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モンスター(7)

 こんばんは。
 前記事に、お気遣いのコメント、たくさんありがとうございました。
 みなさんの助言を活かして、自分だけで背負い込まないように、考え過ぎないように、ゆっくりやって行きます。 
 長期戦だものね。そうしないと、途中で息切れしちゃうよね。

 ということで、早速メロディ買ってきたー!
 事件の裏側が明らかになっていくのを、ふんふん、と頷きながら読んでたんですけど、
 P293の2コマ目で頭の中真っ白になりました。そこしか頭に残ってません。わたし、死んだ方がいいのかしら……。

 感想はまた後ほど、
 とりあえず、お話の続きをどうぞっ。





モンスター(7)






 特捜専用のため防音完備の第4捜査室で、青木は岡部と向かい合っていた。昼の休憩時間のことである。

「服役囚と面会? 薪さんが?」
「はい。荒木の話では、先月の末だそうです」
 荒木が語った薪の秘密は、岡部には無論、青木にも寝耳に水のことであった。
 その日、荒木は会議に出席していた薪を五反田まで車で迎えに行った。帰り道、途中のパーキングに車を停めるよう命じられ、そこで1時間ほど待機するように言われたらしい。しかし、荒木は青木に密命を受けている。薪は単独行動が得意だが、それは暴走の危険を多分に孕んでいる。決して一人にしてはいけない。もしも薪が部下を遠ざけるような行動に出たら必ず後を尾けるように、と。
 敏捷性に富んだ小柄な体躯を活かし、荒木は薪を上手く尾行した。そして突き止めた。
 薪の行先は、東京拘置所であった。

「薪さんは受刑者に会って何らかの話をした。その受刑者の指示で誰かが、あのくそったれな荷物を送りつけてきたんじゃないかと、荒木はそう言うんだな。相手は誰なんだ?」
「そこまでは。面会者帳簿は確認したそうですが、薪さんの名前は無かったそうです」
 証拠を残さないために警視長の特権を発動したか。調べるには拘置所の職員に聞き込みを掛けるしかないが、すると薪に尾行がばれる。それで荒木もそれ以上は踏み込めなかったのだ。
 岡部は三白眼を上空に向け、過去の事件から心当たりを探った。現在、拘置所にいる人物で薪を恨んでいそうな人物と言えば。
「あいつじゃないのか。あの変態」
「……どの変態ですか?」
 哀しいことに、薪に逮捕された変態は数が多過ぎて一人に絞れない。

「ほら、春の青髭事件。控訴しなかったから刑が確定して、今は小菅だろ」
 5月に薪が身体を張って解決した連続婦女暴行殺人事件には、『青髭事件』というセンセーショナルな呼び名が付いた。犯人の桂木省吾は3ヶ月後の裁判で死刑を求刑され、それを受け入れた。死刑囚となった彼は、現在、東京拘置所に拘留されている。東京拘置所は葛飾区小菅にあり、警察関係者が「小菅」と言えば東京拘置所を指す。
「省吾さんがこんなことをするとは思えません。あの人は薪さんに真実を教えてもらって、父親の呪縛から解き放たれたんです。なのに恨むなんて」
「わからんぞ、サイコ野郎の心理なんか。てか、青木。死刑囚をさん付けで呼ぶのやめろ」
「オレは東条さんの方が可能性あると思うんです。あの人って、薪さんが自分を愛してると思い込んでたんでしょう?」
「だからさん付けするなって」

 2年前の『I公園男女殺人事件』の犯人、東条学は15年の禁固刑に処せられている。彼は元精神科医、マインドコントロールはお手の物だし、刑務所内外に協力者も作れるのではないか。青木はそう考えたが、岡部は首を振り、
「東条には無理だ。中園さんの息の掛かった刑務官が、しっかり監視してる。余計なことを喋らないようにな」
 中園の非情さには、時々ぞっとさせられる。政治犯でもない東条が禁固刑になったのは、彼に多少なりとも精神の異常が認められたせいだと薪は言ったが、事実は違う。薪の秘密を守るため、中園が検察に手を回して禁固刑を求刑させたのだ。禁固刑は懲役の義務がないから、他人と話す機会を完全に掌握できる。禁固刑の受刑者は希望すれば刑務作業に参加できることになっているが、おそらくその申し出は黙殺されている。
 他には、ゴスロリ好きの細菌学者とか、吸血鬼と呼ばれたレズビアンとか、しかしどの犯人も友だちがいない代表みたいな人物で、あんな手の込んだことをしてくれそうな友人がいるとは思えない。逆に彼らとて、自分のためにそこまでしてくれる誰かがいれば、あんな事件を起こさなかったかもしれない。

