うつくしいひと(3)

 こんにちは。

 仕事のストレスで心の産廃ボックスがとうとう満杯になって、昨夜は眠れず。夜中に起き出して人様のブログを徘徊、迷惑顧みずにコメントを入れたりして、そうしたら、
 なんだか今朝は元気。2時間しか寝てないのに。
 雨で現場がお休みになったので、掃除して、書類整理して、Mさんのブログにお邪魔して、自分のブログのお返事返して、
 こんなに物事がすらすら進んだの、久しぶり! 
 お昼ご飯の後にちょーお腹痛くなったけど、(寝不足のせいだな)20分で治ったし! 1週間くらい続いてた下痢も止まったし!←汚くてごめん。
 
 仕事のために休息をとブログを我慢してましたけど、それが間違いだったのかもしれません。身体の栄養だけじゃなく、心にも栄養を与えてあげないと、人間て枯渇しちゃうんですね。

 わかった? 薪さん!
 薪さんの心の栄養=青木さんなんだから! 我慢しすぎるとわたしみたいになっちゃうよ!

 てなわけで更新しますー!
 先日、心配してコメントくださった方、あっちゅー間に元気になってすみません。根が単純なんで(^^;

 本日も広いお心でお願いしますっ!





うつくしいひと(3)





 その日の薪の最後の仕事は、首席参事官室に出向くことだった。
 ボディガードを廊下に待たせておいて、部屋に入る。親の遺言で6時以降は仕事をしないと言うのが口癖の首席参事官は、その役職にあってはそんな勤務体制が通るわけもなく。未処理の書類が積まれた机の前で薪と向かい合った時、時刻は9時を回っていた。

「明日の朝、呼び出そうと思ってたんだ」
「明日は第九に出る日なので。邪魔されたくないですから」
 ああ、そうだっけ、と書きかけの書類を脇に追いやって、中園はシークレットボックスからA4サイズの封筒を取り出した。二重封緘が切られている。昼間、薪が提出した書類だ。

「毎回毎回、同じこと言いたくないんだけど」
「僕も聞きたくないです」
「じゃあ言わせないでよ」
 薪はついと眼を逸らした。もう何度この会話を繰り返したことか。不毛だ。
「きみの人事考課は甘すぎる。人事部に提出した部下の昇任願にしても」
「中園さんが厳しすぎるんですよ」
「小池君や曽我君に室長が務まると思う?」
「やらせてみなきゃ分からないじゃないですか」
「やらせてみてできなかったじゃ済まされないんだよ。警察にミスは許されないんだ」

 この件に関しては、中園と薪は永遠に平行線だ。人間の能力にそれほどの個体差はない、やらせてみればできるはずだと薪は考える。仕事は習うよりも慣れろ、自分だって最初は散々失敗したけれど、長く勤めるうちにこなせるようになったのだ。しかしそれは彼だからこそ到達できる境地であって、その理屈が適用されない人間は残念ながら巷にゴロゴロしている。
「人事考課の甘さは優しさじゃないよ。きみの大きな欠点だ」
 薪にはあらゆることが簡単に出来すぎる。彼が誰にでもできると思うこと、それは彼だからできているのであって、他の人間にその水準を求めるのは厳しい。その事実にまったく気付かない。こういう人間は人事には向かない。

「廊下に青木を待たせてるんです。説教なら簡潔にお願いします」
「きみが待てと言えば朝までだって待ってるだろ。彼、骨の髄まできみのイヌなんだから」
 聞きようによってはとことん失礼な、しかし単なる事実でもある。帰宅時間のメール一本で、青木は夜通し薪を待っていた。そんなこともあった。
 昔のことを思い出して、甘酸っぱいような感覚に満たされた薪の胸に、中園の冷静な声が突き刺さる。そうだ、今は深刻な話をしていたのだった。

「本人の自白が取れているにも関わらず、地方への異動。依願退職扱いだけど、当然退職金は辞退させるし、そうなれば懲戒免職と変わりないから後味悪いのは分かるけどさ」
 中園は、薪を睨み上げて言った。
「首切りだって立派な仕事だよ」
 分かっている。組織の規律を守るためには、懲戒人事も必要なことだ。しかし。
「警察を辞めてしまったら、彼らの失点は永久に取り戻せないことになります。それよりは地方にあっても、公僕としての精神を貫いてほしいと」
「アタマいいのか悪いのか分かんない子だね。中央から地方に飛ばされたキャリアが真面目に勤める気になると思う? 彼らは、その人事が下った時点で依願退職するんだよ。結果は同じなの。人事部に書類作らせるだけ無駄」
 中園の言う通りだった。それは何度も繰り返されてきた、でも薪は希望を捨てきれなかった。過ちを犯した彼らの中にもまだ、入庁した当時の志が残っていると信じたかった。

「こっちの差し戻しはどうして?」
「癒着を疑うには証拠が足りないかと。本人も否定してますし」
「女との関係は認めてるじゃない。懲戒処分の理由には十分だ」
「一夜限りの関係かもしれないじゃないですか。S組の幹部が同じテーブルにいたのだって、単なる相席かも」
「蕎麦屋じゃないんだよ」
 中園の言う通り、クラブで相席は苦しい。薪は咄嗟に言い訳を考える。
「同じテーブルで酒を飲んでいたからって、癒着しているとは限りませんよ。例え和やかに話をしていても、相手に探りを入れていたのかもしれない。ホステスとの写真だって、彼女から情報を得るためにホテルまで行ったのかも」
「やけに庇うね」
 喋りすぎたと悟って、薪は口を噤んだ。が、遅かった。
 中園は佐藤の調書を見直し、「ああ、なるほど」と軽く頷いた。薪と佐藤の関係を見抜いたに違いない。

