弱い生き物なんだ。無駄に挑発するな、ガキのクセに」
「はあ? キャバ嬢が男誘わなくてどうやって売上げ伸ばすの」
「売上っておまえ、まさか、軽はずみな真似してないだろうな。お金のために売っていいものといけないものがこの世にはあるんだぞ」
「あーあー、またお説教。お酒飲みに来たんじゃないの」
 ドン、と目の前にグラスを置かれて、薪は、大事な客を招いたことを失念していた自分に気付いたらしい。ハッとして顔を向ければ、白髪頭の日に焼けた偉丈夫がにやにやと笑っていた。

「すみません、羽佐間さん。こいつ、口の利き方知らなくて」
「失礼ね。あたしだって薪さん以外の人となら普通に」
 隣になれば言い争いを避けられないことを悟った薪は、グラスを持って席を立ち、羽佐間の左隣に移動した。自分でグラスを持っていく辺り、薪も多分、礼子をホステス扱いしていないのだろう。
「実は、以前ちょっとした事件で知り合った娘なんですよ。ママに面倒見てもらってて」
「いいってことよ。俺ぁよ、元気のいい女の子が好みだからよ。はねっ返りって言われるくらいが女は可愛いってもんよ」
 そう言って礼子に笑いかけた後、薪には声を落として、
「もしかして、例の娘かい?」
「そうです。羽佐間さんのおかげで助かりました」
 彼らの会話は隣の礼子に聞こえないくらい密やかで、でも青木には彼らの唇が読める。この店は先輩刑事の馴染みの店で、ママも元警察関係者だと薪に聞いた。その先輩刑事と言うのが羽佐間で、礼子がこの店に勤められるように彼に口利きをしてもらったのだろう。礼子には事の次第を言わずとも、その報告も兼ねてこの店を選んだのだと分かった。

「礼子ちゃんね。えれえシャンだな」
「それ、本人に言わないでくださいね。いい気になりますから」
 へ、と鼻に息を抜き、羽佐間はニヤリと笑った。
「恋人の前で愛人とイチャつくたあ。おめえもやるようになったじゃねえか」
 水割りに思いっきりむせて、咳き込む薪を礼子が嘲笑う。「いつも薄いって文句言われるから、薪さんのだけ思いっきり濃くしてやったの」と青木に耳打ちするが、多分、そういうことじゃない。

「人を好色一代男みたいに言わないでくださいよ。この娘は本当にそういうんじゃないんですから。それと、青木もそういうんじゃありませんから」
 他人の前で、薪との関係を否定されることには慣れている。それは仕方のないことだと分かっているけれど。その度に薪が少しずつ傷ついていることを青木は知っている。
「隠しても無駄だ。ちゃあんと顔に描いてあらあな」
 それに対して薪がなんと答えたのか。隣の席から沸き上がった一気飲みコールに消されないように薪が口の横に手を当てたので、唇の動きは読めなくなった。

「最初からの約束なんです。僕は約束を守ります」
「おめえ、40越してまだそんな」
 手覆いを外してからの会話からは、内緒話の内容までは分からなかった。ただ、二人の顔つきが明るいものではなかったので、あまり楽しい会話ではなかったのだろう。
「薪。人は変わるもんだぜ」
「そんなこと」
 分かってますよ、と笑って羽佐間のグラスに氷を追加する。そのまま差し出そうとして舌打ちされた。氷を入れたらアルコールも入れろと言うことらしい。
 還暦過ぎの身体に高濃度のアルコールは毒だが、羽佐間がそんな忠告を聞き入れる可能性は限りなく低い。無言でウィスキーの瓶を傾ける薪に、羽佐間の苦笑がふわりと降ってきた。

「いいや、分かってねえよ。変わらねえ人間に、それが分かるわけがねえ」
「羽佐間さんにはいつまでも頼りなく見えてるのかもしれませんけど。僕も一応は、室長職を10年以上勤めてきて」
「そういうことじゃねえんだよ」
 青木が薪の話を途中で遮ったりしたら、回し蹴りを決められた挙句に人の話は最後まで聞けと説教されるところだ。ところが薪は大して不快な顔もせず、素直に首を傾げた。
「じゃあ、どういうことですか」
 羽佐間はニヤッと笑うと薪の頭に手を置き、亜麻色の絹糸のような髪をくしゃくしゃと掻き回した。青木があんなことをしたら、以下略。
「顔だ顔。全然変わらねえ。薪坊のままだ」
「羽佐間さん、その呼び方やめてください。部下の前なんですから」
「失礼しました。薪警視長殿」
「……薪坊でいいです」
 新人の頃、さんざん面倒を掛けた先輩に敬語を使われて、薪は俯いた。下を向いた小さな頭を、羽佐間はもう一度楽しそうに掻きまわした。


