手紙1

 なみたろうさんが、フライング鈴薪祭りやってらしたんです。

 お許しいただいたので、リンク貼ります。
「今、なにか・・・」←ポチると飛べます。

 とっても素敵なイラストで、心が震えました。でもその気持ちの半分もコメントでは表せなかったので、SSにしてみました。コメント投稿しようとしたんですけど、文字数オーバーでエラーになったので、自分のブログに載せます。

 見ることは叶わないけれど、あったかいものに包まれて、「・・・鈴木?」の後の薪さんです。ちょっとうちの設定混じっちゃってますけど、なみたろうさんに(勝手に)捧げます。
 いつも素敵なイラストありがとうございます。感謝を込めて。





手紙1



 おまえの幻を見なくなって、何年経つのかな。


 おまえがいなくなってしばらくの間、おまえのことだけ考えて生きてた。文字通り、朝から晩まで、いや、夢の中でも。長いこと、おまえに責められる夢ばかり見てたよ。
 他人からは親友と呼ばれて、自分でもその気でいて、だからおまえのことは何でも分かってるつもりでいた。将来の夢とか彼女のこととか、おまえが他の誰にも話さないことを僕に話してくれるから、僕は少しうぬぼれていたのかもしれない。本当は全然分かってなかったんだ。青木に教えられるまで、おまえが貝沼の脳を一人で見たってことも知らなかったしな。

 ――まったく。
 あの時ばかりは僕も困ったよ。昨日まで、普通に友人の会話をしていた相手にいきなり「撃ってくれ」とか言われてもなあ。
 あんなに狼狽したのは初めてだった。どうしていいのか見当もつかなかった。パニックに陥った僕は判断を誤った。
 おまえの精神状態を知らなかった、それも僕が悪かった。僕は室長だ。部下の状態は常に把握しておかなくてはいけなかった。

 でも、おまえも悪いよ、鈴木。
 報告の義務を怠った。それどころか僕に隠れて勝手に――。
 違うな。ごめん。
 言いたくても言えなかったんだよな。僕が弱っていたから。やさしいおまえは僕の負担を増やすようなことは言えなかった。僕の前では何でもない顔をして、貝沼の画を見続けた。そして。

 事あるごとにおまえに頼っていた、僕の弱さがあの事態を招いたのだと。僕はひどく後悔したよ。部下が何でも相談できるように、上司は強くあらねばならないと、強く強く思った。努力の甲斐あって、今の僕のあだ名は「鬼の室長」だ。
 え。方向性間違ってる? 怖さが先に立って部下が相談できないんじゃないかって?
 ……それでも、死なれるよりはマシだ。僕を毛嫌いしようが陰口を叩こうが、死んでしまう部下よりずっといい。上司を守りたくて、守ろうとして、挙句、その上司に殺されてしまう部下より100倍いい。

 まったく、おまえは最低の部下だったよ。
 上司に発砲して、逆に撃ち殺されて。捜査のせいで精神に異常をきたしたのに、殉職扱いにもしてもらえなかった。余計なことするからだよ。あそこまで追いつめられてたくせに、MRIシステムのハードディスクから貝沼の脳データだけを消去するなんて精密なことするから、判断能力ありと断定されたんだ。庇ってやりたかったけど、僕も言えた立場じゃなかったしな。
 おかげで特進もなく、警視のまま。脳データがなくなったから、捜査は打ち切り。そう言うの、犬死って言うんだぞ。最低だろ。

 ――うるさい、ほっとけ。泣いてない。
 もうおまえのために流す涙なんか残ってない。さんざん泣いたからな。

 おまえを失った世界は瞬く間に色褪せた。
 死んだ人間が残された人の心の中で生き続けるなんて嘘っぱちだ。だって、おまえはいなかった。当時、僕の心の中はその殆どが鈴木の思い出で占められていたけれど、それは僕が都合のよいように作り出した鈴木であって本当の鈴木じゃない。
 おまえが何処にもいない。その残酷な事実だけが僕を打ちのめす。

 一生分泣いた。それくらい泣いたのに、なんでだろうな、鈴木。僕はあれからひどく涙もろくなったよ。
 今だって、ほら。
 心の中でおまえ宛に短い手紙を認めている、それだけで。目の前の風景が滲んでくるの、あれかな、更年期障害かな。
 笑うなよ。生きてりゃ色々あるんだよ。

