モンスター(11)

 こんにちはー。

 おかげさまで、花屋の物置が撤去されました。これで先に進める♪ と思ったら、
 今度は横断する既設道路に下水の圧送管が出てきやがりまして、なんで下水道がGL△600の深さに入ってるのよー(><) (今は1200くらいの深さに埋めるんだけど、昔は規格ギリギリの600くらいに埋めてたらしい、てか、U字溝が入らないじゃん! 設計ミスだろ、これ!)
 おかげで切り回し工事が追加になり。またもや頭が痛い現場代理人です。

 何かの祟りかと思えば、こんなん書いてるからかしら。

*薪さんが痛い目に遭うの嫌な方、この章は飛ばして読んでください。読まなくても話は繋がりますのでご安心を。(それなら無くてもよかったんじゃ……)




モンスター(11)




 激しい痛みと寒さで、薪は眼を覚ました。
 潤んだ亜麻色の瞳が映しだしたのは埃まみれの板の間。投げ出された自分の右手が見える。左手首は手錠でベッドの脚に繋がれており、薪はそれより先に動くことができない。
 せっかくベッドがあるのだから使わせてくれてもいいのに、と薪は首を動かしてベッドを見上げるが、マットが破れてスプリングが飛び出しているのを見て諦めた。あれは傷に響きそうだ。
 せめて毛布が欲しい。10月も終わりに近いと言うのに、裸に近い格好で隙間風がびゅうびゅう入るこんな廃屋に転がされて。風邪を引いたらまた岡部が騒ぐだろう。
 ――生きて帰れたらの話だが。

「うっ……痛ぅ」
 薪を捕えた人物は残忍だった。
 なんのためらいもなく、薪の皮膚をメスで切り裂いた。薪が苦痛に悶える様を見て嘲笑い、つけたばかりの傷をさらに抉った。そうして少しずつ少しずつ、薪の身体に深い傷を刻んでいった。まるで子供が、捕まえた昆虫の脚を一本一本むしって行くように。
 特に重症なのは下腹部で、その部分の痛みは凄まじかった。初めて青木と結ばれた時も痛かったが、その比ではなかった。性器には針のようなものを突き立てられ、後ろには男性器の形をした大ぶりの器具をむりやり突っ込まれた。その様子を動画に撮られた。ネットに流すと言っていたから、今頃大騒ぎになっているだろう。

 表を歩けなくなる、そんな心配は要らないと言われた。
 おまえはここで私に嬲り殺される。二度と日の目を見ることはないのだから安心しろと、普通なら肩を叩く代わりに鞭で引っぱたかれた。
 薪の背中に蚯蚓腫れの痕を残しながら、薪が聞きもしないのに理由を説明してくれた。
 自分がどうしてこんな目に遭わされるか分かるか。私の兄がされたことをそっくりおまえにしてやるのだ。それがおまえに与えられた罰なのだと、確かそんな説明だった。痛みが激しくて、相手の話は半分も耳に入ってこなかった。

「ったく。この年でハードSMはきつい」
 絶体絶命の窮地に、薪は軽口を叩いた。
「また中園さんに大目玉だ」
 犯人は今、ここにはいない。来るとしたらおそらく夜の8時過ぎ。痛みに気絶していた時間を2時間と見込んでも、3時間くらいは余裕がありそうだ。だが、動けそうもなかった。傷が深すぎる。
「小野田さんにも迷惑かけちゃうし」
 誰もいない空虚に、薪の乾いた声が吸い込まれていく。
「岡部やみんなが心配して……」
 目の縁から涙がこぼれて、土埃に黒ずんだ亜麻色の髪を濡らした。くちびるが震えて声が出せない。どうやらカラ元気も打ち止めだった。

 死にたくないと薪は思った。
 これに近い状況に追い込まれたことは何度かあった。死を覚悟したことも、一度や二度ではない。だが薪はこれまでに一度も、こんな風に願ったことはなかった。
 心のどこかで誰かが助けに来ることを信じていた。その希望を最後まで、捨てたことはなかった。

 今回は違う。自分はここで死ななければいけないのだ。だからこそ痛切に思った。

 死にたくない。
 死にたくない。
 死にたくない。

 声にならないその願いが、薪のくちびるに一人の男の名を象らせる。
「青木――」
 青木に会いたい。死ぬ前に、一目青木に会いたい。会って告げたい、幸せだったと。おまえに会えて、愛されて、僕は幸せだったと。
「うっ……」
 もう恥も外聞もなかった。犯人の前では零すまいと決意した涙は、一度流してしまうと、我慢を重ねた分だけ歯止めが効かなかった。

 思いがけず最後の晩餐になった、昨夜の食事は甘鯛の酒蒸しだった。それとインゲンの胡麻和え、キンピラゴボウ、海藻のサラダ。
 この日が今日来ると分かっていたら、青木が好きな煮込みハンバーグを作ってやればよかった。ビールももう1本飲ませてやればよかった、セックスも。会議を理由に断ったりしなきゃよかった。

 いや。分かってはいたのだ。
 いずれこんな日が来ることは分かっていたのに。
 それは今日じゃない、明日じゃないと、何の根拠もなく思い込んでいた。だってあんまり楽しかったから。
 彼に恋をして、その彼と一緒に暮らせるようになって、地球の引力を振り切れそうなくらい舞い上がりきってた。その幸福が自分に訪れたことに驚きはあっても疑いはなかった。この幸せが明日も明後日も続くのだと、信じていた。

