蛇姫綺譚(12)

 メロディ発売まであと1週間ですね♪
 前回、飴だったんで今回は鞭だと思うんですけど(←え)、楽しみ楽しみ♪♪♪
 

 お話の方はあと6回です。
 全体的にダレた話になってしまってすみませんー。




蛇姫綺譚(12)






「うおおおお!」
 突然、獣のような咆哮が聞こえた。
 驚いて見開いた薪の瞳に、自分めがけて倒れてくる鉄格子が映った。どおん、と大きな音が響く。
「うわわ!」
「ぎゃっ!」
 鉄格子は部屋の奥行より長く、奥の壁にぶつかる形で落下は止まった。薪は寝ていたから難を免れたが、上体を起こしていた青木は堪らない。後ろから鉄棒に殴られる形になって、畳の上にもんどりうって倒れた。

「大丈夫か、青――あれっ?」
 乱れた衣服を整える余裕もなしに、倒れた男に擦り寄った。が、そこに頭を抱えてのたうちまわっていたのは、薪の知らない男だった。
「……だれ?」
「こっちが聞きたいですよっ! だれですか、その男!!」
 聞き覚えのある声に振り返れば、青木が額に青筋を立てて叫んでいた。いつの間に入れ替わったのだろう。

「青木。おまえどうやって」
「なんでこんなことになってるんですかオレなんかしましたかそれとも足りませんでしたかオレの何が不満だったんですか」
 激しい口調で薪の言葉を遮り、訳の分からないことを喚き立てる。てか、句読点忘れてるぞ、青木。
「サイズですか持ち時間ですか昨夜1回で終わったのが物足りなかったんですかいつもみたいに抜かず3発がんばればよかったんで、ふごおっ!!」
「どさくさ紛れになにいらんこと喋ってんだっ!」
 問答無用で男の顔面を蹴り飛ばす。踵で蹴られて鼻血を吹いた恋人を横目に、下着とズボンを手早く着けた。シャツと背広を着て、しゃんと襟を正す。最後にたるんでいた靴下を直した。

 青木はまだ鼻を押さえている。ちょっと強く蹴り過ぎたか。
「悪かった。でもおまえが余計なこと言うから」
「えへへ。見えちゃいました、薪さんの、ごふぅっ!」
 もう一度顔面に膝頭を叩きこむと、ニヤけた面で鼻血を吹きながら仰向けにひっくり返った。このバカを絵に描いたようなリアクション。間違いなく青木だ。
 と言うことはなにか。僕はこの、どこの誰だか知らない男を青木だと思い込んで必死に助けようとしていたのか? 彼にキスされて身体中まさぐられて、あんなに感じて――。
「……やば」
 彼と行ったあれやこれやが青木にバレたら、死んだ方がマシと言う目に遭わされる。多分、ベッドの上で一晩中。
 純粋な恐怖に駆られ、薪はやや強引に話題を変えた。

「青木。おまえ、どこから来たんだ」
「庭先の納屋に閉じ込められてたんです。薪さん昨夜、お婆さんの盃を受けて倒れたの覚えてますか? あの後すぐに村の人たちが現れて、『毒を飲ませた。解毒剤が欲しければ大人しくしろ』って脅されて。でもさっき、薪さんに呼ばれたような気がして」
 親に悪戯がばれた子供みたいに頬を指先で擦りながら、青木は笑った。
「扉、蹴破ってきちゃいました。後で直しておかないと」
「いや、修理は必要ないだろ」
 真面目でお人好し。青木のズレた親切心が薪の心を毬のように弾ませる。本当に、僕は青木のこういうところにとことん弱い。