 ――そんな話も、おまえとしたかったよ。

 二人して50過ぎのおっさんになってさ。徹夜がきついだの腰が痛いだの、つまんない愚痴をぶちぶち言い合ってさ。若くて仕事ができる後輩に科警研のマドンナ持って行かれた僻みを、「最近の若いもんは」て言いがかりに近いこきおろしで解消したかったよ。
 うだうだぐだぐだ、いくら話しても答えが出ない会話を。おまえが教えてくれた意味のない会話を。何年も何十年も続けたかったよ。
 共に髪に、雪の降るまで。



*****

 書いてたら夜が明けちゃった☆

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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素敵…

おはようございます( ;∀;)
こんな時間に!しづさん今日はお休みですか?寝て下さいね?

はあ~、素敵です。悲しいお話なんだけど、やっぱりこの、本編の頃の薪さんと違う、一度消化できた薪さんの鈴木さんへの想い。今の薪さんの、少し解放された無邪気な物言い。
それでも、完全に癒えるということはない気持ち。きっと夏になると必ず思い出す顔。
それでも、薪さんは青木の言う通り、少しだけ自分を許したのかな。

そんな、リアルな今の薪さんが感じられて素晴らしいです( ´∀`)さすがしづさんです。
もう鈴木さんを悪夢として見ることはない、ですよね。

No title

度々すみません。鈴木さんを想う薪さんに興奮して思わず…(*゚∀゚)=3

おまえが教えてくれた意味のない会話( ;∀;)。まさにそうだった気がします。鈴木さんと出会うまでは無意味だ、価値はない、って省みなかったことがどれだけ自分を充実させるか、馬鹿みたいな会話に終始して笑い合う時間のかけがえのなさを多分自然に教えてもらって、あのとっつきにくくズレた薪さんから今の薪さんに変わっていったんでしょうね…。

それにしても更年期障害とか(笑)。ひねくれて自虐ネタでごまかすハイレベルなツンデレ薪さんにクスクス笑いながら最後に泣かされました(。´Д⊂)

鈴木さん、自分は親兄弟や伴侶にはなれない的なことを言ってましたが薪さんの中ではきっとすべてをフォローしてくれる唯一無二の存在だった気がします。それだけに「おまえが何処にもいない」という薪さんの喪失感を思うと…(*ToT)

なみたろうさんのイラストは想像力かきたてますよね(´▽`)。なみたろう部屋が盛況なのはあの一枚の向こうに広がる世界がとても愛しく思えるからだと思います。この前の桜に抱かれる薪さんやこのお話のようなコラボ、また楽しみにしてます!(°▽°)

なみたろうさんへ

なみたろうさん。
お返事遅くなりまして、誠にすみません。


>こんな時間に!

なみたろうさんのせいですよww
あのイラストを拝見したら、鈴薪さんでアタマいっぱいになっちゃって。眠るどころじゃなくなっちゃいました☆
久しぶりに夜明けの空を眺めながらSS書いたなあ。貴重な体験です。感謝(^^)


>本編の頃の薪さんと違う、一度消化できた薪さんの鈴木さんへの想い。今の薪さんの、少し解放された無邪気な物言い。
>それでも、完全に癒えるということはない気持ち。きっと夏になると必ず思い出す顔。
>もう鈴木さんを悪夢として見ることはない、ですよね。

見ます(笑)

実はこの薪さん、強がってるだけで本当はボロ泣きなんです。

なみたろうさんの仰る通り、原作の薪さんはもう大丈夫だと思う。
第九編の最後で、「鈴木が生まれ変わって自分を殺しに来た」とまで思った青木さんに赦されて、エピローグで、そんな彼を愛しく思うことを自分に許すことができて、そうしてやっとオリジナル・シンで、ジェネシスで見せた本来の伸びやかな魂を取り戻した。だからきっともう、血塗れの鈴木さんを見ることはない、と考えてもあながち的外れではないと思います。

