蛇姫綺譚(1)

 こんにちは。

 8月の末ごろから、たくさん拍手くださってる方、ありがとうございます~(〃▽〃)
 最初のお話から順に入ってたので、ご新規さんかな、それとも再読の方かな? 3ケタ久しぶりだな、って思ってたら1週間も続いて、さぞお疲れになったと思います。目薬さして、ゆっくり休んでくださいね、破壊された精神の回復を図ってくださいね、心配でしたら心療内科に行ってみてくださいねっ。(そこまで?)
 とにかくありがとうございました。おかげさまでSSの読み直し頑張れました。(一番キライな作業なんです。自分の話読み返さなきゃいけないのはけっこうな苦行(^^;)

 励ましていただいたおかげで、
 今日から公開できますこのお話、5万5千拍手のお礼SSでございます。
 夏に書いたので、日本の怪談的なものを目指してみたのですけどいつの間にかアクションコメディになぜ! これこそ怪談!←え。

 時期は2066年8月。
 タイムリミットを翌年に控えて少々焦りが出ている頃のお話です。

 長編ストーリーは実に1年振りなので、突っ込みどころは多々あるかと思いますが、どうか広いお心で。
 よろしくお願いします。





蛇姫綺譚(1)





 日曜日のカフェになんて入るもんじゃない。
 薪は心の中で軽く舌打ちした。コーヒーを挟んで恋人と向かい合っているのに、相手があからさまに隣の席を見ていたからだ。

「可愛いですねえ」
 青木が褒めたのは薪のことではない。それで面白くない、わけではない。
 二人で過ごすとき、青木は薪以外の人間を殆ど見ない。薪に危害を加えようとする人間、もといナンパ男の牽制は怠らないがそれは外敵に注意を払うと言った意味合いで、対象に興味を持っている訳ではない。付き合い始めて何年かになるが、青木は未だに薪に夢中で、他の人間なんか目に入らないのだ。

 そんな彼にも例外はあって、それが隣の席の女子だ。ずっと見ていたものだから自然と目が合って、すると相手は恥ずかしがって母親の腰に顔を伏せてしまった。要するに。
「ママ。おじさん、リエのこと見てる」
「え。ちょっと」
「や、違います。決して怪しい者では、――薪さん」
 母親の疑いの眼差しへの弁解をこちらに求めてきた青木に、薪は、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向く。
 バーカ。人さまの娘さんをジロジロ見るからだ。

 そこへ折りよく、隣の親子連れが注文したサンドイッチとパフェが運ばれてきた。子供ならではの切り替えの速さで、彼女はフルーツと生クリームがトッピングされた華やかなスイーツに歓声を上げる。母親の心配も、危なっかしい手つきで柄の長いスプーンを操る子供の手元に向いたようで、隣席の変質者はころりと忘れ去られた。どうも日本人は危機感が足りなくていけない。

「ふふ。一生懸命食べてるなあ」
 まだ見てる。懲りないやつだ。

 子供は可愛いと誰もが言うけれど、薪は子供が嫌いだ。うるさいし、我儘だし。どうして青木がそんなに優しい眼で彼らを見るのか、自分にはさっぱり――。
 いや、と薪は目を伏せた。コーヒーの湯気に濡れた睫毛が、艶を含んで重たげに重なる。
 本当は分かっている。青木は子供が好きなのだ。姪のことも、ウザがられるくらい可愛がっている。
 そんな彼が自分の子供が欲しくないわけはないと、彼が一度も口にしたことがないその事実を、子供たちを見ると嫌でも思い知らされてしまうから、だから薪は子供が好きになれないのだと思う。
 自分の弱さを認め、改めて幼子を見れば、食欲全開でパフェを頬張る彼女は己が欲望に忠実で、その潔さに感動すら覚える。ほっぺたを生クリームだらけにして無心で食べている様子に思わず笑みがこぼれた。……なるほど。向かいの大男がニヤニヤしてるのはこういった感情からか。

「悪かったな。産んでやれなくて」
 ぼそりと呟いたら、青木が横を向いたまま固まった。手のひらに載せていた顎を浮かせ、信じられないものを見る目でこちらを見たから、もう一度謝った。
「すまん。僕には産めない。て、おい」
 謝った薪に、青木はプフーっと噴き出した。結構しんどいセリフだったのに、ひどくないかそれ。
「いや、すみません。でもお互いさまでしょ」
「お互いさまじゃない。僕はおまえみたいに小さい女の子を愛でる趣味はない」
「なんか違う意味に聞こえますけど」
 青木はようやく薪の方へ身体を向けて、椅子に座り直した。コースターの上に放置されて、グラスの周りにたくさん汗をかいたアイスコーヒーを一口すすり、気が付いてストローで中身をかき混ぜる。氷が溶けたアイスコーヒーは、完全な二層構造になっていた。