「薪さんのことだからな。案外、受刑者の話を聞きに行っただけかもしれんぞ。官房室で犯罪防止条例の草案を作るだろ。その資料集めとかで」
「まさか」
「あの人は仕事のためなら平気でそれくらいやるぞ」
 自分が関わった事件ではなく、薪が適当に選んだ受刑者に面会を求めたとなるとお手上げである。できれば騒ぎにしたくないから、拘置所に出向いて調べるのは避けたい。薪本人に問いただすことはもっと避けたい。

 2人は頭を抱えたが、ふとある人物に思い当たって、ほぼ同時に顔を上げた。互いの眼の中に互いの解答を見つけ、彼らは同じ形に口を開いた。
「滝沢……」
 2065年の秋。日本中を混沌の渦に巻き込む大事件が起きた。
 元最高裁判所首席裁判官、現国家公安委員副理事長、法曹界の陰の首領、羽生善三郎翁の逮捕劇である。その事件に密接に関わり、裁判で検察側の証人として法廷に立った人物が、元第九職員にして同僚2名を殺害した滝沢幹生元警視だ。
「決まりだな。間違いない」
 滝沢が薪に恨みを持っているかどうかはともかく、「モンスター」とか「愛をこめて」とか、そういう薪が嫌がりそうなことは喜んでする男だ。
「小菅には馴染みもいる。青木、一緒に行くか」
「はい」

 執務室に戻り、個人予定表の自分たちの欄に外回りの文字を書いていると、今井と山本が昼休憩から戻って来た。後ろに荒木もいる。山本と荒木は相性が悪いと言っていたのに、珍しい組み合わせだ。
「今井。これから留守を頼めるか? 青木を連れて行きたいんだが」
 大丈夫です、と今井が快く返事をする。どちらに、と山本に訊かれて、岡部は曖昧に語尾を濁した。仲間内の嘘は岡部が最も苦手とするものだが、本当のことは言えない。
「ちょっとヤボ用でな。じゃ、頼むわ」
「荒木。後をよろしくな」
「はい、青木さん。行ってらっしゃい」

 不審顔の山本と笑顔で手を振る荒木に見送られて、二人は研究室を出た。小菅までは車で約40分。拘置所に到着して腕時計を見ると、1時半を回っていた。
 岡部の旧い友人である副看守長の導きで、二人は所定の手順を踏まずに拘置所の面会室に通された。岡部は彼に薪の訪問について尋ねたが、彼はその様な報告は受けていないと言う。東京拘置所の収容人数は約3000名。滝沢はそのうちの一人にすぎない。知らずとも無理はなかった。

「これはまた珍しい客だな」
 3年ぶりに顔を合わせた滝沢は、あの頃と全く変わっていなかった。尊大な態度もそのままに、彼はどっかりと面接用のパイプ椅子に腰を下ろした。
「滝沢さん。お元気そうですね」
 透明なアクリルボードの向こう側で不遜な笑みを浮かべている彼は、刑務所での生活に疲れた様子もなく、むしろ若返っているようですらある。そのことに青木が驚くと、滝沢はにやりと笑い、
「ここの生活はなかなかに快適だ」
 青木は知らないが、滝沢は旧第九を壊滅させた後、外国の傭兵部隊にいたのだ。そこに比べたら日本の刑務所などぬるま湯に浸かっているようなものだ。

