真冬の夢(1)

 薪さんの休日に起きた出来事をのほほんと書いてみました。
 ふう。
 今回は、避難せずに済みそう。(笑)








真冬の夢(1)






 携帯電話の呼び出し音で、薪は目を覚ました。
 ひどい低血圧のせいで、起き抜けは身体が思うように動かない。しかも今日は非番だったので、明日は休日だとばかりに新しく手に入れた推理小説を朝方まで読んでしまった。
 携帯が鳴るということは、緊急の事件の可能性が高い。薪の携帯電話の番号を知るものは、警察関係者に限られているからだ。
 携帯電話の置き場所は、寝室の本棚だ。苦労してベッドから抜け出し、ずるずると床を這うようにして目的の場所に辿り着く。他人には見せられない格好だ。

「はい、薪。……青木か」
 床にうつ伏せたまま電話に出る。その声はいつもよりオクターブほど低い。
 電話の向こうから、まだお休みでしたか? と言う声が聞こえる。
 青木が電話してくるということは、事件だ。当然今日の休みは取り消しだ。調子に乗って徹夜で読書なんかするんじゃなかった、と後悔しながら床の上に仰向けになる。

「どうした?」
『今日は何か予定がありますか?』
 予定があってもなくても、事件には関係ない。薪には仕事が最優先だ。
「いや、大丈夫だ」
『じゃあ、オレに付き合ってもらえますか? 30分くらいで迎えに行きますから』
「わかった。用意して待ってる」
『あ、スーツはやめてくださいね。なるべく警察関係者に見えない格好でお願いします』
「……それはどういう」
 薪の返事を待たずに、電話は切れた。きっと現場が忙しいのだろう。
 しかし、『警察関係者に見えない格好で』という指示の意図は――――。
「張り込みか」

 それしか考えられない。
 眉間にしわを寄せて、薪は舌打ちする。これは第九の仕事じゃない。
「第九は捜一のパシリじゃないって、何回言ったらわかるんだ!」
 右手の拳で、バン! と床を叩く。
 寝不足と低血圧も手伝って、その朝、薪の気分は最低だった。
「竹内のクソヤロー」
 捜査一課のエースの名を口汚く罵って、薪は天井を睨む。第九と捜一は、第九の設立当初から犬猿の仲なのだ。
 どうせ張り込みの頭数が足りなくて、所長の田城あたりに頼んだのだろう。それでこっちにお鉢が回ってきたのだ。

 ぶつぶつ言いながらも、薪は起き上がった。
 怒ったせいで血圧が上がったのか、足元もしっかりしている。シャワーを浴びて睡眠不足を振り払う。起きたばかりで食欲がわかないので、朝食はパスだ。
「覚えてろよ、竹内のヤロー……」
 亜麻色の髪を乱暴に洗いながら、薪は仕返しの方法をあれこれ考えていた。


テーマ : 二次創作(BL)
ジャンル : 小説・文学

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薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

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