*****


 今日の午後3時、現場が供用開始になるんですよ~。要は車が通れるようになるってことで、とりあえず一段落。
 心配なのは、道路の線形が変わること。今まで真っ直ぐに進めた道路が、一時停止して新しい道路に合流するようになるから、そこで止まってくれないと事故になっちゃう。そのための安全設備は通常の道路の3倍も設置したのですけど、それでも不安です。事故が起きると、去年みたいに対応に追われて、ブログどころではなくなってしまいます。ので、
 この話の続きが読みたい方は交通事故が起きないように祈っててください。←要らない? くすん。
 先週は交通解放に向けての段取りでバタバタしてて、とうとうお返事も返せずじまい……今日の開放が終わったら少しは余裕ができると思うので、もうちょっとだけ待っててくださいね。
  

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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楽しみ(^0^)

新しいお話楽しみです。続き待ってます〜!

それから、先日私のブログでしづさんのこと?をちょっと話題に出してしまいまして、事後承諾で勝手にすみません……
よかったらちょこっと見てみてください〜
http://nyantaro22.blog.fc2.com/blog-entry-55.html#more

Kさまへ

Kさま

通りすがりの読者さまへ
イニシャル、付けていただいてありがとうございました。今回からKさまと呼ばせていただきますね(^^)


>今回は 男爵verですね~(*´ω`*)

こんな始まりですし、女装も入ってますしね。
でもごめんなさい、今回は少し辛い話です。
いつものように、最後はまあるく収めてますし、ギャグも入れてますので。お楽しみいただけると嬉しいです。


>薪坊になっちゃう薪さんが可愛いです。人間臭い薪さん!

あははー、原作のミステリアスな魅力、粉砕ですよね。ゴメンナサイ☆
書くのは楽しいんですけどね。二次創作としてはどうなんかな、これ(^^;


>お仕事現場 すごく大変そうですね。

覚悟はしてたんですけどね~。予想以上に厳しいです。
自分の業務内容を超えたところのトラブルと言うのは、対処が難しい。新しい道路を作るのって大変なんですねえ。

Kさまへ

Kさま

お返事遅くなってすみませんー!
少々バタついております(^^;


>またまた更新を首を長くして待つ日々が始まりました(^∇^)

こんなに楽しみにしてくださるのに、申し訳ない……うん、凹んでる暇なんかないですね! もっと頑張るです!



>わたしはここの青薪さんがダイスキで、あのかわいさとか切なさとか、表現したいなと常々思っていて

ありがとうございますっ。
かわいさとか切なさとか、あれ? どこのあおまきさん?

カンチガイと思い込みによる暴走を、そんな風に表現していただいて光栄です(笑)


>得意なカメラでイメージして

!!!
ありがとうございます! 早速拝見させていただきました!
すごーい、きれい!!
やっぱり日本の春は桜ですね~。その前の梅もきれいです。

え、イメージ? どこのあおまきさん?(←押してみました)

言われてみれば、桜はうちの青薪さんのキィなのかもしれませんね。割と大事なシーンに使ってる気がします。
わたしが桜好きと言うのもありますが、一番の要因は多分、春は建設業が暇な時期だから☆ 

写真はどれも本当にきれいです~。
中でも、桜の花びらが絨毯みたいになってるの、あれ、いいなあ。
血塗れの薪さん転がしてみたい  青木さんと仲良く寝転んでもらいたいです。


にゃんたろーさんへ

にゃんたろーさん


ブログに伺えなくてすみません~。なかなか時間が取れませんで。
現場が落ち着いたら必ず! ゆっくり訪問させていただきます。

URLを教えていただいたので、その記事だけ読ませていただきました。
せっかくなので、にゃんたろーさんのブログにコメント入れさせていただきますね(^^)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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