どっこい、
うちの薪さんは、いつまでもいつまでも引き摺る人なんです。青木さんと相思相愛になって一緒に暮らしてて、幸せいっぱいのはずなのに、やっぱり思い出しちゃう。その機会があったら迷わず鈴木さんを助けに戻る。それで青木さんと離れ離れになったとしても、鈴木さんを選んじゃうんです。だから「アイシテル」の後編みたいな話ができちゃう。
どっちをより深く愛してるか、という問題ではなく、そういう状況に追い込まれるとそれ以外選択肢がなくなっちゃうって言うか、ええと、なんて言ったらいいのかな……説明はできないのですけど、とにかく、
うちの薪さんの中では鈴木さんへの罪悪感が消えることはありません。
年月と共に表面上は薄れていくけれど、心の奥底では血を流したまま。だからちょっとしたきっかけですぐに壊れちゃう。去年のお盆に公開した「someday」のように、13回忌にもなるのに簡単にあの頃に戻っちゃう。それはもう、雪子さんにドン引かれるほどアッサリと。
あの時もすぐには青木さんのところへ帰れなくて、時間に遅れてたんですね。一人になって心を落ち着かせて、青木さんに心配掛けないように自分を奮い立たせて、だから妙に強気だったんです。でもってまた、そういうときこそ一緒に暮らしてる恋人に慰めてもらえばよいものをそれができない。自分で自分の傷を舐めて、平然を装うことしかできない。
そういう人だからこそ、幸せになって欲しい、愛に包まれて生きて欲しい、って思う。

言ってしまえば、わたしの好みなんです。囚われてる薪さんが好きなの。
要は、Sの血のなせる業ということで(笑)

eriemamaさんへ

eriemamaさん。
お返事遅くなってごめんなさい。


お身体、大丈夫ですか?
とにかく暑いのでね、会社でいつも一番最後まで風邪を引かないわたしでさえバテバテですからね、
大事に大事にしてくださいね。


>鈴木さんを想う薪さんに興奮して思わず

切ないですよねえ(;;)
でもこれがないと薪さんぢゃない! と言うくらい、鈴木さんへの思慕と悼みは薪さんの核だと思います。


>それにしても更年期障害とか(笑)

やー、最近、わたしがこれで。
急に暑くなって顔が火照ったりするんですよ。夏はけっこうしんどいです。


>鈴木さん、自分は親兄弟や伴侶にはなれない的なことを言ってましたが薪さんの中ではきっとすべてをフォローしてくれる唯一無二の存在だった気がします。それだけに「おまえが何処にもいない」という薪さんの喪失感を思うと…(*ToT)


そうなんですよね!
正に、鈴木さんは薪さんの恩人なんです。
原作の、あの壮絶な体験から立ち直ることができたのは、鈴木さんのおかげだと思います。そして、人間が社会の中で生きるために必要なこと、他人との係わり方、そういうものを教えたのも鈴木さん。いわば、鈴木さんは薪さんの3番目の親。
そういう人を殺してしまったのですから、この十字架は一生消えないわけで……Sの血がたぎります。<こら。


>なみたろう部屋が盛況なのはあの一枚の向こうに広がる世界がとても愛しく思えるからだと思います。

そうなんですよね。
絵に、気持ちが入ってるのが分かる。伝わってくる。
だから、「わたしも薪さん大好きなんですよ~」て言いたくなっちゃうの。
他のブロガーさんも、みんなそうですよ。ああ、この人も薪さんのこと大好きなんだなあって思う。
同じ気持ちの人がいるって、嬉しいものです。そういう人たちと交流できる、コラボ等で繋がれる。幸せなことです。巡りあわせに感謝ですね(^^


Aさまへ

Aさま。


>薪さんはようやく、血だらけの鈴木さんの姿から開放されたのでしょう。
>(青木が刺された時もオーバーラップすることなかったし)

本当だ、青木さんが刺されたのに、血塗れの鈴木さんが帰ってこなかった! 
そうかー、完全に解放されたんですね。よかった……原作薪さんは、もう大丈夫ですね。それはそれで、二次創作者の出番がなくなってしまうのでサビシイような(^^; 


>唯一無二の親友を失くした心の穴は一生、埋められないと思います

そうですね。
親友は、うん、多分、できないでしょうね。
青木さんじゃ対等にはなれないし、岡部さんはお母さんだしね(笑) それは仕方ないことです。人には役割がありますから。
それぞれのポジションで、薪さんを満たしてあげればいいんじゃないかな。

ありがとうございました

しづさん、こんにちは。
ウチには来ていただいたのに、私のほうからはまたまた読み逃げしていてすみません。。
また、コメント長いです。すみません。長くなりそうで、遅くなりました。


しづさんのお話はしづさんの薪さんや青木くん、鈴木さんがちゃんと確立していてそのキャラがとても魅力的です。
このお話も、なみたろうさんのイラストからイメージされて書かれたものですが、薪さんも鈴木さんも二人の関係も、しづさんのなかでしっかりしているので読んでいてぶれないというか、よりイメージが膨らみます。