「後悔なんかしてません。微塵も」
 カラカラと涼やかな音をさせながら、青木は静かに言った。
「無理するな。僕も責任を感じて謝ってるわけじゃない。ただ」
「後悔なんかしません。これからも」
 何と答えてよいものか、薪は少し迷い、けれども答えは出せず、黙って冷めかけたコーヒーを飲んだ。

 そうこうするうちに隣の席の親子連れはパフェとサンドイッチを食べ終え、伝票を持って席を立った。性懲りもなくバイバイと手を振った青木に、根負けしたらしい母娘は笑って手を振り返した。




*****


 メロディ10月号の感想ですが、今回はやめておきます。
 書いてたらアンチっぽくなっちゃったので(^^;
 追跡調査の件がどうしても納得できなくて~。わたしのカンチガイだったらいいのですけど。
 青木さんから送られてきたMRIの内容が、まだそれだと決まったわけじゃないしね。この先、それが正しかったと思えるようになるのかもしれないしね。
 大人しく続きを待ってますので、先生、よろしくお願いします。

 

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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いよっ待ってました!(°▽°)

江戸っ子のように喜んですいません。

深刻に全て背負い込む薪さんと、カラッと無邪気な青木。ああなんか薪さんが救われる感じがして私が救われるとゆう。素敵なシーンですね(ノ_・。)
てかタイトルが!私好みな匂いがします。
フアンタジーは和風になるだけで何となくリアリティ出ますよね。民話、伝承とか大好きです。
姫が出てくるんでしょうか、私にとって姫は薪さんですけどね!
姫であり鬼上司であり乙女であり暴君であり男爵でもある、たまらんこのギャップ、ハアハア。
で、アクションになるんですね(笑)
じゃあ男爵も出演されますねそうですか。

とにかく連載モノ、嬉しいです。日々の楽しみが出来ました( ´∀`)

Cさまへ

Cさま。

コメントありがとうございます。
ちらっと匂わせれば、
Cさまのように鋭い方が解答をくださるんじゃないかと、ちょっと期待してましたw


>発表するにしては『遺伝』することの『実例』が全くないじゃないか説得力がないじゃないかってことで

わたしもそう思いました。
論文を隙のないものにし、学術的価値をより高めるためには『実例』の資料を添付するべきだと、それには同意だったんですけど、
それが永江死刑囚の遺伝子である必要はないのではないかと思ったんです。だって、「世界中のMRIの膨大なデータからわかって」いるのでしょう? それは実例にならないの?
きっとね、遺伝でそういう症状が子供に現れたら、親はお医者さんに連れて行ってると思うのですよ。個人情報の問題はあると思いますが、それでもレイプ被害者に話を聞くより、ハードルは低いと思う。
「永江は生涯独身で」に対する薪さんの返しが、「MRIデータから分かっている、と言うだけでは根拠が薄い。『実例』の資料を付けろ」だったら納得なんですけど、暴行されて生まれた子供にそれを求めるのは納得いかなくて~。


それと気になったのが、
青木さんが薪さんに送ってきたデータが、永江の14件目の婦女暴行事件に思えるのですけど、
これは特捜のデータだから、「第九の他の仲間にも一切相談できない」はずですよね?
いや、送るのはいいんです、薪さん上司だし。岡部さんも管区は違えど室長職だからギリギリOK。
でも薪さんは、全員で見られるメインモニターにそれを映そうとしてる? 特捜の掟は?
Cさま、どう思われます?


ま、そんなこと言ってたら事件始まらないでしょ、て言われればその通りなんですけどね(笑)

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Cさまへ

Cさま。
早速の返信、ありがとうございます。実は待ってた~~!