 物音に気付いたのだろう、奥の部屋から杖をついたハツと、村人たちが現れた。あの話の後でハツが皆と何を話し合っていたのか、予想はできるが聞きたくない、てか、それを青木の前でだけは言ってくれるなよ。僕は青木を殺人犯にしたくない。
 ハツは、彼らの先頭に立って廊下を進みながら青木の姿を目に留めた。この狼藉を働いたのが、一見大人しそうなメガネ男だと悟ったのだろう。床に座ったままの青木をまじまじと見つめ、驚嘆した声で呟いた。
「鉄格子を枠ごと倒すとは。なんという力じゃ」
「愛の力です」
 ハツの表情が能面のように固まる。仕事柄、芝居がかった台詞には慣れているはずの巫女をドン引かせるとは、さすが青木。
「おぬしもいい趣味をしておるの」
 皮肉られて、しかし薪は薄笑いを浮かべる。鼻先で嘲笑うように嘯いた。
「そういうセリフを真顔で言えるのが青木だ」
「いやあ。それほどでも」
「褒めてないぞ」
「え」
 青木は人の言うことを言葉通りに受け取る。皮肉や厭味は通じないのだ。
 青木のズレ加減とは逆に、狂いっぱなしだった薪の調子は徐々に落ち着いてくる。頭と身体がやっとつながった感じだ。
 じわじわと、廊下の前後から薪たちを挟み撃ちにする形で村男たちが輪を狭める。それを視線で牽制しながら、薪は口を開いた。

「それよりも説明してもらおうか。僕に何をした」
 薪はしきりに青木の変貌を訝しがったが、青木がおかしくなったのではない、なにかされたのは薪の方だ。眼鏡と黒髪しか共通点の無い男を、青木だと信じた。幻覚か、催眠術か、手段は不明だがそれに近いことをされたに違いない。深い催眠効果を得るために、薬物も使用された可能性が高い。おそらくは、昨夜の料理や酒に混入されていた。でなければ、青木が彼らの暴挙を許すわけがない。

「これは驚きじゃ。もう術が切れたのか」
 術、やはり催眠術か。ハツが村民の尊敬を集めていたのは、その特技も一役買っていたのだろう。
「これ、しっかりせい。わしが渡した薬はどうした」
「ちゃんと飲ませました」
 後頭部を擦りながら起き上った青木の偽者は、ハツの問いにそう答えた。薪には薬を飲まされた覚えなどない。でも。
 キスされた後、急激に昂ぶった。もしかしてあのとき。

「ヘンじゃな。あの薬の効果は最低でも半日は……おぬし、もしや身体に欠陥でも」
「失礼だな! ちゃんと出すもの出したぞ!」
「それではなにか、あの短時間で全精力を使い切ったのか。……哀れな」
「やかましい!」
 90歳の老婆に憐れまれるってどんだけだ!
「やれやれ、情けない男じゃ。おぬしに村中の男と交わる役目は荷が重かったかの」
「いい加減にしろ、クソバ、――はっ」
 恐る恐る隣を見ると、苦笑する青木と眼が合った。さすがに、この状況でヤキモチを炸裂させるほど子供ではないか。
「生憎、今日は持ち合わせがなくて」
 そう言って青木はにっこりと笑い、上着の前を広げて見せた。心配したホルダーケースに拳銃はなく、薪が安堵したのも束の間。
「撲殺と絞殺。どっちか選んでください」
 それなら素手でできるね、てそうじゃなくて!

 薪はクスクスと笑いだした。いつもならムキになって止めに掛かるのに、と青木が訝しげに首を捻る。
「いや。青木だなあと思って」
「……褒められてませんよね」
「わかるか」
 正解したから後で褒美をやる、と耳元で囁けば、そういうことだけは勘の良い青木が元気百倍で立ち上がる。

「青木。そろそろお暇するか」
「そうですね」
 ちょっとお借りします、と了解されるはずのない断りをハツに入れて、青木は彼女の手から杖をひったくる。薪と背中合わせになりながら、上段の構えを取った。
 多勢に無勢、そんな常識は彼らには通用しなかった。薪は柔道、空手共に黒帯、青木は剣道4段の腕前だ。昼間畑で逃げの一手だったのは、相手が善良な市民だと思っていたからだ。薪を拉致監禁し、不特定多数の男性との情交を強要しようとした。立派な犯罪集団だ。もう遠慮はいらない。
 薪が手近な男を投げれば、青木が杖を横に払い、3人を一度に薙ぎ倒す。その攻撃に村人たちは、あっという間に浮足立った。剣先の鋭さに怯み、尻もちをつくもの、床を這って逃げるもの。程なく廊下には人が通れるだけの隙間が空き、二人はそこから逃げだした。