原作薪さんより、しづさんの薪さんのほうが、幸せを感じていてもより、鈴木さんには囚われているのでしょうね。それは薪さんが鈴木さんを愛していたことが前提にあるから。

私は原作薪さんは今は鈴木さんの悪夢は見ていないんだろうなと思います。
けれど、それは罪悪感が無くなったわけではない。人が誰かの命を奪ってしまうほどのことは、例えどんなに周りが「仕方のないこと」「あなたが悪いわけじゃない」といったとしても、刑事的な罪でなくても、やはり永遠に自分のものとして残ると思いますし、そうであるのが人なのだと思います。
それを踏まえた上で、前に進んでいかないと、、自分が幸せにならないのは、自分を諌めているようでも、実は相手に責任を押し付けている。
だから私は、薪さんには罪は罪としてしっかり持って、それで前に進んで欲しいと願います、あれだけ、周りに大事にしてくれる人たちがいるのだから。

こちらのお話の薪さんは、幸せをしっかり受け入れているけれど、それはそれなんですよね、鈴木さんのことは忘れない。大事な人、好きな人、それでいいんだと思います。今、好きな人がいても、その人じゃない人が好きなことはあると思うんです。たぶん、そういう好きな人は、決してもう手に入らない人で、永遠に好きな人。そういう意味で誰にもかなわない人。それにプラスして罪悪感もありますから、薪さんから鈴木さんへの気持ちが抜けることはない。

青木くんとしては切ないけれど、今を一緒に生きる、全てを受け入れるということは、そういう想いを持っていることも含めて愛することなんですよね。嫉妬もするし、悲しくもなる、それはそれでまた仕方のないこと。

もう、どこにもいない鈴木さん、話しかけても全ては自分自身が作り出したもの、そうわかっていて余計辛くなっても、それでも、やっぱり、鈴木さんとのことを想う。想いながら、前に少しづつ進んで、歳をとっていくのでしょうね、薪さんは。

やっぱり、しづさんのお話、何度読んでも大好きです。
また、お話が読めることをゆっくりと待っています。

ヤマネさんへ

ヤマネさん。

コメントありがとうございました♪
別にいいのに~。不義理はわたしの方が多いです。だいたい、コメントの返事が遅い。リアルの文章苦手なんで、時間掛かっちゃうんです。ゴメンナサイ。


>しづさんのお話はしづさんの薪さんや青木くん、鈴木さんがちゃんと確立していてそのキャラがとても魅力的です。

ありがとうございます。
うちのはギャグ小説なんで、魅力的って言うか、みんな揃っておバカって言うか(^^;


>原作薪さんより、しづさんの薪さんのほうが、幸せを感じていてもより、鈴木さんには囚われているのでしょうね。それは薪さんが鈴木さんを愛していたことが前提にあるから。

原作薪さんも口に出せなかっただけで、気持ちは同じだったと解釈しております。
が、恋人同士として愛し合った経験があるのとないのでは、やっぱり違ってくるでしょうねえ。


>私は原作薪さんは今は鈴木さんの悪夢は見ていないんだろうなと思います。

ヤマネさんの考察は深くて、いつも唸らされます。
特に「自分が幸せにならないのは、自分を諌めているようでも、実は相手に責任を押し付けている」
重い言葉ですね。
実は、わたしも自分から幸せを掴みに行けるようになったのは、オットと結婚して7年くらい経ってからなんです。わたしのトラウマなんて薪さんに比べたら屁みたいなもんですけど、それでもやっぱり、その渦中にいる頃は無理だったなあ。


>青木くんとしては切ないけれど、今を一緒に生きる、全てを受け入れるということは、そういう想いを持っていることも含めて愛することなんですよね。

そおなんですよお!
青薪さんは鈴薪さんを内包してるんです。
うちの青木さんは腹黒だから、その境地に達するまでにあれこれ悩みましたけど、原作青木さんなら楽勝だと思うんですよ。むしろ自然。そういう人だからこそ、薪さんの癒したり得るのだと思います。


>もう、どこにもいない鈴木さん、話しかけても全ては自分自身が作り出したもの、そうわかっていて余計辛くなっても、それでも、やっぱり、鈴木さんとのことを想う。想いながら、前に少しづつ進んで、歳をとっていくのでしょうね、薪さんは。

時々、戻っちゃいますけどね☆
それでも少しずつ。生きることを楽しいと、思えるようになって欲しいです。
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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