 なんて愚かだったんだろう、僕は。
 そんなこと。神さまが許すはずもないのに。



テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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Cさまへ

Cさま。

ああ、よかったー! 怒ってるかと思ったー! Cさんが優しい人でよかったよー!
クッションの無い言い方でゴメンナサイ、でも2回目のメールも返ってきてしまったので、とても不安でした(^^;) 

Cさんは、ちゃんと届いてるかどうか確認したかっただけなのに、余計な言い訳してごめんなさい。
あの後、すぐに思い直したのですが、こちらから連絡のしようが無く、謝ることもできなくて、焦ってました。

ご自分のメルアド出ちゃいますものね。間違いなく相手に届いてるかどうか、確認したくなりますよね。
Cさんは全然非常識じゃありません。
わたしの配慮が足りず、嫌な思いをさせてしまって、本当にすみませんでした。

わたしの方が、うんと年上なのにね。
年ばっかり取って気配りできないやつで、ごめんなさいね(^^;

もしもまた、コメント欄以外でお話したいことがあれば、メールフォーム使ってくださいね。
今後は気を付けますので。


で、お話の方、
きゃー、ヒドイ展開でごめんなさいー!(こっちでも謝りっぱなし)

そうですよね。みんな待ってますものね。
うん、大丈夫。生きて帰ってきます。ご安心ください。
薪さんが辛い時間はなるべく早く過ぎるように更新しますので、もう少しお付き合いください。


Sさまへ

Sさま。

>ちょっとお~またうっかり拍手しちゃったじゃん!
>しづさんあんた薪さんに何晒すんじゃ~!

あははは!(>▽<)
Sさん、相変わらずオモシロ、いや、ごめんごめん。
そうなんだよね~、40超えると傷の治りが遅くなるんだよね。跡にもなりやすいし。

ま、
お話なんで、今回も身体の傷はすっかりきれいに治ります。
治りゃいいってもんじゃない?
あー、なんか最近、ドラゴンボール見てて、「ドラゴンボールでみんな生き返るから一回は死んでもいいや」的な話の展開を受けて、そういうもんじゃないだろうに、と思ったのを思い出しました。
すみません(^^;


>痛めつけるんだったらもっと別のやり方に

え、え、Sさんはどういったプレイがお好みで?(何を訊いているのか)
今度聞かせてくださいね☆

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Sさまへ

Sさま。


>ぎゃーっっっ、しづさん!

ごめん! ごめんねっ!
残念ながら現実です、申し訳ないです。


>時期的にこの後のお話ももう既にupされてるのに、薪さんにそんな傷痕なかったはずだよなって。

そうですよねえ……10月にこんな目に遭ったら、(「きみのふるさと」の)12月には傷が残ってるよねえ……
やっぱり後から入れると矛盾が出るなあ……
2060年の医療技術はすごいってことで、ダメ?(^^;



>このエピソードのポイントは、薪さんが痛めつけられてることじゃなくて、青木くんが大好きってことを再認識したことかなあ。

そうですね。
ポイントは「死にたくない」ですね。
うちの薪さんが「死にたくない」って思ったの、この時が初めて、だと思う。(←自分で書いておいて自信無いのは何故)


>復讐鬼は♀だと何となく思ってしまってたけど、♂でもいい書き方でしたね。

この辺はぼかして書きました。
種明かしをお楽しみに♪
て、多分分かっちゃうだろうなー(笑)



お気遣い、ありがとうございます(^^
そうなんですよね。精神的な疲れって、体の不調になって現れますよね。

でも大丈夫。
どんづまったら開き直っちゃうw
こないだSさんが言ってくださったことが、とってもいい切替スイッチになってます。ありがとうございました(^^)


>人生も帳尻会わせはちゃんとできてるはず、というのが私の持論です。

禍福は釣り合うってことで。
頑張った人にはそれなりの幸せがいつかきっと扉を叩く、ですね♪

Aさまへ

Aさま。


>あああ、なんてお労しい(ノД`)・゜・。

ゴメン。
調子に乗って書いてたらいつの間にかこうなってて(^^;


>ここが頂点でこの先、新作でピンチになってもこれ以上、酷い目に会いませんよね?

そうですね。
薪さんをここまで憎む人は、他にはいないはずなので。


>死にたくないと強く思えたのは良かったと思います(;・∀・)

うん、そう、まずはそれ。
そこから乗り越えていかないと、多分ダメだと思うので。

えーとね、
原作薪さんは、過去を乗り越えたんだと思うんですよ。シーズン0になって性格変わったの、そのせいだと思う。
じゃ、うちのはどうなんだろうって思って書いてみたらこうなっちゃって。だけど、男爵にも前を向いて欲しいと願って書いてるのよ、信じて?
プロフィール

しづ

Author:しづ
薪さんが大好きです。

2008年の夏から、日常のすべてが薪さんに自動変換される病に罹っております。 
未だ社会復帰が難しい状態ですが、毎日楽しいです。

しづの日誌

法医第十研究室へようこそ!
おかげさまで8歳になりました(^^♪
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