「この案件は僕が預かるよ」
 拙い。中園に掛かったらどんな小さな職務違反でも減点対象にされてしまう。ヤクザの女と関係した事実があったら間違いなく懲戒免職だ。
「いえ、これは僕の」
「今日はもう帰りなさい。青木くんが待ってるんだろ」
「待つのもボディガードの仕事のうちです」
「さっきと言ってること違わない?」
 中園が封筒に戻そうとした書類を、薪は強引に押さえた。人に冷たい印象を与える上司の薄灰色の瞳が、じっと薪を見る。薪は引かなかった。

「本人が認めていないものを、たった2枚の写真で断罪するんですか」
「あまり人をバカにするもんじゃない。ちゃんと調査はするよ。聞き取り調査も改めて僕がする」
「では、その調査を僕にやらせてください」
「なに勝手なこと言ってんだい。きみには官房室の仕事が」
 言い掛けて、中園は口を噤んだ。この手の制止が薪には無駄なことを学習したらしい。
「では指示書を出そう。明後日の朝、取りに来なさい」
「いいんですか」
「ダメって言っても勝手に動くんだろ。休みの日に旧友と飲んだだけですとか白々しい言い訳されるくらいなら、正式な指示書を出すよ」
「ありがとうございます」
「ただし」
 引こうとした薪の手を、今度は中園が止めた。薪の手首を机に押さえつけ、立ち上がって顔を近付ける。
「調査はこちらで、僕の手の者がする。きみがするのは本人への聴取のみ。いいね」
「しかしそれでは」
「僕の調査が信じられない?」
「そうじゃありませんけど」と返しながらも、完全には信じきれなかった。中園は裏工作の専門家で、自分に都合の良い証拠を見つけ出すのが得意だ。都合の悪い証拠は見て見ぬ振りをすることもある。つまり、彼の意向通りに調査票が作成されてしまう可能性が高い。

 薪の疑惑を見抜いたのか、中園は薪を押さえつけた手に一層の力を込めて、
「じゃあ聞くけどね、きみ、暴力団関係の調査をどうやってするつもり?」
「僕にだってそれなりのルートが」
「脇田くんは使っちゃダメだよ」
 当てにしていた組対5課の課長の名前をズバリと出されて、薪は息を飲む。見透かされていた。中園のことだ、薪の交友関係なんか官房室に異動になる前に調査済みだったのだろう。薪に調査を任せたくない中園は、薪が持っている人脈一つ一つにダメ出しをするつもりなのだ。そう来るならこっちだって。
 反発心を剥き出しにしかけた薪に、中園は冷静に言葉を継いだ。
「いいかい。組対5課は暴力団の取り締まりを職務としている、だから当然組関係には詳しい、でもね。彼らがやっているのは表の仕事だ。警察官の不正を調べるのは裏の仕事で、それを彼らにやらせるべきではない」
 中園の言葉で、薪は、この仕事に対する自分の認識が甘かったことを知った。そして、何故彼が先回りをして薪の行動を止めたのかも。
 中園の忠告を無視して薪が脇田に調査を頼んだ場合、どうなるか。脇田は薪が官房室で身内の不正を暴く仕事をしていることを知る。結果、今までのような関係は保てなくなる。脇田も自分の仲間を守らなくてはならないからだ。

 しおらしく頭を下げて、薪は言った。
「分かりました」
「よろしい。それじゃ、現場の人間に連絡させるから」
「調査は僕が一人でやります」
 言うが早いか、油断に緩んでいた中園の手から強引に問題の調査票を引き抜くと、薪は研究者の手をすり抜けるモルモットの勢いで部屋から逃げ出した。
「待ちなさい、それはもっとダメ……!」
 立ち上がった時には既に、居室のドアは閉ざされていた。廊下を駆けていく、2人分の革靴の音が聞こえる。

「もういやだー!」
 あの子のお守はこりごりだ、そんなのは僕の仕事じゃない。もう知るか、と空の封筒を床に叩きつけて2分後、中園は仕上げに掛かっていた別の書類を衝動的に破り捨て、卓上の電話を取り上げた。
「僕だ。うちの問題児がそっちに行くから、ああいや、合流はしなくていい。余計な手出しもしないで。ヤバくなったら殴り倒してでも彼を連れて逃げて――違う違う、ヤクザ殴れなんて言ってない。相手じゃなくて、うちの問題児をだよ」

 似たような内容の電話を4,5本掛けて、やっと落ち着いたらしい彼は、引き裂かれた書類を見て驚いたように立ち上がった。
「なにこれ。誰がやったの」
 頭で考えるより早く身体が動くと言う現象を生まれて初めて体験した首席参事官は、締めの文を書くばかりになっていたはずの草案が失われたことにいたく落胆し、残った書類をまとめて書類保管庫に突っ込んで、執務室の灯りを消したのだった。

テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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通りすがりの読者さまへ

通りすがりさん

いやー、
現場始まる前は、「どんな状況になっても心の余裕を失わずに、趣味も時間を決めてやろう」って思ってたんですけどね。追い詰められるといつの間にか、余裕を失くしてしまいます。特に事故が起きると……人の命に係わる問題ですから、どうしても深刻になってしまいます。
でも、それを言ったら医療現場の方々は一切趣味を持ってはいけないのか、てことになっちゃいますからね。これからは、全力で仕事を片付けなきゃいけない時は別として、上手に趣味の時間を織り交ぜて行こうと思います。
お気遣い、ありがとうございました(^^)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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