>確かに

やだもう!
Cさま、そこは否定してくださいよ!!(爆笑)


>むにゃむにゃ

いや、わたしもそう思ったんですよ。これやらないと今回の話始まらないんだろうなって(^^;


>(あといくら世界中で

そうですよねえ、青木さん、盛ってますね、
て、そうじゃなくて!
「そこはしづさん、こうなのよ~」て答えを期待してたのに、追加しないでくださいよ~~~!
げらげらげら☆


まあ、まだ始まったばかりですしね。この先、あー、そっかー、必要だったんだー、ってなるのかもしれませんよね。
お話自体は、すごくわたし好みなんです。前作のようにグローバルな事件より、こっちの方が好き~。
薪さんは表情豊かで可愛いし。青木さんは薪さん好き過ぎてわけ分からなくなってるしw
こんなに楽しませてもらってるくせにケチつけてたらバチ当たりますよね(^^;

Rさまへ

> しづさま
Rさま。

>すねてる薪さんの様子に、メロディ10月号の63頁の左上のコマの薪さん、岡部さんに「こんな時だけ~子供みたいな顔~」と注意された薪さんを思い出してしまいました。

あれ、可愛かったですねえ!
薪さんてああいうとこ、天然入ってますよね。
(桜木さんの結婚が決まったとして)僕に何を頑張れと?? て顔ですよね(>m<)

しかし、岡部さんのあのセリフ……本当に手紙の中身読んでないんですね。さすが。


おおお、コミックス、届きましたか!
わたしのとこも月曜日に到着予定です。待ち遠しいなっ。

え、なになに? 帯になにか?
わー、なんだろう、楽しみだな~~~!

なみたろうさんへ

なみたろうさん。

江戸っ子(笑)


>タイトルが!私好みな匂いがします。

伝承とか伝説の類、お好きだって仰ってましたよね。
わたしも好きなんですよ~。しかも、洋風のお姫様と騎士より、日本の妖怪百物語が好きと言う。
これ多分、「うしおととら」の影響が大きいんだろうなあ。だからきっと、アクションになっちゃうんだろうなあ。


>姫が出てくるんでしょうか、私にとって姫は薪さんですけどね!

もちろんですよ!
わたしにとっても姫は薪さんしかいませんよ!


>姫であり鬼上司であり乙女であり暴君であり男爵でもある、たまらんこのギャップ、ハアハア。

そうそうそうそう!
ギャップ萌えなんですよね!(最後のは余計じゃ(^^;)


>じゃあ男爵も出演されますねそうですか。

ごめんなさい、出ずっぱりです(笑)


>日々の楽しみが出来ました( ´∀`)

ありがとうございます、てか、なみたろうさんも!
次々と新しい記事を上げられて!

怒涛の更新! 日刊なみたろう!
マーメイドもしっぽ系も拝見して、ニヤニヤしてました。
一番のお気に入りは、
バニー姿の薪さんが拳銃に弾込めてるところかなw
てかこれさ、潜入捜査、いけるんじゃね?
あ、胸がないからさすがに無理か……。

Aさまへ

Aさま。


>私も被害者の気持ちを考えたら

うん、まあ、
天才と呼ばれる人たちは真実の追及のためには非道になれる、ていうか、正直に言うと、そういうの忘れちゃうんだよね、きっと。
真理を追究することに熱中するあまり、それ以外のことが重要だと思えなくなるの。天才科学者とかどこぞの名探偵とかね。人が死んだばかりなのに、聞き辛いことズバズバ訊くよね(^^;
でも、薪さんは天才だけどそういう人じゃなかったよね? という違和感が拭いきれなかったんですよ。

でもってさー、
子供が生まれたかどうかだけなら、被害者に直接話を聞かなくても調べる方法はあるじゃないですか。被害に遭った年が分かっているのだから、40才くらいの子供がいるかどうか、住基ネットで原戸籍を調べればいい。(里子に出した可能性もあるけど、そういう人は秘密にしたくて手元に置かないわけだから、調査で聞かれたくらいじゃ言わないと思う)その子の病歴を調べれば遺伝が現れているかどうかは分かるんじゃない? 本人に連絡を取るのは、その資料を添付する段階になってから、匿名にしますので了承をお願いします、の形じゃないかしら。
薪さんの指示も??だけど、青木さんの調べ方も???だったんです。



>薪さん自身も

ちょ、やだ、Aさんたら!
それわたし、Cさんへのお返事の中で削ったのに!!

わたしも思いましたよ。
そういう事情があったら人一倍神経質になりそうなものでは? て。


>調査の結果を公にはできないと思うので薪さんには別の理由があるのでしょう。

ですよね?
だからこれ、永江のMRIはMRIでも、犯罪記録じゃないのかなって。
裁判に関係しない部分なら見せても大丈夫なんですよね。要は、例え冤罪でも裁判のやり直しが効かないから、ってことですものね。
それとも、冤罪じゃなくて罪が増えるだけで、それに関してはすでに最高刑が執行されてるから、見せても構わないのかな??