「滝沢」
 岡部が低い声で名前を呼ぶと、滝沢は胡乱そうにそちらを見た。
「単刀直入に聞く。薪さんと何を話した」
「なんでおれに聞くんだ。薪に聞いたらいいだろう」
 岡部の質問を拒絶する返事は、しかし岡部に解答を与える。薪が確かに、滝沢に会いに来たという事実を。
「引っ掛けたな」
 青木の表情の変化からそのことに気付き、滝沢は苦笑いした。しかし直ぐに深刻な表情になり、ちっと舌打ちして、
「あのバカ。まだ過去の亡霊に囚われているのか」
 バカと言うのは多分、薪のことだ。では『過去の亡霊』と言うのは、薪に猫の首を送ってきた人物のことだろうか。
 やはり、滝沢は何かを知っている。

「まあいいか。それほど切羽詰まった話じゃなかったしな」
「それはこっちが判断することだ。何を話したか、正直に言え」
「知りたきゃ薪に直接聞け」
 頑迷に首を振った後、滝沢は声を出さずに口だけを動かし、
『今日は言えない』
 なるほど、と二人は思った。
 拘置所の面会は刑務官の立会いのもとに行われる。刑務官は受刑者と面会人が話した内容を細かく書き留める。つまり、この情報は刑務官に筒抜けになるのだ。
 薪と面会をしたときにはあらかじめ、刑務官に話を通しておいた。要は、滝沢が懐柔した刑務官が面会当番のときを狙って薪を呼びだしたのだ。しかし今日の訪問は飛び込みだ。段取りを組む時間がなかったのだろう。

「滝沢さん、お願いします。薪さんは訊いても教えてくれないんです」
「薪が喋らないことをおれに言えってのはおかしいだろう」
 青木と滝沢が刑務官に聞かせるための会話をする裏側で、岡部と滝沢は、共犯者のように無声でやり取りをする。
『いつならいい?』
『金曜の午後ならOKだ』
 遠すぎる。今日はまだ月曜日だ。
『もう少し早くならないか』
『無理だ』
 いくら滝沢でも、刑務官を何人も抱き込めるほど甘くはない。岡部はそっと青木に目配せした。引き上げの合図だ。

「上意下達が警察の基本だ。一応は元警察官だからな。道理に外れることはしたくない」
「そう言われては、引き下がるしかないな」
 岡部はふんと鼻から息を吹き出し、毛深くて太い腕を組んだ。
「こんなところに長居は無用だ。帰るぞ」
「青木」
 岡部に促されて立ち上がった青木を、滝沢が呼びとめた。口唇を読ませるつもりかと眼を瞠るが、滝沢はいつもと変わらぬ尊大な口調で、
「おまえは薪のボディガードだろう。だったらあいつを守ってやれ」
 はい、と青木は頷いた。隣で岡部が苦い顔をしたが、滝沢は岡部と同い年で、一度は同僚だった男だ。反射的に敬語になってしまうのだ。

「どんな敵からも、だぞ」
「はい」
「相変わらず分かってないな、おまえは」
 滝沢は左の頬だけを吊り上げ、苦笑とも失笑ともつかぬ笑いを浮かべた。それから彼は、子供の手伝いをまどろっこしく思う親のような眼になって、
「あいつの最大の敵はあいつ自身だ。それを倒さなきゃどうにもならん」
 と謎かけのようなことを言った。青木がきょとんとした顔で首を傾げると、滝沢は両手を左右に広げてから肩を竦めた。そのわざとらしい仕草が、なんだか妙に懐かしかった。

「要するに、薪が自分からおまえに話すようにならなきゃ始まらないってことだ。それができないなら力づくでも聞き出すんだな。大事なのは薪が自分の口で喋ることだ」
 態度は横柄で言葉はぞんざいだけど、薪を心配しているのがその眼で分かった。きっと滝沢は、薪の身になんらかの危険が迫っていることを知っていたのだ。それを教えようと、薪をここに呼び出した。
 警告を受けたなら、それを青木に話して警備を強化するのが筋だ。薪が自ら自分を守るための行動をとること、それが大事なのだと滝沢は言いたいのだ。
 そして薪にそれができないのなら。聞き出すのは青木の役目だ。