「ハツさん、ありがとうございました。杖、お返しします」
 青木は律儀に礼を言ってハツに杖を手渡し、先に走り出した薪に追いついてきた。ハツが呆気に取られた顔をしている。本当に、この男は。
「なんか、物騒な割に手ごたえのない人たちですね」
 そうではない。青木が強いのだ。
 青木は、弛まぬ努力で自分を鍛えてきた。岡部や脇田と言った武術の達人から稽古を受け、庁内の武道大会で歴戦の猛者と闘ってきた。実戦の経験こそ少ないが、その実力は確かだ。長閑な村の農民など敵ではない。

 外の物置に閉じ込められていたと言う青木の道案内に従って、薪は廊下を走った。長い廊下だった。いくつも角を曲がり、数えきれないほどの窓を過ぎ――ふと薪は疑問を感じる。この家はこんなに広かっただろうか。
「てか、長過ぎないか?」
「すみません。迷ったみたいです」
 家の中でも迷うのか。
「おまえの方向音痴は神業だな」

 おかしいなあ、とぼやく青木の目の前に、ごおんと音を立てて壁が下りてきた。慌てて足を止めると、間髪入れずに後ろにも。左は外壁、右にしか活路はない。すたんと障子を開ければ、そこには青木が壊したはずの鉄格子。
「くそ。どうなってんだ」
「やっぱり祟りなんですよ、白蛇の!」
「祟りなんかあるわけないだろ。これはアレだ、最新型の防犯システムだ」
「となると、藁ぶき屋根に見えたのは実は新型の太陽光パネルでそこから電力を」
「第九にも欲しいな。どこの警備会社に頼めばいいのかな」
「株式会社蛇神警備保障とか」
 鬼ごっこも振出しに戻ったわけだが、二人して冗談が言えるくらいには落ち着いていた。どんな状況でも、二人一緒ならなんとかなる。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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そうゆうことかあああ!

いやあ、しづさんの青木さんが取り憑かれるとか正気を失うとか、イメージ的に違和感あったんですよね~。薪さんに関しては猪突猛進、動物的に爆愛ですからね!催眠術とかもかからなさそう(笑)
逆に薪さん、ヤバいですよ!!青木なら絶対薪さんを間違えたりしませんよ!最後までしなくてヨカッタネ!バレたら死にますよ…お薬が一瞬しか効かないほど精力薄くて良かっ……あっ怒られる!
もしかして今までの蛇姫さまも薬盛られてたのかな。可哀想。

なんかまだピンチだけど、二人いっしょなら大丈夫ですよね!薪さんは青木さえいれば怖いものなしだもん\(^o^)/
てか青木さん「持ち合わせ」あったら皆殺しにする気だったんですか…

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なみたろうさんへ

なみたろうさん。

はい、そういうことでしたww


>逆に薪さん、ヤバいですよ!!
>青木なら絶対薪さんを間違えたりしませんよ!

そおなんですよぉ!
「秘密の森のアリス」で薪さんそっくりの妖怪が出て来ても、「青木警視の殺人」で一人だけ「北川舞と薪さんは似てない」って言ってたり、青木さんは絶対に薪さんを間違わないんですよ。
それに引き換え、薪さん! なにをコロッと騙されてんの! 青木さん、カワイソウ!!


>てか青木さん「持ち合わせ」あったら皆殺しにする気だったんですか…

天使くんのはずなのにねえ……うちの話、いろいろ間違ってますよねえ……

原作の青木さんは、薪さんのことが大好きだけど、他にも守らなきゃいけないものがあって、それらをきちんと守った上で薪さんへの愛を貫いてる。立派だなー、と思います。そういう青木さんだからこそ、薪さんが好きになったんだろうな、とも思います。
ただその……正直、待てないのよ、わたし。20年先、舞ちゃんが嫁に行ってからとか、そのとき薪さん、60才だよ?
あの二人の性格だと本当にそうなりそう、でもわたしは今、ラブい二人が見たいの。
だからうちの青木さんは猪突猛進型で、周りの大事なもん、薪さんのためとか言いながらみーんな捨てちゃうヒトデナシで、薪さんもそれを許しちゃうヒトデナシだからうちの二人はお似合いのモンスターカップルってことで……
わたしの我儘で、先生と原作のお二人には本当に申し訳ないです。