>その事以外は笑顔の薪さんが多くて青木も薪さんにメロメロな感じでよかったです^^

そうですよ!
この際、それが一番大事ですよ!!←え。

もー、青木さんのデレデレっぷり、最高潮じゃないですか?
あんたどんだけ薪さん好きなの、みんなにダダ洩れだけどいいのそれ、てかわたしが許すもっとやれ! 

ただわたし、
手紙の件は諦めてませんから。
薪さんの中では完全に終わったことになってるみたいだけど、青木さんも今の状況に満足してるみたいだけど、
最終的にお母さんが持ってます、なんて、認めないー。

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Nさまへ

Nさん。

コメントありがとうございます(^^)


>追跡調査の件

わはは、みんな同じこと言ってるみたいですねw

わたしもちょっとCさんやAさんと話したんですけど~、
これやらないと話始まらないから、てことで結論出ました。(いいのか、そんなんで)


>特捜の件なのですが
>捜査員に負担がかからないよう、尽力したんじゃないでしょうか。
>今の第九関東の人たち定時で帰ったりしているしで、ずいぶん規定が変わったんじゃないでしょうか。

うんうん、きっとそうなんですね。

絹子の特捜は多分、2061年の冬ですよね。
この話は2066年だから、5年も経ってるんですよね。その間には規定も変わって当然だと思うし。特に、薪さんが所長になってからは労働条の件改革を断行したんじゃないでしょうか。捜査員の負担を軽くするために。
でも自分は相変わらずワーカホリックで、岡部さんにピンポイントで負担掛けてるとw

Bさまへ

Bさま

お返事、ごっっつ遅くなってごめんなさいー!

雨の心配、ありがとうございます。
うちの地域は比較的降雨量が少なくて、外に出られないくらい降っていたのは1時間くらいだったと思います。
うちは高台にあるので浸水の心配はなかったのですが、建設会社をやっているので気が抜けませんでしたが、(川べりの土手が崩れたり道路が陥没したりすると修繕依頼が連絡網で回ってくる) 雨が止んだ後、役所からのホットラインも鳴らず、安心しました。

同じ県内でお米がみんなダメになってしまったニュースなどを見ると、心が痛みます。

実家が農家なので、農作物に掛ける手間と努力を知っているので……。



>NHKワールドの番組

まあ! お役に立ててよかったです!
番組の紹介は他のブログさんで詳しくされていたので、うちからは番組HPのリンクすら貼っていなかったのですが(不親切ですみません(^^;)


>清水先生が薪さんを描いているところが見られるなんてと、とっても感激しました(^_^)

ねえ! すごかったですよね!!

先生が描かれていることは知っているはずなのに、見ててドキドキしました。命が吹き込まれる瞬間を目の当たりにしたような、そんな感動がありました。


>スタジオで取り上げるポイントがなんだかとても不思議で、

微妙でしたね(笑)
わたしは英語ちんぷんかんぷんなんで、「薪ノート」のたきぎさんがブログに載せてくださった翻訳文を拝読して、やっと内容が解ったのですけど。
コミックスの厚さよりも中身だよ、薪さんも外見より中身なんだよ、MCさんよ☆


>連載の開始やコミックスの発売もあって、気持ちが盛り上がって久しぶりにブログを更新しました。

ありがとうございます!!(>▽<)
拝読させていただきました!
前にも申し上げましたが、Bさんの物の見方、捉え方が大好きです。鋭いのにやさしい。

ずっと更新を待ってますので、Bさんのペースでお願いします。



>薪さんがどんな表情で産んでやれなくて悪かった…なんて言ったのかなとか、

いつも変わらず見守ってくださって、本当にありがとうございます(^^

今回の話はちょっと時期尚早と言うか、わたしの中で答えが出ていないことを書いてしまったせいか、あまり上手くまとまりませんでした。
書いてるうちに解答が得られることが多いので、それを期待して書き始めたのですが、 今回は残念ながら未解決のまま終わってしまいました。無念です。

中途半端な話になってしまって、お目汚しするのも気が引けるのですが、
夏の夜の怪談話として、あ、もう秋ですね……なんかすみません……。

こ、今後とも広いお心でお願いしますっっ!!
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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