「わかりました。滝沢さん」
「だから敬語使うなって。殺人犯だぞ、こいつは」
「やってみます。ありがとうございます」
「礼も言うな!」
 岡部に叱責されつつも、青木は滝沢と透明ボード越しに眼を合わせた。そこに青木は自分と同じ種類の光を見つけ出し、にっこりと笑った。




テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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がんばってー

しづさま。
ちょっと(いやかなり)ご無沙汰しているうちに、大変そうですね。(だが更新されているのか・・・・・・)

無塩にするとかなり良いようですが、全部無塩にすると耐えられないので、一品だけ普通の塩分にすると続けやすいってテレビでやってましたよ。

(でも、せっかく食事計画をたてても、言うことを聞かずにおやつを食べられてしまいそうだ)

複製原画当選おめでとう♪♪♪
(でも私はツイッターなんてやらないもーん)
クリアファイルも特製ですかね。
きれい!!!
うらやらすいー

では。
色々と健闘を祈ります。

良いお年をお迎え下さい。

(私は279ページでひっくり返りましたぞ)



イプさまへ

イプさま。

ご無沙汰してますー。
お元気ですか?
て、年、変わっちゃいましたね(^^;
今年もよろしくお願いします。


そうなの、お義母さんが大変なのよ。
無塩かあ。うーん、言うこと聞いてくれないだろうなあ……。
年も年なんでね、できるだけ本人の好きにさせてあげて、でも無理はさせないで、様子を見ましょう、ってお医者さんにも言われてます。


>複製原画当選おめでとう♪♪♪

ありがとうございますー!
ツイッターはね、わたしもほったからしにしてあったんだけど、たきぎさんのブログで紹介されてたから。応募したら当選したw
こういうの、人の褌で相撲を取る、て言うのかな(^^;

クリアファイルは、
どこかの本屋さんでコミックス購入のおまけに付くって聞いたよ?
検索して、ぜひぜひ、ゲットしてください(^^)



>(私は279ページでひっくり返りましたぞ)

ホントだよ! ねえ!
雪子さんはまだしも、桜木さんにまでバレてたの?!
どんだけ、もうどんだけ分かりやすいのよ、薪さんっ!

第九編で、薪さんは青木さんへの気持ちを隠してたはずなのに、どうして敵側に知られてるんだろうと思ったら、なんのことはない、
ものすごく分かりやすかったのかwww


Sさまへ

Sさま。

>あああ~ワタシもでガンスよ!

やっぱりやっぱり!?
Sさんなら同意してくれると思ってましたよ!!

しっかし、あの体格差、すごくない?
おばちゃん、薪さんが心配になっちゃっ、いやその。


>扉絵の薪さんの美しさもハンパないし(何を思って拳銃を握っているのか…)

鈴木さんの命を奪った物で、桜木さんの命を救うことができた。皮肉、と言ったら語弊がありますが、複雑な気分だったんじゃないでしょうか。少なくとも、桜木さん助かってよかったー、という顔には見えません☆



お義母さんのことも、ご心配いただいてありがとうございます。
年齢も年齢だし、手術等はリスクが大きいので、このまま様子を見た方がよい、とお医者さまにも言われておりますので、長期戦の心構えを持ちたいと思ってます。
こうやって、合間を見て薪さんの話をしたり、小説を書いたりして、英気を養う時間も作りつつ、ぼちぼちやっていきますので。また、お話してやってくださいね(^^)

今年もよろしくお願いします。

Aさまへ

Aさま。

>ああ、こちらの滝沢は生きていたんでしたね。

そうなんですよ。小菅(東京拘置所)の帝王にのし上がって、もうやりたい放題(笑)


>服役囚がらみならやっぱり、逆恨みとかなのかしら?

そうです、逆恨みもいいとこ。
でも、それをハッキリと言えない方に問題があるんじゃないかとわたしは思います。


>薪さんを庇う青木カッコよかったですね。
>久々のスキンシップという感じ^^

ここにきて、ようやく青木さんが行動的になりましたね(〃▽〃)
いっつも岡部さんに先越されてさー。おかげでうちのナイトは岡部さんになっちゃいましたけど。
周りも驚いたいんじゃないでしょうか。特に桜木さん。なんだこいつどこから出てきた、とツッコミたかったに違いない(笑)

プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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