Aさまへ

Aさま。

>ああ~最後までやってませんよね

心配、そこ?(笑)

うん、大丈夫。わたしも青木さん以外の人はイヤだし。


>催眠術と薬のせいとはいえ薪さんが別人にイカされちゃったのは私もショックです;;

あれっ。
言われて気が付きました。薪さん、青木さんor鈴木さん以外の人の前で達したの、初めて?
いや、うちの薪さん、女の人とは普通にエッチしてたから初めてじゃないですよ。
あ、そっちの方がショックですか?(^^;


>メロディ、いよいよ

メロディ、目前ですね!
あー、楽しみだなー。どんな鞭が来るんだろう(笑)

Eさまへ

Eさま。


実は薪さんの方が騙されてました。
あり得ねえww



>原作の青木さん

わたしも昔は大嫌いだったんですよ。でも今は大好きです。
根っからの天使くんなのも、雪子さんを好きになったことも、薪さんの気持ちに気付かない異様なまでの鈍さも、全部薪さんを救うために必要だったんだな、と思えるようになったので。
そして今も、
いくら薪さんが好きでも、自分の務めはしっかりと果たす。仕事優先、自分の家族優先。それこそ本物の男だと思います。
うちのはねえ……薪さんがピンチになったら仕事放り出しちゃうからねえ……親も切っちゃうからねえ……ダメだよねえ……
どうしても自分が出ちゃうんだよねえ。仕事より家族より薪さんの方が大事だもんねえ。(え)

そんなダメダメな青木さん、好きと言ってくださって感謝します。
ありがとうございます。

Sさまへ

Sさま。

>今さらだけど、ここって異世界だよね?

そうです。異世界、です。


そうなのよ、まるっきり異世界の話にしたら上手く行かなくなっちゃって。設定と人物の動きもちぐはぐだし、ストーリーもスムーズに転がらなくて。
完全な失敗作だって解ってるのに、お目汚しするのも申し訳ないです(><)


うん、キセキは比較的上手くまとまったと思う。
あれも異星人とか出てきて、いい加減ハチャメチャだったけど、一応の筋は通ってたし。

今度の話は最後まで読んでも筋が通らなくて、もうグダグダもいいとこで……もー早く公開終えて次行こう、次! って感じです。


そんなつもりもなかったんだけど、今思うとストックが切れて、焦ってたのかなあ。
なにか書かなきゃ、って思ってたのかなあ。
そんな気持ちが少しでも入り込んでいたとしたら、面白いわけないよねえ。失敗したなあ。
……創作の愚痴とか普通は言わないんだけど。なんかSさんには甘えちゃうなあ。ごめんなさいね。


ところで、
hydeさんのハロウィンコスプレ、見ましたよ!
黒執事の坊ちゃん。12歳の少年コスして違和感がないって、あーた。
奇跡の46歳っすね(@@)
性別年齢不詳……まさにリアル薪さんですね!

Oさまへ

Oさま。

はじめまして!
ようこそいらっしゃいました!


実写化のニュースから、と言うと、今年になってからファンになられたのですね。
では、薪さん熱があっちっち、の時期ですね。
夜も眠れず、食事も喉を通らない……わたしにもそんな時期がありましたよ……(遠い眼)


拙作をお読みいただき、ありがとうございました。
さぞお疲れになったことと思います、てか、精神崩壊されてませんか?(^^;)


うちの話、原作から遥かに遠ざかってしまって、
こんなの公開してて大丈夫なんだろうかとか、もはや二次創作とは言えなくなってるんじゃないかとか、迷いながらずるずると続けておりますので、お褒めいただくと恐縮いたします。
続きが楽しみ、とおっしゃっていただき、とても嬉しいです。
テキスト量こそ膨大ですが、中身はぺらっぺらなので~、どうか読み捨ててくださいねっ。


今後ともよろしくお願いいたします。ぜひ、またお越しくださいませ(^^)
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

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おかげさまで8歳になりました(^^♪
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